ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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諸所の反応。ついでに何も考えてないイオ。

【愛の革命戦士 ロト・シックス・アタラネイカー】

 

 話は聞かせてもらった。

 人類は滅亡する。な、なんだってー!?

 

 いや、おかしいだろ。おまえら。

 なんで、あんなジャアクのカタマリをのさばらせておくんだよ。

 イ〇ちゃんイ〇ちゃんって、おまえら全員ロリコンか?

 そんなんだから、この国はGDPが30年以上経っても上がらないんだよ。

 

 いいか。脳みそのないお前らに教えてやる。

 上級国民どもは、すでにあの倫理観と常識と規範意識のはずれた魔女と結託したという噂だ。

 

 近い将来どうなるかというとだ。

 逆らうやつはザキかメダパニで無限労働に決まってる。

 怪我が治るというのは、救いでも慈悲でもなんでもない。

 むしろ逆だ。死ぬまで超低賃金で一生奴隷コース。派遣労働も真っ青のディストピアだよ。

 

 逃げ場所なんかないぞ。なんせ、全世界が対象だからな。

 魔法に抵抗する力もないから、おまえらは死ぬ。

 おまえらの大事な家族も死ぬ。

 おまえらの愛する者たちも死ぬ。

 

 わからないかなー。わからないよなー。

 あんなクレイジーなクソガキに心酔しているお前らが世界を危険にさらしているんだよ。

 イ〇ちゃんはそんなことしない? アホか。

 あのクソガキの心性も無茶苦茶悪い。

 一見すると、礼儀正しさを装っているが、記者連中にマホトーンかけてるだろ。

 どうなるか考えもなしにベホマズン撃ってるだろ。

 暴力性の発露だ。責任感なんて微塵もない。

 小学生だから仕方ない? その小学生が核ミサイルの発射ボタンを握ってるんだぞ。

 ガキがほんのちょっと気まぐれを起こしただけで、世界終了のお知らせだ。

 パブリックエネミーそのものだろ。

 

 人類は脅しには屈しない。おまえら俗物も少しは考えろ。理解しろ。

 理解しようと努力しろ。オレの言ってることは少し考えれば正しいとわかるだろ。

 おまえらひとりひとりが立ち上がれば、世界は救えるかもしれないんだぞ。

 

 なにも死ねとは言わない。

 喉を灼け。二度と魔法を使わせるな。

 

 立てよ国民! 立てよ!

 

 

 

【アメリア・サンダーズ P大学三年生 人類科学推進学生会議 議長】

 

 問題は捉え方なのだと思います。

 

 人類は薄暗がりの中で生まれた種族です。

 火を得るまでは寒さに震え、暗がりにおびえていたことでしょう。

 ですが、ある日。何も知らない若者が、自然火災で発生した火を洞穴に持ち帰り、そこから人類の発展が始まったのです。もしも、彼が火に脅え逃げ帰っていたら、今日の人類の発展はなかったかもしれません。

 

 きっかけは些細なことなのです。

 

 人類は未知の現象に突き当たるたびに、勇気を振り絞って立ち向かい、冒険し、謎を解明し、レベルアップしてきました。

 

 ダン・クエールは言います。

 明日になればより素晴らしい未来が待っているだろう。

 

 星宮イオ嬢がもたらした『新しい技術』、すなわち魔法もこれとまったく異なるところはないと考えられます。

 

 彼女は未来を照らしだす()()()を我々にもたらしてくれたのです。

 

 まだまだ未解明の部分も多く、多くの人に不安を抱かせます。

 彼女の魔法によって、いくつかの不幸が発生したのも事実でしょう。

 

 下唇に皿状のものを入れて育つエチオピアのムルシ族や、LGBTの方々、整形手術を受けられていた方々が、魔法によってアイデンティティの一部を喪失したという点については、しっかりと記憶しておくべきことです。

 

 しかし、遠い昔に火を発見した若者のことを我々が糾弾すべきではないのと同じく、未知の技術をもたらした若者を一方的に糾弾することは、厳に慎むべきでしょう。前世紀のホロコーストや魔女狩りのような歴史を繰り返してはなりません。

 

 また、かの有名なアインシュタインが考え出した理論が、のちに核兵器を作る礎になったことも忘れてはいけません。

 

 どのような力もコインの裏表のように、あるいは魔王と勇者のように二面性があるのです。

 

 幸いにして、彼女は十分に善良であるし、けして邪悪なモンスターではありません。

 

 家族に愛され社会の構成員として健やかに成長している途上なのです。彼女に必要なのは教育と、たっぷりの愛情です。

 

 わたしの考えを楽観的すぎると思われる方もいらっしゃるでしょう。

 

 しかし、悲観主義者はドーナツの穴を見て何もないと言っているにすぎないのです。

 

 

 

【九能和孝 医者】

 

 

 

 回復魔法について考えるに、外科的な負傷は回復し、内的な病気といわれるものは治らなかったと考えられる。ただし、精神的な安定はもたらされる。

 

 これはいったいどういうことなのか。

 

 その前に、我々が普段なにげなくつかっている病気という言葉も、実はあいまいな概念であることを語らなければならないだろう。

 

 病気については、血圧や血糖値の正常値というものが存在するとおり、平均化された標準値からはずれたものを、そのように呼ぶというふうに定義できる。

 

 いわゆる定量的判断である。

 

 この場合、個人的に不調を感じたとしても記録から参照される数値が正常であれば病気ではないというふうに判断される。逆に、まったく不調に感じない状態であっても、数値として異常であれば病気というふうに判断される。

 

 定量的に判断するということは、このように主観的な感覚と齟齬する可能性が存在するが、おおむね医者の知見としては、定量的判断によって異常値が算出されたときに、そのような判断を下すことが多いと思われる。

 

 さて、このとき医者としては非常に重大な疑問が生ずる。

 

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 まさかイオ嬢が全世界70億ひとりひとりの人間の状態をつぶさに観察したわけではなかろうから、この判断はベホマズンの内的な判断機構によってもたらされたものと考えられる。

 

 わかりにくければ、プログラムを思い浮かべればよい。

 魔法には効果というものが最初から設定されている。ベホマズンの完全回復にも同じく効果が定められているはずだ。

 

 まず、外傷については比較的わかりやすい。

 

 仮に腕や足が一本なくなっていたという場合に、その喪失を他人が知るのは容易いのと同じく、ベホマズンにとっても同様だろう。

 

 例えば、人間には【腕】があり【足】がある。

 

 それらが無い→回復する。

 

 というような判断だ。

 

 定量的に判断した場合。

 人間には生まれたときに、【腕】があり【足】があるので、それらが無い場合には補填するというような感じだ。

 

 例えば、盲腸の例を見ると、盲腸がなんらかの原因で(主にふん石など)詰まっており炎症を起こしている状態であるとみられるが、この詰まっている状態は定量的に見て異常な状態であるから治癒される。

 

 ガンについてはどうか。

 

 ガンは、正常な細胞のコピーができなくなり、エラー細胞が増殖することによって起こる。

 定量的に見て、ガンに冒された状態は異常であるから治るべきだと思われるが、そうはなっていない。この点については、仮定の域をでないが、ガン細胞が発生することそのものは定量的に見て異常ではないということが考えられる。

 

 驚かれるかもしれないが、我々の身体は毎日数千個のガン細胞が生まれているのである。

 つまり、ガン細胞のありなしだけで考えれば、我々はガン細胞があるという状態が正常であるということである。

 

 逆に言えば、ベホマズンは、ガンという疾患が、ガン細胞の優勢により引き起こされることを()()()()()()()

 

 血圧や血糖値、あるいはホルモンバランスの異常によってもたらされる不調も同様だろう。

 ベホマズンは、有り無しの二項判断には強いが、ファジーな概念には弱いのである。

 

 長々と述べてきたが、イオ嬢の回復魔法については医学的見地から見ても有用であるが、医者が不要になるほどには完璧ではない。

 

 わたしの同僚からは魔法を見て、我々はその地位を退くべきであるなどという意見があったが、その意見は時期尚早だろう。

 

 我々は魔法を見て学ぶべきところは学び、さらなる研鑽を積んでいくのが肝要と考える。

 

 

 

【エミル・ハルトマン 陸上選手】

 

 

 

 治ってからよく聞かれるのよ。

 自分の足で走るのはどんな気分だって。

 わたしは笑って言うの。クソったれ! ってね。

 

 わたしは車椅子で走っていたとき、それが普通だったの。

 足のある人がなにげなく散歩するみたいに普通のこと。

 

 でも、みんなにはそうじゃなかったみたい。

 

 足がないのに、あんなに早く走れるなんてすごい。

 障害に負けないで輝いてますって。

 

 もうさ。耳タコだから笑ってすますけど、ショーガイと戦ってるわけじゃないからね。

 こっちは単に与えられた環境でがんばってただけ。

 べつにショーガイは友達でもないけど、生まれたときからそうだったんだから敵でもない。

 空気みたいなもんなの。

 

 なんだかみんなの感覚とはちぐはぐなんだよね。

 

 だから、足が生えてきたっていうのも、『障害がなくなるという障害』なんかじゃないよ(笑)。

 

 パラリンピックに出れなくなったのは残念だけど、あのかわいい女の子が気まぐれに奇跡を起こしただけのことでしょ。めくじらたてることないじゃんって思う。感謝もしないけどね。

 

 わたしは、与えられた環境で、走りたいだけ。

 わたしはわたしに挑戦したいんだ。

 

 

 

【只野あきら 無職】

 

 

 

 オレのブサイク顔が治らなかったという不具合について。

 

 

 

【鈴木盛夏 シングルマザー】

 

 

 

 まぁ君の目が治ったことについて、わたしは感謝しております。

 治ったことを悲しむ人がいると聞いて、正直驚きが隠せません。

 

 いま、あの子は絵を描いて見せてくれます。

 まぁ君は天才なのかもしれません。

 目が見えるようになって数日で、すでに彼は色を理解し、形を理解しています。

 そして表情も。

 画面いっぱいに青いクレヨンを描いて、かわいい銀色の髪をした魔法使いさんが笑っています。

 彼女には天使のような羽が生えていました。

 

 誰がなんといおうと、まぁ君にとって彼女は優しい人なんです。

 もちろん、わたしにとっても。

 

 母親としては子どもの選択肢が広がったことは素直に喜ばしいことです。

 治ったことを悲しむよりも、与えられたことを喜ぶべきだと思います。

 

 

 

【一週間前に設立されたカルト宗教教祖】

 

 おお、うるわしの神よ。

 その聖なるおみあしにぺろぺろしとうございます。

 銀のようなおみぐしをすぅはぁしとうございます。

 あああイオさまかわいい。イオさまかわいい!

 約束されたエデンへいざ参らん!

 

 

 

【斎藤多摩金 似非心理学教授】

 

 

 

 治療されたことを不幸と考えるのは、一時的な拒絶反応だと僕は思うね。

 人間は、不幸に耐えられない。

 より正確にいえば、自分が不幸であるという認識に耐えられないんだ。

 だから、例えば腕をなくした人がいるとする。

 その人は命まではなくならなくてよかったんだと納得しようとするだろう。

 

 最初から腕がなかった人にとっても同じだよ。

 その状態が不幸だとは絶対に考えない。

 その状態が普通であると考えるわけ。

 まあ実際にそれで長年暮らしてきたわけだから、当然そう思うよね。

 

 それで僕は思うのだけど、障害が完治した人たち……例えば、足が生えてきた人がいるとするじゃない。その人はパラリンピックに出られないという不幸に見舞われたわけだけど、じゃあ、足を切断しますかといったら、それは嫌だというんじゃないかな。

 

 こういったらなんだけど、不幸を主張する輩は、治ったこと自体を不幸だといってるんじゃなくて、障害者として扱われる特権といったらいいのかな、そういったものがなくなるから、嫌だって言ってるんじゃないかな。

 

 とりあえず、手足欠損については、みんなスタートラインはいっしょになったんだから、不幸を嘆く暇があったら、みんなちゃんと働いて、スポーツしたい人は健常者としてがんばればいいよ。

 

 イオちゃんについてはどう思うのかって?

 

 そうだな。彼女自身の映像と掲示板に書かれている文章とのギャップがすごいね。

 掲示板に書いたのは実は別人で、背後にいた彼女が絶妙なタイミングでベホマズンを唱えたとかいうほうがまだ信じられるよ。

 

 通常、匿名掲示板というのは匿名性を売りにしているんだから言いたいことを言えると思うんだけど、彼女の場合は、自分自身を特定しての行動だからね。

 

 なんといえばいいか。非常にユニークな行動というか。普通なら絶対しないことなので分析しにくいところだな。アホの子だという見解もあるようだけど、もしかするとなんらかの使命を帯びてるのかもね。

 

 なんにって? 宗教家でもないのに、それ聞いちゃう?

 

 神さまだよ。

 

 

 

【愛の革命戦士 ロト・シックス・アタラネイカー】

 

 

 

 どいつもこいつも使えない阿呆ばかり。

 この国もうだめかもわからんね。ありがとう感謝感謝って。きもちわりぃ。

 

 何人かオレと同じような考えのやつはいたけど、マジで革命しようってやつはおらんしさー。

 それどころかオレに実行犯になれって煽ってきやがる。

 アホか。犯罪の加害者と被害者は他人にやらせるもんだろうが。おまえやれよバカ。

 

 おまえら既にメダパニくらってんじゃないの?

 

 べつに殺そうっていうんじゃなくて、イ〇の喉を灼けって言ってるだけなのになんでそれがわからんかねー。こんなにも平和的な解決はないだろ。

 

 イ〇も絶対オレに感謝するって。なんてスマートな解決方法だってな。

 

 

 

【Nニュース放送】

 

 

 

 たった今入りましたニュースによりますと、昨晩、愛の革命戦士 ロト・シックス・アタラネイカーを名乗る無職只野あきら容疑者(32)が匿名掲示板に脅迫・名誉棄損・テロ準備行為等を書きこんだ罪で逮捕されました。

 

 只野容疑者は書きこんだことは間違いないが、ストロングゼロを飲んで酔っていたため書きこんだ内容はよく覚えていないと、容疑を一部否認しているようです。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 わたしは、今めっちゃゆったりしている。

 スーパーリラックスタイムだ。

 

 なにしろ、超やわらかいスライムみたいなお胸様に抱かれているからな。

 いとこ様の膝上にのっかり、後頭部が幸せ生成装置に触れている。

 シートベルトのようにお腹のあたりにまわされている手が少しくすぐったいけれど、それも悪くない感触だ。

 

 やわっこい。すごくやわわん。

 

 偽物だけど、偽物じゃない。いわば養殖ものだ。

 そう、手塩にかけて育てられたものなのだ。

 考えようによっては、わたし好みに整形したので、天然ものより優れているかもしれない。

 

 だったら自分の胸も大きくしたらどうだって言われそうだが、それは違うんだよなぁ。

 自分のがいくら大きくなっても、全然楽しくないだろう。他人のだからいいんだよ。

 許されてる気がするから。

 

「ああ~~~」

 

 幸せすぎる。

 金持ちの家は雑多な喧噪もないし、すごく癒される。

 なんか静かですねぇ。家の周りには車もいないし都会とはえらい違いだ。

 

「いとこちゃん」

 

 覗きこむように、好美から声がかかった。

 

「いま、いいところなんですけど……」

 

「ちょっとだけ疑問点が思い浮かんだんだけどいいかな」

 

「はいどうぞ」

 

変化呪文(モシャス)ってさ、肉体を変化させる呪文なんだよね」

 

「そうですよ」

 

「だったら、わたしの容姿も固定されちゃってるのかな?」

 

「全身にかければそうですね。ただ今回、好美さんにかけたのはあくまで瞳の一部分だけですよ」

 

「だったら、百年後にはまぶただけが若々しい姿になったりするの」

 

「あー、まあそうですね。違和感が強くなったらかけなおします。アフターぷにんぷにんサービスも完備です」

 

「あんっ。ちょっと跳ねないで」

 

 魔法使えてよかったー。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「禁止」

 

「え?」

 

 そろそろ話が終わっているかなと思って、好美といっしょにばあちゃんの部屋に向かったわたしは、とりあえず変化呪文(モシャス)を使ったことを報告した。

 

 好美の二重まぶたとちょっとだけ大きくなったお胸様を見て、ばあちゃんとママンは魔法の効果について詳しくわたしに尋ねることになった。

 

 それから間髪入れず――。

 

 ほとんど秒の単位で、先ほどの言葉だ。

 

「あの、禁止しちゃってもいいんですか。世の中には整形手術とかを受けていた方が元に戻ったりして苦しんでる方もおられるのではないかと思うのですが。モシャスを使えば解決しますよ」

 

「見た目老化しなくなるのよね」とママン。

 

「ええ、まあ……たぶん。ですが、年は老いますしあくまで見た目だけです」

 

「世の中が混乱しまくるに決まってるじゃないの」

 

「その……いまもすでに混乱しているので、それを少しでも鎮めようと考えたわけですが」

 

「考えなしはやめなさい」

 

「むしろ考えている結果なのですが」

 

「イオ~」

 

 ほっぺたをむにぃってされてしまった。

 

 スカラを使ってても、ダメージのない接触は可能だからな。

 

 しかし、あまり接触しすぎてダメージと判断されると……。

 

 パァン!

 

 と、アタカンタによってママンの腕がはじかれる。

 

 ママンごめんよ。指先にホイミをかけて即座に回復する。

 

 ママンが大きなため息をつく。

 

「マリアの言うとおり、永年の容姿変化はやめておきましょう」

 

 今度はばあちゃんだ。

 

「わたしのミスなので、少しでも取り返したいんです」

 

「それはおまえがスッキリしたいだけよ。いま聞いた話だと、モシャスはベホマズンと違い、個別にイメージを抱かなければかけることができないのですよね」

 

「ええ、そうです」

 

 できるだけ詳しく思い浮かべなければ、思ったとおりの変化はもたらされなかった。

 ベホマズンのような自動的に回復という効果がもたらされる魔法とはかなり異なる。

 

「つまり、あなたがモシャスを使うとき。ベホマズン以上に時間を消費するということ。わたしもマリアも、あなたの人生がモシャスをかけ続けることに消費されつくされるのを恐れているの」

 

 モシャス自体は、一回あたり三秒もかからない。だが、他者の思い描いている理想形をイメージしようとすると、これがかなり難しい。一重を二重にとかそういう具体的な要望だったらわりかし簡単だけどな。

 

 イメージをすり合わせてたら、ひとりあたり三十分くらいはかかるかもしれない。

 治療を嘆いた人が何人いるかはわからないが、莫大な時間がかかることは想像できる。

 

「おばあ様……すみません。わたしが浅慮でした」

 

「よいのです。それで……イオ」

 

「え? はい」

 

 と、わたしは気づく。

 伏せた顔を上げてみると、にっこり笑う妖艶妙齢エロ家元がおられる。

 このパターン、なんか怖い。

 まだ、お刀を振り回しているほうが怖くない。

 

「ひとり、ふたりなら、たいして時間もかからないはずです」と、ばあちゃん。

 

「最近、あなたのせいで化粧のノリが悪いのよね」とママンも便乗。

 

 ダブスタだー!!

 

 しかしながら、家族からの要望ですからね。

 

 わたしもやっぱり断り切れず……。

 

 結局、ばあちゃんにもママンにも変化呪文(モシャス)をかけることになった。

 

 ちょっぴり色つやとか肌のなめらかさとかが増したほくほく顔のふたりだったのでした。

 

 なんかズルくね?

 

 って思うのは、おかしいだろうか。


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