ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です 作:魔法少女ベホマちゃん
イオの父――アダム・スターマンはイオと別れたあとに暗躍を開始した。
向かった先はなんと中国。
元々エージェントとして活躍していたアダムにとって隠れ家なんてものは各国にいくつも有している。ルーラを使えば、侵入はより簡単だ。
魔法による様々な恩恵によって、さらに容易くなっている。
短距離ルーラによる敷地内侵入。
レムオルによる透明化。
モシャスによる変装。
インパスによる罠回避。
トベルーラによる移動。
ピオラによる素早い身のこなし。
レミラーマは微妙に使えない。あれは使った瞬間に逆探知される可能性がある。
要するに魔法がもたらされたばかりのため、セキュリティがガバガバだったのである。
最高指導者と相対するまでに、わずか一時間もかからなかった。
だが、べつにアダムは暗殺者ではない。
きらびやかな装飾品が置かれた執務室にドッシリとかまえた最高指導者は、突然姿を現した侵入者に多少の驚きはしているものの、必要以上に慌てふためいてはいなかった。
「ゴールデンアイ……どうやってここに」
それはアダムのエージェントとしての名称だ。
変装の得意な彼であるが、特徴的なのはイオによく似た金色の目だ。
暗闇で獲物を狙う瞳からそう呼ばれた。
「魔法を使ってきただけだ。あんたらの国だってやろうと思えばできるだろ。オレの娘が手を貸さなければの話だけどな」
「娘?」
「星宮イオはオレの娘だ」
今度こそ驚愕している様子が伝わってきた。
星宮イオがアダムの――いや、ゴールデンアイの娘であるという事実は知られていなかった。
そして魔法というシステムの中枢を担うイオを手中に収めているということは、世界を手に入れてるに等しい。娘が反抗期にならなければという話であるが、星宮イオは配信などで父親ラブなことは公言している。それはもうファザコンなのが一発でわかる程度に。
言うまでもないことであるが魔法的な意味でイオの趣味は解析班が各国に一人以上はいるのが常識なわけで、この国においてももちろんそうだった。
イオを
例えば、マホトラで敷地を囲えば、ルーラによる侵入はできなくなる。
暗殺合戦になったとしても、ザオリーマで一方的な殴り合いになる。
そもそも、魔法攻撃を加えれば大陸ごと消滅するかもしれないのだ。
そもそも勝負にならない。
テロが起こった時点で、中国側の負けは確定していたのである。
「何がお望みかね。私の命か?」
「いや――、あんたらの国に魔法を伝えたのが誰なのか教えてほしい」
「ふむ……」
最高指導者は交渉の余地があるかを考えているようだ。
「例えば、それを教えたとして魔法を使える者を貴国に引き渡すという要請をとりやめてもらえるのかね」
「それは不可能だろう」
「貴国はテロリストに対してアレルギーをお持ちのようだ」
彼なりのユーモアだったのだろう。
魔法を使える者を引き渡す要請は、表向きはテロ許さずの姿勢であるものの、実際には中国との魔法競争に打ち勝つための方便にすぎない。
魔法の広がりは中国の政治体系からして、トップ連中が独占している可能性が高く、必ず引き渡しは拒否してくると踏んでいる。例えば、最高指導者が積極的に引き渡しに応じるとすれば、その瞬間に側近たちが反旗を翻すだろうからできないのである。
それを理由にして、大陸全土にマホトラを行う。国際世論としてもテロの脅威を強調すれば、テロを擁護した国家として中国のほうが悪いとしやすい。
「だが――、みっつ受け入れてくれるなら譲歩する余地がある」
アダムは親指を含めて指をたてる。
「みっつ?」
「ひとつめはさきほど言った魔法をもたらした者の情報」
指を折り、
「ふたつめは魔法をこれ以上広めないこと」
指を折り、
「みっつめはあんたがいまこの場でインパスを受け入れることだ。あんたが意図的にテロを起こしたとは考えにくくはある。こっちにとっては反撃の理由になるからな。利敵行為ですらあるだろう。だが万が一という可能性も潰しておきたい」
「やりたまえ」
彼の計算は素早かった。あっさりとアダムの提案を受け入れた。
インパスの結果は青だ。やはりテロ行為は一部の暴走だった。
「おたくの国も一枚岩じゃないんだな」
アダムは同情するように言った。
最高指導者が関わりがないということであれば、部下が勝手に魔法を広めたということになる。
アメリカにまで広めてテロを誘発したということは、その者はこの国を壊したがっているのかもしれない。
「もともとわが国民は国というつながりよりも家族的なつながりを大事にする傾向にある。父祖を同じくする者の縁は国家による統制をしばしば越える」
それは道徳の劣後を意味しない。
家族というくくりがひとつの宇宙を形成するがゆえに、国家のルールは別の宇宙の出来事なのである。したがって――、法律に反していても家族を匿うといったことがしばしば起こりうる。
アメリカ人にもなくはない感情なので、優先順位の問題なのだろう。
最高指導者としては、そんなことでは国が成り立たないので断固たる態度をとらざるをえない。
「譲歩内容についてお聞きしてもいいかね?」
「マホトラの解除をできるだけ早める」
「具体的にはどの程度の期間早まるのかね?」
「おそらく数年単位で縮まるだろう。こちらに魔法防壁を築くまでの間だ」
「主要な施設に魔法的な対策を施すというわけか」
「最重要施設だけでも十分だがな。フールプルーフが働いている」
「テロの被害はなかなかのものだったと推察されるが」
「時間を巻き戻せば回復可能だったとは聞いている」
「恐ろしい力だ。戦争の火種になりかねん。君の娘は大魔王か何かなのかね?」
「そうだとすれば、オレは大魔王のパパってわけだな」
アダムにとっては、イオは魔法が使えてもかわいらしい娘にすぎない。
娘のために世界を守るというのがアダムの行動理念だ。
その娘に世界が壊されるかもしれないという話だが……。
「マホトラの解除については、時期を見てそちらに打診することになる」
アダムは真面目な顔つきになって言った。
「打診か。スケープゴートは必要というわけだ」
「どちらかといえば、獅子身中の虫だろう」
「そうだな」
最高指導者はすぐにアダムの言葉を了解した。
中国にとってみても、今回のテロは寝耳に水であり国益を害する行為だった。中国が静々と魔法を広めていれば、アメリカとしても口出しすることはできなかっただろうからだ。
他方でアメリカ側としてもテロに打ち勝ったというポーズが必要なので、最終的には
セナハを使って自白させれば、誰から誰に魔法が渡ったかはわかるので、すぐにでも誰それというのは明白になる。
そのときには引き渡してくれという裏取引を持ちかけたのである。
両国の利益が一致しているので、そこに否は無かった。
☆
もうパッパだけでいいんじゃないかな。
動きの鈍い日本魔法会議の人たちと違って、スパイらしい八面六臂な活躍ぶりだ。
もちろん、国益を考えてのことなんだろうけど、わたしのためでもあるよな。
わたしはパッパに抱き着く。愛娘ムーブ全開だ。
「にゅ」
そしたら、ママンに引き剥がされる。
ママンはちょっとだけ困惑気味だけど、スパイだってことを知ったばかりだからな。
わたしをぬいぐるみ代わりにして落ち着きたいんだろう。
思えば、こういう事態に慣れてないのだろうと思う。
ドラマじゃないんだぜ、これ……。
大きな会議室に突き出された男は、芋虫のように蠢いていた。
ロープでグルグル縛りにされ、口元にはさるぐつわをかまされている。
名を阿野竹生(あの・ちくしょう)と言った。
阿野は権力者にしては若く……といっても60代の前半くらいだが、これでもここでは若造とか呼ばれるらしい。禿散らかした頭とおたふくのように垂れ下がった顔が印象的な、どこにでもいるおっさんといった感じの人。
もちろん、わたしにとってはどうでもいい。
早くマホトーンでもかけてこの場は終わりにしたいな。
パッパが阿野のさるぐつわをグイっとズラした。
「何をする貴様。私は病気療養中なのだぞ!」
「おお。いきなりさえずるねえ……」とパッパは少し面白そうに笑っている。
いくらすごんだところで、パッパにとってはクソ雑魚なんだろう。
まあ、わたしにとってもそうなんだけどな。
「戸三郎おじいちゃん。この人、どうすればいいんですか?」
「うむ……」戸三郎じいちゃんは重く頷く。「まずは話を聞こう」
「ということらしいですけど、何か申し開きはありますか。あ、その前に念のためインパスしておきますね。あなたが魔法を中国側に渡したということで間違いないですか?」
――
阿野は禍々しい赤の色に染まった。
どうやら間違いないらしい。周りの者も嘲笑と侮蔑の視線を投げている。
阿野はそんな視線もものともせず、傲岸不遜な態度をくずさない。
地面に寝っ転がったまま睨んでも怖くもなんともないぞ。
ダンゴムシのほうがまだかわいくて有用だ(当社比)。
「私は国を裏切ったわけではない」
えー。マジか。
さすがにその認識は無かったな。
日本のお偉方が集まって決めたことを反故にしておいて何を言ってるんだろう、こいつ。
「魔法とかいうワケのわからん力に皆ふりまわされすぎなのだ。日本やアメリカだけで対処すべき問題ではない。これは全地球的に取り扱う問題だと考えたまでのこと」
「中国に魔法を渡した対価ってお金ですか?」
――
おお、珍しくも黄色だよ。うんこみたいな黄金色に輝いてやがる。
確か、ゴールド系だと黄色に光るんだったよな。
「星宮イオぉ! 人のこころを勝手に覗くな! この悪魔め!」
唾を飛ばしてこないでほしい。
泡を吹いていて全力疾走した馬みたいになっているぞ。
ツインターボ師匠はカワイイが、おまえは醜い。
イオちゃんはドン引きです。
「まあ、インパスはもうしませんから、言い訳があるならおっしゃってどうぞ」
阿野はこちらを見ずにいた。
モゾモゾと動いてようやく座る体勢になるのに成功し、それから真摯そうな顔を作って、会議に座る権力者の皆さんに訴えかける。
「私はなんら法律に反したことはしていない。そこの男は私の家に突然押しかけてきた。そして無理やり病気療養中だった私をここまで連れてきたのだ。これは明確に住居侵入罪であり我が国の法律に反している! 私は被害者だ」
スパイなんでまあ犯罪行為もするわな。
どうやら、阿野はパッパがスパイであることを知らないらしい。
「アメリカとの合意や、この国の合意形成に反してると思いますけど」
「おまえのような小娘には言っておらん!」
話を早く終わらせたいからわたしが代表して聞いているだけなんだけどな。
会議室の皆さま方も、約束事を反故されたのはお怒りのようだ。
「イオ嬢の言葉どおりだ」「法律には反していないとしても道義的におかしいだろ」「左様」「イオちゃんに見下ろされたい」「さ……左様?」
騒然とする会議室。
ふてぶてしくも阿野は開き直っている。
「考えてもらいたい。アメリカと日本との間での100人ずつという密約は条約にはなっておらんし、国際的な合意ですらない。つまりなんら法的拘束力を持たないのだ。この会議においても誓約書などを取り交わしたことはないだろう」
「条約にするには"魔法"という定義が曖昧でしたし、時間もなかったからでは?」
「だからおまえには聞いておらんと言っているだろう! 私の方が法律に詳しい!」
「下手すると外患誘致罪とかになるんじゃ」
「小娘ぇ~~~!」
ゆでだこみたいになっている。
わたし、余計なこと言ったかな。
「阿野くん。イオ嬢が言うように君の行為は外患誘致罪に該当する可能性もある」
戸三郎じいちゃんがサポートしてくれる。
十歳の女の子が言うよりもよっぽど効いたらしく、阿野は取り繕うように言葉を紡いだ。
「が、外患誘致に当たるというのもおかしな話です。外患誘致は軍事上の利益を与える犯罪であり、魔法が軍事的な力であるかどうかは不明なのですから」
「未知の力であるから取り扱いに注意しましょうねって話なだけだと思いますよ」
「うるさい。お前には聞いておらん!」
どうしよう。そろそろザキしたくなってきた。
「ともかく――、私は法律には反してはおらぬのです。でありますから、私を法律で裁くわけにはいかんのですよ。それは法治国家として間違っているということになる。国としての在り方を根本から突き崩すことになるのですから」
「つまり、刑務所に入りたくないし、アメリカに引き渡されるのも嫌って言いたいんですね」
「嫌なのではない。そうしてしまうと、日本の国体を損ねると言っているのだ!」
おお、ついにわたしの言葉に耳を傾けたぞ。
言ってることは無茶苦茶だけどな。
他の皆様方は呆れてゴミを見るような目になっている。
「とりあえず、マホトーンしときましょうか?」
わたしは皆さん方に問いかけた。
永年マホトーンで口も塞げるし一石二鳥だったりして。
「マホトーンは必要だろうが……」「身柄拘束はどうだ?」「テロそのものと関与したわけではないのだろう」「あとあとマスコミ連中に露呈すれば人権屋がうるさそうではある」「左様」「しかし、適切な処分をくださねばアメリカに突き上げを喰らうぞ」「左様」「イオちゃんにお口塞がれたい」
喧々諤々の議論。
また会議が踊ってるよ。
「このままでよいとお思いか? 現状はアメリカの言いなり。アメリカの後ろをついてまわるだけのポチと同じだ。それよりは中国とアメリカを争わせ、我々は漁夫の利を得たほうがよい。幸いなことに星宮イオは我々の手元にあるのだから」
ゾゾっときた。
こいつの手元にあるとか言われるのは気持ち悪いな。
イオちゃんが日本にいるのは日本人やからやぞ。当たり前だが。
そんなことを思っていたら、肩にギュっと力が入った。
ママンだ。
「イオを! 物のように扱うのはやめてください!」
ママンってこの会議でこんなふうにいつもわたしをかばってくれててたのかな。
じんわりと胸の奥が暖かくなってくるよ。母の愛にまさる魔法はないな。
けれど、そうは思わない畜生がいた。
「……そうか。わかったぞ! おまえはアメリカのスパイだな」
「なんですって?」
「おかしいと思っていたんだ。星宮イオの父親――アダムの手並みは鮮やかすぎた。アメリカから本件を委託されているというのも怪しすぎる。星宮イオの父親だからという理由だけでそこまで関わる必要があるか。どうせアメリカのスパイか何かだろう?」
うーん、それは正解。
だから、ママンも絶句している。
ママンには国を事実上裏切っていることになることに罪悪感を覚えているから。
阿野はママンが黙っているからか、ますます調子に乗っている。
ママンが責められてわたしは胸の奥が苦しい。
「この国賊めっ! 恥知らずが!」
阿野竹生は他者を論難することが自分の正しさを証明する事だと思っている。
他者を恤うこころがひとかけらもない。
「私を陥れ、今度は日本も陥れるつもりか」
「……」
パッパがスパイだということは周知の事実ではないのだろう。
いまはまだスターのように活躍して、ジジイをひとり拉致ってきただけ。ギリギリできなくもないって感じか。
ママンはパッパをかばって何も言えないし、パッパも自らバラすような真似はできない。
「この売女が!」
あ……ふーん。
「
「ぐへっ」
あ、すまん。ついうっかり殺してしもうたわ。
本当に申し訳ない。てへぺろ。
「
「なにをするきさ――」
「
「やめ」
「
「や」
「
ごらん、これが生と死の反復横跳びだよ。
一発だけだと誤射かもしれないので、何回かやってみた。
べつにザキっても生き返らせるんだったら、最終的な死とは無関係なままだ。
わたしのコレは単なる憂さ晴らしに過ぎない。
ただ単に死を経験するというだけの話で。
血液が凍るような素敵な体験をするってだけの話。
「イオ、やめなさい」
ママンがなんとも言えない表情で言った。
「はーい」
わたしはすぐにいのちの実験をやめました。
基本的には良い子なんですよ、わたし。
会議室は先ほどから打って変わったようにシーンと静まりかえっている。
あ、さっきザキで終わったからこいつ死んだままだったわ。
――
息もたえだえといった様子で阿野が生き返る。ふぅ……。
「問題ナシ!」
「「「「「「あるわ」」」」」」
突っ込みだけは一致するんだなと、イオちゃんは思いました。
「お前の行為は殺人に値する。この殺人犯め」
あいかわらず口だけは達者な人だ。
「でもですよ。よく考えたらあなたの行為が魔法で定義できないから無罪だっていうのと同じく、わたしの行為も同じく無罪になりませんか」
「そんな無茶苦茶な論理が成り立つか」
「成り立ちますよ。ねえ。皆さまもそう思いませんか」
わたしは停止している会議室の皆さま方に呼びかけた。
「そうだな……」「うむ。私もそう思う」「魔法は不思議な力だからな」「そのために魔法法の成立を急がねばならない」「左様」「我々が歩調をあわせねばな」
だいたいは賛同してくれたようだ。
「貴様。何をするつもりだ。まさか――私を殺すつもり、か……」
「まさか。人を殺すなんて非道なこと、わたしにはできません」
「おまえ、どの口が――」と少し考えて阿野の様子が変わった。「刑務所にもアメリカにも私を連れていく法はないんだぞ。理解しているか?」
「いえ、そんなことしませんよ」
――マホトーン。
ざっと56億年ほど封じておいた。
阿野は首のあたりを抑えているが、顔には隠せない喜悦が浮かんでいる。
こいつは、たぶん落としどころを考えていたんだろう。
莫大な金と引き換えに声を失うが、拘束されなければそれでよいと思っていたんだと思う。
それで終わらせるわけにもいかんだろうがな。
アメリカ側はペナルティを求めてくる。
マホトーンをかけて無罪放免というわけにはいかない。
それに、わたしだって怒ってるんだ。
ママンを売女呼ばわりしやがって。
「
阿野のロープを真空刃で切り裂き、どこにでも行くように指示する。
うろたえていた阿野は、ニヤリと気持ち悪い笑顔を浮かべるとそそくさと会議室のドアを開けようとして――。
――
ドラクエにおいて、防御力を下げる呪文。
これは対象の肌を柔らかくすることをイメージした。
ルカ二をわたしの超魔力でめいっぱいかけるとどうなるのか。
防御力が0を越えてマイナスを突破したら?
答え。痛感神経が剥きだしの状態になる。
つまり感度3000倍状態になるわけだな。
良い具合に調整できれば対魔忍もできそうだけど、とりあえず今は北斗の拳の醒鋭孔状態です。
阿野はノブを触った指先が激痛に襲われ、のたうちまわった。
ついでに転げまわるものだから、それもまたダメージ追加要因になる。
これこのままだと痛みのあまりぽっくりいくんじゃね。
とりま
なぜかみんながドン引きしてたけど、とりあえずヨシ!
☆
それからイオは大気圏まで飛んで行って、宇宙からユーラシア大陸に向けてマホトラを唱えた。
「少し早めですけど、メリークリスマス! わたしからのプレゼントです」
幸いといっていいかわからないが、マホトラによる魔法力吸収は虚脱までもたらすものではなく、中国側も比較的穏当に受け入れることができている。
それでようやく――、日本時間にして12月23日。
ユアの誕生日、そして前倒ししたイオの誕生日パーティが始まるのだった。
まずは準備からである。
次回は百合百合な話を書くつもりなの。