ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

71 / 102
海外の反応。ついでにクリスマステロル。

 わぁ綺麗な青空。

 今日もいい天気。

 素敵な一日になりそう。

 

 ホテルのスイートルームは最上階に近い階層にあって、大パノラマになっている。

 すぐ近くに空がある。さながら天空の城。

 

 空が近いと、自由で軽やかな気分になれるから好きだ。

 都会では空を飛ぶのさえままならないからな。

 

「現実逃避しててもやってしまった結果は変わらないからな」

 

 ルナが何か言ってるけど、無視して異国の空を見つめ続ける。

 アメリカって空気が悪いイメージを抱いていたけれど、最近はそうでもないみたいだ。

 視線を落とすと、人々や車の行き交う姿が見える。

 都会の喧騒は遥か下の世界の出来事であり、わたしは解放された気分になる。

 

「考えようによっては、このタイミングでバラしたのも悪くはなかったかもしれないぞ」

 

 ルナが隣に並び立った。

 

 わたしはルナのほうに視線をやる。

 

「そうでしょうか?」

 

「ああ……まあ、イオがイオのマムに怒られたのは仕方ないことだが」

 

「メチャメチャ怒られました……」

 

 アメリカにいるのに、日本に帰ってこいと言われて、ルーラで急遽帰還して、鬼のような形相になったママンに、今世で初めての"ごはん抜き"の刑を言い渡されてしまった。あとから寺田さんがこっそりスムージーを差し入れてくれたけど。

 

 ただハッキリ言わせてほしい。

 お姉ちゃんは妹の名誉は守ったんだ。

 

 レベルがあがったのは、あの地獄の帝王を倒したからだけど、もともとはユアが召喚したものだ。正確にはわたしの魔法力を使って、ユアの意図とわたしの意図にズレが生じたために起こった事故なんだよな。

 

 そのあとのスライムまではバレてるから、まあしかたない。

 

 ふしぎなきのみをくれる粋なエビちゃんについては、ルナや大統領がうまく誘導してくれて秘匿することに成功した。

 

 まあ、召喚自体が自由にできることがバレたわけだから、もはやなんのモンスターがでてきてもおかしくないって思われただろうけど。

 

 今朝方、ようやくマムのところから再出発することを許されたわたしは、ホテルで昨日のお昼ぶりのお食事をとり、いまに至るというわけだ。

 

「ところで、バラすタイミングとして悪くないっていうのはどういうことです」

 

「もともと、モンスターについてはゼノフォビア……つまり人類が持つ普遍的な異類に対する忌避の感覚が問題になると述べたよな」

 

「そうでしたね」

 

 モンスターという異界の生物を地球に呼び寄せるんだ。

 怖いと思う人も中には出てくるだろう。

 

「ただ、スライムの件についてはほぼバレていたといってもいいわけだ」

 

 わたしの配信によって、スラリンの存在そのものはバレていなかったけれど、その存在を確信させる程度にはバレていたといえる。

 

「確かにですね」

 

「その結果、モンスターがいるかもしれないという"覚悟"の期間がかなり長く設けられたんだ」

 

「モンスターがいてもしょうがないという覚悟ですか」

 

「そのとおり。もともと日本人にとっては国民的RPGであるしドラクエはコミカルなモンスターが多い。スライムはかわいいしな。だから、日本のSNSや匿名掲示板も比較的落ち着いている。やっぱりイオちゃんみたいな文面が多いようだが」

 

「アメリカはどうなんです」

 

「アメリカの場合はもともとレベルアップしたい派が多いからな。モンスターを倒して勝利と自由を手にするというストーリーにもともと親和性が高いんだ。もっとも一部の人権派は騒ぐだろうがな」

 

「つまり問題ないと」

 

「いまのところはな」

 

 少しだけホッとする。

 モンスターを召喚するのが危険な行為だというのは、わたしにだってわかっている。

 あの地獄の帝王を倒せたから大丈夫だろうという考えは、さすがにないなと。

 

 エビちゃんには実績があるし信頼関係を築けているけど、はぐれメタルは逃げ出そうとしてしまった。もしも、研究所の外に逃げ出して増えたら、どんなふうに生態系に影響を及ぼすかわからない。だから、モンスター召喚は今のところエビちゃんだけにとどまっている。

 

「ポジティブに捉えれば、ユアの希望が叶うかもしれない」

 

「スラリンといっしょに散歩したいって言ってましたもんね」

 

「ああ……だから気分を切り替えていけ」

 

「そうですね」

 

 わたしが気づかないうちに、ルナもいつのまにやらユアと仲良しになっていたのかもしれない。

 

――それはさておき。

 

 今日はパレードの日。

 

 いつまでも落ちこんではいられない。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 今日のパレードだが、軍事パレードではないというところがミソかもしれない。

 

 アメリカとしては、軍事パレードをある段階までは計画していて、戦車で街中を走破し、戦闘機はバンバン飛ばし、その中央にはイオちゃんが手を振るというような構想も考えていたらしい。

 

 ただ、これだと魔法=軍事力みたいな認識になっちゃいかねないし、わたしが軍の象徴みたいになっちゃいかねないので、却下したという経緯がある。

 

 では、どんなパレードになったかというと、いわゆるクリスマスパレードだ。

 

 時はクリスマスまであとわずか。

 

 日本においてもそうだけど、だいたい12月に入ってくるとクリスマスの時期というのが相場だし、クリスマスパレードというのが、文化的には馴染みやすかったらしい。

 

 ほんとはイルミネーションを堪能するためには夜のほうがいいんだろうけど、わたしが参加するのは昼の早い時間帯だ。

 

 大通りを大統領専用車に乗り、ただにこやかに手を振る。

 

 ホワイトハウスを囲う区画をぐるりと一周して戻ってきて、最後に大統領の演説を聞いたあとに、わたしが「ハッピーホリデイ」すればいい。フライングメリークリスマスでもいいけどな。とはいえ、政教分離との兼ね合いもあるから、あくまで前半戦はただのパレードで、クリスマスパレードとは偶然くっついただけという建前にはなっているらしくて、わたしの言葉は「ラブ&ピース」みたいな感じのがいいかもしれない。

 

 やることと言えばそれくらいで、たいして難しいことでもない。

 

 ちょっと残念なことは、夜からはパーティに参加する予定だから、わたしはパレードの本番を見ることはできないってことだ。

 

 音楽隊がメインストリートをねり歩いたり、二階建てのバスのような車に乗ったサンタさんとか見たかったんだけど、たぶん、そうする時間はないだろう。

 

 パーティの豪華な食事に期待かな。

 

「周辺の区画については、検問所も設けているが、一般市民によからぬやつらが紛れこんでるかもしれないから気をつけろよ」ルナが言った。

 

 車の傍には、セシリアさんと大統領の姿も見える。

 もちろん、SPの人たちも何人もいるんだけど、彼等は黒子さんのようなものだ。

 見えても見えないものとして扱うのが礼儀かもしれない。

 

「もしもテロの人とか来たとしても、指先ひとつでダウンですよ」

 

「唐突にイオを神とあがめる集団が押し寄せてきたらどうするつもりだ」

 

「ええと……そうですね。とりあえず否定します」

 

「ベホマズンしてくれと言われたら?」

 

「すればいいんじゃないですかね。五秒もかかりませんし」

 

 承諾があれば、回復魔法自体は許されていたはずだ。

 

 病気の中でも内臓のホルモンや内分泌しているなにかしらのバランスが崩れているのは治せないけれど、なんか悪い物質が溜まっているとか、欠損したとかだったらほとんどは治せる。

 

「車の前で大の字になったりするかもしれんぞ」

 

「なんのためにです?」

 

「イオ様我らを導いてくだされとか言われたりな」

 

「バシルーラでどこか遠くに飛ばしたりすれば……」

 

「違う。そうじゃない」ルナは首を振った。

 

「え?」

 

「イオは根本的にまちがっているが、今回のパレードは国家的行事だ」

 

「そうですね」

 

「何人もの人間がこのパレードのために動いている。わかるな」

 

 ルナに肩をつかまれて諭されました。

 なんだろう。八歳児に諭されるわたしって。

 とりあえず、わたしは頷く。

 国が主体になってることくらいはわかるもんね。

 

「いいか――よく聞け」

 

 ルナはギラりと瞳を輝かせる。

 幼女の見えない圧がすごい。

 わたしは再び頷いた。

 

 ルナはよろしいと小さく口にし、

 

「答えは()()()()()だ」

 

 言い含めるように言った。

 

「何もですか」

 

「そうだ。SPがだいたいはなんとかしてくれる。イオが勝手に動くとそっちのほうが、すっとんきょうな方向に転がっていきそうだしな」

 

 ルナがジト目でにらんできた。

 昨日の今日なので、言い返す言葉を持たない。

 

「だまってお飾りになっておけばいいんですね」

 

「まあそういうことだな。イオは黙っていればカワイイからおとなしく座って呼吸だけしてろ」

 

 カワイイと言われるのはうれしいけれど、なんだか微妙な評価だった。

 

 けれど、是非もないのである。

 

 

 

 ☆

 

 

 

【海外の反応】

 

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

 イオちゃんキター。ファック。頭ん中イオちゃんでわけわかんねー!!!!!

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 昨日のやらかしでよく復帰したな、イオ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 彼女は嘘つきだ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 いや、モンスターを召喚したことは記憶にないって言ってただろ。

 ダモーレのことだって覚えていなかったんだ。

 イオちゃんは本当に覚えていなかったんだよ。

 つまり、嘘つきじゃない可能性が微レ存……。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 イオちゃんは健忘症か何かなのか?

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 ベホマで認知症治るんだから健忘症なわけがないだろ。

 いうなれば、うっかりというやつだ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 ファック。

 彼女のうっかりで世界が滅びそうだぜ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 自分にはいじわるな大人に騙されたふうにしか見えない。

 記者は反省すべきだ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 まさかレベルアップしてるとか記者も知らなかっただろう。

 オレらはスライムが召喚されたかもしれないとしか聞いてなかったんだぜ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 ああ、イオちゃん様。マジプリティ!!!!!!

 イオシコリティ高い。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 日本人ってなんであんなにロリ特化してるんだろうな。

 十歳ってもっと成長してるだろ。胸とかも。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 スライム倒してオレもレベルアップしてえな。

 地獄の帝王をワンパンできるくらいになりたい。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 スライム倒して300年……。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 イオちゃんの受け答えは悪くなかったよ。

 モンスター召喚の件を除けばね。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 イオちゃんがオレのばあちゃんの認知症治してくれたんだ。

 彼女は素晴らしい人だよ。

 死ぬほどハグしてありがとうって言いたい。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 彼女の戦闘力数ってどれくらいなんだろう。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 9000以上だ!!

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 What!? nine thousand!!!!????

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 日本ではなんでイオちゃんの魔法をもっと積極的に利用しようとしないんだろうな。

 魔法発電所とか1カ所建てただけなんだろ。

 百カ所建てればエネルギー使い放題だろうに。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 日本人は奥ゆかしいんだよ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 今日のパレードは無事終わりそうだな。

 日本と友好関係にあって本当よかったよ。

 イオちゃんのおててふりふりカワイイ!!!!

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 地獄の帝王をワンパンするやつに勝てるか?

 テロとか起こすやついたら真正の馬鹿だろ。

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!

 なにごとだよ。いきなり爆発?

 事故か。いや違う。テロ起こってるやんけ!

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 区画内は銃とか爆発物とか検問されているのに……

 ホーリィシット!!

 魔法テロだ。

 魔法テロが起こっている。

 爆発の煙で何も見えねえ!!

 

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 まさかテロが起こるとはこのリハクの目をもってしても見抜けなかった。

 

 ・海外の魔法少女観察者

 

 でぇじょうぶだ。

 イオちゃんがなんとかしてくれる。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 先頭の車両が急に止まるのがイオの目に見えた。

 黒いローブをつけた男が、突然、車の前に立ちふさがったからだ。

 

 そいつは徒手であり、何も武器らしいものは持っていない。

 検問所が設けられており、銃や爆発物の類は持ちこめないようになっている。

 

 脅威度としてはやや低め。

 ローブ姿もクリスマスパレードであれば、そこまで奇異なものではない。

 一般市民の中でも熱烈なイオのファンもいるだろうから、いきなり発砲するほどではないものの、制圧するに足る不審行動であるから、SPたちはすぐに動いた。

 

 と、その時だった。

 

 男がツイっと指先を駆け寄るSPたちに向けたかと思うと、聞きなれた言葉を唱えたのだ。

 

初級爆破呪文(イオ)」と。

 

 凝集された空間がはじけ飛ぶ。不意打ちを喰らったSPたちは、ある者は腕がちぎれとび、ある者は骨が見えるほどの怪我を負い、ある者は爆風で吹き飛ばされて気を失った。

 

 すぐに周囲から切り裂くような悲鳴があがった。

 あたりは騒然となり逃げ惑う市民たち。メインストリートの広い道幅にギッチリ詰まるように市民たちが立っていたせいか、洗濯機をまわしているみたいに人の渦ができあがる。

 

 SPのうち無事だったものはすぐに発砲した。

 しかし、SPの性質上、持っているのはオートマティックピストルくらいしかない。

 

 明らかな火力不足。

 

 男は硬殻呪文(スカラ)加速呪文(ピオラ)を使っているのか、素早い身のこなしで銃弾を避け、数発がかすったところで意にも介さない。

 

初級火炎呪文(メラ)

 

 反撃は手痛い。

 

 初級とはいえ、人を丸呑みにするほどの炎を発生させるのだ。

 メラの火炎球を喰らい、ひとりが火だるまになった。

 

 男がニヤリと笑う。

 サッと右手をあげると、同じくローブ姿の人間たちが幾人か人波の中から現れた。

 皆、大統領専用車の周りを囲うようにして、次第に近づいてくる。

 

 そのうちひとりがおもむろに手をあげた。

 メラによる火炎球を出現させ車に放つつもりだ。

 と、そのときである。

 

初級閃光呪文(ギラ)!」

 

 SP側からもようやく反撃ののろしがあがった。

 大統領車にぴったりとくっついている護衛車のうちで一番近いもの。

 その中に魔法を使えるジョンが乗っていた。

 ジョンは元コマンドーであるが、今回は護衛の任についていたのだ。

 

 閃光に撃ちぬかれ、ローブのひとりは沈黙する。

 ジョンは初級閃光呪文(ギラ)を撃ち続け、ローブ達を牽制する。

 

 他の何人かのSPも魔法持ちがいたが、ローブ達のほうが数は多かった。

 

初級火炎呪文(メラ)!」「初級火炎呪文(メラ)!」

 

 火炎が二重に飛んで交差する。

 避けられる距離じゃない。とっさにマホステを唱え相手の魔法を掻き消す。

 マホステは燃費が悪く常時張っておくということはできない。

 それは相手も同じだ。

 

 ただ問題なのは燃料――MPはいずれ尽きるということだ。

 

 この世界で初めて行われた練習ではない魔法での戦闘において、魔法の戦いは持久戦と一瞬の機転を組み合わせたものであることが判明したのである。

 

初級閃光呪文(ギラ)!」

 

 ジョンはギラの迅速性にこだわった。

 これなら相手のメラの直後に撃てば、マホステを唱える暇がないからだ。

 何人かは撃ちぬくことができた。

 

 しかし、ジョンのMPはすでに尽きかけていた。

 メラよりも燃費の悪いギラ。そしてマホステによる防御。

 多人数による飽和攻撃。

 テロリストたちはじりじりと円陣を組むように近づいてきており、メラの炎はいつでも投擲可能な体勢にある。

 

――死が差し迫っていた。

 

「ロバートおじさま」

 

 イオは隣に座っている大統領に話しかけた。

 ルナには動くなと言われたものの、そうはいってられない状況になりつつある。

 

「敵は30人以上いるな。魔法が漏れているということか」

 

「ロバートおじさま!」

 

「ん……ああすまない。なんだねイオちゃん」

 

「わたしって、まだ座っていたほうがいいんでしょうか」

 

 ルナに事前に言われたこともあり、イオは素直に座って呼吸だけしていた。

 だが、さすがに魔法テロの想定まではされていなかった。

 イオがどうにかしなければ、大統領も殺されるだろう。

 あとで生き返らせればいいじゃないかという説もあるのだが、誰だって死にたくはないだろうし、今後の魔法の印象や普及にさしさわりが出る可能性がある。

 

「ルーラで退避したほうがよさそうではあるな」

 

「いやそうではなくて、制圧とかしたほうがいいんだったらしますけど」

 

「制圧できるのかね?」

 

「ええまあ。たぶんですけど」

 

 ロバートは時計を見た。

 魔法を使える部隊が到着するのに、五分とかからないだろう。

 しかし――、残ったSPたちは魔法の前になすすべもなくやられている。

 

「魔法を使える者をもっと多く連れてくればよかったな」

 

 ロバートは消沈したように言った。

 

「おじさま……」

 

「ううーむ」

 

 大統領は迷っているようだった。

 

 小学生を戦闘行動に巻き込めば、人気という面で急落する可能性があるからだ。

 むしろ、イオの盾になって死んだとなれば、そちらのほうが悪くない結果を生む可能性も。

 しかし、座して待っていれば、市民が巻き込まれそちらはそちらでまずい。

 

 いまだ爆炎と火炎と閃光が行き交う戦場において、車内は奇妙なほどに静かであった。

 

――突然、目の前の空間がたわむ。

 

 敵が初級爆破呪文(イオ)を放ったのである。空間に爆発点を生じさせるため、車のドア越しでも攻撃が可能なのだ。

 

 大統領は一瞬目を見開いた。

 

 眼前に広がる死。

 

 の、前に。

 

「ん……」

 

 イオは無造作にソレを握りつぶした。

 

 どんな魔法も魔法力を基点にしているのだから、より強力で濃密な魔法力で塗りつぶしてしまえば発動はできない。たったそれだけのシンプルな解答だ。

 

「やっぱりいってきますね」

 

 いまの攻撃でイオは決断した。

 いますぐにくだらないことをやめさせる。

 

「あ……ああ、気をつけて」

 

 いままさに死が迫っていたロバート大統領は裏返った声で答えた。




海外ではフリーザ様の戦闘力53万は認知度が低いらしいですね。
海外の反応板をいくつかまわってこんなイメージかしらと思いながら書きました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。