また、Prologueではまふゆの出番はほぼありません。
ご了承ください。
Prologue
机に向かってどれくらいの時間がたっただろう。
ふと視線を壁掛けの時計に向けると4時間経過していることに気づき、俺はシャーペンを転がすように机に置く。
結果は良好といえよう。
ふと視線を愛用している電卓に向ける。
この道を選んで早数年。愛用している電卓は高校時代購入したもので、汚れや色落ちが目立つもまだまだ現役といったところだろうか。
「......腹減ったな」
そろそろ
俺は重い腰を上げ、朝食で使用した皿を洗いにキッチンへ向かう。
───俺は親に
俺の親は文字通りエリートだ。
父は医者で母は元国家公務員。結婚と同時に公務員をやめたらしいが、俺と
自分に自信があり、自分たちが選んだ道を息子娘に引き継がせて不自由ない暮らしをさせたい───なんて夢を幼いころから耳が痛くなるほど語られ続けてきた。俺自身当時は何も疑問に思わず、親の言うことに従ってエリートが集う塾に通い、それに飽き足らず家庭教師を雇い、部活どころか委員会、実行委員には一切所属させない徹底さ。学校が終わったら塾に行って、帰宅してすぐに家庭教師。夕食が終わったら風呂に入って勉強勉強......。
おかげで友人はおろか、クラスで気軽に話せるような人もいなかった。
俺の将来のため......それは自分の価値観を押し付け、確実なものにするために利用されていることに気が付いたのは高校受験が近づいてきたころだった。
クラスのみんながどこの高校に行くのか話し合っている中、俺はある高校に興味を抱いていた。それは親が『ここに行きなさい』と言っていた都内の進学校ではなく、レベルが幾分も下の商業高校。なんとなく、会計とか簿記とかそういうものに興味を持ってしまった。
それを親に相談したのが運の尽き。『そんな将来性のない高校に行って何の意味があるの』だとか、『今までのお前の努力が無駄になる』だとかそういわれる始末。
俺のやりたいことが全否定されてしまい、親の言うことや命令が無意味に感じ、俺はそのまま家を出た。以降親とは一切連絡を取っていない。
高校はそのまま興味のある商業高校へ進学。俺を引き取ってくれた親戚の家から近いというのもあり、養子としてそこから通学している。
中学までと違い、毎日が充実していた。友人と一緒にゲーセンに行ったり、学祭の実行委員をやってみたり、資格の勉強を友人とやったり......あの時と比べると本当に自分の毎日に花があった。
高校を卒業し、大学は国立の会計や経営に強い大学に進学し、そのまま大学院に行って現在に至る。
まだまだ漠然とした未来はないけれど、ただ今やってる勉強が楽しくて仕方がなかった。
───それと同時に
それはあの家に一人、一番大事な人を置き去りにしてしまったこと。
彼女は今でもあの家で、あの両親のもとで生活をしている。
彼女は昔から俺に対して人懐っこいところがあった。『お兄ちゃん、お兄ちゃん』ってどこにいてもついてくるような妹で、ついてくると母に『お兄ちゃんの邪魔はしちゃだめよ』なんて止められては駄々をこねるような妹だった。
俺の、彼女との淡い思い出はそれくらい。
今、妹は高校2年生。どうなっているかというと......
丁度、家のチャイムがピンポンと鳴る。安い賃貸アパートだから音もそれに伴ったショボい音。
食器洗いを済ませた俺はタオルで手をふき、玄関へ向かう。
玄関を開けた先にいるのは
「......お兄ちゃん、今日も来たよ。夕飯の準備しよ?」
───