ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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日本魔法会議。ついでにわたし以外のわたし。

「星宮マリア君。いったいいつまで子どもの遊戯(おふざけ)を許すつもりかね?」

 

 誰が発した発言だったか。

 それは伏魔殿から聞こえてくるノイズそのものだった。

 

 場所は会議室。

 国会議事堂内にある広さ40平米程度の場所。

 広すぎず狭すぎず絶妙なところで、クローズドな会議を行うには適した場所だ。

 しかも、国会のように開けてはいないし、全国中継されてもいない。

 

 ゆえに――好き勝手に糾弾する。

 

 そこには、コの字型に格調高いテーブルが置かれている。

 マリアはちょうど十字砲火を浴びるような位置にひとり立っている。

 コの字の左辺、開いたところに一人立って、何人もの人間の視線にさらされている。

 

 ふてぶてしい態度の議員たちがひしめきあっていた。他にも経済界の重鎮やら、科学者、社会学者、官僚、ともかくなんか偉い人など、たくさんの人間が雁首をそろえている。

 

 もちろん、戸三郎――日本の首相も顔を出しているが、これだけの数の人間がいれば、首相の立ち位置も発言力も相対的には低いものだ。彼だけは心配そうな顔をしていたが、ほとんどの人間はマリアに対して、さながら弾劾裁判でもしているかのような面持ちであった。

 

 否、タチの悪い子どものいじめのようなものだ。

 ドロドロとした妄執のかたまりをぶつけられ、一方的になぶられる。

 マリアはまだ30代になったばかりであり、肌は瑞々しくしかも美しい。

 70代やあるいは80代のジジイからすれば、娘か下手すると孫のような年齢である。

 そのマリアに対して、正義として、安全な場所から糾弾できる。

 権力者は本能的に征服欲が強く、ひそかな愉悦を感じていた者も多い。

 

 これこそが、いままでマリアがイオをかばってきた権力構造そのもの。

 

 誰が言い出したかわからないが、

 

――日本魔法会議。

 

 と称されている。

 

 イオの魔法発現からわずか3か月足らずで発足された日本側の政治経済の複合機構である。

 

 いまだ様々な所属団体を出自とする人間が好き勝手にポジショントークしまくってるせいか、会議自体がまとまらず、踊りまくってムーンサルトを決めているような状況であるが、おおかたの方向性は一致している。

 

――自分の所属する団体に魔法的な利益を横流しする。

 

 これだ。

 

 多くの権力者にとって、魔法の適切管理の意味は、第一に利益誘導。第二に自己の保身であり、残念ながら、国民の安全安心は五番目くらいである。

 

 そのためには、()()()()()を必要と考える一派が主流だった。

 

 魔法がイオによって一元的に使用されている以上、イオを適切に管理するというのがぜひとも必要であるという考えである。

 

 実際に、星宮イオは初等教育の真っ最中であり、子どもとは大人によって教育されなければならない存在なのは間違いない。

 

 それを

 

――国による庇護

 

 と、舌触りよく言い換えてもよいだろう。

 

 だが、戸三郎はともかくとして、大方の人間はイオをひとりの人格として見てはいない。

 ただの便利な魔法装置として見ている。

 まるで無限のエネルギーを生み出す機械か何かのように。

 あるいは金の卵を生む鶏か。

 

 それはマリアとしては看過できる事態ではない。

 魔法という未知の存在がもたらす利益や、あるいは潜在的な危険性はわかる。

 しかし、それ以上にマリアにとっては、愛すべき子どもなのだ。

 だから、ひとりの母親としては戦うほかない。

 

「母親としていたらない点、申しわけなく思っております」

 

 腰を折り、これ以上ない綺麗な所作で謝罪するマリア。

 

「謝罪の言葉が聞きたいのではない」「そうだそうだ」「イオちゃんはワシの孫」「いっそ私の家でしばらく教育をさせてあげたい」「左様」「私の孫もスライムを欲しがっていたな」「最弱モンスターとはいえ、大人も殺されるほどの攻撃力を秘めておるのでは?」「ともかく外国がうるさい。モンスターについては危険視する声が大きくてな」

 

 一言に対して百の言葉が返ってくる状況だ。

 

 議題としては、イオが召喚したスライムの件もあるが、それ以外にもイオちゃんズランドの運営について、魔法発電所の発電供給量、原発ほか放射能物質の除染、氷結呪文を用いた水不足の解消、モシャスパンによる生活保護受給者に対する食料供与などなど……、ともかく所属団体ごとに優先順位が異なり、なかなか会議の方向性は見えてこない。

 

 しかし、ごちゃまぜにかきまぜられたカオティックな議論は、ひとつの声に収束される。

 

「あなたには星宮イオ嬢をコントロールする能力がないのではないかね」

 

 子育てについては――。

 

 マリアも自信がない。最初にイオが魔法を使ったのは、イオ自身が申告していたとおり、マリアに愛されていないと感じたからだ。ユアにもイオにも等しく愛情を注いできたつもりだったが、結局はそれを受け取る側が偏頗を感じてしまう。

 

 マリアは愛になりたかった。

 子どもたちを包みこめるような愛情を持ちたかった。

 

「私はイオをコントロールするつもりはありません」

 

「危険ではないか」「魔法が暴発したらこの国だけでなく星が滅ぶぞ」「国によるしかるべき管理が必要だ」「そうだそうだ」「左様」「イオちゃんズランドに孫をつれていきたいのう」「魔法使いが生まれたら派遣業がはかどりますな」

 

「私はイオをできる限り自由にさせたいのです」

 

「自由? 自由だって馬鹿な」「自由にさせて結果マダンテされたらどう責任をとるつもりかね」「子どもに自由など要らんだろう。我々大人が適切に管理しなければ」「左様」

 

 わめきたてるノイズたちに、マリアは顔をしかめる。

 

「確かに――、子どもが何かしたら親が叱るものだと考えております。けれど、子どもが何かをするかもしれないと考えて、監禁するのが正しいでしょうか」

 

「場合によってはやむをえまい」「配信も禁止しろ。外出も禁止だ」「すでにいろいろとやらかしておるだろう」「ベホマズンとかな」「事態によっては世界が滅びるのだぞ」「そもそもイオ嬢を監禁できるかという問題もあるにはあるがね」「だいたいあの、ルナ・スカーレットというガイジンが気にくわん」「アメリカは何かあったら我々の責任にし、利益だけはかすめとるつもりだからな」

 

「私はそうは思いません」

 

 声だけで惹きつける。

 最高峰の演技力を持つ稀代のアクトレス。

 星宮マリアならではの技能を持って場を掌握した。

 

「皆さま方に問います。正しい国とはなんでしょう」

 

 ざわつきにより言葉すら消失する場。

 その場にいた人間の多くはマリアの問いに対する答えを持たなかったからだ。

 

「私は皆さま方のように政治に詳しくありません。経済も、社会学も――母親としての経験すら乏しい有様です。ですが、正しい国――正しくありたいと願っている国とは、子どもたちが笑って外で遊べる国ではないかと思うのです」

 

 シン。

 

 と、静まり返った。

 

 彼等もかつては自分の利益誘導に忙しいばかりではなかった。理想論に燃えていた頃もあるのだ。理想論は理想論にすぎないし、現実原則の前に敗れ去ることも多い。数多くの挫折を得て、現実の前に屈服してきたのである。過去の自分を反芻するように思い出していた。

 

 マリアは祈るように言葉を続ける。

 

「娘は――イオは、確かに至らない点が数多くございます。皆さま方に多大なご迷惑をおかけしていると思います。ですが、イオが健康的に育ち、誰かを愛し、人をいつくしむ人格を育てるには、できるだけ予想どおりのなにげない日常が必要なのです」

 

「その日常を破壊しているのがイオ嬢自身ではないかね」「大人になる前に世界が滅びないかが不安なのだ」「まあ……彼女が世界を亡ぼすような人格ではないとは思うが」「恐ろしいのだ」「自由は恐ろしい」

 

「自由とは愛することです!」

 

 マリアは言った。

 

 イオの魔法は野放図なやりたい放題を実現してしまう。

 現実の重力からの解放をも意味している。

 ほとんどの人間は、イオを自由だと考えるだろう。

 

 だが、マリアはそうは考えなかった。

 

 イオが自由でいるということは、なにげない日常をかみしめながら過ごし、大切な人を見つけ、自分のなかの価値観を愛することであると考えていた。

 

「たいそうな哲学であるが、スライムの件は看過できない」「そうだそうだ」「左様」「右様」「いや右様って……」「ともかく陸自は反対する」

 

 声に力がなくなった。

 いままでのノイズも散発的なものになっている。

 伏魔殿の老獪たちも、親の子を想う純粋な気持ちの前には二の足を踏むということであろう。

 それでも、スライムの件はやはりどうするのかという声は大きかったのは、利益誘導という面は除いても、モンスターの出現は人類危急の課題であったからだ。

 

「スライムについてはごまかします」

 

「ごまかせるのか」「いや無理だろう」「イオ嬢があそこまではっきりと言ってるのだぞ」

 

「少なくとも動画にスライムは映っていません」

 

「あとからマスコミに嗅ぎつけられるぞ」「仮にバレた際の黙っていたことの責任はどうするつもりだ」「イオ嬢なら下手するとスライムの散歩とかいって外を歩きかねん」「ありえるな」

 

「魔法を供与できる体制ができたあとに、さりげなく情報を出すというのはどうでしょうか。スライムはかわいらしく脅威はみあたりません」

 

「うーむ。飴と鞭か」「時間稼ぎは悪くないかもしれんな」「魔法が供与できるのならそちらのほうに耳目が集まるだろうしな」「イオちゃんズランドに孫を連れていけるかのう」

 

 会議の流れはスライムよりも、利益のほうをどうやって自分のほうへ誘導するかの議論に流れていく。

 

 それからしばらくして。

 

「そろそろ意見は出尽くしたようですな」と、戸三郎が絶妙なタイミングで声をあげた。

 

 マリアは周りをみわたしてみる。

 

 結局――気概といったらいいか、星を変えるほどの力を持つ星宮イオに対して、自分の身を挺してまで教育を施そうという輩はいないらしい。

 自分が利益を得ることに対しては敏であるが、そうでないところにはあまりに無頓着。

 それでも、世界が滅びたら自分も滅びるから、多少は他人のことを考えるだけマシか。

 

「それでは、今後も星宮イオ嬢については変わりなく――、星宮マリア君に一任するものとするということで異議はないですな?」

 

「異議なし」

 

 このときだけはやたらと声は一致するのであった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 魔法クラブにて。

 わたしは焦っていた。なにしろスラリンの件がバレてしまったのだ。

 やべえよやべえよ。

 ママンはとりあえず国のお偉いさんにご報告にいったけど、みんなにはわたしから報告するように言われたのだ。くれぐれも軽挙妄動は控えるようにというお言葉とともにな。

 

「ルナちゃん。どうしたらいいと思います?」

 

「社長に既に聞いているが、黙っとけってことらしいぞ」

 

「え、黙っておくって……そんなの可能なんですか?」

 

「あの動画を見ると確かにごまかせていないというか、むしろ盛大に自爆しまくってる感じだが、真実は公にならない限りは真偽不明の状態だ」

 

「なにも解決していないように思うのですが」

 

「多くの人間にとって真実なんてどうでもいい。自分の認識したいように現実を認識する」

 

「スラリンがいるかいないかも自分の都合のよいように決めるってことですか」

 

「そうだ。スライムを飼いたいと思う人間はスライムはいると思うだろうし、スライムを恐ろしいと思う人間はスライムをいないものと考えるだろう」

 

「そんなに簡単にいきますかね」

 

「いくだろう。わざわざファクトチェックするような人間のほうが少数派だ」

 

「でも、わたし。次の配信で誤魔化しきれる自信がないんですが……」

 

「全力ですっとぼけろ。もともとイオはポヤッとしてるからな。楽勝だろう」

 

「なんだかひどいことを言われている気がします」

 

「だったら――、スラリンを解剖するか?」

 

 ニヤリと笑うルナである。

 まだあきらめてなかったんかい。

 

「やめてよ。ルナちゃん」とユアが訴える。

 

「ふむ……。そもそもの話だが、配信中にユアが入ってくるというのはおかしくないか」

 

「え……?」

 

 ポカンとした顔をしているユア。

 なにがおかしいんだよ。七歳児やぞ。

 まあ、ルナも八歳児で頭がいいけど、子どもは子どもだと思うんだよな。

 いろんな知識は持ってるけど、やっぱりアンバランスなところがあるというか。

 ユアだって、子役としては天才だろうけど、そんなに変とは思わない。

 

「その子役という仕事は――、オンエア中に横切るようなことをするのかということだ」

 

 んー。そういわれれば確かに変ではあるけれども。

 

「それにスラリンがいるのにどうして偽物をわざわざ抱っこしてくる必要がある」

 

「たまには気まぐれでそういうときもあるでしょう。ですよねユア」

 

「……」

 

「ユア?」

 

 ユアは無言だ。

 

 え、マジで?

 

 わざとスラリンのことをバレさせようとした?

 なぜだ。お姉ちゃんのことを陥れたかったとかじゃないだろう。

 

 あのとき通じ合った経験はまだ記憶に新しい。

 違う人間だから少しずつズレはじめるものだろうけど、いまはまだあのとき響きあった感覚が残っている。ユアはお姉ちゃんのことが大好きなんだぜ。お姉ちゃんも大好きです!

 

 だからこそわからない。

 単に大好きなお姉ちゃんが困るところを見たいというサディスティック小悪魔ちゃんなんですかね。それはそれで需要がありそうな。

 

「スラリンとね……。いっしょに散歩したかったの」

 

 ぽつりぽつりと紡がれる真実の言葉。

 ユアの言葉を要約すればこうだ。

 

 既にユアはわたしと同じく気軽に散歩することもできなくなっていた。

 そして、当然スラリンも同じく。

 魔法が普及すれば、わたしもユアも自由に外を歩き回れるかもしれないが、スラリンはどうだろう。魔法が普及しても今のタイミングでなければ、どんどん難しくなっていくのではないか。嘘を抱えて生きていくことになるから。

 

「お姉ちゃんとスラリンといっしょに散歩するのが私の夢です」

 

「ユアぁぁぁ」

 

 ギュっと抱き着いてしまう。

 自由に外出できないのは、わたしのせいなんだ。

 罪悪感が半端ない。それになんてやさしい子なんだろう。

 スライムのことまで考えるなんて天使だ。天使がいる。

 

「魔法の普及か……、マホアゲルが成功すればいいが」

 

「大丈夫だよ。マホアゲルが成功しなくても、いずれにしろ魔法は普及するから」

 

 なぜなら――という言葉が続き、ユアは説明する。

 その説明を聞いて、私たちは驚愕に目を見開くことになったのだった。

 

 ユア、恐ろしい子。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ユアの提示した次善の策はさておき。

 いまはマホアゲルの実験タイムである。

 

 新作ドラクエによれば、一生のうちに三人まで魔法力を覚醒させることができるというふうにマホアゲルの解釈を拡張した。三人というのは、ルナが魔法クラブのメンバーについて名前を呼んではいけない会社様にお伝えして、そのように限定したらしい。

 

 できるだけ魔法の解釈はコンパクトに。そして、周知度は最大に。

 もしもマホアゲルが予測通り発動すれば、最大MPがゼロであってもかしこさの分だけ増やせるのだ。仮にわたしがわたしにかけた場合って、3しか増えないってことだな。しくしく。

 

 そして、かしこさについてだが――。

 

 ルナ75。ユア39。理呼子ちゃん56。みのりさん90。

 

 となっていた。

 

 ダモーレ確認済み。同意アリである。

 

 どうしてその数値なのかはわからん。考えてもしかたないっていうのはルナの言うとおりかもしれない。

 

 ともかくこの魔法をみんなに試してみたいところなのだが、一つ問題がある。

 

 そう人数制限だ。ここにいるわたし以外の方々は四人である。

 つまり、ひとりあぶれるんだよな。みんな、わたしのことをじっと見つめている。

 

 ナズェみてるんです?

 

 いやわかっている。わたしに決めろっていうんだろう。

 

「あの、どなたに付与すれば?」

 

 むしろ逆かもしれない。本当は誰に付与しない状況が正しいか知りたかった。

 みんなきまずい無言を貫いている。

 ここまでみんないっしょにやってきた仲間だ。

 ユアは少し遅れてきた追加戦士みたいなものだけど、わたしの大事な妹である。

 誰一人例外を作りたくない。

 でも、いまさらゲーム内容を変えることはできない。

 マホアゲルは三人までって周知されちゃってるしな。

 

「イオちゃん、ここにいるみんなに付与したいって考えてるんだよね」

 

 みのりさんが聞いた。

 

「そうですね。できれば、みなさんに付与したいと考えています。国やお母さまに指示されるままにではなく、最初はみなさんに――」

 

「それでひとりあぶれるって考えてるんだよね」

 

「そうですね……」

 

「お姉さんは大丈夫。みんなよりちょっぴり大人だからね」

 

 ポンっと大きなお胸様を叩くみのりさん。

 あんたでっけぇ人だよ。特におっぱい。いやこころが。

 

「ありがとうございます。みのりさん。えっと、みのりさんは……」

 

「私が付与するね」と理呼子ちゃんが挙手してくれた。

 

 みのりさんが理呼子ちゃんを見つめる。

 理呼子ちゃんが少しほほ笑む。

 うーむ、なにやら美少女どうしの謎の通信方法を試しあってるんだろうか。

 

 それで、次に決めるべきなのは最初は誰にするかだった。

 わたしとしては順番は誰でもいいと思うんだが、そうではないらしい。

 

「当然、私だな」

 

 ルナがスッと手をあげる。

 

 いままでの立ち位置からすれば当然の主張だ。魔法実験も完全に安全とは言い切れない場合があるからな。下手するとヤキソバパンに押しつぶされたりするし。自ら、魔法ドクターを称しているルナが一番に飛びこむのは自然である。

 

「私が先だよね。お姉ちゃん」

 

 ユアが立候補する。

 最愛の妹に求められたら、姉としては拒否することはできない。

 

 ああっ。どうすればいいんだ。

 

「ルナちゃんは他人でしょ。私はお姉ちゃんと生まれたときからいっしょにいたの」

 

「私が一番、イオの魔法に協力してきたんだぞ。ユアは何をしてきた。何もしてないだろ」

 

「妹をしてきました」

 

「DNAが似ているからって勝ち誇るな」

 

「ルナちゃん嫌い。スラリンのこともすぐ解剖しようとするし、鬼畜っていうんだよ」

 

「イオのためだ。科学的なメスをいれないと魔法は危なくて使えないと判断される。イオ自身も排斥される運命にあるんだぞ」

 

「ルナちゃんのせいでお姉ちゃんが迷惑している面もあるんじゃない?」

 

「そういうおまえはつい最近さらわれて姉に迷惑をかけたじゃないか」

 

 やべえ。だんだんヒートアップしてくる幼女組にわたしはあたふたするほかない。

 どっちも好きだから、わたしのために争わないで!

 

「まあまあ……、ルナちゃんもユアちゃんも落ち着いて」と理呼子ちゃん。

 

 最近誕生日を迎えた彼女は前々から母性愛みたいなのを感じていたけれど、最近とみに強くなった気がします。

 

 対立しあうユアとルナ。

 

 それで、わたしは――。

 

 わたしはエイっとばかりに魔力供与(マホアゲル)を投げかけた。

 

 ルナでもユアでもなく、理呼子ちゃんに。

 

 喧嘩両成敗というほど理論的な考えじゃない。漁夫の利ともちょっと違うな。

 単純に――、そう単純にこころのなかにあったのは、あの海辺での出来事。

 

 はじめてだったので……。何がとはいいませんけど。

 

 だから、わたしもはじめてをお返ししたかったのだ。そんな感じです。

 

「む!」「お姉ちゃん!」「あれ、イオちゃん?」

 

「すいません。ですが、順番はどうでもいいでしょう」

 

「よくないぞ」ルナはぷりぷり怒っている。

 

「よくなかったんだけど」ユアはぷりぷり怒っている。

 

「すみません。ですが、いまは実験が先なのでは?」

 

「んー。そうだな。では理呼子に向けて閲覧呪文(ダモーレ)をかけてくれ」

 

「わかりました。閲覧呪文(ダモーレ)!」

 

 数値には……。

 

 MP 56/56とあらわされていた。

 

 みんな静かに感動していた。

 

 でも、それで終わりじゃなかった。

 

 ルナの指示で、理呼子が唱えたのは指先に灯る原初の魔法火。

 

「メラ」

 

 みんな食い入るように見つめている。

 だれも何も言わない。

 それはライターほどの小さな炎のカタマリだった。

 消え入りそうなほど小さくて、けれど神々しく燃え盛っている。

 

 この日、わたし以外の魔法(わたし)が生まれた。




小説というのは積み重ねなので、何話にもわたって積み重ねてきたものを一話でひっくり返すのは容易ではありません。特にキャラクターの造形というのはなかなか難しく、例えば大人の介入とかどうなってるんだよとか、イオがアホすぎとか、そういった点については、自分の中にある考えをうまく伝えられずに困っております。なにかいい手があればいいんですが、これはともかく作り手の責任ですしね。書き続けるしかないのかなと思っております。

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