ありふれていない異世界吸血鬼が二大女神と出会う話   作:くたしん

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誤字報告ありがとうございます!


12/23 第一話追加修正しました。こんな事が続きますが見捨てないで下さい!




吸血鬼とのお喋り

 レミリア・カルテナ

 

 

 香織と雫の目の前にいる少女は確かにそう名乗った。

 

「【何でも屋】さんが....レミリア...!?」

「嘘、でしょ...」

 

 この世界最強の冒険者が一億の賞金首という事実、人を何人も殺めた魔人族側の存在が目の前にいるという現実に二人は激しく動揺する。そんな二人の様子を見てレミリアは悪戯っぽく微笑んだ。

 

「いい反応をありがとう。だがちょっと考えればわかる事だろ? レミリアと【不気味な何でも屋】はほぼ同時期に現れた。この世界基準での最強格が二人同時に突然現れるなんて偶然、普通は有り得ないでしょ?」

 

「た、確かに....でも、それならどうして....」

 

 何故、誰にもバレなかったのか。レミリアは微笑んだ後

 

「ふふっ、種はこれよ」

 

 シャッと何かを投げた。見慣れた十二センチ×七センチ位の銀色のプレート。ステータスプレートだ。雫がそれを受け取り、香織と共に見る。

 

 

 

 

 名前欄には【フラン】と書かれていた。

 

 

 

 

 これが一体なんだと言うのだろうか、二人はレミリアの方を再び見るといたのは【不気味な何でも屋】ことフラン。ただしマスクを外してあの無表情さとは一変しニヤリと笑っている。

 

「そうか、レミリアというのは偽名で本名がフランなのね。そしてその姿は〝変身〟の魔法か何かで化けているからステータスプレートの掲示が必要なオルクス大迷宮にも入ることが出来た...違う?」

 

「半分正解よ。正確に言うとレミリアが私の本名だ」

 

 フランの全身が光に包まれた後レミリアの姿に再び変化。レミリアが本名? じゃあステータスプレートのフランっていう名前は一体...? 

 

「雫ちゃん、前に教官が言ってたんだけどこの世界の〝変身〟ってさ、結構高度だけど使える人もそれなりにいるの....それだと身分を偽れる人が何人も出てくるから、〝解変〟っていう〝変身〟を強制的に解く魔法を持ってる人が保安署とか役所で働いているんだって」

 

「つまり?」

 

「一回ぐらい、〝解変〟の魔法を受けた事あるんじゃないかな....? これだけ怪しいと思える条件があるなら」

 

「ピンポンピンポン大正解ー! 十回は受けたわね。本当、めんどくさかったわ。私の〝変身〟はちょっと特殊だからいくらやっても分かるわけないのにねぇ...ま、お陰で私は今は疑われる事なく街を歩き回れるんだけどね」

 

 しかし、また一つ謎が出来た。ステータスプレートだ。トータスでは身分証明書として広く使われているステータスプレートがこんな簡単に偽装出来るものだろうか?

 

 だが、その謎もすぐに解かれた。 

 

 レミリアが指をパチンと鳴らす。するとそれに呼応するかのようにステータスプレートの名前欄が〝白崎香織〟になった。

 

 更にパチンと鳴らす。今度は〝八重樫雫〟の名前が。本来は不変のはずの名前欄がポンポンと次々に切り替わっていく。

 

「私はこういう偽装の魔法が得意でね。これくらいならお手の物よ」

 

 ステータスプレートには能力値を隠蔽する機能があるが、名前などは隠蔽出来ないし偽装する事など容易にはできない。そんな簡単に偽装できたらステータスプレートは身分証明書として広く普及することは無かっただろう。

 

 だが、目の前の吸血鬼はいとも簡単にそれをやってのけた。誰にでも成りすませれるレミリアにとって指名手配などまるで意味がないことだ。

 

「....私達をどうするつもり?」

 

 雫はアーティファクトに手をかけつつ香織を背中に隠すようにして立ち、レミリアに問いかける。香織は不安の表情を浮かべながらレミリアを見つめた。

 

「ふふっ、取って食いやしないのにそう警戒しないでよ。立ち話もあれだから私の家に招待するわ。美味しいお茶があるの。お口に合えばいいんだけど」

 

 ついてきなさい。そう言ったレミリアは地面に降り立って二人に背を向けて歩き出した。

 

 

 二人に選択肢は、ない。

 

 

 

 しかし

 

 

(もし、雫ちゃんに危険が及んだら....)

 

(もし、香織に危険が及んだら.....)

 

 

 

((その時は........))

 

 

 ☆☆☆

 

 

 広場を抜け、森の中をしばらく歩くと一軒の家があったのだが...

 

 あれ? 香織と雫はそう思った。

 

 なぜなら

 

「雫ちゃん、あれ畳だよね...?」 

 

「それに縁側に障子...意外ね」

 

 少しだけ開けた所に建っていたのは木材を多用した小さめの日本家屋。こんないかにも西洋! な感じの吸血鬼がこんな和風の家に住んでいるのか。見慣れた様式の家がトータスにあることにも二人は驚いた。

 

「さ、入って入って。あ、靴はそこに脱いどいて」

「「お、お邪魔します」」

 

 レミリアに促されるがまま家の中に入る香織と雫。育ちのいい彼女たちはレミリアが敵かもしれないのに律儀に挨拶をして家の中に入った

 

 家の中は十畳一間ほど。部屋の中央にちゃぶ台が置いてあり、台所と縁側が付いている純和風の家であった。何度も言うが西洋の怪物である吸血鬼がこんな和風の家に住んでいることが違和感でしかない。

 

「おっと、この格好のままじゃだめね」

 

 レミリアの全身が光で包まれる。また変身するつもりなのだろうかとも二人は思ったが違った。

 

「え? 作務衣...?」

「あぁ、楽でいいのよねこれ」

 

 なんとレミリア、軍服から着替えて今は小麦色の作務衣を着ていた。先程は見えなかったが首からは小さい紅玉がついたネックレスを下げていて、左中指にはウェーブの形状をした指輪をはめている。作務衣から覗く白磁器のような肌と鮮血に染まったような色をしている鋭い爪が美しい。

 

「ま、座ってちょうだい。お茶出すわね」

 

 二人は大人しく座り、レミリアはその対面に座ったあと、ちゃぶ台の上に光すら呑み込む漆黒の【影】が広がった。その中からは三つの緑茶が入った湯呑みが現れ、香ばしい香りが部屋に漂う。

 

 緑茶まであるなんて、もしかしてレミリアって日本人? と二人は思ったがレミリアは日本人でも転生者でもないらしい。ただ、『存在は知っている』らしく、地球も知っているらしいがこれ以上は話が長くなりすぎるということなのでこれ以上は語らなかった。

 

 ちゃぶ台の上に広がっていた影はやがてレミリアの元に戻る。二人はその影がオルクス大迷宮でロックマウントを屠ったあの魔法だと察し、やはり【不気味な何でも屋】は【レミリア・カルテナ】だと確信した。

 

 

【影魔法】

 

 レミリアの十八番の魔法の一つ。自身の影を操り、敵を拘束、串刺し、収納などが出来る。触れた相手の魔力や力を吸い取る性質がある。影の中は無限の異世界が広がっており、生きている動物以外の時間は止まる。

 

 

 

「そんじゃ改めて。レミリア・カルテナよ。よろしくね〜」

「....白崎香織、です」

「....八重樫雫よ」

 

 ニコッと見た目相応に笑うレミリア。先程までの威圧感は一切感じられない。ただそれでも二人の顔には警戒の表情が表れている。

 

「貴女たちがここにきた理由は手紙で知ってるわ。南雲くんの事も、大変だったみたいね」

「...私達を騙す形でここに連れてきてどうするつもり?」

「それについては悪かったと思ってるわ。まさかあんな手紙で来るとは思ってなかったのよ」

 

 いくらレミリアが【不気味な何でも屋】というこの世界最強の冒険者が修行をつけると言っても神の使徒、しかもエースクラスである香織と雫をこんなアッサリと引き渡してくれるとはレミリア自身思っていなかった。返信の手紙が届いた時レミリアは目を丸くしたものである。

 

「じゃあ、もし手紙で来なかったらどうするつもりだったの? まさか、直接会いに来るつもりだったの?」

「えぇ。貴女たちの部屋に忍び込んでも口説き倒すつもりだったわ。まぁ、最終手段だけど」

「そうまでして私達を魔人族側に連れて行く理由はなに? もし本当に王宮に忍び込めるなら勇者の光輝を殺した方が効率的だと思うんだけど」

 

 するとレミリアはキョトンとした後、ポンと手を打った。

 

「そういえば私は世間では魔人族ということになってたわね。安心しなさい、私は魔人族じゃないわ」

「...魔人族じゃない? そんな根拠、どこにあるのかしら?」

「根拠ねぇ...肌の色、と言われても納得しないだろうし...今から魔人族の首でも狩ってこようか?」

 

 レミリアとしてはあまり気は進まないが、いや本当にあまり気は進まないが二人に信用してもらうためだ。魔人族には生贄になってもらう。老若男女コンプリートするか、なんなら魔王の首でも狩ってこようかとレミリアは考えたが雫に止められた。確かにこんな夜更けに人間の二人が人の生首を見てもしんどいだけか、配慮が足りなかったとレミリアは反省した。

 

「いや、生首なんて見たくないんだけど....」

 

 じゃあどう信用させればいいのだろうか。レミリアは考える。そして、閃く。

 

「魔人族全員を血祭りにあげればいいのね?」

「なにを言ってるの?」

 

 どうやら違うようだ。いけないいけない、二人と話せてるからってテンションが上がりすぎだ。レミリアはまるで思春期の少年少女のような状態になっている今の自分を恥じた。

 

「そういえば私達の事が気に入ったから弟子に欲しいとか手紙で言ってたよね...もしかして、本当に?」

 

 香織は苦笑気味にレミリアにそう問いかける。どうやら本気と思われていないようだが無論レミリアは本気である。二人がゴーサインを出せばすぐにでも魔人族の国はこの地図上から姿を消すことになるが、どうやら二人にその気はなさそうだ。少しだけ、ほんの少しだけレミリアは残念がった。

 

「もちろん大マジよ。あの手紙の内容に嘘偽りは殆どないわ」

 

「私達をなんで気に入ったのかしら? 迷宮ではあれだけ私達の事をガン見してくれたけど」

 

「その事か。そんなもの決まっているわ」

 

 レミリアは息を吸って、一言

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一目惚れ」

 

「「は??」」

 

 空気が凍てついた。二人とも固まっているので、レミリアは伝わらなかったか? と思い、もう一度口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「一目惚れ」

 

「ふざけないで」

 

 雫がピシャリとそう言ってのける。レミリアとしてはふざけても何もいない。思った事をそのまま話している。乙女の告白を一体なんだと思っているのだろうか。レミリアは憤慨したが、ここで自分が言ってる事が少し間違ってることに気付いた。

 

「あぁ、すまない。少し間違えた」

 

「...そう、じゃあ本当の事を言って。このままじゃ話しが進まないわ」

 

 レミリアはお茶を飲んで一拍置く。

 

 

 

「二目惚れよ」

 

「ふざけないでって言ってるでしょ!?」

 

「お、落ち着いて雫ちゃん!?」

 

 バンッ! と両手でちゃぶ台を叩きながら勢いよく立ち上がる雫。衝撃でお茶が少し溢れた。流石に警戒しすぎではなかろうか。ガルルルルと威嚇してる雫はまるで犬だ。犬耳と尻尾が幻視出来る。可愛い。

 

「ふざけても何もいないわよ。正真正銘、私は貴女たちに二目惚れしたの」

 

 だがレミリア、一切怯まない。なんともない顔で再びズズっとお茶を啜る。二人は見た目年下の少女から告白を受けていることに混乱した。

 

「レミリアちゃん? はその、女の子が好きなの?」

「レミリアでいいわよ。勘違いしてるようだけど私も恋人にするために貴女たちをここに呼んだわけじゃないから」

「「??????」」

 

 この吸血鬼の考えがまるで分からない。二人は更に混乱しているとローブの人が部屋の中に入ってきた。

 

「あら、いないと思ってたら。どこに行ってたの?」

「少しだけ向こうに戻ってたんだよ。どこかの誰かさんの人使いが荒いせいで私のやりたい事が全然出来ない」

 

 そのままポテポテと歩いてきてレミリアの隣に座り、バサリとローブを外してその顔をあらわにする。その顔を見て二人は『やっぱり、人間じゃなかった...』と疑問が確信に変わった。

 

 ローブの人の正体はゴーレムだった。土を極限まで固めて作ったようなボディーにニコちゃんマークの仮面を付けている。

 

 この状況に雫は内心で歯噛みした。

 

(くっ、敵が一人増えてしまった...ますますここから逃げにくくなったじゃない...!)

 

 レミリアだけでも絶望的なのにもう一人増えてしまった。隙を見て『レミリアの首を斬り落とす』つもりだった雫だが、このゴーレムの使ってたあの重力を操るような魔法の仕組みや発動条件がわからないと簡単に返り討ちにあう。

 

 どうすれば...! と雫が必死に頭を働かせる中、ミニゴーレムは自己紹介をした。

 

 

「ミレディ・ライセンだよぉ〜、私の事はお姉さんと呼んでもいいんだぞ☆ そ・こ・の吸血鬼(イカれポンチ)以外よっろしっくねぇ〜」

 

 

 どういう構造なのか、きゃるん☆と擬音が出そうなほど仮面にうざい笑みを浮かべたミニゴーレム改め〝ミレディ・ライセン〟は思いっきり中指を『レミリア』に立てた。

 

 

 二人は更に混乱した。

 

 

 え? 二人は仲間じゃないの? 

 

 

 ☆☆☆

 

 

「あらあら、嫌われたものねぇ。私が一体なにをしたって言うのかしら」

「ふっざけんじゃねぇよお前。私の迷宮でやった事忘れてねぇぞ」

「なによ。なにが不満だったっていうの?」

「全部だよ全部。あんなイカれた方法で攻略するのもそうだし、私をここに連れてきた理由も。え? 言ってみろよ」

「『こっちの世界』に友人がいなかったから。貴女とは気が合いそうだから連れてきた」

「それは百万歩譲っていいとして、お前『殺し合い』をした後だぞ。バッカじゃねぇの」

「私の世界には『拳で語り合う』という言葉もあったわ」

「語り合ってねぇわ! お前に一方的にボコボコにされただけだ! しかも殺される寸前までいったじゃないか!」

「でも貴女は生きている。結果オーライね」

「結果オーライじゃないよ! 地獄に落ちろ!」

「地獄か。いいわね、また行きたいわ。特に温泉と針山『ジュース』が最高ね」

 

 駄目だこいつっ、と崩れ落ちるミレディにクスクスと笑うレミリア。香織と雫は話に全くついていけず混乱するばかりだ。

 

「ほら見てみなさいミレディ。可哀想に、二人とも貴女のせいで混乱しているわ」

「ブーメランって言葉ご存知?」

 

 あ゛あ゛ん? とニコちゃんマークのような仮面をチンピラのように歪ませながらミレディがレミリアに迫るが、レミリアは見向きもせず若干面倒くさそうにため息をついた。「こいつ、面倒くさそうに...!」とミレディが呟くが実際面倒くさいので仕方ない。

 

「ほらその辺にしなさい。このままじゃ話しが全然進まないわ」

「チッ、こいつ無理矢理話を変えやがった。まぁいいや。このままってのも可哀想だからね。ホント、いつか覚えとけよ」

「はいはい、覚えとくわよ....さて、二人とも。改めてもう一回自己紹介するわ」

 

 レミリアはスッと表情を引き締めて二人を見据える。

 

「私は【秩序無き世界】と呼ばれる異世界から来た亜人達の国【ドラデル】の棟梁、【吸血鬼】レミリア・カルテナ」

 

 

「そして私はこの世界では〝反逆者〟と呼ばれる者、ミレディ・ライセン」

 

 

「少しだけ聞いてくれる? 私達のお話を」

 

 





フラン:【不気味な何でも屋】の本名という設定。もちろん東方のフランドール・スカーレットとは一切関係がない。

ドラデル:亜人達の国。レミリアが治めている。

解変:本作のオリジナル魔法。変身を強制的に解く事ができる。

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