ありふれていない異世界吸血鬼が二大女神と出会う話   作:くたしん

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超今更ですが質問箱を活動報告に設置してます。あと、タグを一部変更しました。プロットを見返してみたら全然いらないタグもあったので....。申し訳ございませんがご了承のほうをお願いします。


運命と出会う日

 約束の日まで数日あったので香織と雫はその間にもメルド団長の訓練を受けたり、檜山の土下座の謝罪があったりした。幾ら神の使徒といえど許されない失態を犯した檜山に対してなんらかの罰があるだろうと二人は思っていたが、クラスのリーダー格である光輝が許したのとイシュタルまで出てきたので二人は不満のまま檜山を許した。檜山のトラップに触れてしまうという痛恨のミスは『若いからしょうがない』で片付けられてしまい、二人、特に香織はとても悔しく思ったが生憎それを覆せるほど二人に力は無かった。

 

 

 

 

 

 

 そして今日が【不気味な何でも屋】と会う約束の日。

 

 夕焼けが辺りを包み込む時間、香織と雫は身支度を整えて王宮の門前にいた。周りには人数の減ったクラスメイト達(未だ自室に引き篭もっているのもいる)や騎士団員が見送りに来ている。

 

「香織、雫、忘れ物はないか?」

「大丈夫です。メルド団長、短い間でしたけどお世話になりました」

「またすぐ戻ってくるかもしれませんけど」

「おう、気を付けて行ってこい。ダメだったらまた俺が鍛えてやるよ」

 

 二人はガッチリとメルド団長と握手を交わし、騎士団員からは「頑張ってこいよ」「あの【何でも屋】に修行をみてもらえるなんてな!」「マジでキツイらしいぞ【何でも屋】の訓練は」と激励の言葉をかけられた。

 

「「「「...........」」」」

 

 一方、クラスメイト達。こちらは、信じられないものを見るような目で香織と雫を見るものが殆どだ。

 

「カオリン、シズシズ...本当に行っちゃうの?」

 

 そんなクラスメイトの中で喋りかけてきたのは身長百四十二センチのちみっ子である〝谷口鈴〟

 

 普段はその小さな体の何処に隠しているのかと思うほど無尽蔵の元気が詰まっており、常に楽しげでチョロリンと垂れたおさげと共にぴょんぴょんと跳ねている。その姿は微笑ましく、クラスのマスコット的な存在な彼女だが、今は見る影もなかった。

 

「うん」「ええ」

 

「なんで....なんであんな事があったのに二人はすぐにまた戦えるの...? 光輝君も龍太郎君も訓練を始めてるし....二人は、怖くないの...?」

 

 俯きながら、声を震わせる鈴。クラスメイト達も喋ってはいないが概ね同じ意見のようだ。目がそう語っている。

 

「もちろん怖いよ。出来れば戦いたくないもん」

「え...? じゃあ、なんで...?」

 

 

「二度と、後悔したくないんだ。私も、雫ちゃんも」

 

 

「こう...かい...?」

 

「うん、だから強くなりたい。今度こそ、守れるために」

 

「私もよ。今度こそ、守るために」

 

 そう言って力強く笑う夕陽に照らされた二人はどこか幻想的で、思わず全員が見惚れてしまうほどに綺麗で、鈴もしばらく呆然としていたがやがて「ふふっ」と笑った。

 

「....かっこいいね二人とも。うん、なんか元気出てきた! 私も訓練頑張るよ! 強くなった私を見てビックリしないでよね!」

 

 クラスのマスコット的存在はぴょんと跳ね、満面の笑みを浮かべる。やはり大人しい鈴は鈴らしくなく、この姿に元気付けられるクラスメイトも出てくる事だろう。

 

「うん、楽しみにしてる」

「数ヶ月間戻らないみたいな感じになってるけどすぐ帰ってくる場合もあるからね? あんまり戻り辛くしないでよ...」

「大丈夫だって、早く戻ってきたらその分カオリンとシズシズの体を堪能できるから!」

「「大丈夫じゃない!?」」

 

 

☆☆☆

 

 

 クラスメイト達や騎士団員と別れを告げて香織と雫は王都に向かって歩き出した。

 

 幼馴染みである龍太郎は「最強の冒険者に修行を見てもらえるんだろ? 俺も行ってみたかった...!」とか「強くなったら俺と手合わせしてくれよ!」と脳筋全開な事を言っていて、全くブレない幼馴染みに二人も苦笑いしたものだ。

 

 そして、もう一人の幼馴染みである光輝。二人は光輝が絶対何かと理由を付けて引き止めてくるだろうなぁ、と思っていたが。

 

 

「光輝君、意外だったね」

「そうね」

 

 意外にもあまり言ってこなかった。

 

 最初こそ「あんな失礼な人の元に行ったらダメだ!」「俺が香織と雫を守る!」とか言ってきたが先程は不満気な表情をしていただけで特に何も言ってこず、光輝とは長い付き合いで大体の言動を予測できる二人はとても意外に思っていた。何か光輝にも思う所があったのか、二人は少しだけ疑問に思っていたが...どうでもいい事だ。二人はすぐに切り替えた。

 

「雫ちゃん、露店があるみたいだし何か食べていかない?」

「そうね、何か食べていきましょ」

 

 

☆☆☆

 

 

 件の光輝は自室で外を眺めながら香織と雫の事を考えていた。

 

 最初に聞いた時は驚いたものだ。

 

 なにせ、挨拶を無視する上にあんな不気味な人物の元に行こうとしているのだ。引き止めるのは『幼馴染み』として当然の事であった。

 

 しかし、あれだけ行くと言うのなら光輝にも止めれない。渋々ながらも了承した。

 

(まぁ、【何でも屋】さんは『可愛い女の子』だった。これが『男だったら』二人が『危ない』から絶対に行かせなかったけど)

 

(それにあんな失礼な人の元に香織と雫が長いこといるはずもない。またすぐ戻ってくるさ)

 

 

 

ーーそう、二人は自分の許にいるのが当たり前なのだからーー

 

 

 

 さ、もうすこし訓練しよう。南雲は『死んでしまった』。今度こそ誰も死なせないために俺も強くならないと、そう思った光輝は相棒である聖剣を手に取り、部屋を出た。

 

 

☆☆☆

 

 

 場面戻り香織と雫。

 

 集合場所は【不気味な何でも屋】から貰った地図に記載されており、王都のメインストリートの外れにあるお店の近くが集合場所となっていて、二人はそこに向かっている。そこには【不気味な何でも屋】の使いが待っているらしい。

 

 二人はモグモグと露天で売っていた串焼きを頬張りつつ、集合場所へと向かっていたが、聖教教会のお膝元であるハイリヒ王国の王都でも光あるところに闇はあるというか....

 

「へいへいそこのお嬢ちゃん達〜。俺らと遊ばな〜い?」

 

 陽は沈み、完全に夜の帳が下りた頃。メインストリートから外れて人通りも少ない通りに入った二人はいかにもガラの悪いチンピラ達に絡まれた。

 

「生憎待ち合わせしてる人がいるの。どいてくれないかしら?」

「いいじゃんいいじゃん、俺らと遊ぶ方が絶対楽しいって〜」

「気持ち良くしてあげるから〜」

 

 チッと舌打ちする雫。どうやら大人しく引いてくれないようだ。一人のチンピラが香織に向かって手を伸ばしてきたため、雫がそれを払いのけた。

 

「邪魔だと言ってるの、分からないかしら?」

「チッ、面倒くせぇ....どうやら痛い目を見ないと分からないみたいだ。おい、お前ら! 世間知らずのお嬢ちゃん達に常識っていうもんを教えてやれ!」

 

 ゾロゾロとチンピラ達が更に集まり、その数は十人ほどになった。周りの無関係な者達は視線を逸らすか囃し立てるか、観戦を決め込むかのどれかであり、助けは期待できない。

 

「香織、下がってなさい」

「ううん、私も戦うよ。私だってステータスはかなり高いから大丈夫だよ」

「香織...そうね、支援よろしく」

「うん! 任せて!」

 

 そして勿論、神の使徒である二人に助けなどいらない。相手はただの一般人。香織一人でも充分お釣りが帰ってくるほど相手は弱い。

 

「痛め付けて犯してやんよ!」

「今更後悔しても遅えぞ!」

 

 チンピラ達が胸元からナイフを取り出し、雫は抜刀。香織は詠唱の準備に入り、まさしく一触即発になったその瞬間。

 

 

 

「ぐべぇっ!?」

 

 

 チンピラの体が『二人は何もしていないのに』地面に叩きつけられた。チンピラ含め二人も呆然としたがその中で二人は今起こった現象をこう例えた。

 

 

 

ーーまるで、そこだけ重力が強くなったみたいだーー

 

 

 

「なっ、なんだ....うぼあっ!?」

「ひっ、ひいぃ...ぎゃああああああああ!?」

「俺は何もしてねえって! やめ...ぐはっ!?」

 

 そう思っている間にもチンピラ達は次々に吹き飛ばされていく。

 

 ある者は壁に叩きつけられ

 ある者は上空に『落ちて』

 ある者は露店に突っ込まされた挙句店主にぶん殴られた

 

 辺りは大混乱に包まれるが二人には何も起こらないため困惑し辺りを見渡すだけだったが

 

 

「こっちだよ」

 

 

 路地から二人を呼ぶ声が、聞こえた。

 

 

☆☆☆

 

 

「やぁ、災難だったね」

「あ、ありがとうございます...あの、あれはあなたが...?」

「うん、まぁそっだよ〜」

 

 路地裏に入った二人は自分たちを助けてくれたであろう人物にお礼をしたが、二人はその人物の背の低さに驚いた。まるで幼児なみ。華奢で雫の腰辺りまでしか身長がなく、顔や体の大部分は乳白色のローブやフードで隠れていて表情などは伺えないが、体のシルエットが人間的ではないように感じた。

 

「もしかしてあなたが【何でも屋】さんの...?」

「うん、そうだよ〜。え〜と、君達が『生脚曝け出した黒髪の神官服を着ている少女』『胸元とヘソ丸見えのポニテ剣士』でいいのかな?」

「あの、その呼び方勘弁してもらえませんか....!? 私、白崎香織です....!」

「八重樫雫です....!」

 

 二人は顔を紅くしながら自己紹介した。今後もセクハラ一歩手前の愛称で呼ばれるわけにはいかない。

 

「OK、香織に雫だね。よろしく〜」

 

 ローブの人? は気さくに挨拶してきたので二人とも頭を下げて「「よろしくお願いします」」と挨拶を返した。挨拶はアレだったもののどうやらいい人そうだ。

 

 

「チッ、無駄にデカい乳見せびらかしてよう...嫌味かっての...! 取れちまえあんなもの...!(ボソッ)」

 

 

 二人は前言撤回。嫉妬の炎を燃やしながら怨嗟の声をあげるローブの人に背を向けてコソコソと喋り合う。

 

「今、凄い罵倒が聞こえてきたような...」

「た、多分気のせいだよ雫ちゃん」

「そ、そうよね。初対面でいきなりそんな悪口なんて...」

「二人ともどうしたの〜? そろそろいくよ〜?」

 

 ローブの人に呼ばれたので二人とも振り向く。そこにはさっきまでの態度が嘘のように平然としたローブの人がいた。

 

「ほら、やっぱり気のせいだよ」

「そ、そうみたいね。安心したわ」

「ほら、置いてくよー乳牛ちゃん」

「乳牛ちゃん!?」

 

 

☆☆☆

 

 

 ローブを纏った人に付いて路地裏を進む間、お互い何も喋らず、張り詰めた空気が両者の間に流れている。

 

 若干一名先ほどまで「好きで胸を強調させてるわけじゃないわよ....勝手に大きくなってるだけだし....」と何やら言ってたがそれは今はどうでもいい事だ。

 

 そのまま入り組んだ迷路のような路地裏を歩き続ける事数分、ローブの人が立ち止まり、香織と雫も歩みを止める。

 

 視線の先には、人一人が通れそうなサイズの黒い穴がある。ブラックホールにも例えれるそれはどこまでも黒く、禍々しい光を放っていてとても不気味に思えた。

 

 

 

「さて、この先にアイツはいるんだけど...一つだけ確認するよ」

 

 ローブの人が振り向く。相変わらず表情は見えないが、先ほどまでのおふざけのような雰囲気は感じられない。

 

 

 

「この先に進むと....『運命が変わる』。それでも進む?」

 

 運命、運命か....二人にとってその質問は愚問であった

 

 

 

 

「「運命なら、とっくに変わってる」」

 

 

 南雲くんが奈落に落ちた、あの日から。

 

 

 

 

「.....そう、じゃあ付いてきて」

 

 

 二人の目を見て、どこか諦めた雰囲気でそう呟いたローブの人は黒い穴の中に歩いていき、姿が一瞬で掻き消えた。

 

 ゴクリと思わず息を呑む香織と雫。しかし、やがて意を決して黒い穴の中に続いて入っていく。

 

それと同時に黒い穴は音も立てずに消え去り、あとにはただの薄汚れた壁だけがそこにはあった。

 

 

☆☆☆

 

 

「「???????」

 

 穴に入った瞬間、視界が黒く染められた二人だったがそれは一瞬ですぐに視界を取り戻すと辺りの風景が様変わりしている事に気付いた。

 

「ここは...森の中?...の広場?」

「そうみたいね。王都....なわけないか。瞬間移動とかそういった類のものかしら? 凄い魔法ね....」

 

 二人がいたのは森の中の広場のようなところだ。高校のグラウンドよりも広い広場にはズタズタになった木や石柱が点在しており、広場の周りを囲うようにして背の高い木々が生えている。まるで意図的にこの辺りだけ伐採されたかのようだ。

 

「あの人はどこ行ったんだろう?」

「私達、どこに行けばいいのかしら?」

 

 ローブの人はいつのまにかいなくなっている。まさか連れてくるだけ連れてきて後は放置? いや、実は『もう修行は既に始まっている。お題をクリアしてみよ』とかそういうパターンだろうか? それにしては何も起こらないし...

 

「どうする?」

「とりあえず、歩きましょうか」

 

 幸いな事に今夜は満月。地球のそれよりも大きい異世界の月は闇夜を淡く照らしてくれている。足元に注意さえすれば問題なく歩けそうだ。

 

「? 暗くなった?」

「香織、上!」

「上...? !?」

 

 しかし、月明かりは一瞬にして無くなった。香織は雫の焦ったような声を聞きバッと上空を見上げるとなにやら黒い塊...いや、黒の大波が月を隠していた。

 

「なに...あれ...?」

「鳥...いや、違う。蝙蝠だわ!」

 

 暗闇の中よくよく目を凝らすと黒の大波の正体は蝙蝠であった。蝙蝠の数は数十どころではなく軽く数百に届きそうなほどの大群で、二人は慌てて武器をかまえるが蝙蝠の群れは方向転換。そのまま二人の上空をさながら竜巻のように乱れ飛ぶ。バサバサ、キィキィと音を立てながら蝙蝠達が月下を乱舞するその様子はとても不気味で、おぞましく感じた。

 

 そのまましばらく飛び続けてた蝙蝠達だったが、やがて二人の近くにある石柱の上で球状に集まりだし...

 

 

 

 一人の少女に、変身した。

 

 

 

 身長は150cmくらい。肩まで伸ばした雪のような銀髪。大きいがツンと少し勝気に釣り上がった瞳の中で紅い縦割れの瞳孔が闇夜の中でギラリと輝く。口元からは鋭く長い犬歯が顔を覗かせていたが、顔立ちは美少女と言っても過言ではないだろう。肩の辺りから【吸血鬼】の特徴である黒い蝙蝠の翼を生やしている。服装は黒の軍帽、紅のシャツ、黒のロングコートにズボンと西洋風の軍服のようなものを着ており、肌は病的なまでに真っ白と服との対比が美しい。

 

 

そして、二人はこの少女に『見覚えがあった』。直接会ったわけではない。そう、あのオルクス大迷宮の受付の所で.....!

 

 

 

「.............」

 

 

 

 満月をバックに翼をバサリと広げて無言で二人を見下ろす吸血鬼の少女。その姿はまるで一枚の絵画のよう。どこまでも美しく、儚く、可憐で、そして....恐ろしかった。

 

 

 

 二人は本能で理解する。

 

 

 

 この少女がその気になれば自分達はあっという間に、意識する暇もなく首を刈り取られると。

 

 

 

 

それ程までに二人とは

 

 

 

存在が

 

 

 

格が

 

 

 

次元が

 

 

 

何もかもが違う

 

 

 

 

 少女はそんな恐れ慄く二人の様子を見てなにが面白いのかくすっと笑い....月下にその声を響かせた。

 

 

 

 

「やぁやぁやぁやぁ、こんにちは! こんばんは! ご機嫌よう! そして『数日ぶり』ね! 自己紹介するわ。私は冒険者【不気味な何でも屋】改め、【夜の王】吸血鬼にして一億の賞金首【レミリア・カルテナ】!!

 

 

 

 

 

 

 

 

いい夜ね? お嬢様方」

 

 

 

 

 香織と雫は、その時のレミリアの笑顔を一生忘れることはないだろう。

 

 






やっと主人公と二人を絡ませる事ができました...

レミリア:軍服レミリア(諸事情でズボンを履かせてます)。イラストが超カッコいい。これを見た作者は最初は東方のレミリアをありふれの世界にぶち込もうと考えたが話が絶望的に広がらないことに気付き断念。そこから設定マシマシにしたのがこの作品で、レミリアという名前はその時の名残。

ミレディ:雫と絡ませたかった。零はあまり読めてないのでミレディがどこまで巨乳絶対許さないウーマンなのかは分からない


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