ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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無人島探索。ついでに唐突な中だるみ回避の温泉回前夜。

 空飛ぶ浮島は普通の浮島に形を変えた。

 その名もイオちゃんズランド。

 イオちゃんズランドはアミューズメントパークになりそうな要素をたくさん秘めている。

 適度な広さ。適度な非日常性。どこかノスタルジックな感覚。

 つまりは……。

 

――物が死んだ感覚っていうんですかねぇ(上級者目線)。

 

 人が住んでいた形跡はあるけれどもみんな廃墟になってしまっている。

 

 廃墟探索。

 なんとなくワクワクすると思いませんか?

 冒険心をくすぐられるというか。

 時間が封じこめられている感覚が美しい。

 雄大な時の流れが、塵ひとつさえ舞うことのない閉め切られた空間の中に閉じこめられている。

 それを開け放つのはひとりの冒険者だ。

 

「ふむ。山のほうに向かうのも一興ですね」

 

 しかし――。

 

 他方で見渡す限りの海もきれいだ。

 社会という喧噪から離れた圧倒的解放感。

 生命が溢れる透明度の高い海。

 きらめく真夏の太陽。

 波しぶきにその身を浸してみたい。

 廃墟が死の美しさであるとすれば、海は生の美しさだろう。

 

 というか、女の子どうしで波をかけあったりして、きゃっきゃうふふするんだ。

 みんな示し合わせたように美少女ばかりだから、わたしうれしっ。

 

「イオちゃん。最初に海で遊ぼうよ」

 

 みのりさんがエメラルド色に染まっている海を指し示した。

 うむ。そういう説もあるな。

 

「先に山を探索しよ?」

 

 今度は理呼子ちゃんだ。

 うむ。そういう説もあるな。

 

 わたしとしてはどちらでもいいんだけど、なんかふたりともにらみ合ってない?

 

「あの……」

 

「イオちゃんは海のほうが好きだよね」

 

 みのりさんがわたしの腕をとる。

 グイっと引っ張られる。

 そのまま砂浜のほうまでひきずられていく。

 バイキルトをかけていない素の筋力は、中学生であるみのりさんに敵わない。

 

「みのりさん。海か山かはまず話し合いをすべきでは……」

 

「海でおっぱいが浮くのか実験してみたくない?」

 

 みのりさんがおっぱいをほのかに押しつける。

 すでにみのりさんは水着姿だ。その上に白のパーカーを着ている。

 これがまたエロい。

 見えるか見えないか。

 ちらりと覗くフェティズム。

 シュレディンガーのおっぱいは神秘性すら帯びている。

 

 ああ……彼女のおっぱいは浮くのだろうか。

 わたし、気になります!

 

 そんな哲学的思考をしていたら、グイっと反対側を引っ張られる。

 理呼子ちゃんだ。

 

「海とかいつでも入れるんだから、先に山に行こうよ。イオちゃんの好きなカブトムシとかいっぱいいるよ」

 

 理呼子ちゃんも水着姿だ。

 あのときわたしが一度着たセパレートタイプの水着。

 いつのまに買ったのか、短めのパレオまで巻いている。

 

「理呼子ちゃん。わたしは強いて虫が好きというわけでは……」

 

「イオちゃん。今日のごはんは釣った魚を焼くってことも考えられるよね」

 

 みのりさんだ。

 

「ええと、みんなが持ち寄った食材が普通にあるので」

 

 べつにいらないんですけど。

 

 と続ける前に、今度は理呼子ちゃんにさらに強く引っ張られた。

 

 ちょっとちょっと。強引ですよ。

 

「山のほうにもキノコとか食材はたくさんあるよ」

 

「キノコはちょっと危険じゃないですかね。毒とかの可能性もありますし」

 

「キアリーがあるでしょ!」

 

 キノコチャレンジはちょっと……。

 

 ついに、大岡裁きのようにふたりして全力で引っ張られているわたし。

 

 スカラとかその他の防御系の魔法を使ってなかったら、とっくの昔に脱臼しているだろう。

 モテる女はつらいぜと言いたいところだが、たぶんふたりともよっぽど海とか山とかに行きたいんだろうな。四人しかいないから必然的にひとりでも説得できれば少なくともイーブンには持ちこめるわけだし。

 

「そういえば、ルナちゃんは海と山のどちらがいいんです?」

 

 ルナは私たちを尻目に遠くを見つめていた。

 なんとなく、どちらかはわかったけれど、四人しかいないんだ。

 ルナに聞くのが筋だろう。

 

「うーむ。強いて言えば海だな」とルナは言った。

 

「やった」

 

 みのりさんが勝利を確信して喜んでいる。

 

「深海を見てみたい」

 

 ルナは続けて言った。

 

「は?」

 

「トラマナを使って海溝に潜ってみたい」

 

 ああ、科学的な探求心ってやつね。

 

 ルナはあいもかわらずドクタースタイルを貫きつつ、その下には水玉模様の水着を着ていた。

 遊び心にも科学的実験を忘れない姿勢。マジあこがれてる。

 

 たぶん、みのりさんはスキューバダイビングみたいな比較的浅いところを楽しみたかったんだと思う。お魚さんの群れと優雅に泳ぐ的な。

 

 みんなには危なくないようにトラマナとスカラとバイキルトをかけようと思っていたから、たとえサメに襲われても大丈夫です。

 

 ファイブヘッドシャークでも襲ってこない限りな。

 

 でも、深海はなぁ……。ちょっと怖くないか。

 いくら冒険心にうずいているわたしでも難易度が高い。

 

 だって――。だって。

 

 ()()()()()()()()()

 

 日が差さない真っ暗な空間だと聞いている。

 

「あの……、ルナちゃん。深海は暗いという話です」

 

「ん。当然だな。ついでに言えば、十トン近くの水圧と零度以下の冷たい水温の過酷な環境だ。この環境を問題なく走破できれば、イオは宇宙空間も無事に渡れるだろう」

 

「宇宙遊泳はいいんです。お星さまが輝いてるでしょう」

 

「そんなに暗いのが嫌なら、レミーラすればいいじゃないか」

 

 ムスっとして不機嫌な表情になるルナ。

 それで、ルナはわたしの腰回りに抱き着いてきた。

 

「はにゃ」

 

 あいもかわらず両腕に花の状態だし、ルナには前から抱き着かれるし。

 身動きがまったくとれん。

 なにがなんだかわからない……。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 結局、みんなの希望をひとつずつまわっていくことになりました。

 じゃんけんです。わたしは傍観です。

 

 最初に勝ったのはルナだ。

 

 ルナは自分ひとりでもいいといったんだけど、年頃の娘さんがひとりで深海に行くなんて、お姉ちゃんごころが許せない。

 

 まあマジで危険かもしれないんで、暗いのは我慢だ。

 

 いまはまだ光る水面が頭上に見える。

 これくらい明るくて、小さな魚の群れが見えたりすれば、全然怖くない。

 サメはいないみたいだな。まあいても、ギラで殲滅するけど。

 悪いが、B級サメ映画はNGだ。

 シャークにさわったか? すまんな。

 

「トラマナって海中でも会話できるんだ。すごいねイオちゃん」

 

 思ったよりも理呼子ちゃんも楽しそう。

 

「呼吸もできるし、これだと泳ぐのも楽ちんだね」

 

 みのりさんは元から海が好きだったのか、無邪気にはしゃいでいる。

 水流を受けてゆるやかに形を変えるふたつの膨らみ。

 これが柔よく剛を制すというやつか。

 

「あー。さっさとアストロンかけてくれ」

 

 ルナはべつに海には興味がないらしい。

 

「泳いでいかないんですか」

 

「面倒くさいだろ。時間もかかるし」

 

「わかりました」

 

 アストロンを使えば、鉄のカタマリになって重さで沈んでいくだろう。

 ルナが言うように海溝まで一番早く到達する方法だ。

 もっと早い方法としては、トベルーラを使ってガッツリ海の中を飛翔していけばいいけど、怖いからそのままでいいか。

 天井ではなくて海の底に頭をぶつけるとか、いやだしな。

 

「イオちゃん。怖いなら、手をつなごうか」

 

 理呼子ちゃんが提案してくれた。

 暗いの怖いの知ってるからな。理呼子ちゃんはやっぱり天使だ。

 

「お姉さんとも手をつなごうか」

 

 もう片方の手はみのりさんと。

 

「あのルナちゃんも手を」

 

 わたしは両手を握られてしまったので、みんなで輪になろうと提案した。

 

「さっきみたいな感じでいいだろ」

 

「え?」

 

 がっしり。

 つかまれたのはわたしの胴回りだ。

 まあいいか。べつにわたしはロリコンじゃないし、ルナはかわいいけれども変な気持ちになったりはしない。ルナが安定する姿勢が抱っこ体勢だったんだろう。

 

無敵呪文(アストロン)

 

 四人は鉄のカタマリになって沈んでいく。

 じわりじわりと海が暗くなっていき、生命の色が消えていく。

 

 一切の身動きがとれない状態だけど、なんだか心臓がどきどきしてきた。

 心臓動いていないかもしれないけど。

 

 理呼子ちゃんと目があったような気がする。

 

 口には出せないけど大丈夫だよって言ってくれてる気がする。

 

 昏くなっていく。

 

 昏く。

 

 昏く。

 

 そして、音さえも寂滅する黒の空間に到達した。

 ここでは魚類のような高等生物は存在しえない。

 

光源呪文(レミーラ)!」

 

 すぐにわたしは周りを照らした。

 空間は明るく光り輝き、黒は白へと追いやられる。

 

「まぶしいぞ。加減しろ」とルナはお怒りぎみ。

 

 ちっちゃいおててで目を覆ってる。

 

「すみません」

 

「暗くて怖いのはわかるけどな」

 

「ルナちゃんも怖いんですか」

 

 周りを見わたして見ても、さらさらとした砂のような海底しか見えない。

 生命の気配がない。

 

「怖いというより寂しい感じだな。ここには複雑系が足りない」

 

「複雑系、ですか」

 

「極めて自己組織化された系――いのちだよ。いのちが足りないから寂しく感じるんだろう」

 

「ルナちゃんが哲学的です」

 

「まあここらへんはなんもないよね。いきなりダイオウイカと遭遇したら、私スルメにして食べたいんだけど」

 

 みのりさんは案外に食いしん坊らしい。

 

「宇宙もこんな感じなのかなぁ」

 

 理呼子ちゃんもきょろきょろと何もない空間を見渡している。

 

「もう少し高度をあげるぞ。今度はトベルーラで3000メートルほど持ち上げてくれ。それくらい上がれば深海魚を見られるかもしれん」

 

 ルナの指示に従い、高度を上げる。

 数千メートルのぼっても、暗闇の中であることは変わらない。

 レミーラの光は淡くあたりを照らし出しているけれど、ずっと先まで見通せるほどではない。

 たいまつのように頼りなく感じて、逆に怖かったりする。

 

「あ、なんかいる」

 

 みのりさんが指さした。

 うへえ。暗闇のなかにボーンと光ってるのは骨だ。骨だけに。

 

「なんかスケルトン的な魚が泳いでいますよ。お魚さんの亡霊でしょうか!?」

 

「イオちゃんおちついて。ただの魚だよ」

 

 理呼子ちゃんのほうが落ち着いている。

 ただの魚があんなにスケスケなはずが……。

 

「深海魚は色合い的には白っぽいのが多いぞ」

 

 ルナは言いながら、猫のような素早さでスケルトンっぽいそいつを手づかみした。

 トラマナによる環境適応は水圧を物ともしない。ついでにバイキルトで筋力増強しているから、いつもより素早かったりもする。

 

「ルナちゃん。なにしてるんですか。そんな骨っぽいの掴んじゃダメです」

 

「世界初の手づかみだぞ。このまま持って帰る」

 

 骨っぽい魚を持って帰るとか言い出しやがった。

 玩具を買ってもらいたくてごねる子どもかよ。

 ひえ。わたしのほうに近寄らせないで。

 

「かわいそうだから離してあげてください」

 

「こいつはわたしが捕まえたんだ。だから、わたしが生殺与奪の権利を握っている」

 

「いやしかしですね……」

 

 ルナとじっと視線をあわせる。

 スケルトンっぽい魚はうねうねとルナの手の中でもがいている。

 

「もしかしてそれ食べる気?」

 

 みのりさん。そこはさすがに違うと思うな。

 

「食べるか……うーむ。味はおいしくないと思うぞ」

 

 それはわたしもそう思います。

 

「ルナちゃんの実験室で飼うの?」

 

 理呼子ちゃんはたいして気にしていないようだ。精神力つよっ。

 

「飼うのはいいかもしれんな。こういう深海魚を海面まで連れて帰るときに減圧とかが問題になるんだが、トラマナをかければ問題ない」

 

 マジかよ。トラマナ最強だな。

 気持ち悪い骨うなぎに魔法をかけるのは断腸の思いだったけど、ルナの頼みとあれば断れない。

 

 結局、ルナの手の中でうねうねとのたうちながら、そいつは海上まで連れていくことになったのだった。

 

 本土から持ってきていた水槽にそいつは入れられて、いまも明るい世界で暮らしているはずだ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 深海のあとは流れ的に近い海の浅いところということになった。

 こちらについては明るさもあって、わたしもべつに怖くはない。

 トベルーラを使って高速泳法をすれば、おそらく下手すれば水中でもマッハのスピードで進めるが、べつに意味のないことなので、普通に泳いでいる。

 

「ねえ。イオちゃん」

 

 そうこうしていると、みのりさんから話しかけられた。

 

「なんでしょうか」

 

「さっき言ったこと覚えている?」

 

「さっきですか。なんでしょう」

 

「大王イカっておいしいのかなって」

 

「ああ……ってあれ本気だったんですか?」

 

「大王イカじゃなくてもいいけどね。新鮮なお魚を食べてみたいなって」

 

「昼はバーベキューを予定しておりましたよね。ゆるキャンっぽく、焼きのアイテムは既に仕込み済みなはずですが」

 

「そこに一品つけたしても悪くないよね」

 

 みのりさんがわたしの手をとる。

 なんだなんだ。

 混乱している間に、その手はみのりさんのおっぱい海溝に。

 ああ、深い!

 

「ね。おねがーい」

 

「ワカリマシタ」

 

 女神様からお願いされてしまっては断れるはずもない。

 問題はどの呪文を使うかだが――。

 

 ふむ。水中だし――。

 

「雷系は使うなよ。こっちまでしびれそうだしな」

 

 ルナに釘を刺されてしまった。

 さすがにそんな危ないことはしません。

 最初だってギラを使おうとしてましたし。

 

「ギラはギラでレーザーだとすれば、水中で屈折しそうで怖いな」

 

 注文の多い幼女である。

 

「じゃあどうすればいいんですか」

 

「大量に持って帰って売るとかだったら、昏睡呪文(ラリホー)あたりがいいんだろうが、魚がプカプカ浮きまくるのもちょっとどうかと思うしな……んぅ、そうだ。トベルーラはどうだ」

 

「ああ、トベルーラって念動ですもんね」

 

 島を浮かせられるくらいの力だ。小さな魚が逃れる術はない。

 魔法抵抗値なんてないしな。

 

「ついでに言えば、なにかおいしい魚ってありますかね」

 

「ラプラプとかどうだ?」

 

「なんですかそれ」

 

「日本語でいえば、ハタだったか」

 

「ハタですか?」

 

 それもよくわからん。

 そもそもサンマとマグロといわしとサバくらいしか知りません。

 

「わたしもあまり詳しくはない。とりあえずかたっぱしから捕まえて、日本に持って帰って検分したらどうだ」

 

「ルナちゃん。それだと情緒がないです」

 

「毒を持ってたりしたら嫌だろう」

 

「キアリーかけてから食べたらいいでしょう!」

 

「ふむ。道理だな」

 

 それはそれで情緒がなかった。

 メラで焼いた食材はおいしかったけどね。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 いよいよ理呼子ちゃんの番だ。

 先頭を歩く彼女はいつも以上にニコニコしている。

 

 本来なら熱帯の気候は蒸し暑く山の中を歩くのは体力を奪われるはずだが、トラマナの環境適応能力は案外強いらしく、気温も湿度も調整されていて不快感がない。

 

 だが――、虫は無理っぽかった。

 はじめのうちはニフラムで光の彼方に消し去っていたけど、何度も何度もやってくるからうざったい。美少女の身体に虫刺されのキズとか最悪だ。ああ、もう島内のすべての虫に向けて全体即死呪文(ザラキーマ)しちゃうか。虫なんて絶滅すればいいんですよ……。くくく。

 

「イオちゃんが、虫に厳しい顔になってる……」

 

「理呼子ちゃん違うのです。水着のままはさすがに無謀でした。虫刺されになっちゃいますよ」

 

「なんかいい呪文はないのか」

 

 ルナがぞんざいな口調で聞く。

 

 ドラえもんの便利な道具扱いのわたしである。

 

 ただまあ、わたし自身もうっとうしいのは確かだ。

 

 茂みとかが延々と続く地形なので、避けて通るというのも難しい。

 

「んー。結界呪文(トヘロス)とか効きますかね」

 

 トヘロスは、自分より弱い相手を退ける効果を持つ。

 いくらレベル1でも小さな虫よりは強いだろうから、もしかしたら効くんじゃないだろうか。

 

「やってくれ」

 

「了解しました。結界呪文(トヘロス)

 

 しばらく歩いても、虫とエンカウントしない。

 どうやら成功したらしい。 

 虫にも優しいイオちゃんですよ。

 

「ところで理呼子ちゃん。どこに向かってるんです」

 

「あのね。地図を見たらもしかしたらここらへんかなって思ったんだけど」

 

「なんでしょうか――」

 

「露天風呂だよ」

 

「ああ……え?」

 

 露天風呂ってあれだよな。

 外にある温泉。

 温泉っていうのは、湧いてきた源泉をいい具合に調整して人が入れるようにしたお湯のことを言うはずだ。つまり、天空島にした時点で、温泉もクソもないわけで、理呼子ちゃんが何言ってるのかよくわからない。アニメの中だるみしてきた第六話くらいで、唐突に肌色の多いテコ入れを挟むような展開だ。

 

「ほらついたよ」

 

 そこは島のちょうど北西だった。天空島の時に若干方向のズレは出てきたけれどもマップによると、丘のようなところになっていて、海を臨むことができる。

 

 そこに、不自然に岩肌で囲まれた場所があった。

 

 あくまで岩だ。

 

「露天風呂ありませんけど」

 

「だいぶん前に枯れちゃったみたいだよ」

 

「ふぅむ」

 

 岩しかないしな。そもそも、温泉が湧いているところだったらその島が無人島だとしても貸してくれなかったかもしれない。

 

「それで、理呼子ちゃんがここを目指したのは……」

 

「イオちゃんに温泉を作ってもらおうかなって」

 

「さすがにドラクエの魔法で温泉は作れませんよ」

 

「そこはロケーションが大事かなって。お湯くらいは作れるでしょ」

 

「まあお湯くらいならいくらでも作れますよ」

 

 イオちゃんの即席温泉コーナー。

 

 まず右手をかざし、岩肌で囲われた部分に初級水流呪文(ザバ)を放ちます。

 

 次に、初級火炎呪文(メラ)で温めます。

 

 最後に初級氷結呪文(ヒャド)で熱くなりすぎたお湯をいい具合に調整すれば。

 

 なんということでしょう。

 

 なにもなかった岩肌にあっという間に温泉モドキができてしまいました。

 

 でもこれって……普通のお湯なんじゃ。

 

「温泉のもとあるよ」

 

 理呼子ちゃんの用意がいい。

 手のひらのなかにあるのは使い切りの温泉パック『草津温泉』とか書いてる。しかし、いまわたしが創った温泉モドキは十人以上は入れそうなくらいの分量がある。足りるはずもない。

 

 どうしようか。

 

「モシャスで増やせばいいよ」

 

「なるほど……」

 

 わたしよりも魔法の使い方がうまくありませんかね。この娘。

 

 そんなわけで、即席温泉の完成である。

 

 トラマナでたとえ熱湯風呂でも大丈夫だけど、そこは気分の問題だ。

 掌で確認してみたら適温。ちょっと緑っぽい色をしていて、逆に温泉っぽくないけどそこは気分の問題だろう。

 

 あれ……?

 でも、入るのか?

 こんな美少女たちと裸を見せ合うのか。

 いままでプールとかでも、女の子たちは器用にタオルを巻いて裸を見せないようにしていたし、同年代といっしょにお風呂に入ったことなんてない。妹のユアとは入ったことあるし、寺田さんやママンに入れられたことはあるけど。

 

「あれれ。イオちゃんもしかして恥ずかしいの?」

 

「外で裸になるのはちょっと恥ずかしいですね」

 

「私たち以外だれもいないよ?」

 

「そりゃそうですけど」

 

「海でべたべたしたあとは、さっぱりしたいかなと思って」

 

「それもわかりますけど……」

 

 なんだろう。同年代の女の子と混浴する。

 夢にまで見たシチュエーションではあるけれども、いざ可能となると躊躇してしまう。

 罪悪感が半端ないような。

 

「イオちゃん。お姉さんのおっぱいは温泉でも浮くんだよ」

 

 みのりさん。おまえもか。

 腕を組んだときに、おっぱいがもちあがるような姿勢をして胸を強調してきている。

 心拍数があがる。

 

「なんだ。風呂か。メンドウくさいな……まあ、海水でべたべたしているから洗っておいたほうがいいだろうけどな」

 

 ルナはまったく頓着していなさそう。

 

「じゃあ、脱ごうか」「イオちゃん脱ぎ脱ぎしようね」「時間がもったいない」

 

 ひえ。わたし女の子に襲われちゃう。

 

 




一回で終わると言ったな。
あれは嘘だ……「うわああああああああ」
やっぱり分量の調節がへたっぴなのよ。ごめんなさい。

次回の予定では、ついに誰かと主人公がちゅっちゅしてしまう展開を挟みます。
ひと夏のアバンチュール的なやつです(時代)。
さすがにタグに『ガールズラブ』を付け足しますんで
百合好きな人は期待してね……。

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