ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」 作:ヒジキの木
今日中にもう一本
お久しぶりね。扶桑から戻ってきた足で来るなんて余程の事かしら。
たしかに話しづらい事かもしれないわ。場所を変えましょう。
外に車を用意しているわ。中で話しましょう。
元連合軍第501統合戦闘航空団隊長ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐
ガリア解放の立役者である501部隊隊長でありアントナー・S・ハルの上官でもあった女性。
現在は原隊であるカールスラント第三航空団に復帰している。
宮藤さんから色々聞いてここにきたのでしょう。坂本少佐が手紙に書いていたわ。
本当は隠しておきたかったけれど……
ええ、そうよ。あの話は事実。そして人類が悪魔に魂を売ることになりかけたものよ。
私だって最初は知らなかった。そんな事が起こっていたなんていうのは全くと言っていいほど。それでも噂として断片的に存在していたわ。噂好きの隊員がいたから。
曰くリベリオンで新型の兵器が作られているってね。最初は面白半分で聞いていた。本気になんてしていなかった。
だけれどハル中尉はそうじゃなかった。
そしてそれは最悪の形で実現されることになったわ。
その兆候を最初に見つけたのが彼女だった。
1942年、そうよ。計画はそこから始まっていたの。
ただ私も俄には信じられなかった。ハルもそこまで本気にしてほしくは無いような雰囲気だった。
それからね。時々私の机に書類を盗撮した写真が置かれていたわ。時々あの子がどこかへ休暇を取って出かけているのは知っていた。それ以上は言わせないで。あの子が法に触れるようなことをしていたのはわかっているわ。でも確証がなかった。
ウォーロック計画
ウィッチに代わる新たな対ネウロイ…そして次世代の戦力となるべくして開発された汎用決戦兵器。
それはネウロイのコアを人為的に制御する諸刃の剣だった。
それに当時開発されていた反応兵器を搭載しネウロイの巣に突っ込ませる。
ネウロイと互角以上に戦うことを目的として作られた存在だから可能である。考案した存在はそう考えたようね。
だけれどそれで全ての巣を破壊できたとして、人類はどうなるかしら?
ウィッチですら迎撃するのが困難な存在が街ひとつを滅ぼせる戦略兵器を持って首都に飛び込む。
そんな光景が絶対に起きる。少し考えればわかることよ。人類は愚かですもの、ネウロイ大戦の頃からいがみ合って人類の危機なのに対立し続けていたの。人類共通の敵が消えたなら近い将来人類同士で争うことになるわ。
その時にそんな殺戮兵器が実用化されていたら……
考えただけでも嫌になるわ。
正直止めたかったけれど私は一介の中佐でしか無いわ。
でも軍部も完全に一枚岩ではなかった。その計画自体が一部軍上層部の認可を受けず極秘で行われていたものよ。
中止に追い込む事が出来ないわけじゃなかった。軍内部の派閥争いを利用すればいいのよ。幸い502にも適任がいたし、普段から横領しているのだからこれくらい手伝わせたってバチは当たらないわ。
そういうわけで一時期上層部はかなり揉めていたのよ。その時に何人もの人間が更迭されたり不慮の事故にあったみたいだったけれど詳細はわからないわ。
ごめんなさいね。
さて詳しい話はここまでよ。せっかくだから駅まで送るわ。
それとその時ハルと交戦した人から話を聞きたいなら、はいこれ。連絡先くらいは教えてあげるわ。何人か行方が分からない子もいるみたいだけれど大抵の子はまだ連絡がつくはずよ。
アリア・S・フロイセン
元013飛行中隊隊長。ガリア空軍出身で現在は退役しガリアで暮らしている。
あの時の私達の任務は急進派の切り札となるはずだったウォーロックの護衛。
最初は手空きの寄せ集めとして組み上げられた統合戦闘団でも戦闘隊でも無いブリタニアの1飛行隊に過ぎなかった。
そのうちに増員や配置変換が行われてブリタニアとガリア、ロマーニャのウィッチが交ざった混成編成となったのよ。
本来であればウォーロックのコアとなるネウロイのコアを鹵獲するのが私達の主任務のかなり極秘の部隊だった。
だけれど、本来ウォーロックの護衛につくはずだったもう一体のウォーロックを現場指揮のマロニー大将が独断で使用してしまった為私達が護衛に当てられることになった。
「これの護衛任務……しかし想定されている運用をするにしても私達だけでは守り切れるかどうか」
「トレバー大将は囮に使える。そちらにも一名増援を送る。それで十分だ。作戦に変更はない」
「増援は一人だけ……命令には従いますが部下の命を預かる身としては納得いきません」
私達は撃墜数こそエースではあった。だけれどネウロイの巣に隊のみで接近して帰ってこれるほど過信はしていなかったわ。上官はそんな私の内心を見透かしていたのか薄ら笑いを浮かべながら増援の少女のプロファイルを投げ渡してきた。
「増援のウィッチはスーパーエースだ。これで満足か」
そこに書かれた少女の名前を見て私は一瞬驚いた。しかし私の疑念はそこでようやく落ち着くことができた。
後は戦うのみ、これで戦争は一気に終わる。そう思っていた。
本来なら私達の相手はネウロイでしかなかった。
ネウロイの巣が生み出す黒い雲が周囲を薄暗くしていた。
だけれど私達に恐怖というものはなかった。仲間を信じて、最新鋭のストライカーを信じて飛ぶだけだった。
「二時の方向にウィッチ!」
近づいてくるネウロイを叩き落とし周囲に敵影が無くなり全員がどこか安心したように心が緩んだ時、彼女は行手を阻むかのように現れた。
「ウィッチ?」
『こちらでも確認した。指揮系統から離脱しているアントナー中尉だ。攻撃してくるなら排除せよ』
本部からの通信は無慈悲だった。だけれど相手は命令違反の逃亡者。引き金を躊躇する理由は消え去った。ネウロイと同じように弾を当てて落としてしまえばいいと思った。
隣にもう一人少女がいたけれどそっちも聞けば命令違反をしている子だった。
「命令違反者だ容赦しなくていい」
ウォーロックの護衛を残して四人が最初に接敵した。
二人が高度をあげてもう二人がほぼ同じ高度で挟み撃ちにする。数で優勢だからこそ取れる戦法よ。
「ブレイク!ブレイク!」
だけれど数の有利はトップエースの前では全くの無意味だった。
四人からの一斉射撃はシールドすら使われずあっさりと回避されてしまった。
通過後に上に回った二人が旋回してこちらの離脱を掩護するはずだった。だけれど彼女の真上を通過したときにはすでに一人のユニットが黒煙をあげていた。
上方500fを通過する一瞬で私達に当ててきたのよ。
それもユニットだけ狙ってね。
いくら頑丈だったとしても20ミリ機関砲を浴びたらストライカーだって一撃よ。悔しいのだけれど。
扶桑のウィッチが追撃を始めた。させはしまいとそれを追いかけようとしたけれど、僚機が彼女に捉えられていた。
「だめだ振り切れない!」
何度もハイG起動で振り切ろうとしていたけれど恐ろしいほどピッタリと彼女はそれに合わせて真後ろに居座り続けた。
「今向かう!」
だけれど所詮は一人。高機動で二人とも位置エネルギーも速度も落ちていた。すぐに私は背後を取っていた。しかしこちらが攻撃のために引き金を引いた瞬間、彼女と目が合った。
「……え?」
気がつけば照準器から彼女が消えていて、やや遅れてストライカーを金属が叩く音がした。
右のストライカーが真っ二つに割れてエンジンだった残骸が飛び散った。左のストライカーも翼が弾け飛びエンジンが異常振動をしていた。
バランスを失い飛行することもできなくなって私は浜辺に墜落した。幸い片方のユニットが一応とはいえ無事だった為私は生き残ることができた。
だけれどあの圧倒的な力は今も覚えている。
見上げた空にいくつもの黒煙が生まれ容赦なく仲間が次々と落とされていった。たった二人。それも実質的な戦力は一人だけだったはずなのに8人が何も出来ずに落とされていった。
そして守るべき雛鳥さえも……
だけれど憎しみは湧かなかった。全員がユニットを破壊されただけでその命までを失ったわけではなかったしあの兵器にどこか負い目を感じていたから。
不時着の時の怪我で重傷を負うことはあったけれど。
私も片足と腕を骨折してね。飛ぶのは止めたわ。
今の暮らしも気に入っているわ。
マルセラ・B・フランチェス中尉
元013飛行中隊であり当時あの空にいた中では最年少。現在も原隊であるロマーニャ空軍第33航空隊で飛んでいる。
鬼とはよく言ったものね。あの人が触れたものはなんでも壊れていった。
他のエースと違うのは彼女が人間相手にも交戦をしたということね。だからこそ鬼なのよ。
人間相手に実弾を撃つ、人が人を殺す典型的な戦争。忘れかけていた生存に対する本能が嫌でも刺激されたわ。
あの時の僕もエースと呼ばれていたわ。勲章だってもらっている。戦っている合間は恐怖を感じたことはなかった。
それはあの時も同じはずだったの。
だけれどあの人と交戦して、何かが芽生えたわ。
何度後ろをとっても振り切られてしまう。まるで雲を相手にしているようだった。少なくとも三回も後ろを取ってその度に何度も背後に瞬間移動されてしまった。
銃を持つ手が震えていた。
それが恐怖だと気づいた時には、僕のストライカーにはいくつもの弾痕が刻まれていた。
僕……あまり褒められた生き方をしてきたわけじゃない。捨て子だった。生き抜くためになんでもしていた。それで一回捕まってウィッチの適性があったから軍に入れられた。でも荒れていたからさ。
被弾した時女神は微笑んでくれなかったんだろうねって。運がなかったってちょっとした笑い話みたいに思えたよ。
漏れ出たオイルと燃料に引火して火災が発生した。最悪だった。早く火を消さないと体まで炎に包まれてしまうし下手をすれば収納空間に足だけが残って切断されてしまうかもしれない。
空中で炎上するストライカーをパージするしかなかった。それはある意味空にパラシュート無しで飛び出すようなもの。
幸い片方はまだ黒煙が上がっているだけだった。
そのもう片方のストライカーも安定翼が破壊されていてまともに飛ぶこともできなかったのだけれど。
それでも怪我をせずに地面に降りることができたのは運が良かったとしか言いようがない。
あっという間だった。不時着した僕を確認しようとしたのか彼女が低空まで降りてきてた。その目はどこか絶望しているような、くらい失望が見て取れた。
戦いはまだ続いている、すぐ近くで見上げていて感じたのは恐怖だった。
次に畏怖。無駄のない動きで後ろに回り込みストライカーだけを破壊していく。人並み外れた動きをしながら、統合性が取れていて美しいとまで感じる空戦。僕の頭上で繰り広げられていたのはそんな戦いだった。
怒りは彼女が奪い去ってしまった。
その後は上層部の保身もあって私達は結局何も言及されずに、原隊に戻るよう言われた。
当然この話もなかったことにしておいてね。下手にバレると首が物理的に飛ぶからさ。今更そんなことで死にたくはない。
ところであいつはまだ生きているのか?
……まあ悪い奴ほどなかなか死なないからね。本物の英雄は先にみんな死んでいく、僕も、あの人も、みんな地獄が待っているだろうね。
まあ、それも強者としての証なのかもしれないね。地獄で鬼相手にエースを取るのもいいかもしれない。
場数を踏むたびに、相棒の強さが目についた。
並んで飛ぶこっちのことなんてお構いなし、ひたすらに戦い続けた。心のうちにあった脆さも弱さも全てを強さで隠すように。
それは私が一時的に彼女の元を離れていた合間に余計に強く感じた。
あいつがあげる戦果、そして負傷。それを聞くたびに心のどこかでモヤモヤが溜まっていった。それがなんなのか気づいた時にはすでに引き戻せないところまで来ていたんだけどね。
もっとあいつと飛んでいたかった。
XF-8
開発国
ブリタニア連合王国/リベリオン合衆国
開発会社
スーパーマリン、グラマン
エンジン
Cs-20M魔道ターボプロップ
軸出力2500馬力(高度3000m)
航続距離1000km
最高速度660km/h
リベリオンとブリタニアで共同制作された次世代ストライカーユニットとなるはずだった存在。
世界初の魔導ターボプロップエンジンを搭載しエンジンの性格としてはカールスラントが開発しているジェットストライカーに近い。ただしこちらは最終的な推進力をレシプロ魔導機関と同じ方法で取り出す。それらの中間にエネルギー変速をかけることで両者の効率を上げている。
問題は燃費が悪く航続距離が致命的に短いこと。ユニットの整備体制が追いついておらず整備性が良くないことが挙げられる。
またエンジン出力の応答性がレシプロよりも遅くジェットストライカーほどではないが加速に時間がかかる。
ハルちゃんの三走目
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ストパン2期
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RtB
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アフリカ