ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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異世界おっぱい。ついでに異世界ベホマズン。

 異世界おっぱいを堪能している。

 

 おっぱいから始まると五倍まじめに読まれるというアンケート結果があるから、たぶん、わたしの描写は五倍の吸引効果があるだろう。

 

 異世界のおっぱいは小ぶりながらも筋肉がひきしまっていて、ほどよい弾力を返してくる。

 

 ああ……異世界よ。

 

 姫騎士っぽいユユル姫様はいまだに綺麗に磨かれたプレートメール、ドラクエ風に言うと"てつのよろい"を着ているわけであるが、ルカニによってぐにょぐにょの状態になれば、その内に秘められた引き締まったお肉の感触を堪能できる次第である。

 

 ルカニすげえ。この呪文の価値をわたしはまったく理解していなかった。異世界に来て初めてわかったよ。ルカニ! ルカニ! ああ! 圧倒的柔らかさ! 魔法のまえでは鉄の硬さなどまったくの無力! 薄皮一枚といっしょ!

 

――たとえ鎧をまとおうとも、おっぱいの柔らかさは守れないのだ。

 

 さすがに常在戦場の心得もあるだろうから、鎧を脱げとは言えんしな。脱ぐと、あみあみな感じのくさりかたびらのインナーを着こんでいるらしい。すげえ、えちえちな気がする。だが、それはまだ見ぬ秘されしもの。騎士さんたちの前で辱めるわけにもいかんし、いまは感触だけで我慢する。

 

 つまり、わたしはまたユユルに抱っこされていた。

 

 どういうことかというと、ほどなく女神様扱いをされたわたしは、どうかいっしょに城まで来てくれと懇願されたので、こころよくその願いを受け入れたのだった。

 

 ん。これじゃよくわからんか。

 要するに帰還するまでちょっと準備がいるから待っててねと言われたのである。

 

 イオちゃんは素直な良い子ですからね。もちろん、女神様じゃないよと否定もしていたのだけれども、もはやユユル達にとってはどうでもいいことらしい。魔物たちをうち払い、死んだ人間を生き返らせる存在を、他にどう呼べばいいのかと真顔で聞かれたときは、わたしにもよくわからんかった。神っぽいですかね?

 

 もちろん、女神様を歩いて出向かせるなんてことはダメで、馬に直乗せも憚られるとかで、いまは街のほうから一番の馬車を用意してもらってるところ。お城はすぐそばに見えるくらいには近いけど、馬車の用意が時間がかかるらしい。

 

 それで、なんか戦国時代とかでよくあるような"陣"っていうのかな、そういうやつを草原のど真ん中にいそいで用意したあと、わたしは場違いなほど豪奢な椅子にちょこんと座らせられた。この場には騎士さんしかいないので、残念ながらたおやかな女性はいない。

 

 騎士たちは草原のところどころで死んじゃってたから、いまは王の周りにはせ参じて集合しつつある状態。

 

 わたしはしばらくの間、ぽやぽやしながら、つまりぼーっとしながらその様子を眺めるほかない。

 

 マジ暇な感じ。

 

 そこで気を利かしてくれたのか、ユユル姫がわたしの傍に控えてくれた。

 

 ので――、ユユルに座るように言って、わたしは()()()()()()()()()()()

 

 お姫様抱っこの亜種だな。ふともものあたりに腰かけて、側頭部をお胸様あたりに預ける感じ。

 

 ちょっと膝をまげて、赤ん坊のようにまるまると安心感がすごい。

 

 我ながら天才的な発想だな。

 

 ユユルはキリっとした表情をしているが、もともとかわいらしい顔立ちだ。みのりさんと同じくらいの年頃だと思うけど、みのりさんと異なり、生存すら危うい世界に生きてきたからか、体操選手よりもひきしまった体つきをしている。

 

 だけど、やっぱり女の子らしい柔らかさを隠せていない。

 

「大丈夫ですか。重くないですか」とわたしは聞いた。

 

「イオ様の御身を抱けるなど、騎士にとっては最高の栄誉です」

 

 おお、姫騎士的発言。

 

 でも、この格好はわたしの背中を腕で支えている状態だからな。

 いくらわたしが体重30キロ前後といっても限度があるだろう。

 

「力を増す魔法をかけてもよいですか?」

 

「お力を賜れるのですか」

 

「ええと……日常生活に支障がでるので、効果はほんのちょっぴりにしときますね。バイキルト」

 

 バイキルトの筋肉増強効果だが、効果時間は15万年くらい。効果自体は2倍くらいにしとけば、たぶんなんとかコントロールは可能だろう。難しければもう少し効果を落せばいいしな。

 

「この力は……騎士たちにもかけることは可能なのですか?」

 

「バイシオンという魔法が全体魔法だったときもありますね。ただシリーズごとに異なりますから仕様次第かもしれません」

 

「このお力を騎士たちにも賜れれば、皆イオ様のために粉骨砕身働くことでしょう」

 

「うーん。まあそれよりも魔法自体をあげるほうがてっとりばやいかな」

 

「魔法を! いただけるのですか!」

 

 にゃん。腕の力がマシマシになってるから、体が跳ねる。

 そのまま、空も駆け上がっていきそうな勢いだな。

 

 魔法の譲渡に関しては、現代世界だと死ぬほど調整が必要だったけど、この世界だとどうなんだろう。キラキラしてるユユルを見ていると……まあいいかって気持ちになっちゃう。

 

 この場では、アドバイスを聞ける人もいないしな。生存がかかってる人間側は絶対欲しいって言うだろうし、ここまで介入しておいて、なかったことにはできないだろう。

 

「マホアゲル」

 

 魔法力に覚醒するほうのマホアゲルを唱える。

 ユユルの身体が光に包まれたけど、きょとんとした顔をしている。

 そうか。呪文を知らないからか。

 

「魔法力を譲渡しました。次にステータスを見る呪文を唱えてもいいですか?」

 

「すてーたす?」

 

「能力を数値化したものです。魔法力がしっかり譲渡されているかを確認したいので」

 

「どうぞお願いいたします」

 

「わかりました。ダモーレ」

 

 ふむふむ。かしこさ102か。なかなかの高さだな。もはやかしこさ3を恥ずかしがったりはしないんだからね! あえて伝えることもないけどさ。

 レベルは5か。モンスターを倒したりしたこともあるんだろうな。

 

 って、あれ?

 MPのほうが20くらいしか無いんだけど?

 おかしいぞ。かしこさとMPの数値が合わない。

 なんか異世界人仕様は違ってる。どうなってるんだこれは。

 えーっと、おちつけおちつけ。何が変わってるんだろう。

 

「イオ様? いかがいたしましたか」

 

「そうですね。えっと、まずはメラを試してみましょうか。炎を手のひらに出す呪文です」

 

「メラと唱えるだけでよいのですか」

 

「とりあえずはそれで」

 

「では、メラ!」

 

 奇跡の力はあっけなく行使できた。

 炎球はユユルの掌に生じ解き放たれるのを待っている。

 ユユルは感動しているようだった。

 

 わたしはほっとした。ドラクエの原作では、長ったらしい詠唱しないとダメっていうパターンもあったからな。正直なところまったく覚えていない。ただ、アニメとか映画では呪文だけでOKだったりと様々だが。

 

 うーん、これはMPがかしこさ準拠じゃないだけか。

 これによって生じる社会的な不利益はわかんね。わたしの演算能力じゃ、これがどんな影響を及ぼすのかまったく未知数だ。もしかすると、よりドラクエに近い仕様になったんじゃないか。

 

 要するに、レベルアップするとMPが増えて呪文を覚えていくみたいな。

 

 とりあえずモンスターもいる世界だしな。レベルアップしたらMPも増えるだろう。

 わたしはモンスターとも仲良くしていければとは思うけれども、戦争状態で殺すなとはいえない。

 

「すごいです。イオ様。私も魔法が使えました」

 

「そうですね。では、次にギラを唱えてみてください。閃熱で対象を焼ききる呪文です」

 

「ギラ? それは異形の者たちも使っておりましたが……」

 

 あ、そうか。

 モンスターたちも魔法を使うからな。

 ユユルとしては怪訝に思うのももっともだろう。

 場合によってはマッチポンプ状態と思われたかもしれん。

 マッチポンプというのは自分でマッチで火をつけて、ポンプの水で火を消すということ。

 つまりは自作自演だ。

 モンスターをけしかけておいて、わたしが魔法を与える。

 そんな疑念がよぎったかもしれない。

 

「魔法はわたしの創作ではありません」

 

 れっきとした原作者様がおられるのだからな。

 

「魔物に呪文を与えた存在がいるというのですか」

 

「そうかもしれませんね。魔物たちはドゥアトって言ってましたけど」

 

「ドゥアト……。邪聖竜ドゥアトのことですか?」

 

「なにその中二病」

 

 邪悪成分と聖なる成分があわさり最強に見えるってか。

 ここにきてドラゴンをクエストしてるよ。マジドラクエでワロタ。

 

 しかし、そもそもドラクエの一番古い時代には聖竜がいたみたいな話もあるからな。その聖なる竜が邪悪に染まって悪堕ちして竜王の系譜になるというような流れが基本ラインだったはずだ。

 

 案外、ここがドラクエの超古代みたいな話もありえるのかもしれない。

 

「中二病というのがよくわからないのですが」ユユルは困惑している。

 

「現代社会の病理ですからね」

 

「神の世界の言語ということですね」

 

「まあそういうことです。それでドゥアトって何者なんです」

 

「邪聖竜ドゥアトは、月の大神ルーラ様に反旗を翻した者と伝えられております」

 

「月ですか」

 

 わたしは空を見上げる。

 この星も地球に似た構図をしていて、恒星は一個。月も一個だ。

 

「月は神のお住まいになられているところと伝え聞いておりますが違うのですか?」

 

 まあよくある宗教ではあるよな。

 太陽や月を神の化身としたり、神が住む国としたり。

 

「わたしはもっと別のところから来たのでわからないです」

 

「月よりも遠いところからお越しいただいたのですね。我らのために……」

 

 ユユルの信仰心がどんどん高まってるのを感じる。

 高まりすぎたら、恐れ多いということでお胸様を触らしてくれなくなるかもしれない。

 それはよくない。わたしの兵站が失われてしまう。補給線を失ったら生きてはいけない。

 

「ドゥアトについてはお城についてからもっと詳しい話を聞かせてくださいね」

 

「かしこまりました! ドゥアトを打倒する作戦を練るのですね!」

 

「んー。まあ……そんな感じですかねぇ……」

 

 少し言葉を濁すイオちゃんである。

 

 実をいうと――。

 

 さっき暇だったんでレミラーマを連発してそいつを挑発してみたんだが、相手はマホステかなんかで自分を隠そうとしたんだよな。ルナもやったことのある魔法隠しの一手だ。

 

 それでレミラーマの貫通力を徐々にあげていったら、たった数十万程度のMPであっさりと陥落。ついでにダモーレをかけたら、相手の能力値もだいたいわかってしまった。

 

 ステータス上の数値だけで言えば、まあ普通のドラクエのボス程度かな。つまり、わたしがこの場でザキを唱えたらあっさり屠れそう。あまりにもインスタント救世録すぎるので、やってないけどさ。

 

 というか、いちおう相手の言い分も聞かないといけないだろうし、ここがドラクエに通ずる世界だとしたら、簡単に倒しちゃってタイムパラドクスが起こるとかいうことも考えられなくはないわけで。

 

 それに……、わたしがみんなのところに帰るための()()()()()()()でもある。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 結論から言うと、ユユルの魔法についてだが、今のところメラとホイミが使える程度だった。ルーラは初級なのかなんなのか、神さまの御名なのか知らんが短距離ルーラを試したら使えた。でもトベルーラは使えなかったりと、よくわからない。

 

 ただ、やっぱりドラクエの仕様になってるような気がする。レベルと適正によって変わってくるんじゃないかな。この後、どういうふうに社会構造が変わっていくかはわからないな。もしかしたら、既に原作とは違う方向に舵取りしてるのかもしれんし、運命論的にむしろわたしも組み込まれてるのかもしれんし、あるいはあるいは……ぷしゅう。考えきれない。

 

「姫さまぁ!」

 

 城のほうから、ご高齢の武人といった風情の人がこちらに来ていた。

 100メートルほどの距離かな。障害物も特にないから声が通る。

 

 できるだけ早く来ようとしているが、足を少しひきずっているようだ。

 ユユルは駆けだしていきたかったようだが、わたしがいる手前わたし優先みたい。

 大変そうだな。

 

「こちらに呼び寄せてもよろしいですか?」

 

 魔法を相手にかけるときはきちんと確認をとるのです。

 現代社会で学んだかしこいイオちゃんである。

 

「もちろんかまいませんとも。ケイブン。そこでおとなしくしておきなさい!」

 

 その場で、ケイブンと呼ばれたじいちゃんがピタっと止まる。

 それじゃ、とりあえずは人間キャッチャーといきますか。

 

「トベルーラ」

 

「うお。これが神の御業か!」

 

 手元に呼び寄せるだけなら、アポートという魔法もあるし、オクルーラでもよかったんだけどな。

 見えてるところにあるのをちょっと移動させるなら、トベルーラが一番便利だ。いわばこれは念動の力なので。

 

 わたしたちが座っている椅子の前で膝をつくケイブンじいちゃん。

 

「ケイブン。城で待ってるように言ったでしょう」

 

「異形の者たちは去ったとはいえ、まだ残党がおるかもしれませぬ。危のうございます」

 

「イオ様のお力があるから大丈夫よ」

 

「城は確かに不思議な力で守られておりましたが、城壁の外はそうではございませんでした」

 

「敗残兵に遅れをとるほど私は弱くありません」

 

「御身はひとつでございましょう。軽々にお動きめされるな」

 

「わかったわよ。まったくケイブンは口うるさいんだから」

 

 なんだか、お転婆姫アリーナと教育係のブライを思い出すな。

 ケイブンじいちゃんはどっちかというと戦士だけどさ。

 わたしがニヤニヤしてたからだろう。ケイブンはこちらに視線をあわせてきた。

 

「この度は、人にご助力いただき誠にかたじけのうございました」

 

「お気になさらず。やりたかったようにやっただけなので」

 

「なんという広いこころ! まさしくあなた様は我らが神だ」

 

 そういわれると悪い気はしない。イキってはいけないと思いつつもこの世界の純朴な反応を見ると、いろいろと見せたくなっちゃう。

 

 これが、なろう主人公がイキる理由か。

 わたし、わかっちゃった。

 

「ケイブンさん」

 

「どうか。ケイブンとお呼びくだされ」

 

「えっと、敬語になるのはわたしのキャラクターなのでごめんなさい」

 

「どうぞ、ご随意に。神のご意向を妨げたわたくしめをお許しくだされ」

 

 話が進まねえ。

 

 とりあえず、まあ先に進めるか。

 

「ケイブンさん。足が悪いようですが」

 

「これですか。わずかばかり前にですな――といっても二十年くらい前になりますか。膝に矢を受けてしまいましてな」

 

「ケイブンは昔は騎士団長を務めたこともあるんですよ」とユユル。

 

 戦争状態だしな。

 そういうこともあるんだろうな。

 

「あの~。身体のキズでしたらたぶん回復できると思うんですけど」

 

 そう、これぞなろうテンプレ。

 回復で仲良くなろうぜ計画だ。

 だいたいお偉いさんとか、お偉いさんの仲良い人をさっくりチートで癒して、知己を得るというのがテンプレの流れである。

 

 というか、まあこれもベホマズンをしてはいけない(戒め)が効いてるからな。

 

「なんと、イオ様は人々のキズをも癒されるのですか!?」

 

「父様を生き返らせてくださってる時点で、キズを治すくらいは当然じゃないかしら」

 

 姫様のツッコミ。

 

「そうですね。例えば、今から城塞の中の人のキズを完全回復することも可能ですね」

 

「してくださるのですか?」ケイブンさん。

 

「そうですね。ただ、これはわたしが元いた世界では叱られたこともあるんですよ」

 

「なんと……、なぜでしょうか」

 

「武人さんの受けたキズが(ほま)れみたいな考え方がありますよね? つまりキズを治す行為が誉れも失わせてしまうといったことが起こりえるんです」

 

――誉れは、ベホマズンで死にました。

 

 そんなふうに考える人も出てくるわけで。

 

「ほほう。そうですね」

 

 共感してくれるみたいだ。そういう価値観もあるみたいだな。

 

「しかし――、誉れで生きていけるわけもなし。治せるキズがあるのなら治していただくほうがありがたいです」

 

 率直な物言い。

 

 わたしは隣にいる姫様を見る。

 

「イオ様の御心のままにお願いいたします。もしも非難する者がいれば、我が国はその者を誅滅するでしょう」

 

 ひえ。

 姫様の頭ん中、中世かよ。

 まあそうだよな。実際に見てくれだけで見ればドラクエの世界は君主制の時代っぽいし。

 

 ただ、ベホマズンをぶっぱできるのは久々なのでうれしくもある。

 

「ベホマズン!」

 

 わたしは周辺領域に全体完全回復魔法をかけるのだった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 その日。城の中は一斉に沸いた。

 歩けなくなっていた者は立って歩きだし、めしいた婆は目を見開いた。

 何度かあった魔物の襲撃で腕を失ったものは腕が生えたのだ。

 

 そしてなによりも、神が助けてくださったという安心感。

 日頃から高い城塞に守られているとはいえ、一歩外を出れば魔物に脅えなければならない。

 そんな生活を長年続けてきたのである。

 

 それが解放された。

 王のお触れで神が降臨したことは既に知らされている。

 

 人々は硬く閉ざされていた扉を開け、次々と外に飛び出した。

 

 神を出迎えるために。

 

 少女神は――すぐそこまで来ている。




悲報。ラスボスも雑魚だった?

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