ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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ザキの問題。ついでに国土割譲。

 左手で即死呪文(ザラキ)。右手で蘇生呪文(ザオリク)

 ふたつ合わせて、ザオラキっていうのを試してみたんだが、効果は正直よくわかんにゃい。

 

 なんか魔法的には相殺されているような気もするし、でも、もし万が一死んじゃったままだと嫌っていうレベルじゃないんで、そんな感じでお茶を濁してみたんだよな。

 

 まあ――、わたしが一般人には伝えることができない魔法的感覚だと、魔法で死ぬというのは因果関係的には超常の出来事だから、つまりかなり変な死に方だから、ちゃんと生き返ることができる。長時間死体のままで置いておいたらわからないけど、短時間ならたぶん大丈夫だ。

 

 でもやっぱこえーっていうのが正直なところ。

 だって、わたしのせいで直接死ぬんだよ。死は生命にとっての最悪でしょう。

 それを直接もたらすというのはちょっとねえ……。

 

 いくら頼まれてもどうかと思うんだ。

 だからこそのザオザキ合体呪文でした。

 

 ルナは微妙な顔をしていたけど、理呼子ちゃんはそれでよいって感じだったし、みのりさんは半分反対で半分賛成って感じ、ママンはやっぱり胃のあたりを抑えていたよ。

 

 みんないろんな考え方があって、死は死、殺人は殺人なんじゃないかっていう考え方もあれば、死は不可逆的な反応だから、逆説的に蘇生できた以上は死んでないという考えたもあったりと、いろいろだ。

 

 いずれにしろ、ルナはこれ以上ないほど冷徹な現実主義者であるし個人主義者である。

 まあ、だからって同意殺人はあかんのやけどね。あくまで、()()()()()()()()()()という建前らしいんだけど、ザキの効力からしてどうなんだろう。

 

 即死が本当に即死なのではなく、血液を凍らせるとか沸騰させるとか、そういう機能的変化によって、結果として死んでいるのであれば、その過程自体は治療行為とみなされるんじゃなかろうか。

 

 そう思いたい。だって、殺すKAKUGOとかまだないし。

 わたしは清らかなままですよ。いやほんと。

 

 ただ、結果としてはザオザキだったからなんも起こらなかったように見えたけど、仮にザキを先に撃ってから、そのあと生き返らせたとしても病気は治らなかったように思うんだよな。

 

 死ぬということは、前にも言ったとおり運命論的な死であり、死にゆく過程も運命だろう。

 

 その因果をわずかながらも歪ませられるというのであれば、病気も治る可能性はあったんだろうけど、治らないってことは――うん。病気も宿痾なのかな。そういう考え方って、キリスト教の原罪の考え方みたいで、あまり好きじゃないけどな。

 

 だから、わたしはこう思うことにした。

 

――わたしの力不足である、と。

 

 みんなガッカリしてたけど、すまんが、病気を治すのは待ってほしい。

 

 たぶん、今のままじゃ結構難しいんだ。

 

 ルナは、その"難しい"ということを証明させて、わたしの負担をできる限り減らしたかったのだろう。あるいは、もっと単純に――魔法がどこまでのことができるのか知りたかったのか……。

 

 そんな感じで、もしかして殺人童貞――いや、()()()()()()()()()()()()()()()()、ナイーブになっていたイオちゃんです。

 

 そしたら、治療が終わったあとに肩をポンと叩かれた。

 ルナだった。

 

「医者になってみないか」

 

「は?」

 

「例えばの話だ。糖尿病患者の場合、腎臓の機能が著しく低下しているわけだよな。まあ諸所のバランスが崩れてという場合もあるわけだが、イオがいまのところ治せないのは内臓の機能障害ということになる」

 

「ええそうですね。でも、医学的知識がついたからっていって、ベホマで治るわけではないですよ。ベホマはある臓器が『ある』とか『無い』とかは判断しても、どういう状態が正常なのかという判断はおおざっぱだったんじゃありませんっけ」

 

「そのとおりだ。だが細胞の構造まで熟知し、その人の遺伝情報レベルまで読み取れ再構成できるのであれば、作れるじゃないか複製を」

 

 なんでもないようにルナが言う。

 複製? 培養みたいな感じか。

 確かにベホマでは腕が生えてきたりするから、一部でも健康な部分が残っていたらその部分だけを培養することもできるかもと思われがちだけどそうはならない。

 

 例えば真っ二つにしたからって同じ生命が複製されるわけじゃないんだよな。ダンゴムシAをダンゴムシBと分割した実験を思い出してほしい。あのとき、ダンゴムシAはうにょうにょと半身が生えてきたが、ダンゴムシB部分は朽ちてしまった。

 

 これは――わたしには理解しかねるが、たぶんわかりやすい考え方としては『魂』は一個だから、魂が残存する側だけが回復するってことなんだろうと思う。そして、病気というのは『魂』に定着しているステータスなのだろう。したがって、健康な細胞を培養しようとしても、魂が覚えているのは病気の細胞だ。だからベホマで臓器複製はできないんだ。

 

 しかし、ルナの考えは違った。

 

変化呪文(モシャス)だ。あの魔法は原子レベルで変化できるわけだから、イオのイメージ次第でなんでも作れる」

 

「石ころをパンにするくらいしかできませんでしたけど」

 

 あんまり複雑なのは無理でした。例えばゲーム機とか作ってみようかなと思ったんだけど、ガワだけは似せることができても、内部はスカスカの任天堂スイッチとかができて、すごくがっかりしたことを覚えている。

 

「イメージ力の問題だろう。内臓や身体の構造について学べば、イメージがつきやすくなるんじゃないか」

 

 そういわれればそうかもしれないけどさ。

 わたしがそこまで記憶できると思うか。

 ルナの物差しでわたしを測らないでいただきたい。

 

 それにモシャスパンと同じで時間制限があるのが、やっぱりちょっと引っかかる。

 

「それだと変化が切れた瞬間に死んじゃうのでは?」と、わたしは疑問を口にした。

 

「変化時間を二百年くらいに設定しておけば、その前に寿命で死ぬ」

 

「まあそうですけど……」

 

 やっぱり、わたしが医者を目指すのはかなり無謀だ。

 小学生の勉強もこの学園で5位くらいだからな。

 あとから凋落してくるのが目に見えている。

 

 しかし、ルナにとってはそれすらも織り込み済みだったらしい。

 

「モシャスで治せる可能性についてはみんなに教えなかった。なぜかわかるか?」

 

 と、諭すように言ってきた。

 

「モシャスも単体魔法だからですよね」

 

「そうだ。結局のところ全世界から病気という状態異常を消すためには、魔法をもっともっと普及させないといけない。ハッキリ言えば、そこらにいる何人かを救うより、魔法を普及するほうに力をいれるべきだろう。そうすれば、イオは何億という人を救うことができるのだから」

 

「うーん。理論上はわかるんですけど。わたしは困ってる人がいれば手を差し伸べたいですね」

 

「その善意によって、結果的に何億人が死んでもか」

 

 ルナは難しいこと言うなぁ。

 正義とは何かみたいな話。わたしいつも頭がこんがらがっちゃうんですよね。

 見えない何億人とか言われてもよくわからない。

 だってそれは仮想の話で、いま現に目の前にいて泣いている人がいるんだよ。

 その子が胸のおっきな美少女だったら、さっさと治してねんごろになりたいじゃないですか。

 

「わたしは自己満足として治したかっただけなんです」と素直な気持ちを吐露した。

 

 みのりさんがうんうんと頷いてくれている。

 

「まあ、イメージアップという意味では悪くないだろうな。それこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、イオを悪くいうやつはいない。逆に生きてる人間は自分が助けられたら悪くは言わないだろうしな」

 

「そういうつもりじゃないんですけどね」

 

 ルナってかなりの極論主義者で困るわ。

 わたしのほうがそのあたりは柔軟なんじゃないか。

 もしかしないでも、部分的にはルナよりかしこさあるのでは?

 

 ルナのIQは200だと聞いている。しかし、かしこさの値は75だったんだよな。

 

 もしも、アルテリオス計算式のようにIQ-愚かさがかしこさの値だとすればどうだ。

 

 わたし:IQ100-愚かさ97=かしこさ 3

 ルナ :IQ200-愚かさ X=かしこさ75

                             

 ということになって、Xの値は小学生でもわかる。125だ。

 つまり、わたしより愚かさの値が高いということになりはしないだろうか。

 

「どうしたイオ?」

 

 小首を傾げるルナがかわいいから、何も言わないけど。

 この子、わたしより爆弾かもしれない説……あると思います。

 お願いだから自爆(メガンテ)だけはやめてね。

 

「とりあえず撫でます」

 

「うむぅ。好きにするがいい」

 

 撫でるうちに溶けるような笑みを浮かべるルナ。

 

 ちなみに――。

 

 有名なメガンテ使いの爆弾岩もほほえみがかわいかったりする。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 日本の現首相である戸三郎は激務に追われている。

 小学生のイオには預かり知らぬところであるが、日本の政治のトップが暇なわけがない。

 

 様々な会合への出席、いろいろな国とのやりとり、利害関係人への根回しなど、重責に伴う業務の絶対量というものがあるのだ。行動スケジュールは分刻みといっても相違ない。

 

 そんな戸三郎も、ほんのわずかな休憩時間を得られることはある。

 

 執務室で、優雅なティータイム。

 適温になった緑茶をすすり、静かに黙考する。

 考えるのは日本の未来だ。魔法技術によって今よりはるかに豊かになった未来。

 人々は空を飛びかい、ルーラで移動は遥かに楽になり、多くの病魔は打ち払われる。

 希望に満ちた未来だ。

 

 しかし――、何もしないで未来を明るく灯せるわけではない。

 人間とは堕しやすいものであり、大人には残された責務というものがある。

 

 ガンが消え奇しくも生きながらえた自分に何ができるだろうか――。

 

 そんなことを考えていたときである。

 イオからラインのメッセージがきた。

 いま電話をしてよいのかという旨の内容だ。

 

 戸三郎はすぐに電話をかけた。

 

「どうしたのかね。イオちゃん」

 

「あのぉ……、戸三郎おじいちゃんにお願いがあるんです」

 

 妙に甘えた声だった。

 戸三郎は知らず知らず破顔する。

 イオは魔法を使えばほとんどのことはできてしまう。そんなイオが子どもっぽくおねだりをしてくるというのがかわいらしくもあったし、それに実のところ戸三郎には負い目があった。

 

 例の除染と北のミサイルの件である。

 あれは、明確にイオに対する貸しだ。イオ自身にその気持ちがなくても、なんらかのお返しをしなければならないと考えていたのである。

 

「なにかね。わたしにできることならなんでもしよう」

 

「ありがとうございます。さしあたり――」

 

 子どもらしく、おねだりを躊躇しているようだ。

 ますます、ほほえましくなり、お茶をひとすすり待つことにした。

 

「国土の割譲をお願いいたします」

 

「ぶっ!」

 

 一杯二千円の高級茶が執務室に飛散した。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 イオのお願いはべつに本当の意味で国土を割譲しろというものではない。

 国土というのは文字通りの意味で『土』である。

 要するにプライベートビーチが欲しかったのだ。

 

 実のところ、友人たちといっしょに海に行く計画をしていたイオは、自分が有名になりすぎていることに、つい先日、いまさらながら気づいたのである。

 

 しかも――、モシャスを使って自分を偽るというのがどうしても嫌なのだった。

 

 もともと魔法を好き勝手に使って生きていきたいというのは、ありのままの自分でいたいというのと同義だ。

 

 イオにとって魔法とは自分であり、超絶美少女であるというのもまた自分(わたし)なのである。

 

 そんなわけで、プライベートビーチのほうが簡単だろうと思ったのだが、こちらは一日だけ海水浴場を貸し切りにしてもらうとか、いくらでもやりようがあっただろう。

 

 ただ、これもなにか魔法的な遊びがしたかったわけで……。

 つい、日本の総理大臣におねだりをしちゃったのである。

 

「割譲というのは、その……この国のどこかにイオちゃんの国家を創ろうということかね?」

 

 一国のトップが動揺を隠せない。

 かすかに緑茶の水面が揺れている。

 

「え? 違いますけど」

 

「違うのかね……はぁ……寿命が縮むな」

 

「えっと、どういう言葉が正しいのかわからないので、イメージに近い"割譲"という言葉を使ったんですけれども、あの……要するにですね。天空城みたいな感じです」

 

「天空城。ドラクエⅣに出てきていた空を飛ぶ城のことかね」

 

「そうです。まあ正確にはお城ではなくて空飛ぶ島みたいな感じでしょうか」

 

「ふむ……よくわからないので続けてくれたまえ」

 

「えっと、わたしが核ミサイルを凍らせたときにですね。海面といっしょに固まっていたソレを飛翔呪文(トベルーラ)で浮かせていたんですよね」

 

「ふむ。聞いておるよ。そのあとに水蒸気爆発が起こったらしいが、ミサイルは持ちあげていたから大丈夫だったと」

 

「そうなんですよね。あのとき、ちょっとした島くらいの大きさがあったミサイルをわたし、楽々と持ち上げていたんです。だからできるんですよ」

 

「なにがかね」

 

「例えば、()()()()()()()()()()()()かなって」

 

「なるほどなるほど……」

 

 イオの言ってることがようやく理解できた。

 この娘、まさに文字通りの意味での『国土』を要求しているのである。

 

 大地とくっついている島を、無理やり魔法力で引っぺがし空飛ぶ島にする。

 日本の土をよそ様に持っていくわけだ。大問題である。

 戸三郎は胃の裏のあたりがキュっと縮むのを感じた。

 

「国土の端だと、EEZとかに影響するんですよね。だから、近くにある小さな島でいいんです。すぐにお返しするから、お願いします。おじいちゃん」

 

 すぐに返すとか、そういう問題ではなかった。

 ある日突然、島が一個なくなるのである。無人島もないわけではないが、そこに住んでいないというだけであって、人の往来がまったくないわけではない。

 

「ううむ……その、環境とかの影響はないのかね?」

 

 なんとか無難に諭そうとする戸三郎。

 

「大丈夫ですよ。太平洋側にほんの少し移動するだけです。あんまり離れすぎないようにしますし、なんなら、日本の国土をちょっぴり広げちゃいましょうか」

 

 さりげに国土拡張計画である。

 

「うむ……浮島だと国土とは見なされんかもしれんな」

 

「そうなんですか? だったら日本全部を浮島にしちゃって、超海上国家にする計画はあまりよろしくなさそうですね」

 

「わたしの胃にとってもな……」

 

「それでどうでしょうか」

 

「ううむ……」

 

「総理大臣のおじいちゃんが許してくれれば大丈夫だと思うんですけど」

 

「わたしの一存では決められん。そうだ! 君のお母さまはなんて言ってるのかね」

 

 イオのストッパー第一の候補は星宮マリアである。

 イオが無茶苦茶なことを言っても、マリアが止めれば、それに逆らったことはいままでない。

 戸三郎は祈るような気持ちで、イオの言葉を待った。

 

 が――。

 

「好きにしなさいって言ってましたよ」

 

 ダメ。

 

「そう、なのか……」

 

 愕然とする戸三郎。

 

 まさかあの理知的な母親が、あきらめてしまったというのか。

 

「ええ、お母さまはちゃんと言ってました。(戸三郎おじいちゃんがいいって言えば)好きにしなさいって」

 

 かしこさの足りないイオは、べつに詐言を(ろう)しようとか、そんな高度なことを考えていたわけではない。ただ、言葉が足りなかっただけなのだ。人の勘違いを加速させることに関してだけでは天才的な才能を持っている。

 

「ならば、わたしとしても何も言うことは無いが、物には限度というものがある。わかるね?」

 

「えっと時間と量の話ですか?」

 

 国の島を借りるのである。

 いつまで借りるのか。どれだけの広さの島を借りるのか。

 それによっても対応度が異なるだろう。

 

「そうだな。細かいところは君のお母さまと詰めさせてもらうが、イメージとしてはどの程度の期間、どの程度の大きさの島を借り受けるつもりかね」

 

「えっとですね。たぶん三日です。それくらいでみんな飽きちゃうと思いますし、大きさはそうですねぇ……学園がすっぽり入るくらいですかね」

 

「ふむ。適当な大きさのものを見繕っておこう」

 

「あと三日で夏休みが始まっちゃいますからそれまでにお願いできたら幸いです」

 

「わかった。そうしよう……」

 

「ありがとうございます。おじいちゃん大好き!」

 

 ほどなくして、電話は切れた。

 

 おじいちゃん大好きという言葉に、胸の中にじんわりとあたたかいものが宿るが。

 しかし、このモヤっと感はいったいなんなのだろうか。

 

「官房長官。少し尋ねたいのだが……」

 

 戸三郎は別室で控えていた官房長官を呼んだ。

 

 もちろん内容はひとつ。

 

 イオに国土を賃借する際に、臨時国会を開く必要はあるのかという話である。

 戸三郎の質問に対し、しばらくのあいだ官房長官は絶句したという。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「お母さま」

 

 電話が終わったあと、ルンルン気分でママンに駆け寄る。

 なにしろ、あっさり戸三郎のじいちゃんが認めてくれたからな。

 普通、島を一個浮かせるとか、さすがに厳しいんじゃないかなってわたしも思っていた。そのときそのときで、モシャスを使って、突然海の向こう側に島っぽいブロック構造体を浮かせたらいいかなって考えていたけど、わたしのイメージ力じゃ、島っぽさを作り出せないんだよな。

 

 だから、島を持ってっていいっていうのは僥倖である。

 

 まあ最終手段としてアメリカに頼るって手段もあったけどね。ルナが言うにはアメリカの大統領は気前よく島をくれるそうだったし、権利書もつけてもいいって話だったしな。小学生に島ひとつくれるとかさすがアメリカ様は違うな。

 

 ついでにアメリカ人になっちゃえよとルナには言われたりしたけれど、ママンが日本人だから無理なのです。残念だと言われちゃったけどね。ふふ、日本だって捨てたもんじゃないでしょう。

 

「イオ。やっぱり総理大臣はダメって言ったでしょう」

 

「いや、いいって言ってくださいましたよ」

 

 ママンがギョっとした。

 なんでそんなに驚いているのか。コレガワカラナイ。

 

「本当にきちんと伝えたのね?」

 

 ママンに肩のあたりを持たれて、全力で揺らされる。

 本当に本当である。まちがったことは言ってないよなわたし。

 

「きちんとお伝えしましたよ。そのうえで大丈夫だという話でした」

 

「信じられないわ……」

 

「もちろん、お母さまと細かいところは詰める必要があるようですけど」

 

「アメリカに水をあけられていると考えた……。それともルナの影響……。わからないわ」

 

 ママンがぶつぶつ言ってるけど、最近はよくあることだ。

 社長なりの苦労っていうのがあるんだろう。

 女優と社長じゃやってることがまるきり違うからな。

 

 そういやママンって今、魔法カンパニーの社長をしている関係で、ほとんど女優の仕事はやってないけど、未練とかないのかなぁ。娘のためとかだったら申しわけないけれど……。

 

 しばらくの後。

 

 ようやく納得したのか、ママンはわたしのほうを見てくれる。

 

「……絶海の孤島なら、たぶん何も起こらないと思うから大丈夫だとは思うけど、余計なことはしない。なにかあったらすぐに帰ってくること。いいわね」

 

「わかりました」

 

 そうなのだ。今回は親子同伴なし。子どもたちだけだ。

 

 まあ、親子同伴というのも興ざめだからな。

 今回は魔法クラブのメンバーだけの旅行を許してもらった。

 周りに人がいない状況が必要だったのもそれが原因だ。

 貸し切りにしてても、どこかで入りこむ可能性があるからな。

 

 ていうか、みのりさんとかルナはまだわかるけど、理呼子ちゃんが親を説得できたのがさりげにすげえ。どんな魔法を使ったんだろう。

 

 ともかく――海だ。

 

 ワクワクがとまらない。

 

 でかけよう。常夏の島へ。

 

 日本産だけどな。




ザキを使った人体実験(治療行為)については、お手当が必要かなということで前半部分に書き足しました。本来なら前話の後半にくっつけたほうがわかりやすいかもしれませんが、追記方式だと読みにくかったりするので、このまま新しい話としてくっつけます。文字数のコントロールがへたっぴなの。ゆるして。

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