『7日で』神通が死ぬっていうのなら、俺が救ってやるよ!   作:阿斗 らん太

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3日目

 

 

───ドォン

 

 あまりの爆音に耳がキーンとする。爆煙で目が霞むが、目の前で佇む影が神通であることはもう知っている。

 

───提督は逃げてください

 

 俺は必死で何かを訴えるも、影は背を向けてしまう。

 

───あとは、頼みます。姉さん達のこと

 

 自分でも何を言っているか分からないが、今まで感じたことが無いような焦燥が全身を支配している。

 

───いいえ、私はこれで満足だったんです

 

 なんなんだよそれは。

 もう遅いと頭のどこかでは分かっていながらも、俺は無様に手を伸ばすことしか出来なかった。

 

     ○●○

 

 またいつものあれだ。

 しかし、今日の妖精さんたちはただ何かを訴えるような目で俺を見つめるだけだった。

 しかし嘘だとしたら悪趣味なイタズラだよな。でも妖精さんがわざわざこんなイタズラをするか・・・・・・?

 

「やべ、もうこんな時間か」

 

 今日は他の鎮守府から物資の補給が行われる日だ。基本的に大本営からの資材や日々の食料、申請すれば漫画などの郵送も月1回のこの補給で済ませているという寸法である。

 この深海棲艦が蔓延っているご時世、本土の鎮守府の駆逐艦3、4隻で輸送してくれるあたりとてもありがたい話だ。

 ちなみに、元俺の部下であり初期艦の五月雨が毎回参加してくれている。艦娘との関わりが非常に少ない俺にとっては楽しみにしている一日なのだ。

 

『ゆそうかんたいがとうちゃくしたみたいなのです』

 

 ちょうど身支度を整え終わったタイミングで妖精さんが教えてくれる。

 

『これをきにしまからだっしゅつすることをおすすめします』

 

 そんなこと出来るわけないだろ・・・・・・

 いつまでたっても諦めない妖精さんに辟易していると、

 

「失礼します!!」

 

 ばぁん! と勢いよく開いたドアと共に五月雨が入ってくる。

 到着してすぐ来てくれたのか若干汗ばんでいるのがポイント高い。あぁ、五月雨ちゃんは今日も可愛いなぁ。

 

「よく来てくれた。毎度毎度すまないな」

「いえ! 私も楽しみにしているので大丈夫です!」

「お前・・・・・・」

 

 やばい、いつも神通の殺気に晒されている心が癒されていく。こんな何もない島なもんだからプレゼントの一つも買えないのが心底悔やまれる。

 

「そうだ、せっかく来たんですし、何かお手伝いさせて下さい!」

 

 そんな、来て早々客を働かせるなんて悪いことは俺には出来そうにないのだが。

 

「そうだな、温かいお茶でも入れてもらおうかな」

「はい!」

 

 まあ、五月雨が頑張ってお茶を入れているのを眺めるくらいはしていいだろう。五月雨が割ってもいい用にカップは多めに持ってきてあるのだ。

 ああ、ちょこちょこと俺のために頑張ってくれる五月雨ちゃんは可愛いなぁ! やっぱ艦娘はこうだよなぁ!

 

「提督、出来ました! って、わわっ!!」

「あっつ!!」

 

 べしゃぁと俺のズボンに盛大にお茶がぶちまけられる。よりによって股間部分にだ。

 絶対零すと、思っていたがまさかこんなところとは・・・・・・

 いや、でも五月雨が丹精込めて淹れてくれた液体がかかっていると思うと俺の息子がこうムクムクと・・・・・・

 

「ごめんなさいごめんなさい! 私そんなつもりじゃ・・・・・・」

「いや、ありがとうございます」

「えっ・・・・・・? と、とにかく、すぐ洗わないと!」

 

 そう言って五月雨が躊躇なく俺のズボンを脱がそうとしてくる。

 い、いくら五月雨ちゃんでもそこまでは許してないぞ!

 それに、今の解放間近の息子の状態を見られる訳にはいかない。

 

「や、やめっ、い、いまはマズい・・・・・・!」

「何言ってるんですか、染みになっちゃいます!」

「ちょ! あっ! ちょ!」

 

 くそっ、艦娘だから力が異常に強い・・・・・・!

 このままじゃ脱がされる、と俺のズボンが半脱ぎになったところで───

 

「失礼します」

 

 想定し得るうち最悪のタイミングで神通が入ってきた。

 

     ○●○

 

「て、い、と、く ?」

 

 ニッコリと、それでいて物凄い圧を放ちながら神通が近づいてくる。

 ヤバい、いつもの表情も怖いが、今の貼り付いた笑顔の方が数倍怖い。

 更に悪いことに、神通と俺が正面の位置関係になってるので、神通からは五月雨が俺のズボンに手をやって、俺の股間に顔を埋めてるようにしか見えていないのだ。

 

「五月雨さんに何をさせているのですか?」

「い、いや、これは違くて───」

「わ、私が悪いんです! 私のせいでこうなっちゃったから、私がキレイにしないとって!」

「へぇ・・・・・・」

 

 さ、五月雨ちゃんちょっと黙ってくれ! その言い方だと誤解しかない!

 何かないのか、この状況を説明できるものが!

 焦った俺は足元に転がっているティーカップを指さして神通に訴える。

 

「誤解だ! これを見てくれ!」

 

 俺の訴えに神通は下へと目線を向ける。その目線の先は───

 

「け、汚らわしい・・・・・・!」

 

 そこじゃない! 俺の股間部分が染みになったパンツじゃなくてティーカップをみてくれ!

 

「提督は悪くないんです! 私がいつも失敗しちゃうから提督のがびしょ濡れに・・・・・・」

「いつも・・・?」

「わああああああああああ!」

 

 神通がもうゴミを見るような目を向けている。これ以上五月雨ちゃんを喋らせたらマズい。

 

「さ、五月雨ちゃん? そろそろ補給してきたらどうだ?」

「で、でも・・・・・・」

「こっちは大丈夫だ。ほら、一緒にきた娘達にも補給するように言ってくれ。妖精さん達がやってくれるから」

「わ、分かりました! 天津風ちゃん達にも伝えておきます!」

 

 そう言って、五月雨はとたとたと執務室を出ていった。まあ、帰りの分の燃料くらい残っているだろうが、補給ぐらいするのが物資を送ってもらっている方の礼儀だろう。

 ふう、これで更なる被害は抑えられた。あとは神通の誤解を解くだけなのだが・・・・・・

 

「今更いい顔をしようとしても遅いですよ」

 ・・・・・・もう何もかも手遅れのようだ。

「あ、あの何か勘違いをしてるみたいだが・・・・・・」

「残念です」

「あ・・・・・・」

「一応何ヶ月か共に島で過ごしてきて、それなりにあなたを知ったつもりでしたが、まさか駆逐艦に手を出すような男だったなんて」

「そ、それは五月雨ちゃんの言ったことは正しくなくて! いや、正しいけど言い方が間違っていて・・・・・・」

「五月雨『ちゃん』?」

「五月雨です」

 

 ゴゴゴゴ・・・・・・と更に神通の圧が高まる。ちゃん付けはNGだったみたいだ。神通ちゃんとか言った日には殺されるんだろうな・・・・・・

 

「何より、そうやって言い訳をしているのが一番残念です」

「うっ・・・・・・」

 

 そうだよな、神通からすれば俺はさっきから言い訳がましい最低な男だ。もういっそ認めた方がいいのか・・・・・・

 俺が訂正を諦めようとした時、神通はガタガタと震え始める。ギョッとして見ると、神通の目線は俺の染みの付いたパンツに向けられている。

 あまりの汚さに怒りで震えが止まらないのだろう。

 

「提督は、その、た、溜まっているんですか?」

「え、い、いや・・・・・・」

 

 溜まっているって・・・・・・性欲か? 性欲のことを言っているのか?

 なんでそんなことを・・・・・・

 

「もし溜まっているのでしたら、わ、私が、『処理』してあげても・・・・・・」

 

 !!?!?!!!!??!!!

『処理』ってそういうことだよな。次に妙な真似をしたらお前のその竿と玉を握り潰してやるよ的な。汚物処理とかそっち系のアレだよな。

 

「それだけは勘弁して下さい!」

「っ・・・・・・!」

「溜まらないんで! 俺は溜まらない体質なんで!!」

 

 全力で土下座と体勢に入る。機能不全になるのだけはダメだ。まだ、俺の息子は本懐を遂げていないのだ。

 

「そ、そこまで言うのですか・・・・・・!」

 

 な、何とかなったようだ。ただ、俺の必死さがあまりに気持ち悪すぎて神通はドン引きの涙目になってしまっている。

 昨日せっかく少しは話せるようになったと思ったのに、全て水の泡になってしまった・・・・・・

 

「はぁ、もうそろそろ五月雨さんも戻って来そうですし、もういいです」

「あ、ああ、本当にすまなかった・・・・・・」

「謝罪なんて聞きたくないです。それでは失礼します」

 

 そう言って神通はドアに戻っていく。

 

「バカ・・・・・・」

 

 去り際に何か言った気がするが、上手く聞き取れなかった。

 五月雨ちゃんのドジが見たかっただけなのにこんなことになってしまうなんて・・・・・・

 結局、その日は五月雨ちゃんが笑顔で手を振りながら元気に帰っていったことだけが救いだった。

 

 

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