ありふれていない異世界吸血鬼が二大女神と出会う話   作:くたしん

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新年あけましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いします!

本当は2020年内にあげたかったんですけど色々書き直してるうちに年越しちゃいました。申し訳無いです。





吸血鬼が降臨した日。そして誘い

 

【太古の森】

 

 秩序無き世界の中でも最大の規模を誇る樹海だ。樹齢千年を超える巨木が乱雑に生えて、木々同士が繋がり、絡み合う事により何層にもフィールドが出来ている「天然の大迷宮」。この豊かな自然の中で伸び伸びと育った生物達は皆強靭な生命力と戦闘力を持っており、人類は容易に踏み込めない魔境でもある。

 

 そんな天然の大迷宮を抜けた太古の森の一角。そこはまた様相が異なっていた。

 

 今は一部を除き生物達が寝静まる夜の世界。そこは渓谷の間を穏やかに川の水が流れ、周りの草木に命を与えている。そしてその植物を隠蓑にして蛍のような生物が闇夜を淡く照らし、満天の星々と合わさって幻想的な光景を生み出していた。

 

 そんな静まりかえった美しきこの場所に、【影】が現れた。

 

 レミリア・カルテナだ。

 

 

☆☆☆

 

 

 レミリアは川のほとりに鎮座している巨石に慣れた様子で腰掛け、軍帽を取り、月を見上げる。今日は自分に最も力を与えてくれる美しき満月だ。

 

 ここはレミリアのお気に入りの場所で、彼女は時折ではあるがここに立ち寄り、静かに月光浴をするのが習慣となっている。愛する部下たちとどんちゃん騒ぎするのも楽しいがたまにはこうして穏やかな時間を過ごすのも悪くない。

 

 だからこそ、レミリアはこの時間を邪魔されるのを酷く嫌う。

 

 

 

 例えば、今みたいに。

 

 

 

「……誰かしら。無粋ね」

 

 不気味な光と共に、地面に魔法陣が突如描かれた。その瞬間、先ほどまでレミリアの目を楽しませていた地上の星々はわっと霧散し、辺りの草木に身を潜める。この虫たちは警戒心が強い。恐らく今日は光る事はないだろう。

 

「さて、この落とし前はどうつけてくれるのかしら?」

 

 レミリアは巨石から降り立ち、軍帽を被る。魔法陣から現れたのは学生服の上から荘厳な装飾が施された防具を着込み、これまた過剰なほど装飾が施された武器を持つ十代の男女二人組。それを見た瞬間、レミリアは少しだけ()()()()()()()()

 

「この世界では見たこともない服装。そしてその神気と武器……貴方達、『転生者』ね?」

 

 二人は何も答えない。だが、レミリアは確信していた。

 

「さて、私に一体何のようかしら、と言いたいところだけど大体分かるわ。私を殺しに来たんでしょ?」

 

 レミリアのその言葉を皮切りに、転生者達はレミリアに襲いかかった。

 

 

☆☆☆

 

 

 ドガァン!! ベキバキィッ!!

 

 二人の転生者の苛烈な攻撃をレミリアは躱すが、その余波は周りの自然に着実に被害をもたらす。破壊音で叩き起こされた怪物達の咆哮が辺りに轟く中、お気に入りの場所を破壊されたレミリアは眉を顰める。

 

 しかも残念な事に、この転生者は『ハズレ』であった。何がハズレなのか。

 

 それはこの転生者達は『ただ魔力が多いだけ』だからだ。『他人のスキルを奪えるスキルを持つ』レミリアは珍しいスキルを持つものを見ると一目散に奪いに行くがこの転生者達は特に珍しいスキルを持っていない。

 

 では、武具はどうか。転生者によく襲われるレミリアはその悉くを返り討ちにして神器やそういった類のものを奪い取り、コレクションにしている。目新しいものがあればこの自然破壊も許せよう。なんなら率先して直すつもりだ。

 

 だが、男の得物であるバスターブレードは光の斬撃を放てるだけ。女が放つ矢は相手に必ず当たるだけで何の珍しさもない。そんな神器はレミリアの自宅の棚に一山いくらと飾られている。それに威力も大したことがない。『不死身』の吸血鬼であるレミリアは今までに数千、数万回とミンチになった事があるが、結局は人類が五、六度滅びる所を見届けるくらいは生きている。この転生者達の攻撃をいくらくらっても文字通り永遠に死なないのでレミリアとしては何も燃え上がらないし、ひたすらダルいだけである。

 

 しかし、レミリアには一つ気になる点があった。この転生者達の動きが非常に『気持ち悪い』のだ。

 

 それは決して関節が異常に柔らかいびっくり人間の動き的な気持ち悪さではない。まるで『操り人形のような動き』をする転生者達の動きにレミリアは異様さを感じているのだ。

 

 それによく見れば表情が抜け落ちている。レミリアに攻撃するときも何一つ表情を変えない、目線が合わない、息ひとつ乱さない。まるで人形のようだ。

 

 さて、どうするか。迫り来る矢を払い、斬撃をかわしながら考える。

 

 だが、事態は急変した。

 

(魔力があの弓に集まって……いや、待て。『集まりすぎ』だ!)

 

 レミリアの眼は【魔眼】だ。相手の魔力量や流れを見ることが出来る。女の持つ弓矢はどうも魔力を集める事により威力を上げることが出来るらしいのだが……どう見ても魔力を集めすぎなのだ。

 

 例えるなら、果物から果汁を一滴残らず絞り出すが如く。当然そんな無茶をして無事な筈もなく、女は一瞬でカサカサのミイラとなって崩れ落ちたが、その直前に放たれた矢は極大のレーザーとなってレミリアに襲いかかった。

 

「一体なにをしたいのかしら……ねっ!」

 

 レミリアは【影魔法】を自身の前に展開し、レーザーを受け止める。レミリアはこれしきの攻撃で死ぬ事はないが、かわしてしまうと周りの自然に甚大な被害が出てしまうので仕方ない。自然を元に戻すのはとても面倒くさいのだ。【影魔法】は魔力を吸い取る性質があるので特に問題なくレーザーは影の中に吸い込まれていく。

 

 だが、そこにもう一人の転生者である男がバスターブレードを振り下ろしてきたのでレミリアは片手真剣白刃取り。パートナーを失ってもなお何一つ感情を見せない男にレミリアは怪訝に思い、その顔を見る。

 

 

 男の感情のない双眼からは、涙が溢れていた。

 

 

「…………」

 

 レミリアのその目は何を思っているのか。紅い瞳が男を見据える中……男の体が急激に膨れ上がった。

 

「は?」

 

 それはさながら人間バルーン。一瞬で縦と横が何倍にも膨れ上がった男は何も声を出さずそのまま……

 

 

パァン!!!!

 

 

 破裂。男の血と臓物が辺りに飛び散り、レミリアにも盛大にぶっかかった。血を食料とする吸血鬼だが別に嬉しくはない。人間で例えるならステーキの肉汁を全身にぶっかけられたようなものである。

 

「チッ、一体なんだって言うのよ……!?」

 

 突然襲いかかり、そして勝手に自爆していった転生者達にレミリアは少なからず混乱した。

 

 そして、それは致命的な隙であった。

 

 

 レミリアの足元に、光り輝く魔法陣が出現した。

 

 

「しまった最初からこれが狙いで……!!!!」

 

 慌てて退避しようにも時既に遅し。魔法陣から爆発的な光が溢れ出してレミリアを呑み込み、姿を消した。辺りには転生者達の血液と武具だけが取り残されていた。

 

 

☆☆☆

 

 

 一瞬、視界が白に染まったレミリアだが、すぐに視界を取り戻す。どうもレミリアは大理石で出来た荘厳な大聖堂に召喚されたようだ。

 

 このような場所はレミリアは知らないが、ひとまず【影魔法】の一種、一度行った場所に飛べる魔法、【影移動】を発動させるが不発。ならばと【異世界から異世界に渡る魔法】を発動させるもこれもまた不発に終わった。

 

 いや、正確に言えば『発動はしているのだが、ロックがかかってるような感じ』か。いずれにせよレミリアは【秩序無き世界】から隔離された。

 

 やられた、レミリアは心の中でそう呟く。

 

 あの転生者達はただの囮だったのだ。レミリアを転移の魔法陣に嵌める、その一瞬の隙を作るためだけの。十中八九、何者かがあの転生者達を操っていて、そのまま使い捨ての駒にした。

 

「やってくれるわね……」

 

 レミリアは獰猛に笑う。自分にこんなマネをしでかす奴はいつぶりだろうか。少なくともここ数百年は無かった。駒の使い方も、タイミングも完璧であった。逃れることなど不可能な見事な手際だ。お礼にぶち殺してやりたい。

 

 差し当たって、そのぶち殺す奴の名前と特徴を教えてほしいのだが……

 

 

「ねぇ、貴方達は何か知っているんでしょう?」

 

 

 レミリアがいる台座を取り囲むようにして司祭や騎士達が杖や槍を持って待ち構えている。その瞳には()()()()()()()()()()()()が宿っていた。

 

 レミリアは血みどろだ。どう足掻いても話し合いなど不可能だろう。

 

 

 

 ならば全員ぶちのめしてからオハナシだ。

 

 

 

 ということでレミリアはおぞましい笑みを浮かべながら異世界トータスでの初戦闘を開始した。

 

 

☆☆☆

 

 

「うぅ……!」

「うぼぁ……!」

「来るな、来るなぁ……」

「助けてぇ……!」

 

 死屍累々

 

 そんな言葉が似合う大聖堂の大広間の現状。司祭の豪華な祭服も騎士の重厚な鎧もみな関係なく血塗れだ。手足も曲がってはいけない方向に曲がり、口から泡を吹いているが呻き声を上げているので問題ないだろう。昔のレミリアなら間違いなく一人二人を残して後は皆殺しにしてたので丸くなったものだと自嘲した。

 

 レミリアは息を吐くように全員をぶちのめした後、騎士や司祭から話を聞く。何故、自分はこの世界に喚ばれたのか、そして何故私を襲うのか、と。

 

 するとこのような返答がきた。

 

 

 

・レミリアはエヒト神の住処を脅かした〝神敵〟としてトータスに召喚された。神の命に従い、殺そうとした。

 

 

 

以上

 

 

 あまりにもといえばあまりにもな理由にレミリアは度肝を抜かれた。狂信者とはどこの世界に行ってもこんな感じなのだろうか。昔レミリアに喧嘩を売ってきた帝国の大臣なみのイエスマンぶりと宗教国家並みの殺意の高さだ。

 

 それに自分の住処を脅かした奴を下界に放り込んで信徒に殺させるというのもおかしな話だ。レミリアなら間違いなくキレて神界に乗り込んだ挙句に神々と終末の戦争を起こす。神を信仰しすぎるのも考えものである。

 

「どうやら相当神の力が強いようね……」

 

 レミリアも長い人生の間で色々な世界に召喚されてきたが、ここまで神の支配が強い世界は久しぶりだ。

 

「さて、私はこれで失礼するわ。ご機嫌よう」

 

 これ以上尋問(拷問)しても特に有力な情報は手に入らないと思ったレミリアは外に飛び出て、これからどうしようか考える。一応聖職者や騎士達から適当にものをくすねてきたのだが、役に立ちそうなものは……

 

「おや、これは」

 

 レミリアは銀色のプレートを手に取って見るにこれはステータスプレートだろうか。『メルド・ロギンス』と書かれてある。

 

 レミリアは試しに幻を見せる魔法、【幻視】を使ってみると、名前欄、数値、技能欄が自由自在に変化できた。数字は直接的に変えれないが、このように上書きすればいくらでも変えれそうだ。

 

「ふむ、なるほど……これは使えるわね」

 

 

☆☆☆

 

 

「まぁ、そんなこんなで私はめでたく指名手配。姿を変えて冒険者【何でも屋】として活動している中、オルクス大迷宮で貴女達に出会った。久々にいい魂に出会えたわ。とても私好み。あぁ、魂を刈り取るとかそういうのじゃないから安心しなさい。美味しそうだけど」

 

「「安心できる要素が一つもない」」

 

 そう言われても実際美味しそうなのでしょうがない。後でちょっとでいいから吸わせてくれないだろうか。

 

 レミリアはそう思ったが、焦っても仕方ない。話を続ける。

 

「そしてあの満月の日、貴女達の願いが届いた」

 

「「願い?」」

 

「そうだ、いや、〝欲望〟と言うべきか?」

 

 するとレミリアは突然顔を伏せて右手で顔を覆い、クククと笑い出した。

 

 レミリアは思い出しているのだ。あの夜を。

 

 

 

 

 細胞が一つ残らず歓喜した、少女達の欲望を。

 

 

 

 

「「ひっ……!」」

 

 香織と雫が悲鳴を上げた。一体どうしたのだろうか。

 

「レミリア、お前またドン引きな笑顔をしてるぞ。落ち着け」

 

「おっと、失礼」

 

 レミリアの眼球がいつの間にかドス黒く染まり、瞳孔の部分が爛々と赤く輝いている。そして口元をこれでもかと裂いて牙を剥き出しにして嗤うという、端的に言えば大変ドン引きな笑顔をしていらっしゃった。間違っても美少女がしていい顔ではない。レミリアはニコッと微笑むと眼の色も元に戻った。

 

「私は貴女達を〝見て〟〝欲望〟を聞いて、二目惚れしちゃったから手伝ってあげたくなったの。でも、私はお尋ね者だからそう易々と会えない。だから、手紙を出して様子を伺う事にした……んだけど」

 

「まさか、あんな手紙一発で来るとはね〜」

 

 手紙を何度も出すうちに教会や王族が近付いてくる(【何でも屋】は教会や王族の依頼を受ける事もあるが、積極的ではなく、優先的に受けろと何度か脅迫された事がある)だろうとレミリアは予測していた。そこから交渉をして、折り合いを付けてから二人に接触し、信頼を得て、正体を明かす……と少々周りくどい方法だがかなりの確率で二人と良好な関係を築けるはずだった。

 

 だが二人は来てしまった。まさかである。教会何してんだ! もっと神の使徒大切に扱えよ! お前らやったこと最悪手だぞ!? とはミレディが放った言葉だ。

 

 教会や王族は【何でも屋】に依頼の強要を行ったりするが、人間族の事は本当に大切に思っているらしい。だから、少しでも強くなってもらうために、人類が戦争に勝てるために彼らは神の使徒(香織と雫)を【何でも屋】に預けた。レミリアとしても認識を少し改めないといけないかもしれない。

 

 もちろん認識を少し改めただけでレミリアは聖職者は大嫌いだし、お布施を要求されようもんなら顔面めがけてコイン一枚を全力でぶん投げるつもりである。そのまま爆散すればいい。

 

 

☆☆☆

 

 

「話が長くなりすぎたわね。とりあえず私の話は一旦終わり。はい、ミレディ次よろしく!」

 

「雑だし急すぎるわ! 全く……じゃあ、私の話はさっさと終わらせるよ。あー、それと香織? だっけ。君は覚悟して話を聞くように」

 

「? 私……?」

 

「そ。じゃ、話すよ〜。この世界の真実をね」

 

 そこからのミレディの話は二人にとって衝撃的だった。

 

 簡単に纏めると以下の通りである。

 

 

・この世界で広く信仰されているエヒト神は実は人々を遊戯と称し、駒に見立てて戦争を促している悪神だった。

 

・その真実を知ったミレディ率いる〝解放者〟は仲間を集めて神に挑もうとした。

 

・しかし神は人々を操り〝解放者〟達は〝反逆者〟と称され返り討ちに。敗北した〝解放者〟達は大陸の果てに大迷宮を作り、身を潜めた。

 

・大迷宮では試練を用意してそれを突破出来たものに自分達の力を譲り、神の遊戯を終わらせるものを待つことにした。

 

・ミレディは〝解放者〟の中で唯一生き残っている人物らしく、ずっと〝ライセン大迷宮〟と呼ばれる大迷宮の中で一人で待っていた。

 

・そしてレミリアに拉致され、今に至る。

 

 

 と、確かに二人は驚いたが、ぶっちゃけ「あ、そうなんだ」ぐらいの感想しか思い浮かばなかった。二人はトータスに来てまだ日も浅いので当然の反応である。

 

 しかし、次の言葉でさらに二人は衝撃を受けた。

 

 

 

 

 オルクス大迷宮は二百階層まである。

 

 

 

 

「「え……?」」

 

 二人は信じられないといった表情でミレディを見る。『オルクス大迷宮は百階層まで』とおうのが世間一般の常識なのだが、ミレディは二人の目をジッと見つめ返すのみ。嘘を言っている風には見えなかった。

 

 ハジメは六十五階層から落ちた。という事はものすごく単純に考えると六十六〜百階層のどこかにハジメはいるという事になる。そこに辿り着くまでは遠い道のりだが、まだ『先は見えていた』。

 

 しかし、ミレディから聞かされた新たな事実は、そんな小さな慰めをも木っ端微塵に打ち砕いた。大迷宮は下層に行けば行くほど魔物が強くなる。百階層を超えた魔物の強さなど考えたくもない。そして、ハジメの生存確率もそれに比例して……

 

 香織の顔から、血の気が引いた。

 

「香織!!」

 

「……ごめん……雫ちゃん……」

 

 香織は目の前が真っ暗になる感覚に襲われ、ふらっと倒れかけたが雫が慌てて支える。絶望に絶望を重ねる真実にミレディも「これやっぱ今言うことじゃないでしょ」と言ったがレミリアは「どうせ後で聞いても一緒でしょ?」と平然と返した。

 

 しばらく時間が経つと香織も少しだけ回復したのか雫の助けがなくてもしっかり座れるようになった。だがその表情は優れない。

 

 そこにレミリアは、追い討ちをかけた。

 

「さて、今話した事は残念ながら全部真実。南雲くんとやらを見つけるためには貴女達はそれ相応に強くならないといけないんだけど……

 

 

 

 

 

 

まぁ、無理ね」

 

 ズバッとそう言い切るレミリアにミレディは「マジかこいつ……」みたいな目で見ているが実際その通りなので仕方がない。香織と雫も睨みつけているがレミリアは涼しい顔で受け流しながら話を続ける。

 

「まぁまぁ、そう睨まないでよ。これは決して貴女達に才能が無いからとかそういうのじゃなくて、この世界の人間族の問題ね」

 

「「人間族の……?」」

 

「そうよ、この世界の人間族の魔法は『非効率すぎる』」

 

 どう非効率かというと、まず〝詠唱〟だ。例えば火球の魔法を撃つには、「ここに焼撃を望むーー〝火球〟」という詠唱を唱える必要がある(適性があると話は変わるがここでは割愛)。まずこれが無駄だ。「今から火球を放ちますよ! 火球!」と言ってるようなものである。不意打ちならまだしも、わざわざ長い宣言をしてくれるおかげで対策もとりやすくなるというものだ。詠唱を理解できない魔物相手ならなんとかなるかもしれないが魔人族を相手にした時一体どうするつもりなのだろうか。

 

 それに、詠唱してる間に何故攻撃しないのかレミリアには意味が分からなかった。詠唱してる間は無防備だ。その間にいくらでも攻撃できる。

 

 そして次に『声を出さないと魔法が発動できない』というのも問題だ。〝沈黙(サイレント)〟の魔法、喉を潰すガスなどを完全後衛型の香織が食らった瞬間、彼女はただの置物となり、後は殺すもよし、人質にするもよし、食糧にするもよしとやりたい放題である。

 

 対する魔人族。こちらは全員が高い魔法適性を持っており、人間族より遥かに短い詠唱と小さな魔法陣で強力な魔法を繰り出すらしい。世の中は実に不平等である。レミリアが

「よく人間族今まで滅びなかったな」という感想を抱いたのも当然であった。

 

「あと、私それなりに長く生きてきたから見れば分かるんだけど……香織って本当、攻撃魔法の適性無いわよ? マジで。いくら教えても出来ないわね」

 

「え……?」

 

 香織が再び絶望の表情を見せる。彼女としても自分が強くなるために、攻撃魔法を覚える最後の希望としてここに来たのだ。その望みすら一瞬で断たれ、香織は完全に項垂れてしまった。

 

 普通であれば「適材適所がある」「得意分野を極めればいい」とか言うことも出来るが生憎香織はそれで満足など出来ない。自分自身の力で進まなければ、意味がない。

 

「じゃあ、じゃあ私は一体どうすればいいの……?」

 

 涙目で振り絞るように言葉を発する香織。雫がその肩を優しく抱く。

 

 やはり香織には回復魔法(原作通り)しかないのか、そう思っていたその時だ。

 

 

 

 悪魔の誘いを、受けた。

 

 

 

 

「あら、簡単じゃない」

 

 レミリアは〝影魔法〟を起動。中から二つの【盃】を取り出して、ちゃぶ台の上に並べるとレミリアは自身の指先をシュッと斬り裂き、血を盃に注いでいく。

 

「人間族のままだとエヒトとかいう奴の決めたルールから逃れられない。満足に攻撃魔法も撃てない。なら答えは簡単。『人間族をやめればいい』」

 

 レミリアは自身の血液が入った盃を二人の前に置く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の娘にならないか?」

 

 レミリアは、不敵に微笑んだ。

 

 

 

 





う〜ん、この駆け足感。

色々調べてきたので多分間違えてないとは思いますが設定に矛盾あったら教えてください。なるべく対応します。

あと、ぶっちゃけ色々突っ込みどころはあると思いますが、全部のあれこれを解決しようとすると、もっとしっちゃかめっちゃかになるので今後、過去編のような感じで書いていくつもりです。

考えているのは【不気味な何でも屋】編と、レミリアとミレディの出会い編です。


よろしくお願いします。



プチ情報

レミリアは香織と雫の魂に惚れたと言ったが、別に二人の魂がとんでもないくらい凄いというわけでもなく、過去にはもっとすごい魂も見てきた。要は好みである。




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