ありふれていない異世界吸血鬼が二大女神と出会う話   作:くたしん

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少し間隔が空いてしまいました。

前回のあらすじ

レミリアの手によりとある森の中に連れ去られた香織と雫。二人はそこでこの世界の真実とオルクス大迷宮の本当の構造を知る。そんな二人にレミリアは自らの血の入った盃を二人に出して・・・



そして二人はまた・・・

 

 

 

 

ーー私の娘にならないか?ーー

 

 

 香織と雫は最初何を言われているか分からなかった。

 

 だが、二人の目の前に置かれている血の入った盃を見て、理解した。

 

「「まさか」」

 

「そう、私の血を飲んで【半吸血鬼】になりなさい」

 

 半吸血鬼ーーー半分人間、半分吸血鬼の存在。ダンピールとも呼称される。人間とは違う、異形。それになれとレミリアは言ってきているのだ。

 

「半吸血鬼になれば面倒な詠唱からもオサラバ。更に身体能力も上がって一石二鳥。いや、私の血が入るから攻撃魔法もそれなりに使えるようになるから一石三鳥ね。どう? いい案だと思わない?」

 

 ごくり、香織は思わず生唾を飲み込んだ。レミリアから提案された事はまさしく香織が切望していた事だからだ。

 

「それと雫、貴女もついでにどうかしら? 吸血鬼は天狗のスピードと鬼のパワーを併せ持つ種族。貴女みたいなスピードファイターにも私の血はぴったりだと思うわ」

 

「……それで私にも薦めたってわけね」

 

「そういう事。ーーーさて、どうする? 飲む? 飲まない?」

 

「「…………」」

 

 突如としてやってきた人生の選択肢に即断できるはずもなく。二人は黙りこくったまま時間だけが過ぎ去っていく。レミリアは二人をジッと見つめながらもニコニコと楽しげに笑う。

 

 (香織は不安そうにしながらも決心がついたような眼……逆に雫は警戒心を一層強めてる……ま、雫の反応の方が当たり前か)

 

 でも、英雄になれる素材は……そこまでレミリアが考えたところで雫が口を開いた。

 

「対価は……?」

 

「対価?」

 

「そうよ。こんなに大盤振る舞いして、私たちは対価で何を求められるの……?」

 

 レミリアは最初何を言われてるか分からなかった。惚れた相手に対価を求めるなど言語道断である。誰かが言った。恋愛は好きになった方が負けであると。全然違うな。違うわ。

 

「対価……そうね」

 

 顎に手を当てて、思案するレミリア。本人的には対価など全く要らないのだが、むしろ香織と雫が一緒にいてくれるだけでレミリアは超絶ウルトラハッピーなのだが。勿論それをそのまま言っても信用されないだろう。「おじさん、何もしない。何もしないよ……ふひっ」と言ってるようなものだ。さて、どうするか。

 

 そこでレミリア、閃く。

 

 

 ここは一発、とびっきりのおもしろジョークをかますべきだと。

 

 

 どうも空気がガチガチすぎる。レミリアとしては香織と雫と一刻も早く仲を深めたいのに、これではいつまで経っても進展しない。ならばここはひとつ、年長者であるレミリアがジョークでも言って、空気を柔らげるしかない。

 

 そうと決まれば早速考えてみる。「対価は……魂だぁー!」とか言っても安直すぎる。では、「お前たちの体」ではどうだろうか? ダメだ、セクハラもいいところである。もう少し捻った言い方は出来ないものだろうか。

 

 しばし考える……決めた。

 

 

「あの、レミリア……?」

 

「あぁ、すまない。対価ね。今から言うわよ」

 

「「ごくり……」」

 

 香織と雫の緊張感がMAXに跳ね上がるが、それもこれでお終い。レミリアのドッキリビックリおもしろジョークにひれ伏すがいい。

 

 

 (あ、ダメなパターンだこれ)

 

 話し合いの様子を見ていたミレディはそんな確信めいた予感がした。

 

 レミリアとミレディの付き合いは約半年と短いが、ミレディはちょっとだけレミリアの考えている事が分かる時がある。

 

 例えば、今みたいな表情。あれはどうしようもなくロクでもない事を考えている時の顔だ。

 

 

 

 そして、ミレディのその予感は見事的中した。

 

 

「対価は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前たちの人生だああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!! 

 

 

「「きゃあああああああああっ!!??」」

 

 

 突如レミリアは両眼を妖しく光らせ、身の毛もよだつ恐ろしい叫び声を上げながら雫に飛びかかる。いや、正確には『飛びかかろうとした』だけだが、それはどっちでもいい。

 

 雫も反射的にやってしまったのだろう。悪魔が悪魔の表情を浮かべながら『命を奪う』宣言をしてきたのだからしょうがない。

 

 

 

 まぁ、つまり何が言いたいのかと言うと、雫はレミリアの首をアーティファクトで反射的に刎ね落としてしまったのだ。

 

 

 

 ぶっしゃあああああああああ! と噴水のように血が噴き出るその光景は吸血鬼からすれば垂涎ものだ。チョコレートフォンデュならぬブラッディーフォンデュパーティの開催である。まぁ、フルーツに血をかけたところで結局は血の味しかしないが(体験談)

 

 ゴロンと、レミリアの頭が床を転がる。正直、慣れてはいるがまさか雫に頭を刎ね飛ばされるとは油断しすぎである。レミリアは苦笑した。

 

「あらあら、油断したわねぇ……」

 

「「うわあああああああああああああっ!?!?」」

 

 すると、香織と雫は悲鳴をあげながら、外に飛び出して逃げていった。レミリアは不思議そうに二人を見つめる。一体どうしたのだろう。

 

「血塗れの生首が笑顔で喋ったら怖いに決まってるわ!! ホラーだよ! ホラー!」

 

「あら、そう。首なんてよく取れるんだけどねぇ……ねぇ、ミレディ」

 

「なんだよ、話しかける前にさっさと首を付けろ。血がかかって汚いんだよ」

 

「はいはい」

 

 レミリアの体が血を噴き出したまま歩き出し、生首を持ち上げて装着。ゴキゴキと首の骨を鳴らし、接続を確認した後、その顔に影を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ミレディ。私は……一体どこで何を間違えたのかしら?」

 

「全部だよバカ吸血鬼。いいからさっさと追いかけてこい。死ぬぞ、あの娘達」

 

 

☆☆☆

 

 

 (斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった斬っちゃった。人を、人を……あんな小さい娘を斬ってしまった……! 違う、レミリアは悪魔! 悪魔が私達を『殺そうとしたから』逆に斬っただけ! これは正当防衛、正当防衛だから……! でも……)

 

 香織の手を引き、森の中を駆ける雫だが、その内心は荒れ狂っていた。

 

 魔物のそれとは違う、人を斬る感触は未だに手に残っており、斬られた瞬間のレミリアの表情、血、首が落ちる音は脳内と耳にこびりついている。レミリアは不死身だし、斬られた後も普通に生きていたので気にしすぎかもしれない。いざとなれば斬るつもりだったが、それはそれ。平和な国で十数年も生きてきた少女が平常心でいられるはずもないのだ。

 

「雫ちゃん……雫ちゃん! 止まって!」

 

「あ、ご、ごめん香織……うっぷ、ゲホッ、ゲホッ、オェ……」

 

「大丈夫? 雫ちゃん」

 

「なんとか、大丈夫……ありがとう、香織……」

 

 香織が叫ぶと、雫はようやく立ち止まった。

 

 ただ立ち止まった瞬間、吐き気が雫を襲い、胃の中身をぶちまけそうになるが、香織に背中をさすられ、なんとか嘔吐は回避。乙女のキラキラはそう簡単に見せていいものではない。

 

「……ここは?」

 

「森の中だよ。結構走ったからあの家からも大分離れていると思う」

 

「……そう。とりあえず、あの悪魔から早く離れないと……どうしたの香織?」

 

 雫は再び歩き出そうとしたが、香織は難しい顔をしたまま動こうとしない。

 

「ねぇ、雫ちゃん……やっぱり戻ろうよ」

 

「!? な、何を言ってるの香織!! あんな所に戻ったら……!!」

 

 自分達を殺そうとした吸血鬼の元に戻るなど正気の沙汰ではない。雫は親友の正気を疑ったが、香織は正常だ。雫の眼を見つめ返す。

 

「私も思わず逃げてきちゃったけど……まず、夜の森を歩くのは危険すぎるよ。それに、近くに町があるかどうかも分からないし」

 

 香織は明かりを灯す魔法を覚えているが、それでも夜の森は危険だ。方角も分からないとなると遭難する危険性もある。

 

 ちなみに香織が逃げた理由は単純にレミリアの生首が怖すぎたからだ。彼女はホラーが大の苦手なのである。

 

「戻っても殺されるだけよ。それなら山を降りた方がいい」

 

 しかし、雫はそれでも首を横に振る。レミリアは「香織と雫の人生を対価に欲しい」と言ってきた。つまり、殺される。そんな事を言ってる吸血鬼のもとに戻るなどあり得ない。

 

 まぁ、実際はレミリアのジョークだが。雫が知ったらどういう反応をするのだろう。レミリアの罪は大きい。

 

「大丈夫だよ雫ちゃん」

 

「大丈夫って、何を根拠に……」

 

 香織は一度息を吐き、間を取った後、決然とした表情で雫に宣言する。

 

 

 

「雫ちゃん、私ね……【半吸血鬼】になるつもりなんだ。それで、雫ちゃんだけでも見逃してもらうようレミリアに頼む。そっちの方がまだ安全だと思うよ」

 

「絶対ダメ!! それだけはダメ!!」

 

「だけど……」

 

 雫が香織の肩を掴み、必死に静止するが香織は首を縦に振らない。レミリアの血を飲んでも本当に【半吸血鬼】になるかはかなり怪しい上に、レミリアが雫を逃すとも思えない。香織の案はギャンブルすぎるのだ。まぁ、雫の『山の中を彷徨う』もかなりのギャンブルなのだが。

 

 お互いに譲らず、議論が平行線に入った、その時だ。

 

 ガサガサ、と茂みから音が鳴った。二人は「すわっ! レミリアか!?」と思い、慌てて武器に手を伸ばす。しかし、現れたのは吸血鬼の少女ではなく、体長四メートルほどのサーベルタイガーのような魔物。口内から飛び出している刀のような二つの鋭い牙に、黒い毛並みと獰猛な目付きが香織と雫に威圧感を与える。

 

「くそっ、こんな時に……香織、下がっていなさい」

 

「う、うん……」

 

 雫は刀型のアーティファクトに手をかけて、いつでも抜けるようにし、香織は後方に下がって詠唱の準備をする。サーベルタイガー型の魔物は姿勢を低くして、「グルルルルルル」と唸り声を上げた。

 

 

 戦いが、始まる。

 

「いくわよ! 全てを切り裂く至上の一閃 〝絶断〟!」

 

 最初に動いたのは雫。彼女は俊敏な動きでサーベルタイガー型の魔物に肉迫し、抜刀術の要領で斬りかかる。魔物は雫の動きに全く反応していない。

 

「はあぁーーーーーーーーっ!!!」

 

 雫は魔物の前脚に向けてアーティファクトを横薙ぎに振るう。

 

 

 

 パァン!!! 

 

 

 

「がはぁっ!?」

 

「雫ちゃん!!!!」

 

 しかし、雫のアーティファクトが魔物の体に当たる直前、彼女は吹き飛ばされ、地面を何度かバウンドし、森の奥へと消えていった。香織は最初何が起きたか分からなかったが、魔物の振り抜かれた前脚を見て、理解した。

 

 

 

〝猫パンチ〟だ。雫は、サーベルタイガー型の魔物の目にも止まらぬ早さで繰り出された〝猫パンチ〟をくらい、遥か彼方に吹き飛ばされたのだ。

 

 香織は戦慄した。眼の前にいる魔物は、確実にあのベヒモスを超える強さを持っている。なんでこんな所に……! オルクス大迷宮に出てくる魔物の方が地上の魔物より強いというのがこの世界の一般常識だ。それなのに、目の前にいるサーベルタイガー型の魔物はあっさりと雫を蹴散らした。

 

 しかし、今はそんな事を言ってる場合ではない。この場にいるのは香織と魔物だけ。当然、魔物は次の獲物を仕留めるために香織に標準を合わせる。

 

 「(雫ちゃんの所に早く向かわないと……!) 暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん……!?」

 

 香織は炎系の魔法〝螺炎〟の詠唱を始めるが、前衛もいないのにそんな長ったらしい詠唱はただの隙でしかない。

 

 瞬く間に、魔物が香織の眼の前に現れた。

 

「あ……」

 

 魔物が口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 グシャリ

 

 

 

 








今回は少し短め。次はだいぶ書き進めてるのですぐに投稿できると思います。

キャラクタープロフィール

レミリア・カルテナ

軍服レミリア。東方のレミリアより少し大人びたイメージ(と言っても東方のレミリアは書き手によってかなり印象が変わる気がする)。和風のものを基本的に好み、普段着は作務衣。

秩序無き世界と呼ばれる世界でドラデルという国の棟梁を務めている。

ジョークが下手くそ。悪戯好き。



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