ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

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part 0.2戦艦越後の最後2

撤退が決まった。

 

第六波が去った後、長距離無線で撤退の暗号が流れてきた。

出力が強く後部電探室の通信設備でもそれを捉えることができた。

 

この時既に戦艦加賀が後部三番主砲損傷、右舷に破口があり浸水。速力低下

空母フォーミダブルは艦橋に被弾。艦長以下首脳陣が戦死。

駆逐艦吹雪、子日が轟沈。深雪は艦首を損失して漂流していた。

 

艦隊司令部が乗艦している旗艦空母ヴィクトリアスは直ちに反転し戦域を離脱すると各艦に通達していた。しかして越後が反転することはついになかった。

凛とした艦長の声、艦内スピーカーより響く。

「越後は現在燃料タンクを破損。重油漏れにより港までの帰還は不可能と判断。艦隊の離脱を支援するため単艦にてリバウへ向かう。退艦希望者は直ちに後部内火艇格納庫へ集結せよ」

スピーカーがその旨を達し了るや、艦内は静粛が支配した。

又聞きではあるがこの時退艦を希望したのは38名。全員が巡洋艦利根に収容され無事に生還している。

 

また本艦を支援するために駆逐艦磯風、カールスラントウィッチ二名、ブリタニアウィッチ二名、利根から出撃した扶桑海軍のウィッチを含めてさらに三名が残ることを決めた。

 

「ウィッチが補給のために後部甲板へ降りる。元ウィッチは手伝えと艦長命令だ」

 

「了解した。すぐに向かう」

 

この時点での被害は先の被害を除けば右舷側の高角砲が一基大破した程度であったが、この時吹き飛ばされた砲身によって右舷側の直立セルが破壊され後部へ向かうには左舷側のラッタルを使うしかなかった。

 

着艦は経験が豊富な扶桑海軍のウィッチの方が上手い。最も上手であったのが自信がなく小動物のような烏李芽曹長であったのは意外ではあったが。

次に上手かったのはカールスラントの大エース。アントナー曹長と僚機のロミルダであった。

彼女達はユニットを脱がずに弾薬と燃料の補給を受けると再び空に戻っていった。

ウィッチ達が全員離艦して五分ほど経った頃。艦内スピーカーがネウロイ来襲を知らせた。

第七波であった。そしてそれは本日最後の襲撃であり最も激しいものとなった。

すぐに持ち場へ駆け戻る。私の死に場所はここでは無いと。

 

しかして状況は良いとはいえなかった。

上空を守るウィッチの数も足りず、ネウロイの数は六十を数えた。

しかし奮闘の末その数は半減していた。

ネウロイが高速で近づいてくるのがスコープ上に映し出される。既にスコープだけでなく見張りもその姿をしかと目に焼き付けている事だろう。

 

対空砲が音を埋め尽くし、空を黒くしていた。それらを掻い潜り幾つかの爆発音がしていたが防空砲と機銃の音は止む気配はない。

「左舷に浸水!傾斜しています!」

通信士が部屋が傾いているのに気が付き叫んだ。

「落ち着け隔壁は閉鎖されている!指示に従え」

 

「了解!」

しかし傾斜するというのは危険なことである。各高角砲へ給弾を行なっている揚弾装置は機銃弾、高角砲用のもので七度、主砲や副砲のものは五度の傾斜が発生すると使用不能となってしまう。さすれば空からの敵に対してほぼ丸裸に近い状態になってしまう。

しかしすぐに傾斜は回復していった。反対側のバラストタンクに注水をしたのだ。

しかし被弾は止まらない。ついに左舷煙突直下の機銃と高角砲が被弾し吹き飛んだ。破片が窓からもよく見えた。その中には肉一片も混ざっていた。

 

「電探故障!」

 

電探に映っていた光の線と線が消えていた。

ネウロイが至近で撃破されたことによる破片被害で電探が故障をしたのだ。

咄嗟に様子を見に電探室を飛び出した。直後に音が消えた。

 

爆風で体が吹き飛ばされ一段下の高角砲の上に落下した。偶然体が高角砲の手摺りのぶつかり海に落ちるのを防いでくれた。

 

「あ、そんな……」

 

直撃したのは後部マスト付近だった。私の体の真後ろ。丁度電探室のところであった。

破壊されたのは電探室ばかりではなくマストの付け根もだった。

マストが倒壊し、付け根付近にあった電探室の残骸は押し潰されてしまっていた。

マストの多くは海に向かって落下し付け根の残骸だけが残った。

 

整備に整備を重ね、今日まで備えてきた兵器は四散して部品の残滓すら残らなかった。

 

私は運良く外に出た直後だったから吹き飛ばされただけで済んだのだった。

その数秒ほど動けずにいると、後部艦橋に次のビームが着弾した。

一瞬膨らんだように見えた後部艦橋が根本から爆発して吹き飛んだ。真っ赤に燃え、ひしゃげた金属の瓦礫がそこにはあった。

 

 

測的副隊長の伝令、甲走る声。

艦橋配置であった彼が状況を把握するためやってきたのだ。

「後部艦橋被弾の模様、直ちに被害を‼︎」

近くにいた私に向けて放たれた声は攻撃の最中で途切れ途切れであった。

「大丈夫か!」

 

「こ、後部マスト倒壊!後部艦橋にビーム直撃、か、艦橋消失しました」

 

「わかった‼︎生存者救助にあたれ、伝令に行ってくる」

後部電探室の残骸は後部艦橋の爆発に巻き込まれて大半が消失しており通信士も佐々木中尉も電探室勤務者はどこにも見えなかった。

後部艦橋も同じようなものであり、室長砲術長以下二十一名の後部艦橋要員は全員戦死であった。

艦橋後部のラッタルを伝い一度下に設けられた連絡通路に降りようとし、手摺右の鉄壁に肉片がこびりついているのが目に留まった。誰のものかもわからない。

船体の至る所で爆発が起こる。四周から迫る閃光の雨なり、越後の精鋭持ってしても回避極めて困難なり。

小爆発が船体各所で起こる。しかし類稀なる重装甲はそのことごとくを弾き甲板を焦がすだけにとどめた。

 

その直後二射目の太いビームが迫ってきていた。直撃する。目を閉じ、その場にしゃがみ込んだ。

しかしいつまで経っても体を溶かす熱線も衝撃波も来ない。

目を開けると、アントナー曹長がシールドでビームを防いでいた。

その表情は先ほど見た生気の薄い表情と変わりはなかったが、その目には光が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

空襲はそれで終わりであった。

各所の高角砲、機銃が沈黙し、焼けた銃身、砲身を冷却するために濡れた布がかけられる。すぐに水は湯気に変わり黒煙に混じって空へ消えていった。

 

越後が受けた最終的な被害は艦首近くの居住区への被弾。

左舷側二箇所の喫水線付近に破口。

左2番、4番、8番、右1番、5番の高角砲と機銃座10基が全損。後部電探、マスト、後部艦橋の被弾喪失。

2番、4番副砲の全損であった。

同期であり幼馴染の畠大尉も戦死した。

第五波襲来中一度艦橋へ向かっている途中で機銃指揮所で指揮を取っている姿を見たのが最後だった。ああ許してくれ。あの時一言の返礼もできずそのまま走り去ってしまった。無惨に散っていったのも礼を怠りしか。

しかし主砲とそれらを稼働させる各設備、そして機関は無事であった。越後はまだ生きていた。多くの骸を連れながら、リバウへの進路はそのままであった。

 

持ち場を失った私は火災消火や遺体回収をする救護班や生き残りを尻目にウィッチ達の着艦支援を行うこととなる。

既に日は水平線に落ち、闇が迫っていた。甲板には誘導灯がわりに発煙筒とランタンを持ってきて対応せし。

 

 

戻ってきた少女達は、一時の休息が与えられた。

リバウ突入まで2時間。突入後も再び上空で援護を行うのだ。

最初に越後に降りた時より一人足りない。噂を聞けばブリタニア人が落ちたらしい。

 

未だ燻る火災の灯りが海を甲板を煌々と照らし、皆の顔に影を落としていた。

皆無口であった。すぐそばではバラバラになった体の一部が集められ、白い布を被せられていた。

二番副砲の近くにあった機銃座を指揮していた軍曹のものだ。

機銃座は吹き飛ばされ、甲板の木や土嚢ごと吹き飛ばされていた。

降りてきた少女たちもショックを隠せない様子であった。その中で一人表情ひとつ変えずに佇む人影があった。それこそアントナー曹長だった。

しかし声をかけることも憚られ、手の空いた私も負傷者の救護、もとい残骸撤去を行うよう命じられた。

 

佐々木中尉と通信士二名はついに見つからず、最低限、後部艦橋跡地へつながる通路を確保したところで私の持ち場は下の高角砲へ移された。

 

ひしゃげた高角砲が二基、一つは内部で即応弾が誘爆したらしく内部は血の海だった。遺体と呼べるものなし、もう一つは溶解して爆風避防楯の天辺が消えていた。

発生した熱でこちらも内部で誘爆が発生していたが爆風の多くは先に空いた天井の穴から抜けていた。

まだ生乾きの血、爆風で焼かれ歪んだ内壁に叩きつけられた頭のない肉塊。四散した四肢、体の一部であったもの、一部は焦げ爛肉となっていたそれらは、点々軍装の破布らしいカーキー色が残っていた。

それが二つほど、四肢の有無はあれど転がっていた。

十数分前までここで活躍した戦友達は、ここに宿し四つの魂は何処に。

他の八名は四散して姿形も残っていない。空虚であった

それら、甲板への引き出しに苦労することとなった。

しばらくして見知らぬ少女が手伝いに参加していた。

「どこの分隊だ」

手を休めることなく尋ねる。

「連合軍第501統合戦闘航空団第一飛行隊第二小隊員であります」

覇気の抜けたような口調だった。振り返ればアントナー曹長。

その横にはもう一人カールスラントの軍服を着た少女と、烏李芽曹長がいた。

耐性がないのか烏李芽曹長は高角砲の手すりに掴まり嘔吐を繰り返していた。

「ウィッチ?どうしてここに、貴様は休息していたはずじゃ」

 

「友軍の弔いくらい手伝わせてください。申し訳ありません、私が不甲斐ないばかりに」

肉片を回収していたためか手首までを紅く染め上げ、少女は頭を下げた。

「……気にやむな。まだ艦は生きている。代わりにリバウ突入まで必ず援護してくれ」

 

「わかりました」

 

「そういえば扶桑語が上手なのだな」

 

「父が外交官でしたので」

その時初めて彼女が笑った。

「そうだったか。すまない。手を煩わせてしまって。まもなく夕食だ。戦闘配給になるが食べていってくれ」

正直私は食べる気にはならなかった。しかしここで食べなければ戦で力は出せない。食べるのも作業のうちなのだ。

「わかった二人ともあまり見てると食べれなくなるよ」

 

「僕もうお腹良い……」

 

「昼だって食べてなかったじゃん。烏李芽もロミーも無理にでも食べないと」

少女には辛いものだろう。かくいう私もアガリを迎え艦配属となるまでは彼女たちと同じ身であった。気持ちもわからなくはない。

 

運ばれてきた食事を手早く済ませ、電測副隊長の指示を仰ぐ。食事の味はしなかった。味わう暇も無かった。

 

 

間も無くして艦はリバウに突入した。その時刻二〇四四。

私は艦橋内部にある越後が元から設けていた方の電探室へ入ることとなった。

 

 

21号電探は高度の情報を測ることができず、また捜索範囲も狭いものだった。

しかし対空電探はそれしかなく、唯一の空を見れる電子の目であった。




航空母艦フォーミダブル

ブリタニア海軍所属
イラストリアス級航空母艦
基準排水量23,500トン

全長227m最大幅29m
飛行甲板229.6m×29m
機関

アドミラリティ重油専焼三胴式水管型ボイラー6基(3軸)

出力111,000馬力
最大速力30.5 ノット、

乗員1,200名
兵装
Mk Ⅲ 11.4 cm高角砲連装8基、
ボフォース40ミリ四連装機関砲8基
20mm機銃連装18基+同単装14基

装甲
飛行甲板:76mm

搭載機
55機

イラストリアス級航空母艦。
艦橋に被弾し艦橋要員が戦士し応急操舵において戦線を離脱するも、高高度からのネウロイの自爆当然の攻撃によりエレベーターに被弾格納庫内部で誘爆が発生し4時間後に沈没。奇しくも越後座礁の二分前であった。

ハルちゃんの三走目

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