ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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オメガルーラ。ついでに魔法少女還らず。

 宇宙からの帰還。

 わりと盛大なことだと思うんだけど、まるで遠足から帰ったみたいなそんな気分だ。

 実際に所用時間はだいたい30分程度しかかかっていない。

 なにせルーラは時空間転移だしな。

 亜光速での航行とかだと確か時間の進み方がゆっくりになって、わたしが帰った頃にはみんなおばあちゃんになっているとかそういうことが起こるらしい。

 けれど、ルーラは時空間の法則を捻じ曲げ、瞬間的に目的地にたどり着いてしまう。

 いまもみんなが待っていた魔法クラブに一瞬で到着だ。

 

「おかえりー」

 

 理呼子ちゃんがふわりと笑いかけてくれた。

 みんなにただいまの声をかけながら、さっそく報告する。

 

「そういうわけで魔法は反射してきましたけど、地球とは反対方向に向かっていきました」

 

「地球外生命体がいるのか。それとも神へカウンターパンチを決めたのかはわからずじまいか」

 

 ルナは頭の後ろで手を組んで、椅子をギコギコしていた。

 危ないなと思ったが、微妙にトベルーラで浮かしている。

 みんなも魔法に慣れてるんだなとわかる一幕である。

 安心というか。安らぎというか。

 みんなが思い思いのことをしていると、日常に帰ってきたという感じがする。

 

――しかし、それにしても奇怪なことじゃないか。

 

 事の原因が地球外生命体なのか神さまなのかはわからんけど、魔法は完全に撃ち返したはずだ。

 マホカンタは使い手のところに戻っていく魔法だ。遮蔽とかがあるとさすがにぶち当たって消滅するが、ほんのわずかに隔てただけの場合は、わりと楕円軌道を描いてぶち当たったりする。

 

 わずかに誘導性能があるんだ。

 物理で魔法は防げないというゲーム的表現がこれなんだろう。

 そのルールはさんざん確認してきたはず。

 

「ちゃんとマホカンタしてきましたよ? いずれわかるのでは?」

 

「マホカンタで反射された光速の17分の1程度のスピードでは、使い手の元に帰るまでどれだけ時間がかかるかわからない。地球と同じような環境と言われているアルファケンタウリでさえ、4光年ほどは離れている。つまりは68年はかかるというわけだな」

 

「68年ですか。ずいぶん気が長い話ですね」

 

 そいつら68年もかけて地球に隕石を落そうとしていたのかよ。

 いや、もっとかかる可能性もあるのか。

 ん……。ということは、わたしが出現したからということはなさそうだな。

 いや、神さまが原因だったらそういうことも可能か。

 神さまだったら時空くらい簡単に操れそうだしな。

 

「もちろん、"りゅうせい"が適当なポイントに……そうだな、ちょうど太陽系の少し外側くらいに隕石を召喚させるということも伴うのなら、時空間転移も同時に行っているのかもしれない」

 

「つまりルーラ系も混ざってる魔法ということですか」

 

「あるいは異界に転移させるという呪文。オメガルーラを混ぜたのかもしれん」

 

「ああ……立体魔法陣の」

 

――オメガルーラ。

 

 球体の魔法陣によって、対象を異界へと転移させるバシルーラのすごい版だ。

 

 宇宙的な距離が離れている世界を、異界あるいは異世界と呼称してもおかしくはないだろう。カテゴリ的には理論上、いつかは到達する世界を()()()と呼ぶのには違和感を覚えたりもするんだが、普通の人は一生かかってもたどり着けないなら、それはもう異世界と同じだ。

 

「スラリンだっているからドラクエの世界もどこかにはあるんじゃないかな。そこから星を飛ばしてきたんだよ。わたし達はここにいますって」

 

 ユアがスラリンを両手でぷよぷよしながら言った。

 スラリンは「ぴきっ」と反応する。そうだなと肯定しているようだった。

 まあ確かに――。

 あまり深く考えてこなかったけれど、エビちゃんやスラリンやロビンを召喚していることから、そういった世界の存在は確認されているわけだけどな。

 

 ただ、召喚については謎も多い。

 

 わたしが召喚する瞬間に魔法陣に近づいても向こう側にはいけない感じだし、あくまで一方通行みたいなんだよな。ルナはドローンを飛ばして魔法陣に突入させようとしたけれどもダメだった。

 

 あと、この世界で召喚された存在は、魔法力が切れたら自然と向こう側に戻っていく。出たときと反対に魔法陣が現れて、ヒトシ君人形みたいにスイーっと沈んでいくんだ。もちろんこの時も侵入することはできない。

 

 わたしが馬鹿みたいな魔法をこめることで、スラリンやロビンはこの世界に定着している。その逆に、エビちゃんはすぐに定時退社したがるおっさんなので帰ってもらっている。おそらくエビちゃんの在り方が普通なのだろうと思う。

 

 当然のことながらエビちゃんには異世界の記憶があって、要領を得ないけどなんか闇の世界らしい。おそらく魔界なのかもな。だからといって、彼の言葉をそのまま鵜呑みにすることはできないんだ。

 

 彼は召喚された瞬間に()()()()()()()可能性もあるのだから。

 

 ジュエルボーンと同じく、わたしが適当に記憶から創っている――ということも考えられる。

 いや、わたし自身は違うと信じているけれども。

 まずは他者を信じること。これは他者を(うれ)うための前提だろう。

 

 相手がいない独り遊びは寂しいものだ。将棋を独りで打ち続けるのはむなしい。

 わたしはエビちゃんの存在を信じているし、みんなともっと仲良くしたい。

 ただ相手もそうだとは限らないけどな。

 あの世界を滅ぼす魔法"りゅうせい"を使ったやつも、もっと穏当な方法はあったように思える。

 

「交信したいのなら攻撃呪文を使う必要はないだろう」とルナ。

 

「そうかな。お姉ちゃんがいるから攻撃魔法は完全に防がれるし、お姉ちゃんに交信したいのならおっきな隕石のほうが確実だよ」

 

「人間はもっと知的な生命体なんだぞ。宇宙と交信したいのなら"光"を用いればいい」

 

「それこそ光を越えたルーラの力が必要なんじゃないかな」

 

 おお。ユアの言葉に説得力があるな。

 光でも何年もかかるから、人間のように儚い存在に伝達するには時空間転移の手法が必要だ。

 攻撃にしろただの伝達にしろ。

 

「ルーラにレミーラを用いればいいだろ」

 

「それだと気づかないんじゃないかなぁ」

 

「気づくさ。そもそもイオは隕石を視認して気づいたわけじゃないからな」

 

 ルナのいうこともなるほどなと思った。

 わたしは魔法的な存在を感知する能力にも長けている。

 そうじゃなきゃ発動前に魔法を潰したりもできないしな。

 

 結論。どっちもかわいい。ユアもルナもわたしの妹的存在としてワチャワチャしていると心の底から生きててよかったって思えるわ。お姉ちゃんごころが満たされていく。

 

 いやそれで終わっていい話じゃないことはわかってる。

 

 わかってるけど、あの"りゅうせい"のひとかけらが持ち主のもとに帰るまでに何年もかかるんじゃ、下手するとこっちは寿命で死んでるぞ。

 

「どうにか早く相手のもとにたどり着く方法はないんでしょうか」

 

「相手の意図がわからないのは不気味だもんね」

 

 みのりさんが代弁してくれた。

 そう。あえて言えば宿題が残っているような、そんな気分だ。

 なんとなくモヤっとしてしまう。

 あるいはそれが神さまからの宿題だとしたら。

 神さまはわたしに向かって『時間切れ』とかなんとか言ってた気がする。

 それが時間制限のあるものだとすれば、何かに取り掛からなければならないんじゃないか。

 モラトリアムの時間は終わりだという焦燥感が少しずつ募っていくような――そんな気分。

 

「んー、あるにはあるが」ルナはしかめ面で言った。「あまりお勧めはできない方法だ」

 

「え、あるんですか?」

 

「あるにはあるというだけだ」

 

「聞きたいです」

 

「たいした手法じゃない。トベルーラを紐代わりにしてだな……」ルナは部屋の中にあるホワイトボードに書きこんだ。「オメガルーラなりで隕石の欠片を転移させるんだ。自身といっしょにな」

 

 ホワイトボードに書かれた姿は、水上スキーとかで引っ張られていく棒人間みたいな様子だ。

 どうやら絵心は理呼子ちゃんのようにはいかないようだが、なんとなくわかるぞ。

 

「悪くないじゃないですか。何がお勧めできないんです」

 

「欠片が向かう先で方向がわかり、オメガルーラで空間的な距離はショートカットできるだろうが、ターゲットがいるところまでの距離感はわからないだろう? つまり何度も転移しなければならなくなる」

 

「んー。銀河の果てまでレミラーマを広げればいいと思いますが」

 

 そうすれば、距離感はわかるはずだ。

 

「イオの魔法力は現在720兆だったよな」

 

「ええそうですよ」

 

「1光年先でも約9兆5千億キロメートルほどの距離がある。つまり9500兆メートルだ。レミラーマの消費MPは2。効果範囲は半径10メートルからせいぜい50メートル程度。1光年先でさえレミラーマ2回分で終わってしまう」

 

「効果範囲を広げるのは、単純な計算式ではないみたいですが」

 

 ルナの計算が早すぎてよくわからんけどな。

 たぶん、単純に掛け算したり割り算したりじゃないはずだ。

 

「銀河の果てまで広げることはできそうなのか?」

 

「んー。やったことないのでわかりませんが、やってみましょうか」

 

「MPが尽きた瞬間にもう一度隕石攻撃を受けたら危険だ。やめておけ」

 

 まあ確かに。

 

「ねえ。お姉ちゃん」ユアが声をあげる。「レミラーマをレーダーみたいに使うから消費が激しくなるんじゃないかな」

 

「というと?」

 

「だいたいの方向はわかってるんだから、探知範囲を絞ったらどう?」

 

 懐中電灯で照らすみたいにすればいい、と……。

 なるほどね。確かにそんな使い方をする必要はなかったな。

 指先からレーザーポインターみたいに線で捉えれば、レミラーマを伸長できるかもしれない。

 

「なるほどな。それなら宇宙的な距離を測れる可能性はでてくるな」

 

 ルナも納得してくれたようです。

 天才児に迫るうちの子。天才すぎない? しかもカワイイ!

 

「さすがユアです!」

 

「それほどでもあるよ」

 

 ドヤ顔のユアだった。

 よくわたしに似ていると言われる。

 

「でも、そもそもの話。宇宙のお友達なりに会いに行く必要あるのかな。しかもこっちを攻撃してくる危ない人かもしれないわけでしょ」

 

 行き方が見つかったところで、みのりさんの冷静な判断だ。

 さすが小学生と中学生はやっぱり判断能力が違うな。

 おっぱいの大きさも異なるし。

 でも、もしも宇宙人がみのりさんみたいなおっぱい星人だったらちょっと興味あるかも。

 

「こちら側から敵が見えないのに、敵はこちらを補足しているというのは非常にマズイ状況ではある。たとえば、"りゅうせい"を毎分落されれば、さすがのイオでも対処できないかもしれない」

 

 ルナの考え方はアメリカ的というか。

 インディペンデンスデイだよな。宇宙からの侵略を想定している。

 

「その時は地球全体をマホカンタで覆えばいいですけどね」

 

「例えばの話だ。"りゅうせい"がお試しで、魔法的な障壁で防げない魔法が来たらどうするつもりだ。みんな死ぬかもしれんぞ」

 

「それは嫌ですね」

 

「だろう」

 

「でも、イオちゃんだけが危ないのはよくないよ。今でもなんとかなってるんだし、このまま様子見したらどうかな」とみのりさん。

 

「わたしとしても、このままモヤっとしまま過ごすのは気分が悪いですね」

 

 そう――。

 神さまの宿題。

 試練とかそういうのだったりして。

 もし放置プレイしたらどうなるのかは心配だ。

 神さまはなんとなく悪い存在じゃないだろうって気はしているけど。

 それもわたしに魔法をくれたっていう薄弱な根拠しかない。

 でも、ルナがいうように、気まぐれで世界を破壊するということもなくはないかもしれない。

 

「ねえ。イオちゃん」理呼子ちゃんだ。「ちゃんと帰ってくるんだよね?」

 

「当たり前じゃないですか。さっきだってちゃんと帰ってきたでしょう。ルーラがあるんですから、たとえ宇宙の端からでも一瞬ですよ」

 

 ルーラの消費魔力は時空間転移だというのにもかかわらず極小レベルだからな。

 

「うん……」

 

 わたしを心配そうに見つめてくる理呼子ちゃんだった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 日本魔法会議の『時代が―』とか『侵略がー』『憲法9条がー』とかは割愛。

 

 なんかよくわからんけど、魔法攻撃を受けた事に対してはショックだったらしく、てんやわんやの議論ちゃんが踊っているよ状態だったらしい。アメリカ側は無駄に息巻いていたりな。米軍もいっしょに出動するからトラマナかけて向かわせてくれとかな。正直邪魔なだけなので丁重にお断りさせていただきました。

 

 結論としては、イオちゃんに全部任せるんで、よしなにお願いしますとのことだった。

 

――まあ、そうなるな。

 

 というか、わたし以外にどうしようもないことではある。仮にわたしがいない場合のと前置きして、"りゅうせい"を回避する方法を無駄にシミュレートしてたみたいだが、全魔法力を集めてマホカンタバリアを張るくらいがせいぜいで、きっと物理的な衝撃自体は防げなかったのではという話。

 

 魔法の萌芽は芽吹きつつあるけれども、いまだに始まったばかり。

 魔法の技術や魔法理論なんかもこれから長い時間をかけて解明していくほかないのだろう。

 

 そう――、人類は、いまだ魔法に慣れない。

 つまり、わたしに慣れないってことで……。

 

 大地震が起こってからは、わたしとさほど親しくない人は、わたしとの距離を測りかねているようでもあった。生のわたしのことなんか何一つ知りもしないのに、勝手に女神扱いしたり魔王扱いしたりな。

 

 だからきっと。

 

 もしも、イオちゃんが急に配信とかをしなくなったとしても――あるいはこの世界から消えたとしても、たいして気にも留めない人が大半だろう。

 

 人は異常(アノマリー)になりたがる。

 凡庸の中で誰にも顧みられずに朽ちていくよりかは、そのほうが幾分かマシに思えるから。

 

「なんて――益体の無い話ですけどね」

 

 イオちゃんも宇宙空間を渡るのには、さすがにセンシティブなんだよ。

 しかも敵かもしれない存在に相対するのはさすがに疲れる。精神的な意味でな。

 

 すぐにルーラで帰ってこれるとしても、なんらかの成果物は出さないといけないだろうし。

 夏休みの最終日に手付かずの宿題を発見してしまったような気分だ。

 ブルーなんです。地球よりも真っ青な憂鬱さ。

 

「イオ……」

 

 自室の扉が開いた。

 ママンだった。

 思えば、ママンにも心配かけどうしだったな。

 いまからもいっぱい迷惑をかけると思うけど。

 

「お母さま。どうしました?」

 

「あなた、もう宇宙には行かなくていいわ」

 

「ええっ!?」

 

 ここにきてもう遅いですか。

 いくらなんでも、展開的に無理があるんじゃないですかね。

 

「国から正式な要請を受けているわけですが……」

 

「そんなの無視すればいいじゃないの。あなたが地球にいたほうが防衛力は高まるのよ」

 

「ですが、相手がどんな攻撃をしかけてくるかわかりませんし、わたしを凌駕する存在かもしれません。攻撃は最大の防御ともいいますし、それはさんざん議論されたのでは?」

 

「外部の議論なんてどうでもいいの」

 

「まあ、おおよそ準備は一任されてると思いますけど……」

 

 どうしたんだ、ママン。

 

「あなたが心配なのよ」

 

 それはわかるけど。

 

「いざとなればルーラですぐに帰ってきますよ?」

 

「――ルーラ……は……本当に」

 

 ん?

 

「すぐ帰ってこれるかは問題じゃないの。私の手元から飛びだっていくようで怖いのよ」

 

「わたしまだ小学生ですし、お母さまの庇護下にあるのはまちがいないですが」

 

「だったら、私の手元にいなさいな。子どもは母親に愛されるのが仕事よ」

 

「んー」

 

 いつになくママンが強引だな。

 べつにたいしたことをしにいくわけでもないと思うんだが。

 そりゃ宇宙的距離は遠いけれど。

 魔法の前ではあらゆることが可能となる。

 わたしに不可能という文字はない、なんてことは言わないが。

 

「今日だって30分で帰ってきましたし――、別大陸に行ったりもしてますよ? それとそんなには変わらないと思います」

 

「あなたとはいっしょに他愛のない買い物をしたりしたいの。普通の娘と親のように」

 

「ですから、できますよ。その程度のことなら帰ってきたあとに」

 

 ギュ。

 

 え、なに?

 

 脈絡がほとんどないけど、なぜかママンに抱き着かれている。

 

 これはママンダム!

 

 とても豊潤な香りと質量です。

 

 みのりさんには実際のところは質量的には負けているけれども、ママン補正で10倍増しくらいでママンの勝ちだな。

 

「帰ってきなさい。絶対よ」

 

「はーい」

 

 わたしは良い子なので、親のいうことはよく聞くのである。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 宇宙の果て。

 魔法神はここではない恒星系の月のような星にいた。

 白い無垢な宮殿内には、誰ひとりいない。

 神は冷たい玉座に腰をかけて、リモートビューイングの魔法でイオの様子を映しだしている。

 

「親の愛情というのは凄まじいものだね。わたしの混乱魔法(メダパニ)を凌駕しかけるとは」

 

 世界は既に魔法神によって()()させられていた。

 とはいえ、それはあらゆる意思をねじまげるようなものではない。

 単純にイオを魔法神のもとに呼び寄せるための方策。

 そしてイオが破滅しないための究極のフールプルーフ。

 

――それこそが神によるメダパニ。

 

 邪神といえば邪神であるが、そんな人間の評価など神にとってはどうでもいいことだ。

 魔法耐性のない人間たちには、思考誘導されていることすら気づかないだろう。

 あるいは強い意志があれば抗うこともできるだろうが、そもそも魔法そのものに慣れていない時期だ。果てしない時空間の彼方からでも容易にコントロールできた。

 

「さあおいでイオ。わたしのかわいい娘」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 宇宙はいまだに慣れないな。

 ママンたちと夕食を食べた後、わたしはその日のうちに出発することにした。

 

 どうせなら早いほうがいいだろうと思ったし、ゴールデンウィークが終わるまでに片をつけたいと考えたからだ。もし宇宙人との交渉みたいな話になると、たぶん最初に地球代表と向こうの代表を引き合わせたりしなきゃいけないかもだし、なんといえばいいか、異世界交流ものになるんだと思う。

 

 そうなると魔法技術の勝負とかになって、地球側はわたし以外は"りゅうせい"を使えるほどではない。侵略されないようにするためには、きっとある程度の示威行動は必要かもねって話になる。

 

 ちなみに隕石の欠片は光速の17分の1程度のスピードで地球から遠ざかりつつあるが、まだまだ太陽系の傍なので、レミラーマの範囲内である。

 

 魔法の欠片を認識しつつ、ルーラで視認した前方空間まで跳躍する。

 とはいえ、ルーラはイメージの魔法だ。なにかしら基準がないとなかなか正確な位置関係は割り出しにくい。それでも感覚的な数量として行き過ぎても戻ればいい。

 

 最後の微調整は光速度50パーセント程度のトベルーラ+ピオラだ。

 ちなみにルナに聞いたところによると、50パーセント程度でも相対性理論による時間のズレは極微小らしい。

 

 すぐに追いつき補足完了。

 

 その日のうちにということで、今回は理呼子ちゃんのメモはない。

 そのことに一抹の寂しさを覚えながらも、わたしは「トベルーラ」を唱える。

 魔法力による紐帯を創り、拳大の隕石の欠片とわたしが結ばれる。

 トラクタービームみたいなものだな。

 

 この状態で、いよいよ超級魔法オメガルーラの出番だ。

 

大転移魔法(オメガルーラ)!」

 

 わたしの傍に、巨大な球体の立体魔法陣が出現する。

 次元が揺れるほどの魔法圧を感じた。

 しかしながら、消費MPはわずか数万程度。

 ルーラ系の究極呪文でもわりと連発できそうな予感だ。

 魔法陣の中に吸いこまれていく。

 旅の扉に入ったワープ現象にように、視界が揺らぐ。

 

 わたし自身が弾丸のようなスピードになって、幾層にも重なった魔法陣の中を突破していく。

 なんかのワープ現象のようだ。時間を超越し空間を一瞬で踏破する。

 

 とはいえ、最初のオメガルーラはほとんど勘だけで使ってみただけだ。

 隕石は異次元ワープをしたわけだけれども、魔法反射の影響はまだ続いている。

 もしダメだったら帰還するほかなかったから幸いだ。

 

「えっと、ここでレーザービームみたいに細くしたレミラーマをかけるだったかな」

 

 隕石が進む方向に向けて、極細のレミラーマをかける。

 

 こっちのほうが圧倒的にMPを吸われる。とりあえず百光年先に向けて、隕石の魔法と同じ魔法の色合いを持った存在を探してみた。うーん。いないか。

 

「はぁ……これが魔法力が枯渇していくという感覚ですか」

 

 まだまだ余裕はあるけれど、こんな調子だとすぐに帰還して一日寝て、また再度同じことをやらなくちゃいけなくなりそうだ。

 

 と思ったのだが。

 

「あれ……? 宇宙ってわりと魔法力に満ちてますかね?」

 

 気づいてしまった。

 星々は溢れんばかりの魔法力を有しているようだ。

 

 だったら――。

 

極限魔法力吸引呪文(ギガマホトラ)

 

 適当に見えてる星から魔法力を吸えばいい。

 パパっとやって数兆回復。この調子でやりくりすれば帰宅する必要はなさそうだな。

 

 そうやって、オメガルーラとレミラーマ、そしてギガマホトラを繰り返すこと二十回くらい。

 

 途中から距離とかも変えてみたから、よく覚えてないんだけど、ようやくレミラーマの感知範囲に隕石の欠片と同じ魔法力を見つけた。

 

 最後のオメガルーラは地球とよく似た青い星の近く。

 

「案外簡単でしたね」

 

 未知なる世界にワクワクした気分も湧いてくる。

 寂しさや、敵がいるかもという不安もあるんだけどね。

 イオちゃんはわりと怖がりなので。

 

 しばらく青い星を見つめていると、隕石の姿がない。

 

 そういえば……。

 

 隕石って光速の17分の1のスピードで進んでいるんだよな。

 地球到達まで太陽系の端っこから三日でつくほどの超スピード。

 つまりここまで近距離でワープしてきたとして、すぐさま惑星内にとびこんじゃった系?

 

 ん……。

 

「ち、地表にダメージはありませんね」

 

 さすがに隕石が小さすぎてあっというまに燃え尽きたのだろう。

 よかった。「こんにちわ死ね」になるところだったよ。

 見知らぬ誰かについては、レミラーマをしたところ、ちゃんと生きてるみたいだし……。

 ノーカンだよね? ノーカン。

 ほっと一息。

 

 そしてルーラ登録しよう。

 

――ここはアレフガルド(仮)と名づけよう。

 

「ルーラ。アレフガルド(仮)」

 

 瞬間的に、同じ場所に現れるがルーラはちゃんと発動した。

 ヨシ登録完了だ。

 

 じゃあ、場所はわかったことだし、いったん帰るか。

 レミラーマを撃ったから相手にもバレてるかもしれんけど、いきなりこんにちわするよりは誰かを連れてきたほうがいいかもしれんしな。いや、わたしひとりのほうがいいかもしれんけど、それは明日にしよう。もうなんか疲れた。

 

「ルーラ。わたしのお家!」

 

 けれど。

 

 わたしの家には飛べなかった。

 

 この時、初めて気づいたんだ。

 

 ルーラには天文学的な距離を跳躍するほどの能力はない、と。




ラストステージってやつです。
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