ありふれていない異世界吸血鬼が二大女神と出会う話   作:くたしん

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レミリアがトータスに召喚された後の話です。原作開始の半年前ですね。

ちなみに纏めるとこんな感じ。

不気味な何でも屋=レミリア
   ↓偽名
  フラン


【過去編】 何でも屋、冒険者登録

 

 ブルックの冒険者ギルド

 

 

 その中のカウンターで、看板娘ならぬ看板オバチャン、キャサリンは眼鏡をかけて書類整理を行なっていた。今日は天気が荒れているためか依頼の受注が少なく、暇を持て余しているので普段手が回らない仕事をこれ幸いとばかりに片付けているのだ。

 

 テキパキと手際よく仕事をこなしているキャサリンだったが、不意にその手が止まった。それは長年のギルド受付嬢勤めで培われた第六感と言うべきか。

 

「……何か来るね」

 

 キャサリンは眼鏡を外して、正面、ギルドの入口を見つめる。

 

 カランカランとギルドのドアが開いた。豪雨が地面を殴る音がギルド内に鳴り響く。ギルドの中にいた冒険者達も音に釣られて自然とドアの方を見た。

 

 中に入ってきたのはーー

 

 

☆☆☆

 

 

 豪雨が地面を激しく叩き、空を真っ二つに裂いたかと思われるほどの音を立てて雷が鳴る。空を見上げればどこまでも曇天が続いており、この雨が暫く止むことはないだろう。ここは〝ブルック〟と呼ばれる町のメインストリートで普段は栄えているのだろうが、今日は大雨のため、人通りもかなりまばらだ。時折すれ違う人もレミリアを見るや視線を逸らし、足早に立ち去る。

 

 生憎の天気だが吸血鬼であるレミリアにとっては忌々しい太陽が隠れているので非常にありがたい。太陽などとっくに克服しているがそれでも鬱陶しい事に変わりはない。レミリアは雨は結構好きなのだ。

 

 ちなみにだがレミリアは流水も特に苦手としていない。転生者が水流を放ってくる事があるのだが、レミリアはなんで吸血鬼は流水が苦手だと思われているのかさっぱり分からなかった。確かに吸血鬼は水中で呼吸は出来ないがそれは人間も同じだろう。実際、レミリアは何度も溺死している。

 

 さて、レミリアがクソッタレな神の手により異世界トータスに召喚されて(誘拐)数日が経ち、少しだけこの世界のことが分かった。情報提供者の山賊の一団には感謝してもしきれない。今頃は魔物の胃袋の中に入っている事だろう。

 

 まず、レミリアは指名手配された。懸賞金は一億ルタ。レミリアにとっては久々にかけられた懸賞金だ。過去には五百億の値がつけられた事もあるので少々物足りないが。毎日のように襲撃してくる賞金稼ぎや勇者をミンチにしてパーティを開くのは中々に楽しかった。今はやっていないがまた機会があればやってみたいものだ。

 

 それはそれとして、おおよそ考え得る限り最悪の異世界スタートである。お陰で変装をする羽目になった。

 

 しかし、この変装が中々に効率的なのだ。現在のレミリアは顔をフルフェイスマスクで覆い、外套で体をすっぽりと覆うという中々に奇抜な格好をして、中の顔も変えている。この世界では人間族が魔法を使うには〝詠唱〟と〝魔法陣〟が必要なのだが、魔法陣は適性があるとかなり省略出来るらしいのでこっちは問題ない。問題は詠唱。もし無詠唱で魔法を使った瞬間、人類と敵対している〝魔人族〟扱いされて即ブタ箱にGOだ。召喚されたあの日、無詠唱で魔法を行使しているのは見られているため、手配書にもバッチリ記載されてしまっている。詠唱を適当に唱えればいいのだが元いた世界では詠唱は無い上に、無詠唱が体に染み付いているので、いつか絶対ボロが出る。対策は必須だ。

 

 その点、この格好は中々にこの世界に合っている。顔を覆っているので口元の動きが見えないし、多少の声も聞こえない。もし無詠唱で魔法を行使してしまっても「君たちに聞こえていないだけでちゃんと唱えています!!」とゴリ押せばいい。

 

 で、何故ここまでして人間の町に来ているのかだが、もちろん理由がある。

 

 まずは何もしないと単純に暇だからだ。せっかくの異世界、楽しまなきゃ損である。

 

 そして、もう一つ。これは先日、王立図書館で調べて分かったことだがーー

 

 

 単刀直入に言うと【秩序無き世界】に生息している筈の〝竜〟がこちらの世界に紛れ込んでいる。【大災害】が原因だと思われるがそれ以上の事は分からないので、調査するに越したことはないだろう。調べれば元の世界へ帰る方法も見つかるかも知れない。

 

 

 というわけで来たのがここ、ブルック。拠点にしている山の一番近くにある町だ。その町の中にある冒険者ギルドにレミリアは辿り着いた。竜の情報を集めるには冒険者になるのが一番だろう。向こうの世界でも冒険者登録しているレミリアにとっても中々に楽しみだ。

 

 重厚そうな扉を開けるとカランカランと音が鳴り、レミリアは中に入る。中は清潔に保たれていて、入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。酔っ払いたいなら酒場に行けという事だろう。秩序無き世界ではギルド内で日中から酒を浴びるほど飲んでいる輩も多いのでこの辺りは新鮮だ。

 

 レミリアが中に入ると当然のように冒険者達は当然のように注目してくる。全員口をポカーンと開けているのが印象的だが、こんな格好で冒険者ギルドに入れば浮くに決まっている上に、元いた世界でもよく受けていた視線なので慣れているが。そのまま気にすることもなく、レミリアはカウンターに座っている恰幅のいいオバチャンの前に向かった。

 

「冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。中々個性的な格好だね。用件は何だい?」

 

 オバチャンはニコッと人のいい笑みをレミリアに向けてきた。正直、意外だ。元いた世界だと「えー? あー、あの私忙しくてあっちのカウンターどうですー? あいたたたたっ! 急にお腹がーーーーー」とか「ひぃっ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」とか「私家族がいてぇっ! ほんっとうに勘弁してくださぁいっ!」とか中々に楽しい対応をされた。流石に一々これをやられると面倒くさいので一度舌打ちしたらそれ以降は冷や汗を流しながらすぐに対応してくれたが。やれば出来るじゃないか。

 

 そんな思い出話はさておき、このオバチャンはレミリアの格好を見てもドン引きしている素振りすら見せず、服装については軽く触れる程度にとどめ、すぐに仕事の話に入る。素晴らしい対応だ。レミリアの対応をする度に過呼吸を起こすあちらの受付嬢も見習って欲しいものである。ちょっとギルド内で絡んできた冒険者を血祭りにあげただけなのに酷い話だ。自業自得であった。

 

 軽く感動しているレミリアだが、せっかくすぐに対応をしてくれるのだ。自分が動かなければ意味がない。早速、冒険者になるにはどうすれば良いかと尋ねた。

 

「冒険者になるんだね。だったらまずステータスプレートを出しておくれ。登録料は千ルタだよ」

 

 レミリアは懐からステータスプレートを取り出してオバチャンに差し出すのだが、ここが問題だ。ぶっちゃけ、あまり見せたくない。この町に入る時も門番に一応見せたがレミリアのステータスプレートは問題があるのだ。

 

 そう、あれは自分用のステータスプレートを役所にぬす……もとい拝借した後の事。

 

 作り方を例の山賊に聞いた後、レミリアはステータスプレートに血を垂らすとこんなステータスが表示された

 

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死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

 

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 ステータスプレートが仕事を放棄した。レミリアはドン引きしてペイッしたのは言うまでもない。

 

 そんなわけで今のレミリアのステータスプレートは〝メルド・ロギンス〟のステータスを基に魔法で偽造した嘘100% のものだ。幸いステータスの大部分は隠蔽出来る上に【幻視】の魔法は得意だが世の中に絶対という言葉はないのでレミリアとしてはなるべく人に触れさせたくはない。

 

 ちなみに偽造したステータスプレートは以下の通りである。

 

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フラン  20歳  女

 

天職:闇術師

 

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 これはこれで色々と酷い。特に年齢。文字通り桁が違う程に本当の年齢とはかけ離れているが人間での見た目年齢で言うと大体これくらいだ。少し恥ずかしいが我慢しよう。天職に関しては自分の得意魔法を考えた結果だ。ステータスは隠蔽している。

 

「ちょいとごめんね。そのマスク外してくれないかい? 流石に顔も分からない子を安易に登録するわけにはいかないんだよ」

 

 それもそうかとレミリアはマスクを外すと、オバチャンが少しだけ驚いた様子を見せる。周りの男冒険者はどよめき、女冒険者にグーパンされていた。

 

「なんだい。随分可愛らしい顔じゃないか。外しといた方が男どもが寄ってくるよ」

 

 それは断る。寧ろこのマスクは男避けなのだ。毎回ナンパの対応をするのに血を見る必要はない。

 

「どんだけ過激な断り方するつもりなんだい……これはオバチャンのお節介なんだけどね、あんた二十歳なんだろ? そんな事してたらいつの間にか行き遅れてしまうよ」

 

 考えておく、とレミリアは気のない返事をした。こっちの世界では今のところ積極的にマスクを外すつもりはない。愛する部下はあっちの世界に今もいるが大切な人は全員死んだ。

 

 

☆☆☆

 

 

 山賊からかっぱらってきたお金で登録料を支払ったレミリア。帰ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに〝冒険者〟と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

 

 青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。冒険者ランクは通貨の価値を示す色と同じなので、言い換えると青色の冒険者とは「お前は一ルタ程度の価値しかねぇんだよ、ぺっ」と言われているのと一緒ということだ。この制度を考えたものは中々イイ性格をしていたことだろう。

 

「冒険者登録はこれで終了だよ。他に何か要件はあるかい?」

 

 レミリアは冒険者になった。となるとやる事は一つ、依頼を受ける。魔物討伐でもなんでもこい。

 

「冒険者になりたての子がいきなりこんな大雨の中魔物討伐なんてやめときな。そうだね……これなんかどうだい?」

 

 アッサリと断られたレミリアだが、オバチャンの対応は受付嬢として当然なので特に文句は言わない。早くランクをあげればいいだけの話だ。手渡された依頼書の内容を流し読みして了解したとオバチャンに伝える。

 

「おや即決かい? もう少し考えてもいいんだよ?」

 

 問題ない。どうせ全部やるつもりだ。さっきの依頼書の束を見るに塩漬けになっているものも数多くあるだろう。どんな依頼があるか楽しみだ。

 

「そうかい、それは助かるよ。あ、これはこの町の地図だよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな。そうそう、今回の依頼場所も私のオススメの場所なんだよ」

 

 手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。普通に売れるレベルだ。いいのだろうかと思ったが「あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ。何枚もあるから汚れたらまたあげるよ」との事だ。それならありがたく頂いておこう。

 

 レミリアはお礼を言い、早速依頼書に書かれてる場所を地図で確認。ギルドを出て、その場所に向かう。外は相変わらずの大雨だがこの服は耐水性も抜群だ。しかも汚れも落ち易い。何の汚れかは言うまでもないだろう。

 

 少しだけ歩くと目的地に着いた。

 

 看板には〝マサカの宿〟と書かれていた。

 

 

☆☆☆

 

 

 冒険者登録をしてから約一ヶ月後。

 

 レミリアが今いるのは直径二キロ以上はありそうな超巨大な球状の空間だった。そんな空間には、様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動をしている。

 

 そんな完全に重力を無視した空間で……レミリアと巨大なゴーレムは対峙していた。

 

 軍服を身に纏ったレミリアは好戦的な笑みを浮かべ、指を折り曲げてバキッと音を鳴らす。ここまでは()()()()()()()()()。ここで楽しませてもらおうか。

 

 緊張感が高まる中、巨大ゴーレムが厳かに喋り出す。

 

「よくぞここまで辿り着いたな冒険者よ。さぁ、その実力を示せ……

 

 

 

 

 

 

 

なんとでも言うと思ったかバカめ!! お前もう帰れ!!」

 

 解せぬ。

 

 

 






プチ情報

レミリアは男にも変身できるが、ずっと男の仕草をするのはしんどいので女に変身することの方が多い。


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