ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

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後日談

 

 

502が間借りしている基地に設けられたバーカウンターでジークフリンデさんは私に原隊復帰を伝えてきた。

どこからか仕入れたお酒を軽く呷りながら、嬉しそうな、寂しそうな、いろんな感情が混ざった言葉は私の心になかなか入ってこなかった。

 

ジークフリンデと言うウィッチは謎が多い。

クルピンスキーさんやロスマンさんは彼女のことを知っている様子だったけれど、深くは言わなかった。

エースウィッチだって言う噂もあったけれど、それも気づけば消えていた。

でも彼女の人柄の良さは短い期間を過ごしただけでも伝わってきた。

 

エースウィッチ集団の502に入り込んだほとんど新米みたいな私にさえ対等に接してくれたし、教育もしてくれていた。

そんな彼女だから原隊復帰になったと聞いて驚いた。

また502で一緒に居られると思っていただけにショックは大きかった。

でも聞いたら、もともとは私の教育のためだけにラル少佐がヘッドハンティングしてきたらしい。

その役目は彼女曰く終わったらしい。

 

「まだいろんなこと教わりたかった……」

 

「空は一つだから、貴女が飛び続ける限りどこかでまた出会えるよ。私も本格的にウィッチに復帰するし」

 

そう笑った彼女は、何かを探すような視線で宙を見上げていた。

「生きていればまたどこかで会える。人と人の縁は不思議なものだからさ」

それまで死ぬなよ。

言葉の裏で彼女はそう言っているような気がした。

彼女はどれほどの死線を潜ってきたのか、纏う雰囲気は誰にも引けを取らない。その雰囲気に、私も心を呑まれそうになる。

気持ちが戦いにむきそうになるのを飲み物を一気に飲んで抑えていると、彼女は意外な名前を口にした。

「そう言えば宮藤芳佳は元気かな?」

 

「宮藤さんってあの伝説の501部隊の?」

 

「そうそう、元気なら会いに行こうかなって」

 

「知り合いだったんですか⁈」

 

「もちろんだよ」

やっぱりジークフリンデさんは謎が多い。

結局、彼女のことはよくわからなかった。だけどみんなが彼女のことを話題にするときはどこか笑顔だった。

私もいつかはジークフリンデさんと肩を並べられる時が来るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正午近く、いまだに冬の気配が居座る時期でも太陽が容赦無く照り付けていた。

高度5000m、地上はほとんどのものが小さく見えるけれど、地球から見たらまだまだ地面と変わりがない場所。

体を突き刺すような寒さは、防寒魔法と首に巻いたマフラーだけで対処する。うっすら肌寒いけれどストライカーユニットに魔力を回す分を省けばこれが限界だ。

 

僕の隣を飛ぶ飛行機も金属の箱の中ではあるが状況は似たようなものだ。

いや、重たい電熱線付きの防寒服を着込む関係で私たちより動きづらい彼らの方がよほど大変なのかもしれない。

 

「まさか護衛までつけてくれるなんてね」

そんな飛行機から短波無線が放たれた。ほとんど私用の無線。ウィッチしか持っていない魔導短距離航空無線だ。

相手が誰かなんて分かりきっている。

「グレゴーリが破壊されたとは言っても、ネウロイの脅威が低下しただけ、この辺りにはまだ出没しますから」

 

ロスマンが真っ先に答えた。

僕はと言えば、観測窓から彼女を直接覗き込んでいた。こっちに気づいて手を振る彼女に手を振りかえしながら、ストライカーユニットを吹かした。

体が浮かび上がり、機体から離れる。

「今日くらいはゆっくりしていてよ。何かあったらこっちでパパッと処理しちゃうからさ」

 

「そうさせてもらうよ」

 

「それにしてもJG52に帰っちゃうのか。エーリカ達に君を取られてしまうね」

 

「伯爵のものになった覚えはありませんが……」

 

「無駄話はおやめなさい。ハルさん、向こうでもくれぐれも体に気をつけてくださいね。いくら完治したと言っても貴女の固有魔法では……」

 

「わかってます。でも私の戦いはまだ続いているんです。確約は出来かねます」

 

「相変わらず頑固ね」

ロスマン軍曹は呆れ返っていた。

ハルは頑迷なところがある。でもそれも良いところなんだけど……でもそのせいで彼女が傷つくのは見たくない。

せっかく治った体なんだ。大事にして欲しい。

「向こうに着いたら、美味しいものたくさん食べてきな」

今まで味わえなかった分も含めてね。

「ええ、そうします」

 

窓から見える彼女が少女らしい微笑みをしていた。それが無性に嬉しく感じたのはいつぶりだろうか。

いや、これからたくさん少女らしく笑っていて欲しい。

 

そろそろ引き返す地点だ。名残惜しいけれど、彼女とはここでお別れだった。

「では、向こうに着いたら電報をお願いしますね」

最後までお節介を焼いていたロスマンとまるで親子みたいな問答を繰り返していたハルの乗った輸送機は1分も経たないうちに小さくなっていった。

「行っちゃったか」

 

「寂しい?」

 

「いや、そうでもないよ」

 

「戦争が終わったらいつでも会いにいけるからね」

 

定期便は、ネウロイの襲撃を受けることなくブリタニアに到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルちゃんの三走目

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