ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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スパイなパッパ。ついでに大魔王なイオ。

 空からパッパが降ってくると思うか?

 

 いくら現代のジェームズボンド、あるいはミッションインポッシブルな感じのイケメン俳優だとしても、普通、ヘリコプターからダイブしたりはしない。

 

 アニメや特撮じゃあるまいし、ましてや映画だったとしてもスタントマンとか使うだろうしな。いや、スタントマンでも無理か。要は魔法の仕業だ。ドラゴラム解除の直後はパッパが瞬間移動してきたみたいに思ったけれど、状況からすれば明らかに魔法を使っているよな。

 

 ちなみに、パッパが着地したところは月面のクレーターみたいになっている。まあ……どこもかしこも戦場みたいにポコジャカ穴が開きまくり、ビルは壊れまくりなんで、いまさらクレーターの一個や二個程度どうでもいいのかもしれんけどな。

 

 確かパッパは()()()使()()()()()()()()だ。少なくとも家族のうち誰もパッパに魔法を付与したりはしていないし、例の最初の百人リストの中にパッパの名前はなかったはず。

 

 これはいったいどうしたことだろう。

 

 ん~~~わかんにゃい。

 

 アメリカが横紙破りをしているとすれば、相当叩かれるだろうし、いくらなんでも他の国だって口出ししてくるだろう。そんな隙を見せるのかって話だ。

 

 わたしの勝手な印象だけど、アメリカはまず相手に殴らせておいてから百倍返しにする国ってイメージがある。自分で言い出したことを引っ込めたり、ごめんあれキャンセルするわっていったりはするけど、嘘はあまりつかない感じかな。

 

 パッパがアメリカという国の中でも特殊な立ち位置とかするんだろうか。

 例えば、CIAの凄腕スパイとか……。まさかね。そんなのまさに映画じゃないんだからってやつだ。普通スパイが映画監督しながら俳優もしながら、スパイ活動にいそしむとかありえんし。

 

 そんなかしこさの足りないアホみたいなことをするような父親はおらんやろ。

 

「お父さまはどうして魔法を使えるのですか?」

 

「ん……、ああ、その前にイオちゃん」

 

 パッパはわたしの腰のあたりに手を添える。腰とも尻とも言えない微妙どころさんにタッチ。

 

 ひゃん。ちょっとセンシティブな感覚だ。

 

「どこかで着替えてこようか?」パッパが子どもみたいに笑う。

 

「ん……そうですね」

 

 いつまでもこの格好のままというわけにはいかないだろう。

 

 わたしは今、パッパの着ているロングコートを身にまとっている。まさか、ドラゴラムの効果として服が破れるとは、このイオの目をもってしても見抜けなかった。ゲームではわざわざドラゴラム時に装備を脱いでる様子とか無かったし、普通に服も無事だろうと思っていたんだよな。なんか特殊なイメージ力が必要なんだろうか。

 

 あとちょっとでイオちゃんの柔肌が全世界に生中継されるところだったんで貞操の危機だったともいえるな。そこんところはパッパに感謝だ。

 

 それにしても――。

 

 すっぽんぽんの上にロングコートを着ていると、なんだかいろんなところが擦れる気がして、自分が変態になった気分になる。前のところのボタンは留めて、ほとんどローブみたいな恰好。足が地面につくかつかないかのギリギリのラインで、萌え袖みたいになっている。

 

――スンスン……スンスン。

 

 袖のあたりをかいでみたり。なんとなく、パッパのにおいに安心してしまう。

 

 パッパはタバコを吸ったりはしないんだけど、男の人のにおいってなんだか女の人とは違う感じがする。前世の記憶だと要は自分のにおいってことになるんだろうけど、べつにいいとも悪いとも感じなかった。

 

 いまは違う。

 なんというか脳の奥がしびれる感じがします。

 パッパに包まれてるとというか、すごく守られているといった不思議な安心感。

 

 よくTS娘がママンにばかりバブってオギャり、パッパのことはきらーいみたいなやつがいるけど、それはぜんぜんっリアルじゃない! と言いたいね。

 

 パッパはたぶん放任主義で、娘のこともあまりかまってくれないところがあるけれど、イオちゃんはパッパのことが大好きです。甘えたいです。というか甘える。

 

 パッパの腕をとり、頭を傾ける。

 娘に甘えられて嫌な親はいない。

 パッパの目じりが下がっているように思う。

 ふふふ。イオちゃんのかわいさにメロメロになっているな。

 男を篭絡するつもりはないけれどパッパは別腹だ。

 もっと娘にかまって。もっともっと。

 

「甘えん坊さんだなぁ。それに前より表情が豊かになってるね」

 

「そうですか?」

 

 メダパニをかけるのをやめたからだろうか。

 己に自己暗示をかけるメダパニは、鬱々とした気分がスッキリする。魔法のおクスリだ。

 いまは素の状態に近いから、気分が悪いときはそのままだし、情動をコントロールできていないし、なんだか子どもっぽくなってる気がする。

 

「今のほうが好きだけどね。仮面をはずしてるほうが素敵だよ」

 

 きゅんきゅんっ。

 パッパに言われて、嬉しさがはじける感じ。

 

 仮面というのは心外であるが、まあメダパニによらずともアクターやアクトレスは多かれ少なかれ演じる対象の仮面をかぶっているものだと思う。

 

「わたしは子役の仕事をやめたつもりはないのですが」

 

「なるほどうまい言い回しだ。イオちゃんはまぎれもなくパパやママの子ども役だからね」

 

 パッパは何気ないふうに言う。

 

 一瞬、なにも考えられなかった。

 

 それって、昔はわたしがパッパやママンの子どもであることを演じてたって言いたいのか。

 

 確かに、演じてた部分もあるかもしれない。

 

 転生して前世があるわたしは、今世の親子関係を失敗したくなかったからだ。

 

 ママンもパッパも素敵な人で、すぐに大好きになった。

 

 だから、完璧な親の期待に応える子どもを演じようとしたんだ。そのためにはメダパニによる完全な情動コントロールとママンの課した激烈な課題に答える能力が必要だった。

 

 普通なら絶対に達成できないところを、魔法の力も借りて達成してしまった。

 

 結果として、ママンには不気味がられてしまったけれど。

 

――もしかして、パッパのほうも。

 

 わたしのことを本当の子どもじゃなくて、仮面親子みたいに思っていたのかもしれない。

 パッパの腕にすがりつく力を強める。逃さないようにギュっと。

 

「わたしはパパやママの子どもです」

 

 わたしはパッパの目をしっかり見て主張する。

 

「そうだな」

 

「ん、にゃ!?」

 

 パッパにわたし、お姫様抱っこされてる。

 こんなことされて、TS娘がうれしがるはずが……はずが……あったよ! 超うれしい!

 ロングコートから、なにも履いてない肌色成分多めの足が見えても気にしない。

 わたしはパッパにすがりつく。

 

 それで――、そのまま大統領車までお持ち帰り。夢のような時間だった。

 たかだか数百メートルほどの距離だけど、世界で一番かっこいいパッパにお姫様抱っこされるのは悪くないなと思うイオちゃんでした。

 

「ロバート。うちの娘をあまりぞんざいに扱うなよ」

 

 後ろの座席を開けて、パッパは座ったまま顔を青白くされているロバート大統領に言った。

 なんだかずいぶん気安い感じだな。

 ふたりは友人とか? まさかね。パッパはそれなりに有名な映画監督ではあるけれども、一国の大統領と友達だとか、そういう話は聞いたことすらない。

 

 ちなみに大統領車の窓ガラスなんだけど、液晶画面か何かになっているのか、いまはスモークガラスみたいに中が見えない構造になっているようだ。透明になったり黒くなったり、もしかしてゲーミングパソコンみたいに虹色に輝いたりもするのかもしれない。ハイテクだな。

 

 そのままするりと中に入り、パッパはわたしを膝に乗せる。

 裸コートの娘を膝に乗せる父親って絵面的にはヤバいかもな。

 大統領車がわりと小さめの構造だからしかたないんだけど。

 

「イオちゃんからの申し出だったんだ」ロバート大統領は狼狽したように言った。

 

「ええと、ロバートおじさまのおっしゃるとおりです」わたしも口添えする。

 

「魔法部隊がいるじゃないか。配置を抑えたのは、魔法が漏れるはずがないという自信があったんだろうが、さすがにうかつじゃないか?」

 

「うかつと言われればそのとおりだが、魔法部隊はリリルーラでいつでも駆けつけることができるはずだったんだ。そこにいる大魔王様がルーラを封じなければね」

 

「あ……外からも入れなくなるんですね」

 

 それはこのイオの目を持ってしても以下略。

 

 だいたい考えればわかることだった。あのときはテロリストたちが逃亡しないように魔法力をドーム状に広げて結界みたいにしたわけだけど、中から脱出できないのなら外から入れなくなるのが道理だ。

 

 つまり、援軍おっせぇわと思っていたけれど、なかなか来なかったのはわたしが原因ってことに……。ムンクの叫びのようにほっぺたに手を当てるわたし。なんかいろいろやり方がよろしくなかった予感。

 

「なるほどな。ルーラ封じは想定外だったというわけだな」とパッパ。

 

「ああ、そのとおりだ」

 

「魔法漏れもか?」

 

「そうだ。アメリカの選ばれし100名は国を裏切るような連中ではない。おそらく日本の連中だろう。アメリカのほうはこちらでやるが、日本の調査は君がやってくれるか? アダム」

 

「調査自体はイオがいればすぐに終わるだろう。オレは日本の連中が変な動きをしないか監視するぐらいしかできないぞ」

 

 あれ?

 なんかパッパが言ってることって……。

 

「それでかまわない。問題はどこまで魔法が広がっているかだな。テロリストどもの巣穴も潰す必要があるし――そこでもイオちゃんの力を借りる必要があるだろう」

 

 ロバート大統領がわたしのほうをじっと見ている。

 ロングコートからちらりと覗く肌色成分を見られてる気がして恥ずかしい。

 パンツがないのがこんなにこころもとないとは。

 

「あの、具体的には何をすればいいんですか?」

 

 わたしは魔法カンパニーに所属していて、魔法カンパニーはアメリカと日本の要請を受けて動くことになる。厳密に言えば、社長であるママンの決定がなければわたしは動けないけれども、今回みていにテロを撲滅するというときに動かないという選択肢はないだろう。

 

「まずは是非弁別呪文(インパス)だな」パッパが言う。

 

「選ばれし両国100名ずつ。200名にインパスをかけるってことですね。でもインパスはわたしじゃなくてもできますよね?」

 

 インパスは初級と中級の間くらいの魔法だ。

 かしこさレベルで言えば、100くらいでギリギリ使えるか使えないかといった感じらしい。

 つまりわたしじゃなくても問題ない。

 

「そのとおりだ。アメリカ側の洗い出しはこちらで問題なく行えるだろう。だが日本側が本当に信頼に足る調査を行うかは怪しい。だからイオちゃんにやっていただきたいということだ」

 

「わたしではなくて、お父さまが必要なのでは?」

 

 さっきそういってたよな。

 

「う、うむ……そうだな。そうともいえるかもしれん」

 

 なんとも歯切れの悪い反応だ。

 ロバート大統領はわたしのパッパを見て反応をうかがっている。

 

「ロバート。もうそろそろいいだろう。家族にはきちんと打ち明けたいと思っていたんだ」

 

「しかし、国家機密が……」

 

「魔法を使う娘にいつまでもオレの秘密を貫きとおせると思うか?」

 

「そうだな。いいだろう」

 

 いったい何の話をしてるんだ?

 

 そう思っていると――。

 

――くるり。

 

 わたしは膝の上で持ち上げられ回転させられた。

 おしりとかが直接パッパに当たってる。

 パッパの顔が近くて、わたしは熱くなってくる。

 

「にゃ。お父さま。ちょっとこの体勢は恥ずかしいです」

 

「はは、ごめんね。イオちゃん。ちょっとパパは黙っていた秘密があるんだ」

 

「秘密……ですか?」

 

「ああ、パパはね。アメリカのスパイなんだよ」

 

「え、マジですか?」

 

 衝撃の事実――。

 

 とはいえ、魔法が使えることを黙っていたわたしと比べてどちらがより重大な秘密かと言われると微妙なところだな。

 

「凄腕のエージェンシーだ。昔から何度も世界を救ってもらっている」

 

 ロバート大統領絶賛である。

 

 わたしからしてみれば、ドラえもんとのび太が世界を何度も救っているという事実並みに、わりと現実感のない言葉だ。なんといっても年に数回くらいしか家族に会ってくれないし、映画の撮影は超絶遅いし、わたしいじけちゃうし。

 

 ただ大統領の視点で見ると、日本の総理大臣である戸三郎じいちゃんよりもパッパのほうを信頼してるってことか。

 

 うーむ。日本人としては複雑な気分だが、それもしかたないか。

 

 日本は同盟国ではあるけれど、アメリカにとっては他国だろうしな。

 ちょっと寂しい感じがするけれど、一国を預かる立場としては仕方ないのかもしれない。

 

「あの、お父さまの秘密はわかりましたけれど、お母さまはご存じなんですか」

 

「おそらく知らないだろう。星宮本家は何かをつかんでいるかもしれないが、マリアは星宮家のお嬢様だからな。パパが思うに、娘という存在は誰よりもかわいらしいものだ。おそらくそれは星宮飛鳥さんにとってもそうなんじゃないかな」

 

 ばあちゃんか。

 

 いまは、ママンに対する態度は軟化しているけれども、パッパは出禁状態だからな。

 上流階級特有の血筋とかを大事にする家柄だからだと思っていたけれど、もしかしてパッパがスパイだと気づいて、それで出禁状態だったのか。逆によく結婚を許したなと思える。

 

「お父さま――、わたしはお母さまが泣くところを見たくないので問いますが、()()()()()()()()()()()?」

 

 よくスパイとかで偽装結婚する話がある。

 わたしが聞きたかったのは、そこに愛はあるかいってやつだ。

 それ以外はべつにどうでもいい。どこの国で何をしていても愛はほとんどすべてを中和する。パッパが危険な仕事をしていると聞けば、ちょっとだけ心配だけど、いまのわたしは蘇生できるしな。

 

「もちろんだとも」

 

 パッパはまっすぐにわたしを見て言った。

 まあ、子どもをつくったというのは愛の証左にはなるだろう。

 でも、傍証だと思う。愛がなくてもえっちなことはできるわけだし……。

 

「ジト目で見ないでくれよ。疑わしく思うのなら是非弁別呪文(インパス)を使うかい?」

 

「いえ。お父さまがおっしゃるのでしたら信じます。でも、お母さまに黙っていたことは謝ってくださいね」

 

「そうするよ。けれど――、イオちゃんもママに謝ることがあるんじゃないかな?」

 

「え!? そ、そうですかね?」

 

 わたし、今回はわりと慎重に動いた気がするんですけど。

 大統領の許可も得てから出動しましたし、聖女ムーブだって。

 

「大魔王宣言しちゃったでしょ。あれはよくないかもねえ」

 

「あれはネタですよ。ダイの大冒険で大魔王バーン様がそんなセリフを言うんです。ファンとしては一度は言ってみたいと思って当然なんです!」

 

「でも、イオちゃん。ちょっと本気出してなかった感じだよね。テロの被害自体はやむを得ないとしても、もう少し損害を抑えられたんじゃないかな」

 

 車の外では大怪獣――というよりドラゴンの戦った爪痕がばっちり残っている。

 ビルのいくつかは倒壊しちゃってるし、車道はボコボコだ。クリスマスイルミネーションもほぼ全滅だろう。

 もちろん、わたしが本気を出せばカンタンに倒せただろうけど、力でねじ伏せるんじゃなくて、人類が協力して戦った感をだしたかったというか。

 

「聖女っぽいかなって思ったんです」

 

「聖女というか大魔王様みたいになっていたわけだけどね。無理やり回復させて突撃させるとか、なかなかに鬼畜な仕様だなと思ったよ」

 

 うう。パッパが厳しい。

 娘にはあまあまなパッパでさえこれだと、ママンに怒られるのは間違いないだろう。

 

 ロバート大統領は重苦しいため息をつく。

 

「まだ概算だが300億円以上の損害にはなりそうだ」

 

「あの……よろしければ、時間を巻き戻して修復しましょうか?」

 

 サンズオブタイム。時の砂の魔法は球体の領域を創り出す。

 その領域内の時間を巻き戻せるので、ここら一帯を巻きこめばカンタンに元に戻すことができる。ちなみにご都合主義的に人の記憶だけは巻き戻らない設定なので、無限ループを繰り返すみたいなことにはならない。

 

「いよいよ。イオちゃんが大魔王ムーブを極めてきたな」とパッパ。

 

「魅力的な提案であるが君のお母さまに怒られる時間が三倍ほど伸びそうだな」と大統領。

 

 そんなに時を戻すのってダメなんですかね?

 人の寿命とか年齢を戻すわけじゃないんだから、べつにいいじゃないかって思うんだけど。

 

「時は流れゆくから美しいって話さ」

 

「お父さまのおっしゃる意味はよくわかりません」

 

 パッパは一度も後悔したことはないのだろうか。

 やり直したいと思ったことは?

 時よ止まれ、おまえは美しいって思う時はなかったんだろうか。

 いま、わたしは小学生で。

 灰色の前世とは何もかも異なる。

 友人にも恵まれ。

 みんな優しい。

 できるなら時間が止まってほしい。

 楽しい時間を末永く過ごしたい。

 できれば永遠にって思うんだけど。

 

「イオちゃんにはまだ少し早い話なのかもしれないな」

 

「わたし前世持ちなんですが」

 

「それってイオちゃんが前世でダンゴムシだったとかじゃないよね?」

 

 わたしの評価っていったい……。




そこに愛はあるかい?

誤字指摘や感想ありがとうございます。
全部に返信したいんですけど、毎回ギリギリの時間になってしまい時間をとれません。
だいたい、遅筆なのが悪いんですけどね。
明日は時間が取れそうなので、ちょっと丁寧に書きたいです。
今回話が進んでないやんけみたいに見直して思った。
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