ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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談合。ついでにいとこ。

 バトルジャンキーなばあちゃんとの戦闘が終わったあと。

 ひとごこちついたと思ったのだが……。

 わたしは再び、ばあちゃんと対峙している。なぜに?

 

 ばあちゃんが正眼にかまえた刀は、ほとんど点のようにしか見えない。しかも、切っ先がスマホのバイブのように奇妙に震え、どこにかかっていくかわからないようになっている。七星一刀流の基本形だ。

 

 対するわたしは、コルコバードのキリスト像のように、両手を軽く広げており、およそ戦闘の型ではない。まあ、わたしも古武術を習っているから、いつもなら正中線という人体の急所がまともに見えないように、相手側から見たらやや斜めに立つよう心掛けるのだが、いまは事情が異なる。

 

 またかと思わなくもないが、さっき欲求不満だと言ってたからな。

 エロ家元の欲求不満ボディとか最高かよ。

 

 わたしはバトルジャンキーじゃないのでよくわからんが、一度も刃が当たらなかったことがいたく剣士としてのプライドを傷つけてしまったらしい。いや、普通に孫娘を斬ろうとするとか、そっちのほうがよっぽど鬼畜なんですが……。

 

 とはいえ、わたしのような例外を除き、人生というのは一回ぽっきりだし、

 

『あと味のよくないものを残す』とか。

 

『人生に悔いを残さない』だとか……。

 

 そういう考え方もわからなくはない。

 

 だから、あえてのノーガード戦法である。

 

「当ててみてください」

 

 ばあちゃんは、その言葉を聞いて、刀の震えをピタリと止めた。

 色白の肌がさらに白く、ロウのようになっている。

 あちゃー、これ怒らしちゃったかな。

 

 古式ゆかしい煽りのシチュエーションなんだけどな。その昔、ドラゴンボールの主人公悟空が、宇宙の地上げ屋フリーザと対峙したときに言い放ったセリフが『当ててみろよ』だった。

 

 そのとき、悟空は覚醒してスーパーサイヤ人になっており、フリーザはいくつもの攻撃を繰り返すが、これをことごとく回避。苛立ったフリーザに、悟空が不敵に嗤い煽ったのが上記のセリフである。

 

 わたし、当時アホだったんで、悟空はフリーザに対して、やーいばーかばーかノロマ、当てることもできないでやんのって煽ってるとばかり思ってて、その後にバシュっとレーザーみたいなのが悟空の首あたりに当たったのを見て、悟空ダメじゃん当たってるじゃんと盛大に勘違いしたことを覚えている。

 

 いまになってわかるが、『おまえの技なんか当たっても痛くも痒くもない』という意味で捉えるべきだったんですね。どっちにしろ煽り成分高めだけど解釈ミスってたわ。いやはやお恥ずかしい限り。

 

 そんなわけで、ばあちゃんも同じような解釈違い犯してはないよな?

 

「あの、当ててみてくださいという言葉の意味はですね、おばあ様が当てることができないのを揶揄しているのではなく、わたしが仮に攻撃を受けても、おそらくノーダメなので、遠慮なく攻撃してくださいどうぞという意味です」

 

「大変丁寧な説明をどうもありがとう。母親の教育のたまものかしら」

 

 ばあちゃんは、背後にいるママンをにらんだ。

 ママンは蛇ににらまれた蛙のように、おとなしくなっている。

 

「どっちかというと血筋だと思うわ」

 

 あれ、さっきより威圧感増し増しになってない? まあいいか。

 

 さて、時間いっぱいになりました。

 ばあちゃんは先ほどと同じように変なテンポの歩き方でこちらに迫る。ゆっくりめな動作から突然、激流のような素早さにテンポアップする。

 

 人間の脳は、人の行動を予測して埋めてるんだと。つまり、点と点を予測して繋いでるらしい。その点と点をズラしてしまうことで、瞬を得る。

 

 本当のところはスピード自体が人間を越えてるわけじゃないんだ。でも、人間の反射的ともいえる予測を利用しているから、冷静に見ようとしても、どうしてもひっかかってしまう。

 

 ただ、この場合は攻撃を受ける側だからな。

 わたしはそのまま待つだけ。ばあちゃんの歩法は、攻撃を待っているわたしからすれば、ナンセンスとしか思えなかったが、その体の傾きが次の動作につながっていたらしい。

 

 体中をひねり、刺突に特化した技を繰り出そうとしているのが見えた。

 

――牙突。

 

 という技を知っているだろうか。

 るろうに剣心というジャンプの漫画なんだが、何人もの剣客たちと戦うバトル系だ。

 その中の登場人物のひとりが使う技が牙突。

 

 ビリヤードのときのように、刀を片方の手で持ち、もう片方の手は刀に添えるだけ。

 そのまま、押し出すようにして相手を刺し貫く技である。

 

 この牙突なんだけどさ、誰でもできそうだからめちゃめちゃ流行ったんだよな。もちろん、うちの流派のれっきとした技なんで、牙突とは違うんだろうけどさ。

 

 この技――めんどうなんで、牙突カッコカリと呼ぶが、突くという動作は初速がもっとも乗る形だ。つまり、スピード重視。ばあちゃん、ここにおいてもわたしに避けられまくってたのが、腹に据えかねていたらしい。

 

 ドンッ!

 

 擬音にすれば、大砲が打ち出されるようなそんな速さで、剣先がわたしの胸のあたりに迫る。

 

 ばあちゃんの攻撃は、第一防衛ラインである硬殻呪文(スカラ)を確実に刺し貫いていた。

 

 スカラとは防御膜のようなもので、バリアのように攻撃を通しにくくなる。わたしの馬鹿みたいな魔法力でスカラを使えば、ほとんどの場合、攻撃を通さないはずだ。もっとも、スカラはスカラでしかなく、攻撃を減殺はするものの絶対に通さないってわけじゃないから気をつけなければならないけどな。

 

 そんな、カッチカチに硬いイオちゃんを、ばあちゃんの攻撃は突破していたんだ。

 すげえ攻撃力。

 

 そして、ここから第二層。

 

物理反射呪文(アタカンタ)

 

 アタカンタは、物理的な攻撃を反射する呪文だ。アタックカンタと呼ばれることもあるけど、魔法反射がマホカンタと呼ばれているから、それにあわせたほうが正当だろう。

 

 スカラで減殺された攻撃力。ダメージに換算したら1くらいの威力が、ばあちゃんに跳ね返った。

 

 バシっ。

 

 そんなような効果音とともに、ばあちゃんの手が弾き飛ばされ、刀があらぬ方向に吹っ飛んでいった。

 

 スカラとアタカンタは逆に張ってたほうが攻性防御としてはいいだろうけど、ばあちゃんが相手だからな。反射ダメージが大きくなると大ごとになりそうだし。これでよかったと思う。

 

「イオ。あなた避けようと思えば避けられましたね」

 

「可能といえば可能でしたが」

 

 余計なことを考える暇程度はあったと思う。

 

「それで、刺し貫くことすらできませんでしたか」

 

「まあ、防御力が255を超えていたら、巨人の攻撃すらダメージ1ですしね」

 

「ふむ」と。

 

 ばあちゃんは少し考えこみ、それから刀を拾った。

 

「あなたの防御がそれなりであることはわかりました。しかし、それらの魔法はあなたが寝ているときも効力は発揮されるのですか?」

 

「魔法力を大量にこめておけば可能ですね」

 

 メダパニとかは怖いから、ほんのちょっとしかこめてないけどな。

 だいたい一日で切れるように調整している。おクスリは用法用量を守って正しくね。

 

「穴はないのですね?」

 

 穴、か。

 

 ばあちゃんの口から、穴とか聞くと、なんというか……その……下品なんですが。

 

 エロ神様として崇め奉りたい気分になる。

 

 しかし、魔法にも穴はあるんだよな。できる限りの方策は立てているつもりだけど、例えば火炎放射とか電撃とか、水攻めとか、毒殺とか、様々な攻撃を組み合わせればわたしを打倒することも可能かもしれない。

 

「おばあ様の攻撃はスカラを貫いてますから、アタカンタを無効化できれば必殺も可能かもしれません」

 

「問題がなければ、これからはずっとその障壁のようなものを張っていなさい」

 

「わかりました」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 畳に正座していておとなしく座っていると、正直すごく暇なんだよな。

 スカラのおかげか足がしびれることはないけどさ。

 

 ばあちゃんと、ママンの話し合いを聞きながらわたしは思考を飛ばしている。

 

 実は先ほど試されたのも、剣士としてのプライドというよりも、もしかすっと孫娘が心配な普通のばあちゃんとしての気持ちだったのかな。

 

 よくよく考えれば、わたしは魔女暗殺ルートも十分にありえるわけで……。

 

 つまり、記者会見のときはもとより、いつなんどき命を狙われてもおかしくはない。

 

 警護とかがついたりするのかね?

 

 まあその程度、わたしの将来の夢であるアイドルの監視ほどではないと思ってるし、つくんならついてもいいけどさ。ルーラで移動する高機動型魔法少女についてこれんのかって思わんくもないけどな。何人かを行く先々に配置してたりすんのかな。

 

 で、『イオちゃん無敵なんでべつに警護とか要らんけど』という旨のことを言ったら、『おまえはそこで座ってろ』という旨のことを返されました。げせぬ。

 

 しかし、意外なことに話題の中心は、警備体制のことではなく、流言飛語の類をどうコントロールするかだった。警備体制は、おそらく自衛隊は確実に、場合によっては米軍も出張ってくる可能性があるらしい。これは既定路線なんでべつに頭を使うことではない。

 

 問題は、わたしに対する評価だ。

 

 わたしを聖女だとしてかつぎあげる勢力もあれば、逆に世界を脅かす大魔王として排除を唱える連中もいるらしい。人の身には過ぎたる力、存在すること自体が罪とかそんな感じね。

 

 アンチってどこにでも湧くからなぁ。しかも、アンチどうしは仲良しなんだよな。好きなものを語り合うより嫌いな物をいっしょになって攻撃するほうが楽しいって感じか。革命軍とかも同じような原理なのかもわからん。

 

 正直、魔法をなんも考えずにぶっぱしたいだけなんで、勝手に嫌いになる連中も勝手に崇める連中も、どうでもいいって感じだわ。

 

「戦争になるかもしれない」

 

 ばあちゃんが物騒なこと言うけど、きのこたけのこ程度でも人は争うんだぜ。

 戦争とかしたいやつらにやらせとけばいいじゃん。

 

 イオちゃんはかわいいから正義!

 

 そんなふうに言ったら『おまえはそこで呼吸だけしていろ』という旨の、厳しいお叱りの言葉を受けました。シュン……。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 まだまだ長い時間がかかりそうなんで、ついにわたしは追い出されてしまった。

 

 やっぱアレかな 

 

『もし戦争になったらトップの連中にメダパニでもかけたらいいんじゃね?』

 

 という旨の発言をしたのがよくなかったのかな。

 

 そもそも、たかが10歳の女の子がちょっと魔法を使ったからって戦争まで起こすとか、そいつら最初からメダパニってるんだから、いまさらだろって思ったんだが……。

 

『おめーの席ねぇから!』という旨の発言を返され、無事出禁を喰らった。ナゼだ。

 

 縁側をゆるりと歩く。

 木とかを見る。

 風情がありますねぇ。

 

 ……暇だ。

 

 いや、ほんとそれぐらいしかすることがない。

 わたしにとっては他人の家みたいな感覚だしな。

 テレビとかゲームとかの娯楽があるのかもよくわからない。スマホは持ってるが、他人の家でポチポチするのもちょっと憚られるというか、なんか落ち着かない。

 

 この家には何回か来ているが、親戚とかといっしょに遊ぶという感じではなく、ばあちゃんに挨拶しにくるというのがもっぱらだった。それはママンの立ち位置がよろしくないということも理由のひとつだろう。

 

 ふむ。であればだ。

 

 これは、封印されし仲間(ダンゴムシA)といっしょに遊ぶときが来たのか。

 もう実験するようなこともないけど、ダンゴムシと戯れているとなんか癒されるんだよな。

 

 人間なんかよりも生に必死な姿がかわいい。

 幸福に必死なのが人間なんだろうけど。

 

 そんなふうに所在なく縁側に腰掛けて休憩していたら、

 

「ちゃおー。いとこちゃん。元気してるー?」

 

 と、軽い調子で声をかけられた。

 

 見上げると、片手をあげて挨拶してくるのは、わたしのことを『いとこ』と呼称したとおり、わたしにとっての『いとこ』でもある赤星好美だった。

 

 実際は、本当のいとこじゃない。ばあちゃんの娘はママンひとりだからな。確か、祖母の姉妹の娘の娘みたいな感じだったか、いや、祖母の叔父の娘の娘の娘とかだったか? 正直呼び方もわからんので、なんとなくニュアンス的に近い『いとこ』と呼んでいるのだろう。

 

 好美は、今年で16歳になる女子高生である。

 

 今時の女子高生は案外ちゃらちゃらしていない。好美がそうであるのか、平均的なJKがそうであるのかはわからないが、言動が幼いわりには清楚な感じである。今もセーラー服を着崩すこともなく着ている。胸のサイズは……まあ普通。

 

「好美さん。お久しぶりです」

 

「イオちゃん。他人行儀だよ。ヨシミンって呼んでよ」

 

「ヨシミンさんお久しぶりです」

 

「もう。違うでしょー。よ・し・み・ん」

 

「ところで、好美さんがこんなところに来るなんて珍しいですね」

 

「待っていたんだよ」

 

 縁側の隣に座る好美。

 

 人好きのするルックスで、差しさわりのないコミュ力を有している彼女のことが、わたしは少しばかり苦手だったりする。

 

「なにをですか?」

 

「もちろん、いとこちゃんのことをだよ」

 

「わたしをですか? ここに訪れるなんてよくわかりましたね」

 

「あのねー。馬鹿にしてるのかな。イオちゃんの状況を考えれば、普通にここに来るほかないでしょ。わたしのほうがイオちゃんに会いにいってもいいけどさ。ここの家、わたしの家と近いから、連絡が来るようにお願いしてたんだ」

 

「ふぅん。そうですか」

 

 まさか、わたしと遊びたいからというわけでもないだろうな。

 魔法についてか?

 いままで特に友達とかもいないと思っていたから、考える必要もなかったが、普通なら魔法を開陳したら人間関係が変わると思う。

 

 わたしに何かの便宜を図ってもらいたいとか、あるいはやっぱり怖いとか。

 

 けれど、好美の表情を見る限りは、いつもと変わらない。

 

 好美は『いとこ』であって、友人でもなければ家族とも言い難い微妙な立ち位置だけど、無下にするほど無関係というわけでもない。聞いてみるほかないか。

 

「それで、何をしてほしいんですか、わたしに」

 

「あのね。よしみんはちょっとだけモノ申したいんですよ。イオちゃんに」

 

 ズイっと迫ってくる好美。

 わたしは自然と引く形になる。

 

「モノ申すですか。いったい何を……」

 

「あのさ。イオちゃん、世界に向かってベホマズン放ったでしょ」

 

「はい。放ちましたね」

 

「それでさ。私、すっごい迷惑したんだからね」

 

 メッ! とかわいく怒ってくる彼女。

 

「迷惑ですか? いったいどういうことでしょう」

 

「ん」

 

 好美が、自分の目を指さす。

 なんだ? なにがいいたいんだこの子。

 

「どうしたんですか」

 

「いつもと違うでしょ?」

 

「えーっと……、正直、よくわからないのですが」

 

「ここだよ。ここ」

 

 目元をよく見てみる。瞳と瞳が交差する。

 

「わかった?」

 

「いや、わかりませんが……」

 

「もう~。一重になってるでしょ」

 

「ん……。え、はい、そうですね」

 

 日本人の最近の流行は変わらず、二重まぶたが優勢だ。そもそも幼いことに価値を見出す文化なのか、目が大きく見える二重のほうがカワイイって思われがちらしい。わたし自身は、一重も日本人の美人さんのイメージもあって、それはそれで悪くないと思うんだけどな。

 

「高校生になって、ママを何度も説得してようやく認めてもらったの。おこづかい貯めてね。両目で一万五千円もしたんだから」

 

 整形も回復してしまったということか。言われてみれば確かに、整形も顔や体にメスを入れるわけであり、一種のケガ、負傷といえるだろう。

 

 それがわたしの回復で治ってしまった、と。

 

 これって、もしかして結構な人がヤバいことになってるかもしれぬ。

 

「その、大変申し訳ありませんでした……」

 

「いいんだけどさぁ。あんまり無茶やらないでよ。イオちゃんって乗せられやすいタイプなんだから」

 

「はい。自重いたします」

 

「それでさ」好美がにこりと笑った。「ドラクエって変化の魔法あったよね?」

 

変化呪文(モシャス)のことですか?」

 

 モシャス。

 老い先短い爺さんでもぴちぴちギャル(死語)に変身できる魔法だ。

 ちゃんと生身をともなった変身だし、ドラクエシリーズによっては、その能力値さえ変化する。

 

 信じて送り出した元青年現メスガキが、農家の叔父さんの変態調教にドハマリしてアヘ顔ピースビデオレターを送ってくるというようなことも可能なのかもしれない。

 

 いや、TS転生とちがって、妊娠可能なのかは未知であるが……、さすがのわたしもちょっと怖い。

 

 ただ、好美が何を求めているかは一瞬で理解した。

 好美自身の要求はかわいらしいものだ。

 一重まぶたを二重まぶたに戻してほしいのだろう。

 

「そうそれ。それ使ったらどうなるのかな?」

 

「できるとは思いますが、効力時間は――ん?」

 

 モシャスは短時間だという思いこみがあった。

 

 ゲームでもしょっちゅうかけなおして、ちょっと歩いただけですぐ解けていた印象だったからな。

 

 けれど今までの実験結果を冷静に考えれば、モシャスに限らずだけど、魔法の効力時間って魔法力に依存しているよな?

 

 防御魔法だってそうだし……。まあ、わたしの一存で解除も簡単ではあるんだが。

 

 ゲームでは、だいたい村とか町を横断する程度歩いたら、勝手に解除されていた。

 時間としては、どの程度なんだろう。一時間とかか?

 

 モシャスの消費MPはシリーズによって異なるが、わたしの感覚ではおそらく5。

 

 えーっと計算するぞ。

 

 もしモシャスを一生かけ続けたいとする。

 

 人間の寿命を100歳として、モシャス一発の効果時間を一時間だとすれば……。

 

 1時間×24時間×365日×100年×5MP=438万MPで済むのか。

 

 余裕だな。

 

「まずは試しにやってみてですね。よろしければ永続的な感じで……」

 

「じゃあよろしく~」

 

「わかりました。変化呪文(モシャス)

 

 なんとなく感覚的に魔法を使っているわたしだが、この呪文はかなり高等だ。

 ゲームでも、狙った姿態になるためになんどもなんども繰り返していたし、要するに非常に高度なイメージが要求される。

 

 まあ、べつに顔や姿が変わったからって死ぬわけじゃないし、何度も再試験が受けられるわけだから、恐れる必要もない。

 

「ひえ。好美さんの顔が般若の面をかぶったみたいに」

 

「え?」

 

「あ、なんでもないです」

 

 何度目かの失敗を経て、ようやく一重まぶたから二重まぶたに。

 ぱっちりおめめになって、満足そうだ。

 

 ふぃ。

 

「これで、まずはどれだけ長く続くかを見てですね」

 

「うん。うん。あのさ。なんだったらついでにってことなんだけどね」

 

「まだ何かあるんですか……」

 

プチ整形(まほう)が解けて傷心した女子高生の気持ちをわかってほしいなぁ」

 

「わかりましたよ。なんですか?」

 

 もうやけくそである。ああ、いかん。これがなし崩しというやつなのでは。

 ボブはいぶかしんだ。

 

「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいの。顔のカタチとかそういうのを変えるんじゃなくていいからさ。すこしだけかわいくしたいかなって。あと、少しだけ大きくしたいかなって。いとこちゃんっておっぱい好きだよね。あとで触らしてあげるからね」

 

 にやりと笑ういとこ殿に、わたしは戦慄を禁じ得ない。

 女の子の美に対する欲望の果てしなさに。

 

 いや、でも……整形とはいえ、おっぱいはおっぱいだし。

 おっぱいに罪はない。すなわち、この交渉は――この契約は、正当なものなのだ。

 

 実りの季節が始まった。




また真夜中だよ。書くの遅すぎワロタ。

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