叩けば増える、夢のビスケット   作:トリリリリリ

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菓の個性について軽い解説があります。
原作のクラッカーさんそのままにすると11時間延々とビスケット兵を出し続けても余裕なバケモノになってしまうため若干ヒロアカの個性寄りに変えています。


2枚目 雄英高校入学と最初の試練

「いやー栗焼! お前すごいな!!」

「ホントびっくりしたよ。まさか壊さずに閉じ込めるとは思わなかった」

「痛い…やめてくれ鉄哲」

「あ、すまねえ!」

 

 菓は試験終了後、怪我人の治療や合格発表通知が届くタイミングについて軽い説明を受けた後にお菓子の家をさっさと回収して家路についた。

 その両隣には試験で知り合った鉄哲と拳藤の二人が菓をはさむ形で並んで歩いていた。

 鉄哲は興奮した様子で菓の肩をバンバンと叩くが、菓に痛いといわれて慌てて手を引っ込める。

 

「というか栗焼。あんたの個性なんだけど、あの大量にいた栗焼やでっかいのもみんなビスケットで作っているの?」

「ん? あぁ、基本的にあの場にいたのは全部俺が作ったんだ」

「あの量をか?」

 

 菓が生み出し、操っていたビスケットの人形たちについて質問する拳藤。それに対しなんでもないかのように話す菓の言葉に、鉄哲もまた、会場を埋め尽くしていた大量のビスケット人形を思い出す。

 

「あぁ。俺は見ての通りフィジカル面はあんまし強くないからよ。ああいうパワーが欲しいときは基本的にはビスケットを鎧のように纏うんだ」

「へえー……まぁ、栗焼ってちっこいも……フガッ!!」

「鉄哲、それを言うな」

 

 栗焼に対し「小さい」と言おうとした鉄哲の口の中に直接大きめのビスケットを生み出す。それによりフガフガと情けない声を漏らす鉄哲。身長に関する話題は彼の地雷のようだ。

 

「ムグムグ……うまっ!」

「そらそうだ。味にも拘っているからな」

「そういえば結構お菓子とか食べているけど糖分とかが個性に必要なの?」

「あぁ、糖分をとるほどビスケット兵はより多く、より強固に生み出せる。量を出しすぎると強度が落ちるが、俺と同じサイズなら100体近く出してもコンクリートくらいの強度はあるぞ」

「コンクリートと同じ硬さのビスケットて……」

 

 強度が落ちてそれなら果たしてあの0ptを閉じ込めた時やパンチを防いだ時のビスケットはどんな硬さなのだろうかと拳藤は思わず考えてしまう。

 互いに個性のことや中学のことを話しながら歩いていくと、10分ほどで雄英高校最寄りの駅についた。

 鉄哲は埼玉、拳藤は千葉に現在住んでいるという話を聞いていたため、ここで二人とはいったんお別れとなる。

 二人とも雄英高校のある東京から比較的近場だが、それでも電車でなくて帰宅することは不可能。

 

「栗焼はたしか徒歩圏内だったか? いいよなー」

「まーな。雄英から近いとこ選んだし」

「高校生で一人暮らしとかよく許してもらえたね」

「ま、ちょっとな」

 

 二人が話すように、菓は一人暮らしだ。都内の小さいながら防犯設備はそれなりにしっかりしているアパートに住んでいる。

 駅の改札口で二人と別れ、菓は一人帰路を歩く。試験自体は筆記実技合わせて午後に回ったがそれでもそれなりに早い時間。実技試験のためのジャージのズボンにラフなシャツと上着を羽織っただけの姿だったが、特に気にもせずに買い物でもして帰ろうと菓は思い、近隣のショッピングモールに足を運んだ。

 

 ◆

 

 雄英高校 会議室

 雄英高校内に複数ある会議室の中でも特に巨大なモニターがあり、すべての教員が入ることができる広々とした会議室にて、入試試験の最終成績の確認及び合格者の選定が行われていた。

 

「今年はまた面白い年になりましたね」

「レスキューポイント0の総合1位、対照的にヴィランポイント0で7位、そして0ptを一手で無力化した総合2位」

「総合1位は後半ほかが鈍っていく中でも常に派手な個性で寄せ付け迎撃を繰り返していた……相当なタフネスによるものだ」

「0ptに立ち向かう、壊す奴の前例がいなかったわけではない。だが、それでも相当少ないのは事実だし、ましてや壊すなど片手で数えられるくらいしかいない……が」

「今年は二人、しかも片や一撃で完全に破壊、もう一人はビルを軽く壊す0ptが崩せない強度の壁に閉じ込めて封殺! 思わずYHEE!! て叫んじまったぜ!」

「個性届の内容を見る限り、総合2位の個性はそう強力なものではない。というよりも、もし幼いころにこれが個性だと言われたら私はヒーローになることを諦めただろうな……」

「個性"ビスケット"。何度見てもこれで合格を勝ち取ったとは信じ難いけど、事実目の前に起きているからね」

「若いって素晴らしいわね……」

「HEY! んなババ臭いこt……ヒッ‼ナンデモナイデス‼」」

 

 雄英高校の教員たちは口々に今年の入試にて特に目立っていた3人について各々が話始める。

 それも仕方ないのだろうが、それでもその様子をみてため息を吐く男が一人いた。彼の名前は相澤消太。プレゼントマイクと同様に雄英高校の教員とプロヒーローを兼ねたヒーロー科ならではの存在だ。相澤はうるさくなり始める会議室を細い目で見つめながら手元の資料に目を落とす。

 

(個性"ビスケット"……。俺が知らねえってことは関係がないはずだが、似ている……)

 

 相澤は菓の個性について、少しだけ引っかかりを感じていた。約9年前、裏社会の奥底に潜んでいたヴィラングループ。

 そのグループは情報力に長けており、決して自分たちの情報を表社会には流れないように工作を繰り返し、時には目撃者全員を殺害するほどの徹底ぶりを見せていた。そのため、そのグループは9年前のオールマイトを筆頭に組まれた極秘の討伐作戦により一人残らず捕らえられたため、不必要に情報を流して混乱させることもないとヒーロー公安委員会が判断し闇に葬られており、プロヒーローでも知る者は限られていた。

 

 相澤はその制圧に長けた個性を買われ作戦に参加していたため、知る者の一人であった。そのため、そのグループが持つ一つの特徴に菓の個性が似ていることが引っ掛かっていた。

 その特徴は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 菓の個性はその特徴によく似ているビスケットという個性。

 

万国(トットランド)のメンバーは全員収容されている。年齢的にもほかのメンツと比べて余りにも若い。……関連はねえはずだ)

 

 グループ名"万国(トットランド)"

 現在タルタロスに収容されている、ヴィラン名"ビッグ・マム"と呼ばれる老婆をトップに据えられたモチやジュース、飴の個性を持った戦闘員に固められた特殊なグループ。

 菓子の個性という一見戦闘に不向きな個性にもかかわらず圧倒的な練度により多くのプロヒーローを追い込んだ者たちを少しだけ思案し、関係はないと結論付ける。

 

(少なくとも、ヒーロー志望としてやってきた限りは仮に関係性があってもヒーロー志望生として見るべきだが、目の届く所に置いておきたい)

 

「……校長」

「ん? どうしたんだい相澤先生」

「この総合2位ですが、できれば私のクラスに編入していただきたい」

「……いいのさ! 君が言うなら彼は君の受け持ちとしようか! ブラドキング先生はいいかい?」

「えぇ、構いません。それならば、私もいくつか受け持ちたい生徒がいるのですがよろしいでしょうか」

「そうだね! では願書と実技のVTRを見ながらクラス分けを考えていこうか!」

 

 今年度の1年ヒーロー科を受持つ二人のヒーローと根津校長の3人で生徒同士の相性などを考えながら、1年生のクラス割を最適なものとするために話し合いを続けていった。

 

 ◆

 

 4月1日AM7:20

 雄英高校入学式当日

 

 菓は自宅から雄英高校へと向かう道を一人のんびりと歩いていた。

 新品だからか少しだけ硬さの残る制服に身を包み、朝ご飯代わりのポッキーを口に咥えながらこれから行われる雄英高校入学式に参加するべく向かっている。

 

 近所のため見慣れた景色の道中を少し緊張交じりに歩きながら先日の合格発表通知を思い出す。

 

「いやーオールマイトが教師とか最高かよ」

 

 くくくと忍び笑いを漏らしながらこれからの高校生活に思いをはせる。

 そうしていると菓は後ろから肩を叩かれると同時に声をかけられたため思わずといった風に振り返る。

 

「ヨッ! 栗焼!」

「おはよ」

「おー拳藤と鉄哲か。オールマイトも言っていたが受かってよかったな」

 

 実技試験で知り合った二人と久方ぶりの再会に菓も思わず声が弾む。

 合格発表のやたらとハイテクな機械により投影されたオールマイトが、実技試験でともに行動した二人も同じく合格したと告げたため学校につけばすぐにでも会えるだろうとは思っていたがまさか通学路で会うとは思っていなかった。

 

「まーな! てかお前のがスゲーだろ! なんたって実技総合2位だろ?」

「あぁ、レスキューポイントなんてものがあるとは思ってなかったが、最後にロボ壊せなかった分以上に稼げてよかったよ」

「それ言ったらあたしたちもだよ。あんたのおかげで最後に加点してもらったらしいし」

 

 菓は最後の瞬間、ロボ破壊によるポイント稼ぎを放棄して0ptの無力化に専念していたため中盤まではいい感じに稼げていたがそこからptがストップしてしまっていた。

 そのため、ヴィランpt自体は全体でみても中の上くらいだったが、レスキューポイントを大量に稼げたため総合的には2位の座に輝いた。

 

「そうだ、二人はクラスどうなった? 俺は1-Aだったが」

「あ、俺はB組だったぞ」

「私もB組」

「俺だけ違うのか……」

 

 がっくりと大げさに肩を落とす菓に二人は笑い声を上げる。そして、同じ学校だからすぐに会えると励まされながらワイワイと雑談をしていると、すぐに雄英高校の校門が見えてきた。

 持参した内履きに履き替えて教室に向かい、各々のクラスへと向かうために地図を眺めながら1年生の教室へ向かう。教室自体は玄関からそう離れていないためすぐに目的の入り口が見えた。

 

「校門の時もそうだけど入り口でっか……」

「バリアフリーてやつ?」

「まぁ異形系にはありがたいか……じゃ、俺はここで」

「あぁ、また入学式後か? またな」

「またね」

 

 二人と別れて菓は巨大な扉に手をかけて力を込める。

 若干強めに力を込めたのだが、見た目のわりに案外軽く、想像よりもすんなり開けることができた。

 

「おぉ、思ったよりも軽いな」

「お! お前もA組か!?」

 

 ガラガラと少し力を強めに込めていたせいで若干音を立てて開く扉に気が付いたのか、中にいた赤い髪の毛をした少年が近づいてくる。

 

「俺は切島鋭児郎! よろしくな!」

「栗焼菓だ。この様子なら同じクラスになるようだな。よろしく」

「おう! とりあえず入れ! 黒板に席順が貼ってあるぜ!」

「そうか、教えてくれてありがとな」

 

 教室の中には20個の席が配置されているが、事前配布の資料には席順は書いていなかったため教えてもらった情報は非常にありがたい。

 菓は切島に礼を言うと「気にすんな!」と暑苦しく返事をする。そんな彼についさっき別れたばかりの似た人間を思い出して少しだけ頬が緩むのを感じた。

 

 次々にやってくるクラスメートたちに声をかける切島と別れ、黒板に貼ってあるプリントを確認しようと思い近づく。そのプリントには席順が記載しており、菓の出席番号は8番であった。廊下側から2番目の列の前から3番目。ちょうど目の前の席が先ほど挨拶をした切島と判明し、似たような男とすでに友人関係になっていたため「仲良くやれそうだな」と心の中で小さく安堵の息を吐く。それと同時に左右の席を確認すると菓から見て右側……廊下側の隣の席にあたる場所の生徒の名前が、「飯田」と書いてあることに気が付いた。

 

 試験前の説明会の時に軽く話した眼鏡の少年だろうかと思いながら、黒板の前から生徒たちがつく席の方へ振り向く。ちょうど教壇の位置にいたためクラス全体を見渡すことができたため、すぐに目的の人物を見つける。

 

「机から脚を下したまえ! 机の製作者や歴代の先輩方に申し訳ないと思わないのか!?」

「思わねーよ! てめーどこ中だよ端役が!」

「うわぁ初日から飛ばしてんな」

 

 ……目的の人物、飯田天哉はどうやら髪をツンツンに逆立てた一見ヤンキーにしか見えない生徒と口論をしていた。

 さすがにあれには関わりたくないなと思ったのか、菓は自分の席へ向かい入試試験の時も持参していた小柄な体躯には不釣り合いな巨大なリュックサックを机の脇に引っ掛ける。

 後は入学式の時間まで待機するだけのため菓子でも食ってようかなと考え、ごそごそと巨大なリュックサックを探り始めた。

 すると、飯田とは反対側の隣の席に座っていた男子生徒が、真後ろの生徒としていた会話を中断してこちらに話しかけてくる。

 

「よっ、隣ってことはあんたが栗焼か? 俺は瀬呂。んで後ろのが常闇だ」

「あぁ、栗焼で合っている。瀬呂と常闇か、よろしくな」

「うむ」

「よろし……て何取り出してんだ?」

 

 菓の言葉に返事をしようとしたが、それ以上に気になることが出来てしまったため思わず突っ込んでしまう瀬呂。

 

「これか……アップルパイだ。……あむ」

「待機時間だけど初日からずいぶんと自由だな!」

「いるか?」

「貰おう」

「常闇も常闇で受け取るのかよ……」

「……リンゴは好みだ」

「聞いてねえよ! しかも栗焼食うのはええな!!」

 

 しみじみとした風につぶやく常闇に瀬呂は思わずといった具合にツッコミを続ける様を見て菓は、次の袋から取り出したレーズンサンドを咥えながらケラケラと笑う。初日にして判明した事実はどうやら隣の席の彼は生粋のツッコミ気質のようだ。

 

 クラスメートと交流を深めていると、突然入り口の近くにいる生徒たち……入試試験の受付付近で見かけた緑色の髪をした少年とショートボブの少女、そして金髪ヤンキーとの話合いを終えたらしい飯田の3人の足元になんか黄色い芋虫がいた。

 

「何あれ……」

「いや知らねえよ」

 

『ここは……ヒーロー科だぞ』

 

 ズゴッといった音が聞こえてくるほどに勢いよくゼリー飲料を吸い込んだ黄色い芋虫(寝袋)の中にいる男性はのそのそと教室の中に入ってくる。

 

「はい、君たちが静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、合理性に欠くね」

(((先生!?)))

 

 彼の発した言葉から、教員ということを察した全員は、先ほどまでの芋虫の正体に衝撃を受ける。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね。早速だが体操服(これ)着てグラウンドに出ろ」

 

 ごそごそと寝袋の中から次々と青い雄英高校指定の体操服を取り出して教壇の上に並べていく。

 伝えることは以上だと言わんばかりに全員分の体操服を並べた相澤はさっさと教室を出て行ってしまった。

 

「……とりあえず、着替えていくか」

「なにがなんだか分からないけどな、行くしかねーか」

 

 菓と切島が先んじて教壇にある体操服を手に取り、着替えようとするが、手に取った段階で二人の動きがぴたりと止まる。

 

「……? どうした二人とも」

 

 それに疑問を抱いた瀬呂が、突然動きを止め、さらには苦い顔をする二人に声をかける。

 それに対し、顔を見合わせた二人は同時に瀬呂に向き直りまったく同じタイミングで口を開く。

 

『これちょっと生温い』

(((うわぁ……)))

 

 初めから幸先が不安な1-Aであった。

 

 ◆

 

「個性把握……テストぉ!?」

 

 一先ず全員が体操服に着替え終えて地図を頼りに何とかグラウンドに到達すると説明する時間ももったいないと早々とこれからやることの要点を話していく相澤。

 入学式やガイダンスは? と聞く女子の言葉も悠長な行事だとバッサリと言い切り、相澤は自由な校風が売り文句だと話す。

 

 中学の頃から行われている8種目の個性禁止の体力テスト。それらをすべて、個性を解禁しやってみろと話す。

 聞くよりもやるほうが早いと、相澤は先ほどの金髪ヤンキーに声をかける。

 

「爆豪、中学の時のソフトボール投げ何mだった?」

「67m」

「じゃあ個性使ってやってみろ。円から出なけりゃ何してもいいぞ。ただし、思いっきりな」

 

「……んじゃまあ」

 

 爆豪は軽く肩の柔軟を行い、円の中に位置取る。

 そして思いっきり振りかぶり、身体能力で出せる限界まで絞り出そうと力を込め、さらに個性の使用を解禁する。

 

 ____球威に爆風を乗せる!! 

 

「死ねぇ!!!」

 ___死ね? 

 

 爆豪の個性、爆破により推進力を増したボールは彼の景気のいい掛け声とともに空の彼方に消えていく。そして相澤の手元のタブレットに彼の記録……705.2mという驚異的な数字が記載されていた。

 

「なんだこれ! すっげーおもしろそう!」

「700mとかまじかよ!」

 

「__面白そう……か」

 

 盛り上がる生徒たちに対し、どこかつまらなそうにした相澤はゆらりと体を揺らし問うた

 

「ヒーローになるための3年間……そんな腹づもりで過ごす気か?」

「___よし、トータル成績最下位のものは見込みなしと判断し、除籍処分としようか」

「ッ!?」

 

 一瞬でわずかに緩んだ空気が重く冷ややかなものに変化する。

 彼らの表情の変化に気が付いたのか気が付いていないのか。相澤は髪をかき上げ、さきほどまで気怠そうにしていた目を大きく見開き、口角をにやりと跳ね上げながら言葉を続ける。

 

「生徒の如何は先生(俺たち)の自由!!」

 

 __ようこそ、これが……

 

 

 

「"雄英高校ヒーロー科"だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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