ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です 作:魔法少女ベホマちゃん
その日――、人類は思い出した。
といっても大仰なことではない。
ただ、巨大な質量体が人々の頭上に浮かんでいるだけだ。
でも、いままでに見たこともない光景じゃないかなって思う。
わたしは、戸三郎じいちゃんに用意してもらった島を、
イオちゃんズランドは、ちょうど芋のような楕円形をしている。できればひょうたんのような形がよかったんだが文句は言うまい。
一辺が1キロメートル程度で、思っていたよりも結構デカい。もともとは島の南東部には集落があったみたいだけど、打ち捨てられていて廃墟みたいになっている。灯台とか神社とか学校みたいな建物もあって、わたしたち四人だと全部見てまわるだけでも結構時間がかかりそうだ。
それで――。
わたしたちは既に島の淵に立っていて、眼下を見下ろしている。
海上なので見えるのはほとんど海の青だが、高度があがるにつれて他の島々も見えてくる。
海面が光を浴びて輝いている。
日本って本当に島国だよなぁ。
いや、意味がわからんと思うけど、広大な海の中に小さな島々が連帯しているのが、なんか日本人のDNAを直撃しちゃう。心の底からきれいだなって思えるんだ。
生身で飛んでいるときもそう思えたけど、こうやって島の淵から見下ろしていると、なおのことそう思う。
戸三郎じいちゃんには感謝しないとな。
三日の間に関係各所に連絡してもらって、一応、島内に人が残っていないか確認もしてもらい、最終的にあまり問題がないかたちに落ち着かせてもらったわけだし。
ママンはママンのほうで、契約書とかの取り交わしとか、やっぱり関係各所への連絡とか、こちらも奔走してくれてた。
大人たちの多大な努力によって、わたしたち子どもが遊べるんだなって、そう思う次第です。
そんなわけで、浮遊する島である。
トベルーラについては魔法による出力で飛んでいるから常時コントロールが必要だけど、そのうち自動で飛べるようにならないだろうか。いまのままだとわたしが眠ったり気絶したら、魔法が解除されて島は落下する。
できれば、わたし無しでも飛び続ける形にしたいよなぁ。
だって、天空都市とかあこがれるじゃん。
「無理なんでしょうかね。ガスとかで浮かせるとか」
「あー。理論上できなくはないだろうが、ガスの容器だけで、どれだけのデカさになるのか想像もできないな」
ルナはかぶりを振った。
まあそうなるか。
「じゃあVTOL機みたいに常時、ロケット噴射するんです」
「恐ろしいほどのエネルギーの無駄遣いだな」
「魔法だって無駄遣いしてますよね」
「一晩寝れば全快するちからを無駄遣いといわれてもな」
「そりゃそうですよね……」
三秒で論破されるわたしである。
「それよりイオ。島の底のほうを固めたほうがいいぞ。万が一のときの落下物は怖いからな」
ルナが下のほうを指さしながら言う。
ああ、なるほど。
指さされた方を見てよくわかった。
わたしは魔法でむりやり島をひっぺがしたわけだけど、当然、海上に水やら土やらがパラパラと降り注いでいる。このまま、日本の国土を横切ることになれば、みなさんにご迷惑をおかけするってわけだな。
「すでにご迷惑はおかけしちゃってるけどね」
理呼子ちゃんの突っ込みが激しい。
やりたかったんだよ。しょうがないじゃん。自分の島を持ちたかったの!
「ともかく固めてしまいましょうか。
アストロンは対象を鉄のカタマリにする呪文だ。
鉄といっても、はげしい炎でも溶けないし、輝く息でもノーダメージなんで、なんかよくわからない謎物質になるって言ったほうがいいだろう。
ゲームでの仕様は、行動ができなく代わりに無敵になるという効果だった。
行動できないのに何の意味があるのかというと、敵の行動パターンを把握していてうまい具合に強い攻撃を避けるとか、MP切れを狙うとか、そんな感じの使い方だな。要するに、上級者向けです。ドラクエフリークのわたしは、エンジョイ勢なので使いこなせませんでした!
ただ――現実的にはわりと使えるようだ。
島の底の部分が抜けないように、アストロンが固めている。
これで水や土が落下することはなくなる。
「日本を迂回するように回ればその心配もないけどね」
みのりさんは砂浜に日本地図をおおざっぱに描いた。
確かに日本はいろんな海峡があるわけだからな。べつに他国の領海を通る必要もないし、海の上を移動するだけでも可能だ。
「でも――、みんなに見てもらいたかったんです」
巨大な島が浮遊するイメージ。
楽しいじゃん。いつか、そこに住みたいって思ってくれたらうれしいなって。
喧噪には巻き込まれたくないし、わたし自身が変装するのも嫌っていうわたしのわがままが理由だけど。
こうやって天空の島を作り出すというのもワクワクしてくるんだ。
これもわがままかな。
「イオちゃんが男の子っぽいなあ」
みのりさんのおっぱいに包まれました。
そのまま後頭部を撫でまわされます。
なんだかお姉さん的存在に、男の子だねって言われる展開。
ちょっとだけドキっとしてしまう。
ついでに頭をヨシヨシしてもらったり。
ベアハッグ的に抱きしめてもらったり。
「にゃあ。なぜ撫でるんです。男の子なのに」
「なんだかお姉さん的にかわいいなって思って」
「おねショタですか」
「おねロリだけどね」
「イオちゃん。おっぱいに負けないで!」と理呼子ちゃん。
「ダメです。おっぱいには勝てないんです。そういうものなんです」
「イオちゃん!」
絶叫する理呼子ちゃん。
「どうでもいいが、トベルーラのコントロールをミスってコロニー落としみたいになるなよ」
あきれたようなルナ。
ルナの言い分ももっともだった。
ちょっと、制御が緩んでいた感じもするしな。
あわてて、みのりさんはわたしを解放する。
「危ない危ない。私のおっぱいで日本が滅亡するところだったね」
「ちょっとだけ物足りない感じです」
「あとでいくらでもしてあげるからね」
「はい。がんばります!」
ご褒美のために人はがんばれる。
☆
181:名無しの魔法少女観察者
天空城
182:名無しの魔法少女観察者
城ないけどな
183:名無しの魔法少女観察者
かなり高度落としてるな
大丈夫なのかちょっとひやひやするわ
184:名無しの魔法少女観察者
でぇじょうぶだ
みんな死んでも
ザオリーマで生き返る
185:名無しの魔法少女観察者
なんでもかんでもザオリーマで解決って
かしこさ3なんですかねえ
186:名無しの魔法少女観察者
なんだぁ……てめぇ
187:名無しの魔法少女観察者
喧嘩すんなよ
大丈夫だろ
あの島が船舶扱いなら、落ちそうになった瞬間にルーラすれば大丈夫なんじゃないか
ルーラは船舶も同時移動なんだし。
188:名無しの魔法少女観察者
でもわざわざ見せつけてくるのってなんなんだろうな
まさか、イオちゃんがついに世界征服に乗り出したとかか?
まおーさまに支配されちゃうの?
幼女に足で踏みつけられて従えって言われちゃうの?
やだ興奮する
189:名無しの魔法少女観察者
ここであえてみんなが言わなかったセリフをば
見ろ、人がごみのようだ
190:名無しの魔法少女観察者
見下ろされているのはオレらなんだよなぁ
191:名無しの魔法少女観察者
この島どこまでいくんだろうな
幻想的すぎて現実味がない
192:名無しの魔法少女観察者
なんか南の島でバカンスしたいとかおバカなことツイートしてたけど
普通思いついても実行しようとしないよ、イオちゃん……
193:名無しの魔法少女観察者
ちょっと前に水着買ってたのってもしかしてこのためだったんだな
天空島をイオちゃんズランドとでも名づけて、テーマパークを開催すれば
めちゃくちゃ人はいりそうじゃね
194:名無しの魔法少女観察者
デパートでの映像見たけど、喧噪から離れたいっていうのわからんでもないわ
あれだけ人が来まくったらさすがにうんざりするだろ
ここ数か月で、発電やら除染やらミサイルやら、いろいろやってるからなぁ
ちょっと休みたかったんちゃうん
195:名無しの魔法少女観察者
新作魔法のほうがどうも芳しくなさそうだしな
ザキ・ザオリク治療法についても病気は治せなかったらしいし
現在の方法では内臓疾患系の病気の治療は不可能なんだよな
196:名無しの魔法少女観察者
ザキ・ザオリク治療法ってヤバくね?
人体実験じゃん
197:名無しの魔法少女観察者
人体実験なのは、そもそもベホマズンからしてそうなわけだが
なにいまさら言ってるんだ?
ザキだからあかんっていうのは、死にかけの人間には通じない論法だぞ
実際、あと余命数か月ですって言われたら、ダメ元でも試すだろ
198:名無しの魔法少女観察者
ワシの禿も治らんのか……
199:名無しの魔法少女観察者
時間を巻き戻す魔法を使えば治るように思うけどな
200:名無しの魔法少女観察者
人類が不老になっちゃうわけだが、時戻しも単体魔法だからな
ひとりにかけている間に、何人かが寿命で死ぬわけで、不平等だって言われるだろうから
実質的には無理だよ
世界が許さない
たとえば、有用な人物は寿命を延ばすとかされても暴動が起こるだろ
201:名無しの魔法少女観察者
魔法は全員に平等でかけられる全体魔法じゃないといろいろと困るな
そろそろ新作ドラクエが発売されるんだろ
まずはプレイしてみてからだな
202:名無しの魔法少女観察者
百パーセント政府の意向が入ってる
ドラクエであってドラクエじゃないものができあがってる気がする
203:名無しの魔法少女観察者
おまえにドラクエの何がわかるんだよ
204:名無しの魔法少女観察者
ドラクエ原理主義者も怖いわ
イオちゃんのことは忘れてっていうのも無理だろうけど、ゲームはゲームだろ
205:名無しの魔法少女観察者
そもそもイオちゃんの解釈次第でけっこう幅があるんじゃないか
つまり、イオちゃんの教育と勉強次第で、わりとなんでもできるようになるとか
病気が治らなかったのも『レベルが足りなかった』せい
206:名無しの魔法少女観察者
イオちゃんの匙加減で人類は救われたり滅んだりする
207:名無しの魔法少女観察者
まあそのあたりについてはもう慣れたよ
イオちゃんはわりと頭はあんまりよろしくないけど
狂ってるわけじゃないんだし
208:名無しの魔法少女観察者
破天荒(誤用のほう)ではあるような
反社会性人格障害ではないけれど、もう少しなんというか……社会になじむような努力をですね
209:名無しの魔法少女観察者
まあイオちゃんが社会になじむより
オレらがイオちゃんになじんだほうが早い気がするわ
イオちゃんにっていうより魔法に
210:名無しの魔法少女観察者
魔法が使えるようになれば魔法になじんでいくんだろうけどな
いまは個人的な能力すぎてなぁ……
そりゃ電気代は安くなるだろうし、欠損とかは治るんだろうけど
あんまりオレには関係ないって感じ
211:名無しの魔法少女観察者
イオちゃんの水着姿ぁぁぁぁぁぁぁ
飛翔する姿は美しく、まるで天女のよう
あああ、我もエデンの地へいざ参らん
212:名無しの魔法少女観察者
このまま南の島にいって植生とかめちゃくちゃになったりとかしないのかな
213:名無しの魔法少女観察者
まあ魚は大丈夫だろうな
虫や鳥は島から脱出するやつもいるだろうが
そもそももともとあった場所でも飛び立つやつはいたわけだからたいした影響はない
日本からそこまで離れなければな
あと短期間なら
214:名無しの魔法少女観察者
島ではいつのまにかスライムや魔物が大繁殖して……
215:名無しの魔法少女観察者
謎の島で、吸血鬼が大繁殖し、日本は48日後に全滅する
216:名無しの魔法少女観察者
ハァ……ハァ……
217:名無しの魔法少女観察者
そういや、あの漫画、48日後のあとに
まさか48か月後が出るとは思わんかったわw
218:名無しの魔法少女観察者
最近は丸太の出番が少なくて不満があります
219:名無しの魔法少女観察者
今度は48年後になって、次世代漫画になるんだ
オレは詳しいんだ
220:名無しの魔法少女観察者
イオちゃんて目の色を赤くしたら典型的な吸血鬼ルックだよな
寿命も実質無限だろうし、これはもしや
イオちゃんにかまれて下僕になる展開では
221:名無しの魔法少女観察者
おまえはせいぜいグールがふさわしいよ
222:名無しの魔法少女観察者
イオちゃんのトベルーラの使用ってよくわかんないんだけど
もしも、ずっと浮かせられるなら
日本全体を浮遊してもらったほうがいいんじゃない?
地震なくなるで
223:名無しの魔法少女観察者
地震がなくなるっていうのは魅力的だが
物資の運搬とかどうするんだよって話で
そもそも、トベルーラはつま先立ちみたいな感じで、
ずっと魔法力を出していないとダメなんだろ
224:名無しの魔法少女観察者
イオちゃんが空飛ぶ島を南のほうに持っていくのはいいとして
どうやって海の上に浮かせるの?
225:名無しの魔法少女観察者
そういやどうやってだろうな
226:名無しの魔法少女観察者
オレらには秘匿されている魔法の使い方とか絶対あるだろ
227:名無しの魔法少女観察者
例えばこういうのはどうだ
海面にマホカンタを張って極微力なベタンをかけ続ける
魔法力をこめると持続時間が伸びるタイプなら
これで大丈夫だぞ
228:名無しの魔法少女観察者
天才あらわる
229:名無しの魔法少女観察者
すっごいグラグラしそうなんですがそれは
230:名無しの魔法少女観察者
ドラえもんは数ミリ浮いているらしい
案外いけそうかなぁ
☆
日本の上空を通過したあとはさっさと加速させた。
そして、いよいよ目的の場所付近にやってきた。
「いいか。このまま下ろしたらアストロンの効果で島は沈む」
「それくらいわかっていますよ。ルナちゃん。わたしだってバカじゃないんですから」
そもそもの話。
島の浮かせ方については、ルナとも協議をしていろいろと話し合った。
候補にあがったのは、マホカンタを海面に薄く張って
ただ、これは反重力になるのはいいんだけど、島の下部を形成しなければならない。
海面には波があって揺れ動くから、その上につるっつるの反重力面がある物体を載せたらどうなるのか。
答えは滑る、だ。
そうならないように、薄いお皿を裏返したような形状に整形すればある程度安定するかもしれないが、魔法で削るにしろ移動したあとに形成の仕方が甘かったらボタボタと大量の"国土"を公海上に落とすことになりかねず、それはそれでまずい。
もうひとつの方法として、海面を回転させるという方法も考えられた。
ドラクエには波を操る呪文もあるからな。
これで渦巻き状に波を回転させて、コマみたいな形状になっている島を回転させ、遠心力によって固定するという方法だ。
イメージとしては下方向にスクリューをまわす感じだな。
ただ、考えるまでもなくわかるとおり、これ絶対気持ち悪くなる。どれだけのスピードで回転させればいいのかはわからないけど、メリーゴーラウンドに三日間も乗り続けたら、三半規管が死んじゃいそうだ。
なのでこれも却下。
結局、無難な方法として考えられたのは、島の下部を土から木に変えるという方法だった。
あまり浮きすぎてもグラグラするので、石と木でバランスを取っていく感じ。
着水。安定度ヨシ!
これでイオちゃんズランドの完成だ。
さぁ、遊ぶぞ!
ダッシュ村みたいな展開ですけど、たぶん一話くらいで終わります。
島開発編とかはやらない感じです。