ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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ルナの誕生日。ついでにキラーマシン。

 放課後になり、一度魔法クラブに集まって解散し、()()()()()

 

 なんのことやらわからないと思うから説明しよう。

 あの地獄のようなバレンタインからわずかに日が経ち、暖かい日と寒い日が交互に立ち現れるようになって来た。そう、もう少しすると3月3日のひな祭り。そして同日はルナの誕生日でもある。

 

 そこでみんなとルナの誕生日プレゼントについて話し合いの場を設ける必要があったということだな。解散はフェイクで、みんな再度ここに集まったというわけだ。

 

 べつに会議用のアプリなんていくつもあるんだろうから、わざわざ対面で集まる必要はないと思うかもしれないけど、魔法はわたしの目の前のほうがいいだろうということでそうなった。

 

 魔法をプレゼントする。

 

 これがみんなへのファーストプレゼントの条件だ。

 

 理呼子ちゃんもみのりさんにも、ついでにいったらユアにも、わたしは魔法を軸にしたプレゼントを渡してきた。

 

 だから当然ルナにも魔法をプレゼントしたい。

 

 そうじゃなきゃ、なんのための魔法だよって思うし。

 もう耳にたこができるくらい言い続けてるけど、『わたしは魔法』なのである。

 

 最初からわたしのスタンスは変わらず、魔法を広めていって、誰もが気兼ねなくルーラ登校できるような世の中にしたい。

 

 魔法(わたし)を拡大再生産していくということは変わっていない。

 

 さて、話し合おう。

 

「確かルナちゃんが欲しがっていたものって、ブルーメタルやオリハルコンなどの魔法金属でしたよね。これは召喚を用いればカンタンに手に入ります」

 

 そう……カンタンにな。

 どいつがドロップするかもわかっている。

 

「攻略本に書いてるもんね」

 

 理呼子ちゃん。それを言ったらおしめえよ。

 

 でも、まあそういうことです。

 

 ちなみにブルーメタルというのは、メタルスライムを構成するミスリル銀の二倍の硬度を誇ると言われており、勇者ロトの鎧がブルーメタル製らしい。つまり、ドラクエⅠのパッケージに描かれている青色の鎧がブルーメタル製ということになる。

 

 オリハルコンの方はファンタジー金属として有名だよな。ロト紋の場合は湖ひとつを虫メガネにして、太陽光を収束させてじゃないと加工できなかった。ともかく無茶苦茶硬い金属であり、ゾーマがぶっこわすために三年間も魔法力をかけたとかどうとか。そんな希少金属だけどドロップモンスターはテンタクルス……つまりイカだからな。どうしてイカなのかはわからんが、どこに召喚するかが問題になってくる。

 

 他方でブルーメタルのほうはというと――、

 

「お姉ちゃん。ブルーメタルについてはモンスターからドロップするんじゃなくて鉱脈を掘っていたと思うんだけど違った?」

 

 そう、ユアの言う通り、ドロップするモンスターはいないのだ。

 

 しかし、それは浅はかな考えというもの。

 ふっ。最近のゲームから遡ってプレイしているにわかなドラクエプレイヤーにはわからんか。

 どれ、お姉ちゃんが優しく教えてやろう。

 

「ゲームプレイ的にはそうなんですが、()()()()()()()()()()()()()()なんですよ。どこの部分がそうなのかはわかりませんけどね。おそらく胴体部分がそうなんでしょう」

 

――キラーマシン。

 

 出てきていないシリーズもちらほらあるけれど、ドラクエの中ではかなり有名なモンスターだろう。その名のとおり、機械系モンスターの元祖であり、四本足とモノアイがある意味キュート。青色のメタリックなボディが特徴だ。たぶん、関節とかは違うんだろうけど、ブルーメタルという設定のためか防御力は高く、魔法も通しにくい。

 

「キラーマシンね。あれを召喚しちゃうの? 確か人間を殺戮するために作られたって設定じゃなかったっけ。いまさらな話だけど大丈夫かな」

 

 みのりさんはキラーマシンのことがあまり好きではないようだな。

 

 キラーマシンにはラピュタの巨神兵に通じるかわいさがあるというのに。

 あのロマンがわからんとは……所詮は女子供よ。

 

 なお、言ってることはだいたい正しい。

 

 キラーマシンの『キラー』の意味は、大魔王ゾーマが勇者と戦わせるために異世界から召喚したという設定から来ている。つまり対勇者用兵器。暗殺マシーンなんだよな。

 

 ゾーマ自体は残念ながらパソコンがさっぱりダメなおっさんだったのか起動することすらできず、その後、大神官ハーゴン(正確にはハーゴンの部下だったかな)がリサイクルするまで時を経ることになる。

 

 ロンダルギアへの洞窟。キラーマシン三体出現。うっ……頭が。

 

 でも、ノーマルなキラーマシンよりⅥのキラーマジンガにぶっ殺された人のほうが多いだろうけどね、初見さん。

 

「ご懸念には及ばず。キラーマシン自体は最初から人を殺戮するような存在じゃないのです。その証拠にドラクエⅤだと仲間になるモンスターですしね。ダイ大では中に入ったりもしてますし、要はプログラム次第なんです。わたしがそういう真っ白な心を持つキラーマシンを召喚すればよいだけのことです」

 

「ふぅん。まあ魔王っぽいエビちゃんも召喚してるから今更だけど、キラーマシンの召喚って、おばさんの許可とれたの?」

 

 ママンの許可か。

 これは紆余曲折あったよ。

 

 未知の生物を召喚するというのは、ウイルスとかそういう危険はないのかとか、この世界で繁殖してしまったらどうするのかとか、人類絶滅の危険度を測らなきゃならないからな。

 

 エビちゃんに聞いたところ、そもそもウイルスやらの危険は無いそうだけどね。

 無数に分かたれた次元の中から、わたしが望む個体を決定するというのが召喚システムらしい。

 

 この世にはいくつもバージョンがあって、その中から最善を選び出すことができる。

 可能性が(ゼロ)でなければ、無限の試行回数によって必ず達成されうるということらしい。

 

 もちろん召喚主の力量にもよるのだろうが、わたしの魔法力なら足りないってことはない。

 わたしが望まない限り、危険な個体が召喚される恐れはないといえる。エビちゃんもめっちゃええやつだし、その言葉は信じるに足る。

 

 わたしはこの世界を滅ぼしたいってわけじゃないし、わたしと仲良くなれる子が来ないかなっていつも思ってるからな。ラブ&ピースですよ。

 

 ママンがわたしと同じ気持ちなのかはわからない。

 

 けれど――、

 

「未知の金属に対する誘惑には勝てなかったようですね」

 

「それって国の偉い人とかにお願いされたとかじゃないかな」理呼子ちゃんが言った。

 

「そういう面も無きにしもあらずでしょうが、お母さまも国の偉い人たちもそろそろわかったのではないでしょうか。召喚したモンスターさんとはみんな仲良しだということに。はぐれメタルだけはダッシュで逃げられましたが。たぶん怖がりさんなんでしょう」

 

「何度もイオちゃんが召喚するから慣れてきたんじゃないかな。スラリンちゃんみたいにさ」

 

 みのりさんがおっぱいの前で腕を組む。

 いや、腕におっぱいが乗せられているようなそんな恰好だ。

 スライムが二匹……。いや、あれはキングスライム級……。

 

「スラリンに慣れたとかじゃなくて、お姉ちゃんに慣れてきたんだよ」

 

 ユアちゃんや。

 お姉ちゃんをさりげなく貶めてないかい。

 

「確かに、イオちゃんならしかたないよねって空気感はあるかな」

 

 みのりさん!?

 

「うん。イオちゃんならしかたないよ」

 

 理呼子ちゃんまで!?

 

 でも、しかたないってことは許されてるってことだからいいのかな。

 

 モンスターを召喚することの根源には異類恐怖症を克服しなければならない。それは異なる者への恐怖、言い換えれば他者への恐怖を乗り越えるってことだ。

 

 ママンは言ってた。魔法を隠していた頃、わたしを不気味に感じていたって。ママンでさえそうなら、他のみんなもそうだっただろう。

 

「イオちゃんがしかたないって思われるのは、イオちゃんの優しさを感じ取ってるからだよ」

 

 理呼子ちゃんのまなざしのほうが優しいと思うが。

 

「優しいですかね?」

 

 正直、そこはよくわからない。

 

 全世界ベホマズンにしろなんにしろ、わたしはさほどよく考えもせず魔法をぶっぱしてただけだからな。それからみんなのアドバイスを聞いて、抑制するようにはなってきたけど。やっぱり時々考えなしにやっちゃうことも多くて、ママンにはよく叱られている。

 

「イオちゃんは星の王子様って読んだことある?」

 

 唐突な理呼子ちゃんの言葉。

 

「サン=テグジュペリのですか。もちろんですよ」

 

 あの絵本は大人になってから読むと真価がわかる。

 子どものころに読まされる絵本のひとつでもある。

 

 その作品の有名な言葉は、

 

――いちばんたいせつなことは、目に見えない。

 

 という一言だろう。

 

 けれど、その言葉は作品自体にも向けられていると考えるべきだ。

 いちばんたいせつなことは言葉にされていない。

 大人になって"あの景色"を覚えている人がどれだけいるだろうか。

 物語が終わったあとのモノローグとして語られる風景は、何者もいないさみしい丘だ。

 

 理呼子ちゃんが左手の薬指に手を持っていって、何かをはずす仕草をする。

 空中にわっかを作るような、そんな恰好だ。

 

 そこにはレムオルで透明化した私の創ったマホアゲルの指輪がある。

 透明化したのはルナの指示で、パワーバランスを著しく歪めてしまう恐れがあるからだ。

 

 あまり考えてなかったけれど、マホアゲルの指輪を狙って襲われる可能性があったんだ。小学生のおててに指輪というのははっきり言って目立ちすぎた。これはわたしの加工能力がクソ雑魚すぎて指輪くらいしか作れなかったせいだけど、そんなものをつけていれば何かあるだろうと勘ぐられる。変な気を起こすやつが出ないとも限らない。

 

 わたしにとって、みんなのことが大切になればなるほど、みんなが危険にさらされてしまう。

 

 そうなれば、たぶんわたしはこの星にマホトーンをかけて、自分自身はどこか別の世界にでも永遠に去ってしまったほうがいいだろう。

 

「あと一か月で全世界に魔法が広まるね」

 

 また突然の言葉。

 

「そうですね」

 

「だから、イオちゃんもナイーブになってるんじゃないかな」

 

「そうでしょうか」

 

「魔法がどんな使われ方をするかわからないもんね」

 

「確かに」

 

 例えば、魔法を使った警察機構も作られる予定だが、魔法の可能性を探るのが先だ。

 いわば、自動運転車とか、黎明の技術が出たばかりの状況に等しい。

 

 ナイーブというか。どうなるんだろうなって気持ちはあった。

 魔法がどう扱われるかよりも、みんなの扱いのほうがわたしにとっては大事だ。

 できればいっしょに外を出歩ける程度にはなりたい。

 みんなを世間の目にさらしたのはわたしの責任だから。

 

「ところで星の王子様のくだりうんぬんは……」

 

「どこかにいなくならないでねって言いたかったの」

 

 理呼子ちゃんも"あの景色"を覚えている子だったのか。

 同じ作品の同じところをたいせつに思えるって、なんだかいいな。

 胸がジーンとする。

 

「お姉ちゃん。そんなことよりどうするの?」

 

「むう……そうですね」

 

 ユアの横やりに少々ムッとしたが、ルナの欲しいものを得るためには召喚する事は必須だ。

 

「まずは、ブルーメタルとオリハルコンのどちらをプレゼントするかですね」

 

「両方じゃないの?」とみのりさん。

 

「プレゼントはオンリーワンだからこそ輝くんですよ」

 

「だったら、今年はブルーメタルからがいいんじゃないかな。来年はオリハルコンってしたほうが期待感も高まるだろうし」今度はユアだ。

 

「そうですね」

 

「でも、キラーマシンからブルーメタルをとるのって壊しちゃうの?」

 

 理呼子ちゃんが心配げだ。

 この子、本当に優しいからな。特に命にたいして優しく、虫に対してすら慈愛を持っている。

 モンスターでも生きているという考え方は理呼子ちゃんから学んだところも大きい。

 

「キラーマシン次第ですけど、たぶん喋ることができます。だから痛くないか聞きながらブルーメタル製のところを削るなりすればいいんじゃないでしょうか。そのあとは回復魔法で治りますよ。ゲームでもそうだったんですから」

 

「ゲームではそうだったかもしれないけど機械が治ったりするのかな」

 

「それは聞いてみてですね」

 

「それよりどこで召喚するのかのほうが大事じゃない? キラーマシンって5メートルくらいはありそうだよね」

 

 ユアはダイ大の漫画の該当ページを広げている。

 人が乗る兵器として描かれているくらいだから相当でかいのは確かだ。

 

「うーん。出現場所に気をつけないと叱られてしまいますね」

 

「イオちゃん。学園内では召喚しないほうがいいよ」

 

 みのりさんは理事長の娘さんだから当然の配慮だな。

 

「屋上とかもダメですかね」

 

「うーん。たぶん誰かに見られちゃうだろうしダメかな」

 

「そうですか……」

 

 だったらどうすればいいんだ。

 召喚できるような場所がないぞ。

 アメリカにはニューイオちゃんズランドをもらったけど、アメリカのほうで人が住めるように改築中らしいし、元祖イオちゃんズランドも人の手が入っている。

 

「本末転倒ですがルナちゃんに頼んで研究所を使わせてもらうしかないかもしれません」

 

「べつにサプライズにこだわらなくてもいいんじゃないかな。ルナちゃんの場合、案外そこらへんはサバサバしているしさ」

 

 みのりさんの言葉に頷く。

 そうだよな。ルナがいちいちサプライズにこだわるような性格とも思えん。

 あいつはそういう前置きをメンドウくさがるタイプだからな。

 

「じゃあ、ルナちゃんの研究所を使わせてもらいますか」

 

「あとは、私たちが何をするだね」

 

 と――そうだった。

 ユアの言葉で思い出したが、このプレゼントはみんなでひとつの何かを創ることにある。

 

 とは言え、金属そのものをプレゼントの中核に据える今回みたいな状況では、なかなかにみんなでひとつっていうのが難しい。

 

 前もって伝える以上、プレゼントの仕方みたいな協力方法も使えんしな。

 

「なにかいいアイディアはないでしょうか」

 

「ブルーメタルを使って何かを創ってみたらどうかな」とユア。

 

「例えばなんですか?」

 

「鎧とか」

 

「八歳児に鎧……」

 

 似合わないってレベルじゃねーぞ。

 

「そもそもブルーメタルってどんな金属なんだろ?」とみのりさん。

 

「ブルーメタルというのはですね。ヒットポイントの自動回復効果があるそうです」

 

「つまり癒しの効果があるんだ」

 

 そうです。みのりさんのお胸様と同じですね。

 内心で同定するわたしでした。

 

「だったら、ペンダントとかかな。デザインなら私するよ」

 

 理呼子ちゃんは控え目に手をあげた。

 魔法少女の服も理呼子ちゃんの手によるものだからな。

 女の子に似合うかわいらしいデザインを創ってくれるだろう。

 

「じゃあ、チェーンの部分は私が見繕うかな」

 

 みのりさんが乗っかる。

 

 そして――ユアは。

 

 ユアは何をしたらいいんだ。正直、もうやること残ってないぞ。

 

 ブルーメタルもオリハルコンとは言わないまでもかなり硬い金属だ。メタルスライムの二倍の硬さだからな。つまり加工するにはわたしの魔法力がないと無理だ。

 

 わたしが困っていると、ユアは自信満々に笑んだ。

 

「私はルナちゃんにペンダントをつける係です!」

 

 わたしの妹はいいところを取っていくのがうまい。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 いつものルナの研究所の地下。

 プールがあるところの管理棟にみんなが終結している。

 

 時はひな祭り。そしてルナの誕生日。

 言ってみれば、ロボットもお人形の一種だよな。

 そして女の子はお人形遊びがお好き。

 

「嬉しい……」

 

 ぼそりとルナがつぶやく。

 

「すごく嬉しい! 初めてだ。友達から誕生日プレゼントをもらえるなんて」

 

 いつものクールなかんばせがニヤニヤと崩れていてかわいらしい。

 

「理呼子ちゃんがデザインを描いてくれました」

 

 わたしは理呼子ちゃんのほうに手のひらを向ける。

 理呼子ちゃんは頷く。

 

「ルナちゃんに似合うようにがんばりました」

 

 続いてみのりさんのほうに。

 

「チェーン部分はみのりさんに用意してもらいました」

 

「魔法的要素はないけどね。品が良いやつを選んだよ」

 

「最後にユアは――」

 

 わたしが言い切る前にユアが口を開く。

 

「私がルナちゃんにつけてあげるね!」

 

 そんなわけでみんなが思い思いにアピールすると、感極まったのかルナがぴょんぴょん跳ねた。

 

「わーいわーい嬉しいな!」

 

 なんだこのクソカワイイ生物は。

 

 お持ち帰りしたいレベルだ。

 

「じゃあ、ちゃっちゃとキラーマシンを召喚してきますね」

 

 みんなには安全のために管理棟に残ってもらう。

 

「んー。べつについていってもかまわんだろ」

 

 白いほっぺたが興奮してるのかリンゴのように真っ赤になっている。

 

「確かにわたしのスカラとかを積んでいますから危険はないと言えますけどね」

 

「だったらいいだろ。キラーマシンを間近で見てみたい」

 

 なんだかルナがキラキラしているなぁ。

 こいつもしかすると……機械オタクなのか。

 時折いるよな。機械系女子って。

 考えてみればいろいろとクラフトするのが趣味な天才児なのだった。

 魔法で創られた機械なんて興味を惹かれないはずもないのだ。

 

 結局、ルナがわたしといっしょに地下プールに降りることになり、みんなもゾロゾロついてくることになる。

 

「ではいきますよ」

 

――しょうかん!

 

 プールの底には、そこそこの大きさの魔法陣が出現し、まばゆい青の光を放った。

 ボッシュートされるヒトシくん人形を巻き戻しにしたように、魔法陣からにじみ出てくるキラーマシン。

 

 その姿はメタリックで、モノアイは赤く残光を走らせながら動いて――、男心をくすぐられる。

 

「すごいぞイオ。本物のキラーマシンだ! かっくいい……」

 

 女子でも同じだったらしい。

 ルナは頭を揺らしながら、いろんな角度からキラーマシンを見ている。

 

 キラーマシンのほうは動きがない。壊れているのかと思ったがそうではなく、小さな生物がちょこまかと動くので戸惑っているようなそんな感覚だった。

 

「イオ!」

 

「はいなんでしょう」

 

「これもほしいぞ」

 

「ええ!?」

 

 キラーマシンも欲しいのか。その考えはなかったな。

 

「ま、まあ……ルナちゃんのお母さまがいいって言えばいいんじゃないでしょうか。それとキラーマシンさん自身がいいって言えばですね」

 

「マムは説得するぞ。アメリカとしても有用だから否とは言わないはずだ。キラーマシンの意思については大丈夫だよな?」

 

 ルナが語り掛ける。

 

「ガガ……対象を認識。アナタがマスターデスカ?」

 

「私がマスターだ!」

 

 即答するルナ。

 いろいろ根回しとかいいんですかね。これ後で怒られるパターンですよ。

 わたしなぜかよく知ってる。

 

「マスターの名前を教えてクダサイ」

 

「ルナ・スカーレット・エーテルマイアだ」

 

「ルナ・スカーレット・エーテルマイアをマスターとして認識。マスターご命令ヲ」

 

「うむ。とりあえず待機だ」

 

「カシコマリマシタ」

 

 キラーマシンはじっとしている……。

 

 って、いいのか。おい。

 

「あの、ルナちゃん、あとでいろいろと怒られちゃいませんか?」

 

「ユアのスラリンのようにちゃんとお世話するから」

 

 そんな拾ってきた猫みたいなこと言われてもな。

 

「ねえ。ルナちゃん」ユアが口を開く。「最初にお名前つけてあげようよ」

 

「そういえばそうだな。おまえは今日からロビンだ」

 

「ワタシはロビン……登録カンリョウ……」

 

 ルナがキラーマシン改めロビンを名づける。

 こうやって深みにはまっていくんですね。モンスターテイマーの道に。

 

「ロビンの扱いについてはルナちゃんに一任します」

 

「任された」

 

 腕を組んで誇らしげなご様子。

 あとで絶対叱られるパターンだ。でもそれはルナの責任だからな。

 誕生日だし、しゃーないか。

 

「ブルーメタルについてはどうしますか」

 

「ロビン。ブルーメタルで組成されているところはどこだ」

 

「胴体部分デス、マスター」

 

「トゲトゲの部分はどうだ?」

 

「ブルーメタルデス」

 

「じゃあ、そこをいったんもいでもいいか?」

 

「非推奨。戦闘能力が5パーセント低下シマス」

 

「ホイミ系でトゲトゲは回復するか?」

 

「シマス」

 

「どういう原理なんだ?」

 

「不明デス」

 

 作られたときからそうだったということか。

 でもまあ回復するのがわかっているならもぎとりやすいな。

 

「トゲの先端部分。体積にしてそうだな。私の人指指程度の大きさを自身でもぎ取れるか?」

 

「不可能デス。自身ヲ傷つけることはデキマセン」

 

「ロボット三原則が適応されているのか。だとすれば……、人間を害するようにはプログラムされていないのか?」

 

「ガガ……ニンゲンの定義が不明」

 

「じゃあ、生物を攻撃するようにはプログラムされていないのか?」

 

「されてオリマセン」

 

「それはおまえがそうだからか。お前のシリーズはすべてそうなのか?」

 

「不明」

 

 延々とやり取りを続けそうな勢いだな。

 どうも攻撃性はなさそうだし、出荷前だったのかな?

 

「ルナちゃん。そろそろいいですか」

 

「ん。ああ。すまない」ルナが謝罪した。「ロビン。今からこっちにいるイオがロビンに攻撃してトゲトゲをもぎとるが反撃するなよ」

 

「カシコマリマシタ」

 

 赤いモノアイがこちらを捉えた。

 ブルーメタルだろうがなんだろうが、もぎ取るのはカンタンだ。

 わたしの魔法力ならね。

 

真空呪文(バギ)!」

 

 スパっと切り取ったのはトゲトゲの部分。

 だが指先というよりは、トゲの根元からわりとごっそりいっていた。

 

「イオ。ちょっともぎすぎだと思うぞ。ロビン大丈夫か?」

 

「戦闘力が8パーセント低下シマシタ」

 

 ロビンを心配して、抗議の目を向けるルナがこれまたかわいいんだ。

 もういっぱしのモンスターテイマーですよ。これは。

 

「すぐに治しますね。完全回復呪文(ベホマ)!」

 

 自己申告したとおり、回復呪文でみるみるトゲの部分は元に戻った。

 

 それからは予定通りに、ギラのレーザーでブルーメタルを加工し、細かいところはバイキルトの魔法筋肉が解決し、予定通りペンダントを作成。その間、理呼子ちゃんの監修。

 

 みのりさんから受け取ったチェーン部分をとりつけて、最後にユアがルナに装備させた。

 

「みんなありがとう」

 

 ちゃんとお礼を言える子に育って、お姉ちゃんは嬉しいですよ。

 

 最後に記念撮影をすることになった。

 

「ロビン。肩に乗せてくれ」

 

「非推奨。トゲトゲでマスターがケガする可能性アリ」

 

「問題ないんだ。スカラがある」

 

「カシコマリマシタ」

 

 ロビンの手のひらに乗っかるようにして、肩に乗せてもらう。

 ルナは丸い頭の部分に移動した。

 

「みんなも来てくれ」

 

 少女とはいえ、五人はけっこうギリギリだったけれど、巨大ロボットの肩から眺める風景というのはまた格別だ。

 

 最後に少々顔をひきつらせていた研究員さんに写真を撮ってもらい、ルナはその日一番の笑顔を見せたのだった。




次回、魔法が一般に普及しはじめます。
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