せっかく女の子に生まれ変わったんだから、僕はただ……お嬢さまを僕好みに育てるついでに愛でて撫で回して甘やかして楽しもうって思っただけなのに!   作:あずももも

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13話 煩悩の芽生えと、過剰な心配と

 

僕がジュリー女神さまからお助けいただいてから数日。

 

……はじめは家族がみーんなおだぶつになって、それなりのショックとお葬式の忙しさ……もちろん異世界式のだけど、でも、商家というからにはわりといろんな人を呼んだり手配したりしなきゃだったんだし……まあ病気をこわがってほっとんど来なかったんだけども……それで、ぐっと疲れが溜まっていたのがひとつ。

 

んで次に、悪の元凶たる黒おっさん(いろいろすっ飛ばしてなんか直接王さまのとこへ送られて牢屋行きらしい。 名誉なことだな、黒おっさん)に捕まって少しで分かった、僕が新おっさん……おっさんだらけだな、僕の敵は……まぁとにかく、中世基準でのロリコンだからつまりは現代基準だとペドに片足両足全身突っ込んでるやっべえやつのとこへぐへへされそうになってるって知ってからのストレスと忙しさとで、本気で食事がのどを通らなかったのがふたつ。

 

んでんで、とどめは……当面のぐへへは回避したけど、買われた先でいずれはショタっ子相手にぐへへをしなきゃされなきゃな立場になるのが確定してほっとして、それでまたもはや食欲なんかどうでもいいってなっていたからのがみっつで――――――体重計はないけど、服のサイズが下着ごと変わる程度には激やせした僕。

 

ただでさえのちんちくりんだったのにな。

 

洗われるとき……お貴族さまってほんとうにメイドさんたちに洗ってもらえるんだな、しかも薄着でいろいろと見えていたから僕的には嬉しい以外の感情は持ち得なかったんだけど……湯船がないのだけが、シャワーに近いのだけがあって、逆じゃないか!って感じで残念で仕方がなかったんだけど、それはともかく……そのたんびにかわいらしいメイドさんたち(推定10代から30代、ジュリーさまのお手伝いさんたち)から、可哀想なものを見る目で、すすり泣きされながら洗われるっていうのが地味に効いた。

 

……そりゃそーだ、いちおうは商人階級ってことでお貴族さまたちのワンランク下程度の暮らしをしていたはずなのに、がりっがりだったんだからなー。

 

しかもみんな僕の事情を知り尽くしているわけで、そりゃ、なぁ………………………………。

 

まぁ、元からちんまくてがりがりだったんだけど、さすがに頬がこけてるって指摘にはびっくらこいた。

 

んでも、体質的に三大欲求がうっすいもんだから……食欲は元から少なくて睡眠欲も3、4時間しか寝られなくてヒマで、性欲に至っては16になっても一向に生える気配がない。

 

まー、生えてたもんがどっか行っちゃったんだから、それに合わせて性欲さんも前世に置きっぱなしにして来ちゃったんだろう。

 

悲しい。

 

空しい。

 

この、薄着でときどきちらちら大切なところが見えていらっしゃるうら若き美人さんたちに全身を洗ってもらっているっていうのに、なーんにも感じない僕が。

 

せいぜいが眼福って程度ってのが。

 

脳だけで興奮しているこの状態が。

 

……………………………………悲しい。

 

ま、仮にそれが下手にあったとして、それが男に向いちゃったりなんかしたら多分僕、自殺してるしな……なくてよかったんだろう。

 

残念ながら、僕には男を好きになる素質が皆無なんだし。

 

と、そんな感じで実に哀れまれながらジュリーお嬢さまのお家に、いや、お屋敷に引き取られて何日かを過ごして、いろいろとお忙しかったらしいジュリーさまがお帰りになって来られて、そっからさらに1週間くらいを過ごして……ひと息をついた頃合いを見計らってから、僕はある申し出をした。

 

 

 

 

「………………………………リラ? おかしなことをおっしゃるのね、貴女。 私の世話をしたい………………………………と?」

「はい」

 

リラさま呼びは止めてもらったけど、あいかわらずにお嬢さまーな話し方をされるジュリー天使さま。

 

いずれは、もっとくだけた感じで接してもらいたいところだ。

 

それはそれとして、お世話をしたいっていうのはもちろん当然の感情……だったんだけど、どうやらお嬢さまにはピンとこないものだったご様子。

 

あのときのヴァルキュリア的な出で立ちから一転して、ふわっとしたドレスっていう、ラフだからこそ素材の美しさが際立つ……主に胸部と臀部が……格好をしていらっしゃるジュリーさまは、こてんとああちきしょうかわいすぎるあのときとのギャップがああ……………………………………。

 

………………………………………………………………。

 

いやいやそうじゃない、今はたたみかけねば。

 

じりじりと、それとなーくジュリーさまに近づく。

 

下から上目づかいで……すがりついてくる小動物のように。

 

ジュリーさまの後ろの大きな鏡に映るは、ちょっとだけ顔色がよくなった感じの僕がいる。

 

……ジュリーさまのお下がりを着せられて、いや、ごほうびなんだけども、だから服からはジュリーお嬢さま(幼)の香りのするもので、ついでにいえばパンツもシャツも、もううへへなわけで。

 

おっと、煩悩が。

 

性欲さん、ついに目覚めたかな?

 

けど、肝心のソレがないもんだから、よう分からん。

 

………………………………………………………………。

 

と、そうじゃない。

 

「………………………………その気持ちは嬉しいですわ。 けれど、貴女を助けたのだって元はといえば、私がお父様から頂いたお仕事の結果なのだから、……偶々、偶然なのです。 ですから、それならお父様に」

「ちがいます。 僕だ、ただ、したいんです。 ジュリーさまのお世話を」

 

「だからジュリー、でいいのですわ、私が貴女をリラと呼ぶようにしたように。 ……それに貴女は、ここにいて私たちと話をしてくれるだけで」

「したいんです、お世話を。 お世話、お世話をっ」

 

朝から晩まで、おはようからおやすみまで。

 

お着替えからおふろも。

 

おふろも。

 

うへ、うへへへへへへへへへ。

 

「………………………………たしか貴女は商家の娘、でしたわよね。 しかもご自分でもいくつかの取引をされていたとか」

「です。 なので、ひととおりのお貴族さま方に対する作法も学びました」

 

「……………………え、ええと、話し方もしっかりしているのだし、どうしてもというのなら強くは反対しませんが」

「ほんとですか」

 

ちょっと照れ照れしていらっしゃるジュリーさまを見て、内心悶えつつたたみかけた僕。

 

僕だっていちおうは「そこそこ」の美少女……背が低いから「美幼女」的な扱いのほうが大きいけど……として活動してきたんだ。

 

年上の女の人(とヤロウども)にクリティカルヒットさせる感じのこびこびはマスターしている。

 

そしてそれがジュリーお嬢さまに効いていらっしゃる。

 

不自然じゃない程度にMAXでお送りしたからな。

 

これは行けるか?

 

………………………………と、思っていたら。

 

「……けれど、私は思います。 そういうのはもっと、……そうですね、もう何年か過ごしてから決めてもいいのではないのかと」

「ほえ? ……いえ、それが僕のしたいことで」

 

「だって、貴女はまだまだ幼い身でしょう? こどもは遊ぶものだもの。 うちに来てくださっているメイドの方たちだって、身寄りがないなどの事情からいらっしゃっている方でない限り、貴女よりもずっと年上なのだし。 それに、貴女には休息が必要なのだから」

「………………………………………………………………???」

 

ぎゅ、っと僕の手を包み込んでくださるジュリーさまからよく分からんことを言われ、なおさらにぼけーっとしているのを見て、さらに優しい声になるジュリー天使さま。

 

あ、至近距離は駄目だ。

 

長くは持たない。

 

僕が。

 

死んでしまう。

 

嬉しくて。

 

嬉死というやつで。

 

あ、だから天使さまなのか。

 

その先の女神さまなのか。

 

やはり僕の直感は正しかったんだ。

 

「……そ・れ・にっ。 私のことは、どうかジュリー、それでも駄目ならお姉さまと呼んでほしいと、なんども言いましたのに、もうっ」

「だって」

 

いや、ガワも中身も美しいお方に対してそれは失礼だし。

 

「………………………………貴女は。 リラ、貴女はね? もう、身寄りのない、ひとりぼっちではなくなったのですよ? 私たちの気持ちの上でも、……お父様とお母様からも、使用人の方たちからだって聞いていますわ、ぜひにと。 それに、法的にも……王が認めてくださったの、今回の件の被害者の方たちには、可能な限りにしあわせになるよう努めるようにと。 だから、貴女は正真正銘、私たちの家族なのですわ」

「家族? 王さま? ………………………………へ???」

 

なかなか掴めないでいる僕と、ぼけーっとした顔をしていたはずの僕を見つめているうちに、なんだか真剣そうなお顔をされてお付きの方にぼそぼそとお話しになっているジュリーさま。

 

「……やはりこれは」

「はい、お嬢さま。 死ぬほどの思いをして、諦めきった人間というものは……概して魂を損なうと。 ましてやリラさまはこれほどまでに小さい御体に、あれだけの悲劇を背負われたのです」

 

「………………………………本当に、悲しいことね。 私たちがなんとか癒してあげませんと」

「えぇ、私たち一同も……みな、同じ気持ちです、お嬢さま………………………………!!」

 

後半から盛り上がって来ていて……話の内容から、だんだんと僕が予想以上にかわいそうな扱いになっているのを知りつつ、だけどひとつだけ、もやっとすることがある。

 

………………………………それにしてもこの人たち、僕のこと、こども扱いしすぎじゃない?

 

ちっこいのは事実だからそれについてはしょうがないけどさ。

 

でも、いや、そもそも………………………………ずっと不思議だったんだ。

 

最初のうちは、まだいい。

 

ジュリーさま自らが発見して解決へと導いた大それた犯罪と、その被害者の……たぶん僕に言わないだけで、もっとひどい目に遭った人もいっぱいいるんだろうけどなぁ……いちおうは「いちばんにかわいそうな子」で。

 

だからこそ、ほぼ他人のはずの、しかも身分違いなのにジュリーさまの……公爵さまのお家に養子として引き取られたわけだけども。

 

だけど、平民なのに。

 

身分っていうか、この時代、人の扱いのランクすらも違う木っ端なのに。

 

ふつーは絶対にあり得ないことなのに。

 

………………………………………………………………………………………………。

 

………………………………ま、まぁ。

 

こんなのは聞いたことはないけど……でも、王さまがいいよ?って言ったんだったらいいんだろう。

 

中世っていうのはそーゆーもんだしな、たぶん。

 

でも、助けられてからちょっと経って、ほっとひと息ついて、んじゃ恩返しにでも行きましょうかっていろいろ聞いてみたけど………………………………ぜーんぶ、保留。

 

反対じゃない、首を振られるわけじゃない、けど、保留。

 

女神ジュリーさまどころか、なにかすることないですかーって言うたびに僕を細い目で見てくる執事さんとか、土を触りたいからって遊びに行ったらぐるりと1周つきあってくれた庭師さんとかまで。

 

なぜに?

 

どして?

 

だから僕は、せめて……したっぱのメイドとしてでもいいからお仕事をして、助けてもらった借り、いや、恩っていうものを、少しずつでいいから返していきたいだけなのに。

 

だけど、そう言えば言うほどに、なにかと理由をつけられてジュリーさまのお母さまや親戚の人、方とかとのおはなしに付き合ってほしいだとか、もっと食えだとか、もっと休めだとか、もっと食えだとか、もっとふりふりろりろりしろとか。

 

そんな感じですべてを与えられ続けているもんだから、このままだとほんっとになんにもさせてもらえないままな可能性が、大。

 

お貴族さまって、もっとこう……おほほな感じでどろっどろしてるのかって思ってたけど、使用人の人に至るまで……もう死んじゃった家族や家の人たちとおんなじくらいにいい人だしな、現代基準でも。

 

愛情っていうこそばゆいものを、与えられ続けている。

 

………………………………………………………………むずがゆい。

 

僕は、こういうのは苦手だ。

 

たぶん、前世から、ずっと。

 

だから、だからせめて………………………………なんとなく、まだ確信には至っていないけれど、でも。

 

僕が気がついた、気がついちゃったジュリーさまの秘密っていうものについて、なんとかして差し上げたいって思っているのに。

 

いったい、なぜ。

 

僕はただ、早くジュリーさまのおはようからおやすみまでをお世話したいだけなのに………………。

 




ヒント:リラちゃんは元男の子・現女の子な異世界転生者というもの。 なので、元々の性格もありますが……リラちゃん自身を客観視できていないのです。 いろいろと気がつけていないというのと、煩悩にひたむきすぎるのです。
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