元オラーシャ陸軍 親衛第16戦闘機連隊アレクサンドラ・I・ポクルイーシキン大尉
現在は連合軍第502統合戦闘航空団に所属している。
その日私はバルバロッサ作戦本隊の前衛として最前線深層での強行偵察を行なっていました。
ネウロイの巣がどこにあるのかを探るという副次的な目標もありましたけれど基本は本隊へのネウロイの攻撃を阻止する役目が主でした。
強行偵察といっても被発見率を優先してなるべく早く早朝の日が出ないうちに回り日の出と共に帰投するフライトプランです。今でも最前線のガリアなどでは行われている方法ですわ。
『こちらイーグルアイ。スプーキー1どうぞ』
「スプーキー1。どうかしましたか?」
広域通信が入ったのは夜もそろそろ明ける時間。早朝の出撃をしたもののネウロイは攻めて来なくてあと5分で交代要員と交代するといった時間だった。
『救難信号を受信した。場所はそこから東方45km。少し距離があるが確認できるか?』
「スプーキー1、了解、燃料は余裕がある。現場付近でも5分は戦闘可能。」
救難信号の知らせはあまりにも不可解すぎた。その日近くを飛行する味方の情報は入っていなかった。それがまさかリバウを攻撃した部隊の生き残りがこちらに飛行してきていたなんて。普通わからないわ。
『スプーキー1、こちらイーグルアイ。救難信号はカールスラントのウィッチと判明。地上回収班も回した。スプーキー1は救助要請者を空から見つけ上空警戒を行え』
「スプーキー1了解。地上部隊との通信中継は行えますか?」
『ネガティブ。周辺領域全体の電波が良くない。地上との通信はこちらでも不可能だ』
「この付近よね?……」
ネウロイが瘴気を撒いていても、自然というのはなかなか強靭で地上は鬱蒼としていた。
だけれどその木々がビームによって焼き裂かれ、爆発と衝撃波が景色を一変させた。
木々に留まっていたであろう鳥たちが一斉に逃げ出し、空も地上も物々しい雰囲気となる。
空から見えた光景に唖然としました。
木々の隙間から見えていたネウロイが突然撃破された。
何が起こったのか分からなかった。救助対象者もその付近にいるのかもしれないと思い高度を下げて様子をみた。
「なに……してるの?」
おそらく救助対象者と思われる存在がネウロイとタイマンをしていた。言い間違いじゃないわ。タイマンよタイマン。戦車型ネウロイに組みついてはなにかを叩きつけ、振り解かれながらもまた攻撃を繰り返す。木々の隙間から見えたのはそんな光景だった。
「スプーキー1対象を発見、方位……」
ビームとシールドが交差して、踏ん張りきれなかった少女が飛ばされるのが見えた。
「ッ……援護します!」
地上にいるネウロイを攻撃する場合最も装甲が薄いと言われている後方上部を狙うのがセオリーとなる。
焦っていてもこちらが落とされれば事態はより悪化する。
一度旋回してネウロイの背後をとり射撃を行い地上ネウロイを撃破することには成功した。だけれど場所が森だからということもありネウロイを見つけ、後方から攻撃するというのはなかなか難しかった。リベリオンとブリタニアで開発された赤外線スコープがあれば多少はマシだったかもしれないけれどあの時はあるもので対応するしか無かった。
狙ったネウロイが粒子となって消失するのと同時にいくつものビームが周囲や地上を抉り取り、爆炎と煙が全てを覆い隠すかのように巻き上がった。
救助要請者、ハルさんの姿もその時見えなくなりましたね。
「ロストコンタクト!救助要請者を見失いました!」
それでも目の前の地上からビームが放たれて、シールドを張ったりと忙しいことこの上ない。
日が昇った直後で太陽が水平線の近くにあることも影響して地上への攻撃は眩しさとの勝負でもあった。
ハルさんの姿は煙が晴れてようやく見つけることができた。
案の定というべきかネウロイの歩行脚に踏みつけられて身動きが取れなくなっていた。
すぐさま攻撃。狙いが甘かったと思ったけれど、スコープから対象が離れるときにはネウロイはやられていた。だけれどまだ相当な数が地上を闊歩しているのが見えた。
しかし燃料計は無慈悲にも減りつつあった。
戦闘機動をしつつもブースト圧や燃圧を絞って飛行時間を稼いではいた。だけれどそれで絞り出されるのはせいぜい1分か2分が良いところだ。
破局はすぐに訪れた。
「fuel bingo!これ以上は無理です!……帰投します!」
燃料計が危険水準になっていた。ミイラ取りがミイラになるわけにもいかない。悔しかったが、帰投するしかなかった。
一応地上部隊も到着していたが、空からの援護があるかないかでは相当違う。他のウィッチも緊急発進をしていたはずだったけれど私が去った後20分ほどあの空域は空白だった。
その間地上から回収に向かった方は相当な攻撃を受けていただろう。
実際2時間ほど経って基地に戻ってきた陸戦ウィッチ達の装備はボロボロだった。
私は彼女と直接会っているわけじゃないけれど、それでも大怪我をして少しの合間リハビリをしたって聞いているわ。
そもそもあの時の子が鬼、ハルさんだったと知ったのはもっと後だったのよ。
まあ言われてみれば確かにあの戦い方は鬼と呼ばれるだけあるわ。化け物には化け物をぶつける……そんな光景って言えるかもしれないわね。
批判的?ええ、私は彼女をよく知らない。だけれどあの戦い方は鬼という名の化け物……戦争が生んだ狂気の産物よ。それも惹かれる人が多い……
戦争は人を狂わせる。貴女も気をつけてね。
元スオムス陸軍 第12師団第34連隊第6中隊隊長 アウロラ・エディス・ユーティライネン大尉
現在は連合軍第502統合戦闘航空団第2補助部隊として主にストライカーユニット、ウィッチの回収を任務としている。
それで近くにいた私達に回収の鉢が回ってきたというわけさ。
それでも空をいくよりかは時間がかかる。
一応上空には空戦ウィッチがついてきてくれていたからそこまで気負うほどでもないしな、ちょっと味方を拾って帰ってくる。それだけだよ。
三号突撃装甲脚D型を受領したばかりでね。その慣らしも目的だった。
だが私達が到着する前に状況は逼迫していった。
向かう途中で入ってきた情報は結構バラバラだった。けどそれをいちいちまとめてね。なるべく辻褄があうように並べたのを紙に書いておいた。
一応残っているぞ。確か……ああ、あったあった。これだよ。
最初は救難信号。ついで、墜落したハルの僚機からの無線。これで正確な墜落地点がわかった。まあ私たちに届いたのは最後の方だったがな。
その前に入っていたのが陽動作戦参加のウィッチが野戦飛行場に緊急着陸したってやつだ。
後空のウィッチから入った無線で地上ネウロイとの交戦状態に入っているってのが会敵30秒前。
実際にはビームが飛んでくるのとほぼ同じだったな。
シールドが心地の良い音を立ててビームを弾いた。ネウロイのビームって不思議だよな。まるで砲弾みたいに弾けるんだ。
ストライカーユニットの破片を握りしめて、ネウロイのコアに突き立てていた。
彼女が負っていた傷の殆どは墜落時に出来たものらしい。久しぶりに陸戦にスカウトしたくなったさ。
あそこまで根性があるなら空でのあがりを迎えたってしばらくは陸で戦える。その素質も十分ある。
まーただ…私の持っていた武器が不良品だったみたいでね。2発目撃ったら砲身が裂けた。
本当さ。初期不良ならよくあることだ。それに弾薬も湿気ていたみたいで命中したが炸裂しなかった。
だけど隊の戦力は私とフィーナだけだからな。撤退なんてしたら回収できない。
どうしたかって?殴って突き刺すのさ。砲身が裂けたくらいなら問題ないだろ?それに裂けた砲身がちょうど良くナイフみたいになってくれてな。いやーアレは使いやすかったな。まあ砲撃できればそれが良いに越したことはないがな。だがあの時は救助対象がネウロイに張り付いて戦っていたからなかなか撃てるようなものでもなかったのは事実だ。
「なあフィーナ、そのバトルライフルってやつ貸してくれないか?流石に壊れた砲じゃ心ともない」
「もう予備弾が無いんで無理ですよ。こっちは弾薬不足で出てるんですから」
それもそうだった。そもそもこっちは前線基地への応援で到着したばかりだ。弾薬は最低限のものしか持ってきていない。7.5センチ24口径歩兵支援砲は私だけだったしな。
「銃があっても弾がないとはこれいかに」
「仕方がないでしょう。ほとんどガリアとカールスラントが持っていっちゃうんだから。まあその分バカみたいに消費してるみたいですけど」
「なら私達はあいつと同じように戦うのが良いみたいだな」
「元々そのつもりでしょうよ。晩年貧乏国家なんですから」
実際丸太くらいなら武器にできるからな。
「そうだな。まあ、そう悪いものでもないさ」
そんな会話をしていたのは覚えている。緊張感がない?仕方がないさ。救助対象が元気に暴れまわっていたんだから。
本当にこいつ救助必要なのかって心のどこかで疑問符がついて回ってたよ。
数分だったかな。戦いは終結した。
当然ネウロイの殲滅でだ。
救助対象者は私が確保したのちに気絶した。何にも話さなかったしこちらとコミュケーションを取ろうとする気も無かったようだ。
「随分と派手に戦っていましたね」
「そうだな……増援が来る前に引き上げる」
怪我の具合?そりゃ酷いものだが不思議と命に直結するようなものは無かったな。
血を失いすぎているといったところがあったが……急げば問題はない。もっとひどい怪我をした奴を何人も見てきたからな。人間なんだかんだあっさりとは死ねないものだよ。
もがき苦しんで……それで死ぬのさ。
空のウィッチはあまり怪我を見慣れていない事が多いから結構取り乱すことが多いが私らから見れば彼女は墜落したにしては随分と軽症の類だった。
ただ、私の背中にいる合間ずっとうわ言を言っていたな。
カールスラント語っぽくて何言っているのかはわからなかったけどな。ただエチゴって単語は聞こえたな。
さてもう良いかな?
残念だがこれ以上話すことはないよ。私のことなら多少は話すけど。
まあ、一度妹からその子のことを聞いたが、随分と無茶をしていたってのは知っていることだな。妹が無茶って言うほどだから相当無茶なんだろうな。
戦艦越後。
リバウの海に座礁したまま横たわるそれを、かつてその空で戦った3人のうちの2人は墓標だと言う。
彼女は越後とつぶやいた時何を思っていたのだろうか。
Do317C空中通信中継機
3号機イーグルアイ
全長30.43m
全幅39.56m
空虚重量20.56t
発動機タイムラーベンツDB603A 1700馬力×4基
最高速度540km/h
航続距離2790km
戦場近くの空域に展開し司令部や基地通信と戦場との無線を中継、又は通信補助を行う他少数のウィッチや戦闘機への管制を行う機体。
戦場と司令部との距離が物理的に開いたことと、戦線が広域に渡ることから地上での有線通信だけでは敷設並びに時間がかかる。また無線ではネウロイ側の妨害や無線機の出力が低いこともあり交信可能な距離が限られていることから開発、製造が許可され6機が量産された。主にスオムス方面および東部前線に展開し当該空域にて通信網を支えている。
機内は与圧されておらず武装もついていない。
しかしそれほど高高度を飛ぶ事が無いため終戦まで与圧キャビン搭載の改造は行われなかった。
乗員は機長、副機長、機関士、無線通信士5名で構成されている。
機体はリベリオンの爆撃機モデル299を元にしてドルニエ社が開発したDo317をベースとしている。しかし通信設備などを整える関係上胴体は左右に拡張され、胴体も2m延長されているの機首周りはDo217から爆撃席を無くして埋めたような見た目になっている。
他のDo317との見分け方として水平尾翼が延長され垂直尾翼が水平尾翼に入り込んでいる。
製造された6機はそれぞれ名称が付けられており機体左右の胴体に書かれている。1942年末より各機固有の塗装を施されている。
1941年末から調達が始まりキーノート、スカイアイ、イーグルアイ、ゴーストアイ、マジック、カノープスの6機が配備されている。
キ49 百式電子偵察機と組み合わせて運用する事で早期警戒管制機化ができる。
ハルちゃんが次に走るルート
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ブレイブ
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ストライク2
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アフリカ(1943)
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RtB