今年もよろしくお願いします。
新年一発目。
ごめんなさいクリスマス回の続編ではありません。
続編に関しては後日必ず投稿しますのでもうしばらくお待ちください。
「あ、まふゆこっち」
金木犀の香りが漂う季節。
私はニーゴメンバーの一人、絵名に活動内容の会議という
「まったく、遅れるってわかってるのに顔色一つ変えないでやって来るとかムカつくわね」
「わかってるから急いできたよ」
「それも”そういうもんでしょ”、って言うんでしょ。なんでこうみんなはこんなヤツと仲良くできるんだか」
「じゃあ誘うの私じゃなくて瑞希や奏にそうればいい話でしょ」
今日ここにやって来たのは他でもない絵名に誘われたからだ。
彼女は私に苦手意識を持っていることは客観的に見ても知っている。ううん、嫌いとか対抗心とかそういう極端な感情のほうが意味合いが強いかもしれない。
奏が私の為に曲を作るから、自分自身を見つけるまではここにいようと決めた。
瑞希も全力でサポートするって言っていた。絵名も才能があるんだから、無い人の分までやり続けろって怒声ながらも言っていた。お兄ちゃんは『それでも』を言い続けるって言っていた。
「何飲む?」
「絵名の奢り?」
「そんなわけないでしょ。今月ピンチだからむしろアンタが偶にはおごるって言ってみなさいよ」
「じゃあ今日は私が出すよ」
「だーもう!!そうだけどそうじゃないって!!いいわよここは割り勘で」
呆れた物言いでメニュー表を乱雑に見せてくる。
私はカバンを隣に置いて、横目でメニューを見ながら、
「じゃあ、絵名のオススメでお願い」
なんて言ってみた。
「はぁ!?私!?」
「絵名と仲良くしたいし~」
「なっ!!ぜ、絶対そんなこと思ってないでしょ!!」
「......さぁ」
「あ、あのねぇ~」
大きなため息とともにすっと伸びる彼女の白い手。
ふいにぐいっと顔を絵名のほうにむけられ、私の眼前には絵名の整った顔があった。
「なに?」
「アンタ、なんかいいことあった?」
「なんでそう思うの?」
「楽しそう」
───楽しそう
何故絵名は今日の私を見て楽しそうと評するのかわからなかった。
いつも通りの私だし、さっきの冗談も絵名相手にはよくする冗談の範疇だと思う。
「なんかあの日まで死んだ魚のような眼をしてたのに、あぁごめん嘘。今でもそんな顔してる」
「ただ貶したいだけ?」
「違うわよ。そうじゃなくてなんでそんなにうっきうきな声してるのか気になってるだけ」
「私そんな声してたかな」
そんな声はしてなかったと思う。
自分でもよくわかるくらい低くて暗い声だったはず。
「ふ~ん。まぁいいわ。とりあえず注文するね。飲み物はメロンソーダでいい?拒否権ないけど」
「なんでもいいよ」
ようやく絵名から解放される
呼び出しボタンを押してすぐに店員さんがやってきて、メロンソーダの他にフライドポテトとナゲットを勝手に注文する絵名。
「そんなに注文して大丈夫なの?」
「いいわよ別に。今日は親もいないし
「...絵名はその弟と仲いいの?」
「はぁ?なんでアイツと仲良くしなきゃいけないのよ。まふゆと一緒にしないで」
「...絵名ってツン───」
「やめて!ツンデレじゃないし、仮にツンデレだとしてもアイツにだけはそんな姿見せないわよ」
それは裏を返せば自分がツンデレだと認めていることにならないのかな。
本人がそう言うことだし、特にこれ以上言わなかった。
「はぁー、私弟じゃなくて兄が欲しかったんだよね」
「...」
「そこは”なんで?”って返すところでしょ」
「じゃあ、なんで兄が欲しいの?」
「それはもちろん扱き使うためよ!こーんな可愛い妹がいたら兄ははいはいってなんでもしてくれるに決まってるんだから!まふゆの
「......」
つまるところ絵名にとって私のお兄ちゃんは理想の兄といったところだろうか。
私のお兄ちゃんは世間一般でいう優しくて妹想いの兄なのだろう。温かくて、頭の撫で方が上手で、居心地の良い。私のわからないことを察してくれるあたりもお兄ちゃんの優しさなのかもしれない。
それは、私がお兄ちゃんの妹だから?
私が妹だからお兄ちゃんはお兄ちゃんでいてくれるの?
じゃあ...私じゃなくて絵名が妹だったら?
「......」
「...まふゆ?」
なんだか不意に
ずっと付きまとう
「...どうしたのよ」
「わかん、ない」
「またそれ?何がわかんないのよ」
「絵名はモヤモヤした気持ち悪い感覚になったことある?」
「なによそれ。もっとわかりやすく説明してくれる?」
そう言われても私自身わからないから説明しようがなかった。
そうしているうちに店員さんが注文したメニューを持ってきた。すぐさま絵名は自分のオレンジジュースを飲みながら視線だけは私から外さずに私の説明を待っている。
「雲がかかって先の見えない感じ」
「わからないって。嫌とか好きだとか、そういう明白なものもわからないわけ?アンタ」
「...そうね、わからない。なんでこうわからないことだらけなのかも、わからない」
「はぁ...。じゃあなんでそう気持ち悪い感覚になったのか状況説明してみてよ」
どうしてそう思ったのか。
絵名が、理想の兄が私のお兄ちゃんみたいな人だって言って、じゃあ私じゃなくて絵名が本当に妹だったらお兄ちゃんがお兄ちゃんではなくなるのだろうか、とか妹でなくなったら私はどうなんるんだろう...。
そう考えたら気持ち悪くなったんだけど......。
果たしてこれを説明して絵名が理解できるか。
「...私がお兄ちゃんの妹でなくなったらどうなるんだろうって考えた」
「はい?」
「絵名がさっき、理想の兄が私のお兄ちゃんだって言ってたからそう考えた」
「......あー」
それだけでわかってくれたようで説明する面倒が省けた。
それと同時にピンと来たのか、絵名は人をいじるかのような気持ちの悪い笑みを浮かべている。
「なんだ、そういうことね」
「...なんでそんなに楽しそうなの?」
「いやねぇー。お兄ちゃんっ子過ぎるまふゆが───いや別に何でもないんだけど、面白くて」
「絵名は人が苦しんでいる姿を見て可愛いとか楽しいって思う人なの?」
「そんなわけないでしょ!?人聞きの悪いこと言わないでよ!」
「......今可愛いって言いかけなかった?」
変に必死に抗議するから余計に怪しいけど、特に言及するつもりもないので黙っておく。
氷で冷え切ったメロンソーダをストローで飲む。爽やかな着色料混じりのメロンの香りと強めの炭酸がもやっとした感情を流してくれた気がした。
「それの意味は私からは言えないわ」
「どうして?それもいじり?」
「ち!が!い!ま!すぅ!別にアンタのためじゃないけどそれはアンタが悩んで自分で答えを見つけなきゃいけない感情だって事!」
「...やっぱ絵名ってツン───」
「それ以上言ったらここ奢ってもらうわよ」
「......」
「まぁ落ち着かせる方法くらいはわかるわよ」
ポテトを2,3個口に入れながら絵名の話を聞く。
「...今からお兄さんとこいって抱きしめてもらいなさい」
「それで落ち着くの?」
「私はアンタじゃないから保証はできないわ。でも、まぁおさまるんじゃないかしら」
「......」
お兄ちゃんに抱きしめてもらう。
いつものスキンシップをするだけでおさまるなら、何度だってしてもらうかもしれない。
ちょっと想像してしまう。
「......なによ」
「?なにが」
「アンタも、そんな表情できるんじゃない」
何故か絵名は呆れたような、嬉しそうな表情で私を見ていた。
この時、私はどんな表情をしていたのだろうか......。
~その後~
「っす。疲れた.....」
「ん??あぁおかえり」
「は??なんでお前こんな遅くまでリビングいんだよ」
「いいじゃん別に、気まぐれよ、気まぐれ」
夕飯とお風呂を済ませていつもなら自室に篭もる私だけど、今日まふゆもとあんな話をしたせいか、なんとなく落ち着きがなかった。
SNSを覗きながらソファで横になっていた時に丁度
「ご飯はー?」
「だからいらねーって言っただろ」
「そー」
「なんだよ絵名。なんか今日変だぞ」
「んー」
自覚あるので言うな。
なんて事はコイツの前では絶対言わない。
「(はぁ...今日は変なの)」
何故行動に起こしたのかわからない。私も人に言えた立場ではなかったな。
冷蔵庫を漁る彰人にゆっくり近づいている自分に驚いてしまう。
「んー...ん?うお!?な、なんだよビックリするだろーが」
「しっ!動かないで」
「はぁ?」
私の気配を察知した
驚きのあまり口をパクパク動かして、まるで餌を求める鯉のよう。
「んー...」
「なんだよ、いきなり」
「なんでも。相変わらずだなーって」
「はぁ!?お前マジで今日どうしたんだよ」
そこに写るのはいつもの可愛い私の顔。何も変わらない頬の色とか特に変化はないいつもの可愛い東雲絵名。
「やっぱアンタはアンタだね」
「はぁ!?おいそれどういう意味だ!バカにしてんのか?」
やっぱり
あんな.....