『7日で』神通が死ぬっていうのなら、俺が救ってやるよ!   作:阿斗 らん太

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2日目

 

 

 目の前に広がるのは、一面黒塗りの世界。

 また、この夢か。

 次第に赤く、熱くなっていく景色の中、再びあの影を見る。

 どんな業火に焼かれようと、どんな熱風が体を襲おうとも、決して倒れることなく俺の前に佇む影。

 それに対して、俺は瀕死状態なのだろう、一歩も動くことが出来ないまま、ただその影に手を伸ばすだけ。

 そのとき、一瞬だけ影を覆う炎が弱まる。炎の切れ間から見えたのは風にはためく鉢巻と長い髪。

 あれは、神通なのか・・・・・・?

 その姿も瞬く間に火の中に消え、姿もどんどん遠くなっていく。

 まっ、待ってくれ! まだ、もう少し──────

 

     ○●○

 

「ハァ・・・・・・! ハァッ・・・・・・!」

 

 かばっと体を起こすと、例のごとく妖精さんに囲まれていた。

 ほんと、なんなんだよこれ。

 顔に手をあてると、なにやら湿った感覚がある。泣いてたのか・・・・・・?

 自分の状態にあまり実感がないまま、見ると妖精さんたちがぞろぞろ出て行く。今度は付いて来いってことか。

 

『どうでしたか? 』

「どうって・・・・・・」

『ゆめ、みたんですよね』

「・・・・・・見た。あの炎の中の影は、神通のようにみえたんだがどういうことなんだ?」

『あと6日です』

『6日ごのあなたなんです』

「・・・・・・それは6日後の未来をお前たちが俺に見せているってことか?」

『はい。どうせいってもしんじないでしょうからじっさいにみせてるのです 』

「いや、そんなこと出来るわけ・・・・・・」

『できるんです。われわれはそういうそんざいですから』

「うーん」

 

 つまり、妖精さんたちは数日後の未来を知っていて、更に俺に夢という形でその未来を見せているということらしい。

 そもそも未来が見えるなんて都合のいいことができるなら、深海棲艦との戦争だってもっとうまくいっていなきゃおかしいじゃないか。

 全く、馬鹿馬鹿しい話だ。

 

『まだ、しんじてませんか?』

「当たり前だ。そんなチート能力、あったらみんな使ってる」

『それは・・・・・・』

『みんながしんけんにかんむすとむきあっているわけではないのです』

「はっ、昨日もこっぴどく飯を断られたばっかだけどな」

 

 俺が真剣に神通と向き合っているだって? それこそありえない話だ。ここまで枯れた関係はそうはない。

 妖精さんたちは見るからにプンプンしているが、流石に話が突拍子も無さすぎるので、信じられないのも仕方ないだろう。

 

『わかりました。そこまでいうのなら』

「いうのなら?」

『しんじるまで、ごはんぬきです』

 

 ははは、そうかそうか、ご飯抜きか。

 ・・・・・・・・・・・・えっ?

 

     ○●○

 

 っくしょー。やってくれやがった、あのチビ共。

 俺が鎮守府に来て以来、何故か沢山着いてきた妖精さんたちが日々の食事を作ってくれていたのだ。

 スーパーどころかコンビニもないこの島で食事を用意してくれるのはありがたいんだが、今回はまんまとそれを逆手に取られた。

 本土からの供給はちょうど明日で、前回分の食料も底を着いている状態なのに・・・・・・

 

「で、どこに行けばなにか食えるものが見つかるんだよ・・・・・・」

 

 昼になってもまだ機嫌を直してくれない妖精さんたちも、食料のありかくらいは教えてくれると信じて訊いてみる。

 すると、妖精さんは一斉にある場所を指差した。

 

「・・・・・・まじ?」

 

 いやいやいや、あんなとこまで行かなきゃならんの? すげー山のてっぺん指さしてるけど。

 

『あそこまでのぼれば、いろいろてにはいります』

「うわぁー」

 

 万年運動不足の俺にはいささかキツすぎるんだが。でも飯抜きって訳にはいかないよなあ。

 

「仕方ねぇー! 行けばいいんだろ!?」

 

 こうなったら食いきれんくらい沢山取ってきてやるよ。あとから悔しがっても知らんからな。

 

『いってらっしゃいです』

「おう! 行ってくる」

 

 なんだよ、見送る気遣いくらいは出来んじゃねぇか。意外とみんないいやつだな。

 

     ○●○

 

 前言撤回。撤回、撤回、大いに撤回!

 なんだよ、山頂付近に着いたけど食えそうなものが何一つなかったんだが。

 あったのは見るからにヤバそうな見た目のキノコと黒光りした気持ち悪い虫だけ。

 完っ全に騙された!

 やっぱりいけ好かねぇ、あのチビ共。

 

「おい! 結局なんもねぇじゃねぇ・・・・・・か・・・・・・」

 一言文句を言ってやろうと勢いよくドアを開けるとそこには妖精さんはいなく、代わりに神通が立っていた。

 や、やばい、完全にやらかした感。

 

「あの、提督?」

 

 予想外にも神通は困った様子で小首を傾げながら、こちらを見ている。

 心配してるのか・・・・・・?

 確かに、よく見れば昼から夕方まであんなとこで食料を探し回っていたためか、服とか薄汚れてボロっとしている。

 

「こんな時間まで何をされていたんですか?」

「ちょっと、飯を探しに・・・・・・」

「え、えと・・・・・・?」

「今日は妖精さんがへそを曲げていてだな。自分でなんとかしなくちゃいけなかったんだ」

「ああ、それで今までいらっしゃらなかったんですね」

「結局何も見つかんなかったけどな・・・・・・」

 

 話をしていくうちにいつもの恐ろしい表情の神通に戻っていたものの、昨日と違って会話は上手く進んでいる気がする。

 

「そのことなんですけど、実は私も補給してもらえてなくて・・・・・・」

「なんだって?」

「その代わりかどうかは分かりませんが、執務室にこんな物が」

 

 と、神通が差し出したのはカップ麺・・・・・・?

 片方は普通の醤油味だが、もうひとつは『やみつき燃料味! 弾薬スープ入り』などと書いてある。艦娘ってこんなん食べるのか?

 とにかくこんな芸当ができるのは妖精さんぐらいだろう。随分と回りくどいことしやがる。

 

「ええっと、神通はそれで補給できるのか?」

「はい、おそらく・・・・・・」

 

 これはチャンスなのでは? 早くも昨日のリベンジを果たすときがきたみたいだ。

 妖精さんの思い通りみたいで癪だが、ここは多少強引にでも一緒に食べる方向に持っていくべきだろう。

 

「じゃあ、食べるか。超腹減ってるし」

「えっ?」

「補給、まだなんだろ?」

「はい・・・・・・」

「じゃあお湯を入れてっと」

 

 ポットの中では既にお湯が沸いていた。こういうところは準備いいんだよな・・・・・・

 

「いただきます」

「い、いただきます」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 か、会話がない・・・・・・! 一緒に飯を食うところまでこぎつけたはいいが、肝心の話題が何一つなかった。

 頭の中で頭を抱えていると、ふと神通の後ろで蠢く影を見つける。

 どこから持ってきたのか妖精さんたちがカンペよろしく小型のホワイトボードを取り出してきた。

 

『じつはじんつうはまんがずきなのだ』

 

 なんで知ってるんだよ・・・・・・

 自室で漫画とか読んでたりすると、意外と妖精さんに見られたりしているのだろうか。

 神通の背後に訝しげな視線を送っていると、続けて新たな情報を出してくる。

 

『せんとうすたいるとか、まんがのきゃらをさんこうにしてたりするのです』

 

 そんなことまでばれているのかよ!

 まさか神通から妖精さんに話した訳でもないだろうし、プライベートのプの字もないんだよなぁ・・・・・・

 だが、このまま沈黙が続くのは非常にまずいので、妖精さんを信じて話を振ることにする。

 

「なあ、神通は漫画とか読むか・・・?」

「は、はい少年向けのものを少々」

「おお・・・・・・! そうか実は俺もかなり読んでいてな」

 

 マジだったわ。あの神通にそんな趣味があったなんて意外だった。もっとこう殺人ミステリーとかそういうのが好きだと思っていた。

 これは会話に困らなさそうで安心した。漫画という趣味は話題が豊富だから偉大だ。

 

「最近だとチェンソーマソとか読んでるんだが・・・・・・」

 

     ○●○

 

 結局夜まで漫画の話で盛り上がってしまった。

 あの神通が「私もいつか飛ぶ斬撃とか出してみたいです」などと言い出した時には普段とのギャップも相まってテンションアゲアゲ状態だった。

 思い返すと興奮しすぎだったかもしれない。陰キャ特有の自分が好きなことだけ必死で喋るアレに陥ってたような・・・・・・

 明日真顔で「趣味の話になると急に饒舌になるんですね」とか言われたら余裕で死ねる。

 でも妖精さんも満足そうだったし、ひとまず関係険悪という問題は解決したと思う。いつもの殺気混じりの視線については、何か思い違いをしていたのかもしれない。

 今日は色々あったが、振り返ってみると、話してみれば神通って普通の女の子じゃね、と思い直した一日だった。

 

 

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