ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です 作:魔法少女ベホマちゃん
都内にある某ホテルの周囲は、朝早いうちというのもあるが、かつてないほどシンと静まり返っている。スクランブル交差点を行き交う人々の姿はなく、スズメのチュンチュン鳴く声のみが、やけに響いて遠くまで聞こえた。
ヘリは上空を飛ぶのを禁止され、ドローンも同じく。
車すら侵入できないようになっている。
周辺はまるでゾンビ禍があったように隔離地域と化していた。
まず、警察部隊総勢3万人ほどが周囲5キロ圏内を取り囲んでいる。いたるところで検問が行われ、単なる好奇心で一般人が入りこむといったことがないようにしている。
OBの連中にも出動を要請し、ネズミ一匹も侵入できないような疎漏のなさで臨んだ。周りの店には地震や津波のときのように一時的な退去命令がだされた。
これは会場が決定されると同時に、政府の要請から徐々に行われ、前日になりようやく完了した。店を一時的に閉店したことによる補填は新型コロナ禍のときの持続化給付金と同じく、数か月内には確実に支払われるようになっている。
ともあれ――、金を湯水のようにジャブジャブした結果、できあがったのがいまの状況なのだ。
これはべつに星宮イオを警護するため
その意味も多少はあるだろうが、ほとんどは、一般人がちょっかいをかけて返り討ちにあうのを防ぐためである。ひいては、ついうっかり超破壊力を持つ魔法を正当防衛的にぶっぱなされてしまい、あえなく地球滅亡エンドを迎えることがないように最大限の配慮を行った結果である。
もちろん、警察だけではなかった。
警察部隊の層を外側とすれば、内側をぐるりと取り囲んでいるのは、陸上自衛隊のなかでもとりわけ精鋭と名高いレンジャー部隊である。これからホテルを急襲でもしようかというほど充実した装備だ。周辺のビルもすべて押さえ、星宮イオが狙撃されることがないように配慮している。
ついで、アメリカからは日米同盟にかこつけて米軍も出動している。もちろん、最初は内政干渉であるということで、日本のお家芸である遺憾の意も発したのであるが、星宮イオの力は人類の未来を決定する重要事であり、日本だけで軽々に決めてよいものではないと主張されれば、なかなかに断りにくいところであった。それに、アメリカが他国を防ぐバリアの役目もしてくれるので、最終的に日本政府はやむを得ないと判断したのだ。
米軍も、過酷な訓練と選抜を乗り越えてきたエリートが集められていた。
狭い空間内に筋肉むきむきのマッチョマンがひしめきあっている状態だ。
はっきり言って過剰戦力であり、ここに外部からやってきて蹴散らすことができる戦力はテロだろうが、どこかの国の部隊だろうが、ありえないと思われた。
戦闘行為がおこなわれる可能性はもとより低く、もし仮に行われたとしても基本的には日本が先行する。自国のことだから当然だ。
なので――、
実のところ米軍は物見遊山のような感覚だった。
コマンドー部隊とグリーンベレー部隊も隣り合って待機している。
道路いっぱいに広がっているとはいえ、日本の都会は建物の密集する狭い空間だ。隣り合うというのは比喩表現ではなく、ほとんど肩がぶつかる程度の距離感覚だった。
こちらも退役した軍人を呼び戻しているが、数合わせのためではなく、軍という枠組を越えた真の実力者をそろえるためだ。
しかし――、英雄とはえてして規格外である。
しばしば、軍規すら逸脱される。
軍隊においては致命の存在であるが、星宮イオを抑えられる期待感としては英雄以外にありえない。いちおう最善を尽くそうとした結果であるが、規律という意味ではどうだろうか。ワインの中に泥水を混ぜたかのように軍として機能しなくなる恐れもあるのだ。星宮イオという未曽有の存在に、米軍ですら混乱のさなかにあったといえるだろう。
(クッソひまだな……)
元コマンドーのひとり、ジョンは思った。
チラリと横に並ぶ元同僚たちを観察する。
さすがエリート部隊であり、みな使命感を胸にキリっとした表情をしている。
だが、ジョンからしてみるとお行儀がよすぎて物足りない。
(ただのカカシですな)
現コマンドー部隊も隣にいるグリーンベレー部隊も綺麗に整列しているだけであり、その実、隙だらけのように見えた。彼なら瞬きしている間に全滅できるだろう。
「あ~~~せめて、イオちゃんに会えないかなぁ」
ついに不満が爆発してしまった。
実のところ、ジョンは星宮イオのファンだった。というか日本のアイドルオタである。軍属していたらまともにアイドルのおっかけもできないと思い、いまではFPSの大会などに出場しつつ賞金をかっさらっていき、そのほとんどを推しに捧げる生活をしている。
星宮イオは金の卵だった。アイドルというより子役の活動が多かったが、あと数年もすれば必ず大成するとジョンは思っていた。つまり、元から目をつけていたのである。
――魔法とか関係ねぇ。推しを推さなくて何を推すんだよ。
それが、ジョンの考えだった。
「お前バカいうなよ」
隣の元グリーンベレーの黒人がにらんでいた。
「あ?」
「あいつは化け物の類だろ。確かに容姿はプリティかもしれんが、中身は名状しがたきモノかもしれんだろうが。会いたいとかおめえバカか」
「なんだァ……てめェ……」
元コマンドー、キレた。
怒りに手が震えて、顔には青筋が浮かんでいる。
元グリーンベレーは嗤った。
「怖いかクソッたれ。当然だぜ、元グリーンベレーの俺に勝てるもんか」
「試してみるか? 俺だって元コマンドーだ」
この世界はすでに
☆
ああああっ。
人多い。人多い。人多いっ!
かつてないほど人が多い。
わたしは混乱していた。結婚式場の新郎新婦が座るような奥まったところにある席にわたしは座っている。これから結婚するわけではもちろんない。
ないが、壇上から見下ろす視界は、人の波で覆われている。
心臓がバクバクする。不安におしつぶされそうになる。
総じて言えば、混乱している。
もとからメダパニをかけているから混乱しているともいえるけど、メダパニはこころの毛づくろいみたいなものだ。今より幼い頃から頓服を続けているこころのおクスリ。これがないとわたしは人とまともにしゃべることもできないだろう。コミュ障を舐めるな。
ヨシっ!
いつもより多めにかけております。これで大丈夫だ。落ち着いてきた。
掌に人の字を書いてるようなもので、ある種のルーチンによる鎮静効果だな。
本当のマジなレベルの混乱じゃない。薄く。薄くだ。
ストロングゼロレベルじゃなくて、あくまでほろ酔い気分。アルコール度数3%の薄いビールをいくら飲んだって酔わないだろ。水みたいなもんだしな。それと同じ。
薄いメダパニをいくらかけたって混乱が深まるわけないじゃん。まったくもー。
ふへへへへ……。
わたしはかつてないほどに冷静である。
ふっ……人がごみのようだ。
「イオ。あなた、さっきからぼーっとしているけど大丈夫なの?」
「ご心配なく。少し人に酔っただけですよ」
右隣に座っているママンが心配そうにこちらを見ていた。
今日のママンはドレス姿。あでやかで美しい。
なお、さらに左隣には戸三郎じいちゃんも座ってる。内閣総理大臣って暇なの?
なんてな。さすがのわたしも、じいちゃんがここにいる意味ぐらいわかっているよ。
戸三郎じいちゃんのさらに隣にはルナが座っているが、会見にはさして興味がないのか退屈そうにしている。アメリカの存在感を出すためだけにねじこまれたんだろうから、ルナにとっては迷惑なんだろうな。さっさと終わらせてドラクエでもしたいのかもしれない。
さて、今一度状況を整理しよう。
記者会見はあと数分もすれば始まる。
当然マスコミが多いが、政府関係者や科学者もちらほらいる。
会見の時間は一時間ぴったり。質問数も質問内容もあらかじめ提出されていて、その答えも前もって考えられている。
そして、目の前にはプロンプター。
プロンプターというのは、首相とかが会見のときとかに使う電子的なカンペみたいなものだ。
これがあれば、どんな難問にも間違えることなく答えられるだろう。
誰もが見惚れる可憐な少女であるイオちゃんが、大人たちの難問にすらすら答えていくのだ。
かわいいうえに、知的とか。もうこれは優勝でしょう。
やったね、イオちゃん。ファンが増えるよ。
「全世界に中継されているんだから、気をつけなさい。基本的にみんなはイオの答えを待っているの。あなたが答えづらい質問は私や他の誰かが受け継いでもいいけれど、それじゃあ納得しないことも多いと思うわ」
「大丈夫ですよ。いまのわたしの頭は雲ひとつない空のように澄み切っているんです」
「それって、頭からっぽってことじゃないかしら……」
「空気はあるでしょう! 見えないだけで」
「ともかく、世界に見られてるってことを意識しなさい」
ママンが指さしたのはわたしの背後。
そこには巨大なモニターが鎮座していて、ユーチューブとかニコニコとかに生中継されるんだろう。よくわからんけど、何かで見たことがある。コメントが横から流れてくるんだよな。
これはもしかすると、ある意味、わたしはユーチューバーとかの配信者になったといえるのかもしれない。
アイドルと配信者ってちょっと近いよな。わたしはアイドルを目指しているから配信者にも興味がある。ユーチューバーの世界一稼いでいるのってわたしと同じくらいの年齢じゃなかったっけ。
えへ。そう考えると、すこしたのしー気がしてきたぞ。
みんな魔法を怖がりすぎなんだよ。怖がるのもわかるけどさ。だから、ここはいっちょイオちゃんのかわいさを見せつけて、こんなかわいくてかしこい女の子なら、絶対大丈夫だよねと思わせることが肝要だろう。
人は印象が大事だ。
なんだかんだいっても、真夜中に不審な男性に後をつけられるのと、かわいらしい小学生の女の子に後をつけられるのと、どちらが怖いかといえば前者だろう。
わたしが魔法という包丁をもった状態だとしても、かわいくスマイルしていたら、お家で料理でも作るのかなかわいいねって言われるに違いない。
世界一かわいいイオちゃんの伝説が始まる。
☆
記者会見で静かに座っているイオは、超然とした美しい少女だった。
きらめくばかりの銀色の髪に、少しだけ薄目になって下を見ている金の瞳。
幼いながらも完成した美貌はさながら
禁忌の存在。
触れえざるもの。
現世に降り立った神のようなナニカ。
記者たちの印象は、イオの演技によってあっさりと騙されていた。
それもやむをえないことなのかもしれない。イオの演技が優れていたというよりも、魔法という力があまりにも強大で、フィルターのように記者たちの目を覆い隠していたのである。
そんなわけで、記者会見はきわめて粛々と、緊張した面持ちで始まった。
会見を視聴している一般人もまた、食い入るように画面を見ている。
『イオちゃんすげえ氷のような表情だな』『かわいいというより美しい』『神様ぁ……イオさまぁ……ああ、あああああっ。ふぅ……』『お茶の間の前で果てるなw』『しかし、記者たちも緊張しているな』『政治家連中にいきようようと質問するときとは全然雰囲気異なる感じ』『あ、最初の質問が始まるぞ』
――イオさんが使われている魔法について教えてください。ドラゴンクエストというゲームの魔法という噂もありますが、本当ですか?
「本当です。ドラゴンクエスト――長いのでこれからはドラクエと言いますが、そのゲームの魔法をわたしは使っております」
『やっぱりドラクエなんだな』『匿名掲示板の答えで明らかにはなっていたことだ』『小学五年生とは思えないほどはっきりした答えだな。イオちゃんかしこい』『かしこくてかわいい』『好き』『(結婚しよう)』『通報ボタンはどこかな……っと』『記者たちも小学生相手だからわりとわかりやすい言葉を選んでるな』
――ドラクエというゲームの世界が、異世界として実存するということなのでしょうか。
「わかりません」
――では、なぜドラクエの魔法を使えるのでしょうか。
「わたしには前世の記憶があります。死んだあとに神様のような存在に会い、そこでなにかしら能力をつけて転生させてあげるといわれました。これは巷で噂の異世界転生だと思い、とりあえず汎用性の高そうなドラクエ魔法を選んだんです。転生先は異世界ではありませんでしたけど」
『チート転生ってなろう小説で草』『イオちゃんなろう主人公かよw』『神様ってマジでいるんだな』『もう怖くない』『死んじゃってもええんか?』『来世に期待してもええんか?』『アホか。魔法が使えるのは本当だとしても死んだあとどうなるかはわからんやろ』『自殺とかすんなよ』『イオ様にならザキされてもいいかも』『どうせ死ぬのならオレにケツを貸してからにしてもらおうか』『アッ―!』
――神さまのような存在とおっしゃられましたが、どのような方だったのですか?
イオはプロンプターを見た。
ここについてはアドリブだ。
というより、イオの印象を答えるものなので他人が答えを書いても意味がない。
が、きわめて自動的になっていたイオは、
「ここはアドリブで答えてください」
プロンプターの文面をそのまま読み上げてしまった。
シーンとする会場。
――は?
「あ、いえ、すみません。えっと、そうですね。なんというかあんまり何も考えてなさそうな感じでした。でも、ちゃんと人格が感じられる存在でしたね」
『悲報。イオちゃんプロンプターをそのまま答える』『やっぱり小学生じゃないか』『ちょっと慌ててる?』『なんか印象がガラって変わるのなんでだろうな』『素はこっちだったりして』『掲示板のカキコと今の印象は似てる』『おまえら神さまについてもっと考察しろ』
――神さまの名前は教えていただきましたか? 例えば、キリスト教やイスラム教に連なる名前とか、日本の八百万の誰それとか。
「名前は聞いてないですね。名乗りもしませんでした」
――背格好は?
「光っててわかりませんでしたが、声は高めだったかな、と思います」
――イオさんは、その神さまのような存在に何か使命を与えられてきたんですか?
「いえ、特になにも言われておりません」
――おそらく知る限りにおいて、前世があると主張される方はちらほらいても、実際に魔法が使えるような方は、イオさん以外にいらっしゃらないように思います。これは神さまのような存在に選ばれたといってもよいと思います。イオさんが選ばれた理由は何か心あたりありますか?
「特にありません」
――イオさん自身の前世が何か特殊だったというようなことはありませんか?
発展質問だ。
ひとつの質問からの派生については禁止していない。発展質問を封じたところで、どうせひとつなぎの長大な質問をぶつけられるだけという判断である。
問題は、プロンプターに答えがないことだ。
「前世については、個人情報ですので答えかねる感じです」
イオは焦りながらも無難に答えた。
――イオさん自身は何かをなすべきだと考えていますか? 特にベホマズンによって世の中のほとんどの人は癒されております。このようなことを今後も続けるおつもりですか?
「関係各位と調整のうえ、慎重に決定したいと考えております」
『んーお役所仕事』『イオちゃんの答えっていうよりかは国の考えだよな』『イオちゃん自身はどう考えてるんだろ』『んー、記者さんそこらへんをつっこんであげて』『小学生につっこむ』『おいやめろ』
――イオさん自身の考えはいかがでしょうか。困ってる人を助けたり、社会に貢献したいという気持ちはありますか。
プロンプターにない質問だ。
「わたしのできる範囲で、無理のない範囲でなら社会貢献していきたいです」
――でしたら、ベホマズンをお願いされたら、また使用するということでしょうか。
「ちょっと待ってくれ」ルナが手を挙げた。「みんな当たり前のように、ベホマズンを受け入れているが、これは疫学的な判定を受けたわけではないから、これから先、身体に悪影響がないとは言い切れないぞ。日本のファンタジーでは過剰回復による細胞死とかもよくある設定のようじゃないか。つまり、関係各位との調整というのはそういうことだ。みんなができるだけ納得する形でじっくり進めていきたい」
――しかし、一度すでに使っているじゃないですか。世界人類はモルモットだったんですか?
ルナは首を振って否定した。
「あくまで、科学的な判定を加えたいってだけだ。魔法的にはおそらく問題ないのだろう。そして、私たちは誰一人それを判別できない。判別できる能力がないということだ。科学が追いつくように努力したい」
――イオさん自身の口からお聞きしたいのですが、ベホマズンは身体に悪影響はないんですか?
イオはテンパっていた。
「ただちに影響はございません」
――ただちにということは、いつかは影響はあるんですか?
「ないと思います。だって、ドラクエのベホマズンの効果は全体の完全回復ですし」
――それを証明する方法は?
「……」
――あるんですか?
「(にこっ)」
意外それは沈黙。
いや、沈黙というより笑顔だ。
イオはかわいさだけで押し切ろうとしている。
『ああ、イオちゃんかわええ』『ごまかし上手のイオちゃん』『ぜんぜんごまかせてないけどな』『要するに証明はできんってことか』『魔法の将来的な影響とか誰が証明できるんだよ』『オレはドラクエ魔法っていうの自体もアヤシイと思うね』『しかし治ったのは事実だからな。どうなるかは誰もわからんってことじゃないか。イオちゃんも含めて』『たぶん牽制だよ。魔法を安易に使ったらヤバい影響がでるかもって思わせている』
――ない……のですか?
「魔法についての効果は、関係各位と調査のうえ判明次第、皆さまにお伝えするよう努めたいと思います。この場ではすぐにお答えできかねます」
――かしこまりました。では、もしも希望者が出てきたらどうされるおつもりですか。例えば、ベホマをかけてほしい。キアリーをかけてほしい等。ドラクエの魔法であることは知られているのですから、ある程度の効果を予測してそうしてほしい者が現れるはずです。将来的な悪影響があるかもしれないと思っても、すぐに目に見える効果を求める方も多いのではないでしょうか。
「モルモットになってもいいというやつがいるなら、私は歓迎するぞ。人類のためにぜひとも礎になってくれ。ああ、もちろん知ってるかと思うが死んでもたぶん大丈夫だ。ザオリクで生き返る」
ルナはにやりと笑いながら言った。
『幼女がこえーよぉ』『ザオリク前のオレとザオリク後のオレは同一存在なのだろうか』『人間は三か月で細胞の入れ替えが起こってるのよ。ザオリクぐらいなによ』『魂モグモグされてる可能性もなくはないよな』『いや、オレはイオちゃんを信じるぞ』
――各論的な話にうつります。イオさんの魔法はどこまでのことができるのでしょうか。ドラクエの魔法には派生作品も数多くあり、時を遡る魔法や天候を操る魔法もあります。これらは魔法力といいますか、MPを多く使うというような描写はされていますが、イオさんの魔法力は足りるのですか。
「まず一点目の質問ですが、ドラクエの魔法については全般的に使えると思います。ですが、試したことがないのでわからないことも多いです。時を操るということになりますと、えーっと、相対性理論? が、関わってきますし、時を停止するということは摩擦が無限大になるわけですから、一切の動きが取れないことになるでしょう。へえ、そうなんだ」
『へえそうなんだってw』『イオちゃんの前世って何歳だったんだろうな』『せいぜい五歳児くらいじゃない?』『イオちゃん成績はいいって聞いたけど、まあ普通なのか』『なんだか……この子かわいいぞ。別の意味で』
じわり。
じわり。
メッキがはがれていっていた。
しばらく質問が続く。
そして、決定的な質問が来てしまった。
――イオさんの魔法力がどの程度なのか教えてください。
「ふふ。72兆3500億です。神様に当時の日本の国家予算でお願いしましたんで正確な数値のはずですよ。感覚的にもだいたいはわかりますけど」
『イキりイオちゃん』『72兆3500億でマダンテしたらどうなるのっと』『リアルな話をすると、地球どころか銀河がぶっ壊れる。おまえの質問でイオちゃんが何気なくマダンテしたら銀河がヤバい』『回復力はどの程度なんだろうな。やっぱ一日寝たら全快?』
――魔法力を皆様に見せていただけますか。
プロンプターにない質問がきて、イオは首を傾げた。
「証明ですか? そんな方法あるんでしょうか」
――当社で調べたところ、
「へえ……そうなんですね。存じませんでした」
イオは知らなかった。
ダモーレは、ドラクエのなかでもかなりのマイナー呪文だ。
語源は駄々洩れから。つまり、対象のステータスをオープンにする呪文である。
味方に視線をやると、問題ないというふうに頷いた。
確かに、
「
自分を対象にステータス開示の魔法を唱えた。
すぐにステータスが露わになる。記者たちはざわついた。
ありえないくらいの超魔法力72兆3500億も確かに目を引くところではあるのだが……。
「かしこさ3?」「え、3って低いのか」「いや……んぅ」
『悲報。イオちゃんかしこさ3!』『美少女のステータスを覗き見る愉悦。てか3てwww』『ちょっと待て。確かドラクエ5でモンスターが言うこと聞くのがかしこさ20くらいからだぞ。イオちゃんのかしこさってモンスター以下かよ』『でも、べつにIQが低いってわけじゃないんでしょ。かしこさが=知的レベルってわけじゃないんじゃない?』
イオは、裏返して自分のステータスを見てみた。
かしこさ3。
「え?」
かしこさ3である。
「は?」
四倍メダパニがぶっ壊れた。トマトよりも赤く真っ白い肌が急速に染まっていく。
「見ないで。見ないで~~~~~!」
星宮イオのポンコツ伝説がここから始まった。
対個人だと最強だけど、対世間だとクソ雑魚なめくじと化す感じです。
かわいがってあげてください。