ドラクエ魔法持ちのTS転生者なんだけど現実世界というのが問題です   作:魔法少女ベホマちゃん

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姉妹契約。ついでに視察。

 あたたかなお布団にくるまれて、朝の日差しが窓辺から差し込んでいる。

 チュンチュンとスズメが鳴いて、いわゆる朝チュン状態。

 

 昨日は、ママンの言葉につい泣いてしまったけれど、イオちゃんは子どもじゃないので、すぐに立ち直りました。とはいえ、イオちゃんは子どもなので姫様に添い寝をこい願うことになったのでした。矛盾しているように思えるかもしれませんが、それがイオちゃんクオリティなのです。

 

――そういうわけで。

 

 いま、わたしはユユルと同衾している。

 

 ユユルは推定年齢で言えばおそらく高校生か中学生くらい。

 細身の身体だけど、しっかりと筋肉はついていて、運動部とかの女の子がこんな感じかなと思う。

 青い髪はサラサラしてて日本では染めないとありえない色だけど、ここの世界ではそこまで珍しくもないのか、とても自然だ。それにしても女の子と同衾できるなんて、わたし優勝してるといっても過言ではないのではないだろうか。

 

 当たり前だけれど隣で寝ているユユルの顔がすぐ近くにある。顔つきも精悍。

 起きてるときの態度は、やはり姫騎士だからか少し硬い感じだけど、わたしが神様としての立ち位置にあるからかな。

 できればもっと仲良くなりたい。異世界で初めてコンタクトをとった人だし。

 わたしはおっぱいのあたりにもぞもぞと近づく。

 変態的行為ではないのです。さみしさを埋めるには代償が必要だ。

 

「んっ……イオ様。起きられたのですか」

 

 気配だけで察知するとは、さすが危険に身をさらしてきただけあるな。

 いまのわたしは、もぞもぞと動いてユユルに抱き着こうとしていたところだ。

 ちょっと恥ずかしいので、再び距離をとろうとする。

 すると、ユユルはわたしの肩のあたりを引き寄せた。

 

「イオ様。寂しいときは寂しいといってよいのです」

 

 わたし、おっぱいがこいしい。おっぱいがほしい!

 などと言えるはずもなく、ユユルの言葉を黙って聞いた。

 

「この地に魔物が溢れたとき、私は自分の運命を呪いさえしました。父は死に、母は既に亡く、それでも国は守らねばならない。わずかな間でしたが、私はまぎれもなく王だったのです」

 

「女王様ですか」

 

 まあ必然的に父親も母親も兄弟もいないとそうなるのかな。

 だいたいにおいて、王政だったらスペアといったら悪いけど、ポコジャカ子どもを産むイメージがあるけどな。まあモンスターに襲撃されて人類存亡の危機で、そんな暇もなかったとかそういう感じだろうか。

 

 ともかく、ユユルは王だった時があるわけだ。ほんのちょっとの間だけどね。

 

「王は自らを()とか()と呼ぶことがあります。私は王という立場に立ってはじめて想像を絶するほどの孤独を感じました」

 

「さみしかったんですか?」

 

「さようです。イオ様と同じく寂しかったのです。私を慕ってくれる部下はたくさんいましたが、上に立てば、並び立つ者はいないわけですから」

 

「そうかもしれませんね」

 

 銀河英雄伝説で、民主主義とは対等の友人をつくる思想であって、主従をつくる思想ではないとか言われてたけど、君主制は上下関係をつくっちゃうからな。

 

 一番トップ。山のいただきから遠望すると、横には誰も立っていないわけで。

 

 考えてみれば、高校生くらいの女の子が一国を背負うって、とんでもなく苛酷な運命だよな。

 

「神であるイオ様にこのようなことをいうのはおこがましいでしょうが――」

 

「まあ神っぽいけど神じゃないですし」

 

「あなた様の寂しさを私に少しだけ分けていただけませんでしょうか?」

 

「というと?」

 

「プレイベートな時、イオ様のことを()()()()愛でさせてくださいませんか」

 

 ふおっ。

 

 いきなりの疑似姉妹宣言キター!

 

 しかし、ユアの姉として数年やってきたわたしに対して妹になれだと。

 うまくできるのだろうか。

 イオちゃんは甘え上手なほうじゃないぞ。

 

「じゃあ、姫様のことをお姉さまとお呼びすればよろしいんですか」

 

「そう! その調子です!」

 

 ぷるりとその身を震わせるユユル。

 なんだか知らないけれど、とても嬉しそうだ。

 

「じゃあイオ。そろそろ起きましょう」

 

 うちのお姉さまはしつけに厳しいらしい。お姫様だから当然かな。

 ちなみにプレイベートってどこまでの範囲なんだろうか。よくわからん。

 公のイベント以外は全部プライベートと言えるし、城の中にも他人はいる。

 メイドさんとかの前ではどうしたらいいんだろう。

 空気を読む日本人としての能力が試されるわけか。

 

「イオ様。よろしいのですね。私が姉になっても」

 

 ベッドから出ながら、ユユルがもう一度確認してきた。

 

「姉妹契約についてはうまくできるか自信がありません。わたし、実は元の世界ではお姉ちゃんだったのですよ」

 

「そうなんですか。すごく子どもっぽ……いや妹っぽいオーラを身にまとっておりましたが」

 

「妹っぽいオーラってなんですか」

 

「誰かに甘えるのが上手なご様子のことですね」

 

 ふむ。イオちゃんは甘え上手、と。

 もしかしたら配信とかで鍛えられてきたのかもしれん。

 アイドルって愛でられるのがお仕事みたいなところがあるしな。納得ぅ。

 

「わかりました。姫様が嫌じゃないのでしたら、わたしのお姉さまになっていただけますか」

 

「ええ! もちろんです!」

 

 すごい満面の笑み。

 そういや、みのりさんも事あるごとにお姉さんって呼んでって言ってたけど、姉としてふるまうことはそんなにも嬉しいことなのだろうか。あ――、うん。わかるわ。わかる。わたしもお姉ちゃんとして事あるごとにユアを愛でてきたし、最近はルナのことも密かに内部的妹扱いしてたからわかるわ。

 

 お姉ちゃんポジションというのはとても心地よいものなのだ。

 じゃあ、妹的なポジションはどうだ?

 

「お姉さま」

 

「なんですか。イオ」

 

 さっそく口調が姉仕様になるユユル。

 姫騎士として腹筋とかもありそうなユユルは声が非常によく通る。

 

「もう少しだけ寝ていたいです」

 

「ダメですよ。もう朝なのですから起きなければなりません」

 

「じゃあ、お姉さまがおこしてくださいますか」

 

「しかたないですね。イオは」

 

 ユユルが慈母のような笑みを浮かべて、わたしの手をとる。

 ベッドから素足を覗かせるわたし。

 何着ればいいんだ? 小首を傾げてユユルを見れば、

 

「すごい妹力(いもうとぢから)を感じます……」

 

 と、なにやらユユルが感極まっていた。

 そのあとギュっと抱きしめられるわたし。

 一国の美麗なお姫様に朝から抱きしめられるなんて望外の喜び。

 わたし今日も優勝しちゃった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 わたしにお姉さまができました。

 これはすごく喜ばしいことだと思います。

 でも、他の国の王様たちがここに到着するまで一か月もじっとしているのはなぁ。

 

 メイドさん三人がかりで簡易ドレスに着替えさせてもらいながら、わたしは考える。

 

 治安維持のために、わたしが都市を見回ったり、兵士のみなさんを慰撫してまわるのはいいとしても、この世界には娯楽があんまりないというのが問題かな。

 

 モシャスを使ってトランプとかを作ってみたり、将棋やオセロを広めてみるのはどうだろうか。これもなろう小説の定番で、さすがイオちゃん天才的なゲームを開発するみたいになる。

 ちなみにオセロは商標登録上よろしくないらしく、商業小説的にはリバーシという言葉を使うよう言われているらしい。よくわからんけど。

 

 ともかく問題を先送りせずにさっさと解決しちゃったほうが早そうではあるんだよな。

 りゅうせいを放ち、モンスターの首魁である邪聖竜ドゥアト。

 こいつを倒したら世界は平和になりましたじゃないの。

 

「お姉さま。わたしやっぱりドゥアトってやつをとっちめてきましょうか」

 

「ダメよ。妹にそんな危ないことはさせられないわ」

 

 ママン並みの速さで拒否ってくるお姉さま。

 

 まあ、何が起こるかわからんってのはあるけどね。

 わたしは魔法でいろいろな奇跡を起こせるけど、その原理まで知ってるわけじゃないから。

 相手が、わたしよりも知識で上回ってる場合、何が起こるかわからないんだ。

 例えば、ノーマルなルーラだと何十光年の距離は渡れないってことを知らなかったわけだし。

 

――もし、相手がオメガルーラを使えたら。

 

 絶大な魔法力で抵抗とかできない性質のものだったら……。

 わたし、今度こそどこに行けばいいのかわからなくなって、宇宙にひとりぼっちになっちゃう。

 どこに行けばいいのかもわからず、永遠に宇宙をさまよい続けるのだ。

 やがて、イオちゃんは考えるのをやめた――。

 かしこさ3だって考えてるんだよ! いい加減にしろ。

 ぶるりと、身を震わせる。

 宇宙の迷子は怖い。ドゥアトはたぶん瞬殺できるとは思うけど、ただ倒せばいいのではなくて、できれば地球への帰り方を聞きださないといけないんだ。

 

「なるほど、肉壁が必要なのですね」

 

「まあ、ターゲットが多ければ、勝ちやすくはなるでしょうけど」

 

「お任せください。イオ様――じゃなかった、イオ。お姉さまがなんとかしてあげますからね」

 

「なんとかってなんです?」

 

「そうですね。世界最強の魔法軍団を作りモンスターたちを蹴散らすというのはどうでしょうか」

 

「うーん……、それだとモンスターを虐殺することになるわけですよね。モンスターはたぶん召喚されたタイプだと思いますが、召喚主に逆らえないんじゃないかと思いますよ。かわいそうです」

 

 正確には、召喚主とこころを同じくする者が呼び出されるといった感じかな。

 共通の趣味を持った奴あつまれーみたいに全宇宙に呼びかけて、それで集まってきたやつが召喚されるみたいな感じ。全宇宙といったがたぶん多世界解釈的な、いくつもの世界線からきている。

 

 だから、わたしに召喚されるモンスターはわたしと仲が良い。

 バラモスエビルのエビちゃんなんか、どこかの魔王っぽいムーブだけど、昵懇の仲よ。

 

 つまり逆に言えば、モンスターたちはあくまで自分の意思でこの都市を襲ったわけであり、殺そうとするやつは殺される覚悟があるやつだけだ理論によれば、モンスターを全滅させても悪くはないとは思うけどな。

 

 でもドゥアトが恐怖によってしばりつけてる可能性もあるからなぁ。エビちゃんみたいにこころが通い合ってるわけじゃなくて、普通のモンスターにとっては魔王クラスでも十分恐怖だろうしなぁ。あんまり虐殺プレイはしたくないのよ。

 

「でありましたら、少数のバトルエリートを選出し護衛させながら攻略するというのはどうでしょうか。おそらく魔法が普及すれば魔法力が高い者もいるでしょう。魔法力がなくともモンスターを屠れる者もおりますし」

 

 それって勇者パーティじゃん。

 ユユルが勇者で、わたしが神様かな? たぶん戦闘時に「か」とか書かれるやつ。

 まあ、モンスターたちのことを思えばそれが無難かな。捨て置けばそのうち野生に戻るでしょ。

 現実世界ふうにいえば少数で魔王を倒すなんて、それこそ"暗殺"だけどさ。

 

「この世界にも強者はいるんですね」

 

「ええ、イオほどではないにしろ達人と呼ばれる者もいるんですよ。例えば、私の教父であるケイブンは剣の達人です。鉄をも断ち切る剛剣の持ち主でした」

 

 バイキルトもなしで、斬鉄できるとは。

 好々爺って思ってたけど、ケイブンじいちゃんってすげえんだな。

 もしかすると、魔法力がなくてもレベル制だったりするのかもしれない。

 あるいは魔法力を内気として身体強化みたいに使ってたりするのかも。

 

「足を悪くしてからは教導役でしたけれどもね。イオが足を治してくれたでしょう。それでケイブンったら、また騎士団に戻って軟弱どもを鍛えなおすんだって息巻いてたわ」

 

 ユユルが楽しそうに笑う。

 ケイブンじいちゃんとの距離感は、かなり近いみたいだな。

 

「武術大会でも開くみたいな?」

 

「それもおもしろそうね。腕が鳴るわ」

 

「お姉さまも参加なされるんですか?」

 

「いけない?」

 

「いえ、どちらかといえばドラクエ的にはスタンダードかもしれません」

 

 ドラクエⅣのアリーナ姫はエンドールという国で開かれた武術大会に参加する。

 エンドール王がノリで姫様を景品にしちゃったから、女同士だったら結婚しなくて済むだろうという、今世でジェンダーな方々をお怒りさせるような内容でアリーナ姫に依頼するのである。

 アリーナ姫は武術大会を無事優勝。

 エンドールの姫様は、あなたが男だったら的なことを言って、ほんのりと百合展開が尊かった。

 そしてエンドール王は普通にクズだと思う。

 

 ユユルも強くなりたいって気持ちが強いのかもな。

 いまはドレスを身にまとっているけれど、姫騎士なわけだし。

 もしかすると、勇者適正が強いかも。

 

 この世界に"職業"はあるのだろうか。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 今日の仕事は視察らしい。

 まずは、姫様とともに練兵場へと向かう。

 城の中の一角には槍を持った兵士たちが裂帛の気合とともに突き出していた。

 アメリカの訓練とは違って、物理が正義の世界では筋肉が物を言う。

 対するはひとりの老人。ケイブンじいちゃんだ。

 ケイブンじいちゃんは筋肉こそ引き締まっているものの、若い兵士たちに比べれば痩せた体型をしている。背筋はピンとしているけれど、それ以外は特徴らしい特徴はない。

 

 ケイブンは剣を持っている。

 構えもごくごく普通。表情とかも特に力みがない。この人強いなって思った。

 わたし、ばあちゃんもだけど、何人かの達人クラスの人に逢ったことがあります。

 

 それでわかったことがあるんだけど、その人たちって達人の雰囲気とか超すごいオーラみたいなのを纏ってるわけではないんだよな。

 

 あくまで普通。

 

 現実世界の人間がたいしたことがないって意味じゃなく、言ってみれば尖った部分がないというか。尖った部分がなくて、普通というのが捉えどころがなくて恐ろしい。底が知れない。

 

 つまり、普通を演じているというか、本質を掴ませないってことだろうと思う。

 

 兵士たちにとってみれば、ケイブンは幽鬼のように見えるんじゃないか。

 突き出した槍はケイブンを捉えることなく、ひとりまたひとりと打ち据えられていく。

 刃をつぶしているみたいだったけど、すごく痛そう。

 地に這った兵士たちは、痛みに悶絶している。

 鎧がひしゃげてるわけじゃないから、まだ加減しているようだったけどね。

 

――やがて、立ってるのはケイブンひとりに。

 

「ケイブン! さすがね」

 

「姫様。イオ様も。このようなむさくるしいところによくぞいらっしゃいましたな」

 

「新兵たちを鍛えていたの?」

 

「さようでございます。せめて冒険者たちと同程度は強くなってもらわねば」

 

 あ、いるんだ。冒険者。

 

「冒険者ってどんな人たちなんですか? やっぱりギルドとかがあったりします?」

 

「ギルドというのはよくわかりませんが、いわゆるなんでも屋ですな」

 

「その人たちに仕事をあっせんしているのはどこなんです?」

 

「酒場ですな」

 

 ルイーダの酒場!

 冒険者が集う場所がこの世界にもあるのだろう。

 そもそもドラクエⅢの世界観的に、どうしてあんな冒険者がいたのか謎だったからな。

 たぶん、勇者じゃない人たちは、酒場でクエストの斡旋を受けていたりするんだろう。

 すげえ。イオちゃんも冒険者になりたい!

 

「ダメよ。イオ」とユユル。

 

 な、なぜわたしの考えてるのがわかるんです?

 

「姫様。イオ様に対してその口調は――」

 

「私ね。イオのお姉さまになったのよ。みんなも覚えておいて。城の中ではイオは私の妹」

 

 わたしの肩は捕まれ、背後にユユルが立っている。

 振り返って見てみると、ユユルは楽しげだ。

 これはいわゆる言質ってやつだな。追認するにしろ黙っているにしろ、そうであることが確定するやつだ。もちろん、契約済みなイオちゃんは大仰に頷く。

 

「お姉さまの言う通りです。この世界でわたしはお姉さまの妹になりました」

 

「神様を妹にするとは、すげえなうちの姫さん」「イオ様が妹とか羨ましい」「姉妹愛尊い」「おお、この国は神と婚姻したということでは」「だが女どうしだぞ」「神様だから問題ないだろ」「それもそうか」「神婚さんいらっしゃい」

 

 

 いや、違うだろと思いながらも、家族ができたのは普通に嬉しいことだったりします。

 

「あの、地面とキスしている方々を回復させても?」

 

「お言葉は嬉しいのですが、痛みを覚えなければ彼等は強くなりません」とケイブン。

 

 うーむ。そういう考えもあるか。

 わたしはわりとホイミしたがりガールではあるんだが。

 うずうず。

 

「そうだ。この方たちに魔法を付与するのはどうです?」

 

 それで自分で治してもらう。いわば自分の力だからこれは文句のだしようがないだろう。

 

「マホアゲルについては、先に王族に渡してほしいわ」

 

「そこは大丈夫。お姉さまが渡せばいいんですよ」

 

「わたしもできるの?」

 

「ひとり三回までという縛りはあるんですけどね。たぶんできると思いますよ」

 

 現代日本で生み出されたマホアゲル改だが、たぶんこの世界でも適用されるだろう。

 ハラヘラズ改もセナハ改も普通に適用されているんだしな。

 ただし、やっぱり魔法の広めかたは一存では決められないらしく、もう少し持ち越されることになったのだった。




遅くなってごめんなさい。私事で遅くなりました。年度が替わるとダメねやっぱり。
なお、この作品はゴールデンウィーク中には終わる予定です。予定は未定ではあるけれども、自分の中で宣言しないと終わらないから。ただ29日、30日はたぶん無理っぽい予感。
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