ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:鹿尾菜

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推しが引退したので初投稿です


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502JFWに意を決して飛び込んでまだ二日。昨日1日のタイムスケジュールと1日の予定表。そして配分された部屋と各種備品配給品の説明が終わったのが昨日。

今日から本格的に訓練が始まるはずだった。

その訓練はストライカーを履いて待機している最中に鳴り響いた空襲警報で中断になった。

「空襲警報!」

 

「無線は開けたまま!このまま離陸するわ」

幸い実弾射撃も行う予定だったから持ってきてる弾は全て実弾。一通りの戦闘はできるはずだった。

「離陸!通常の人達は2分後ろを追いかける形になりそうね」

ロスマン曹長に続いて離陸。高度を上げていく。雲を突き抜けて青い空の中に出た。ネウロイはまだ目視で視認することはできない。

「あれ?」

 

「どうしましたか!」

 

「水温が上がってる?ちょっと後ろの方を見てくれないかしら」

 

少し後ろに回ってロスマン曹長のユニットをみると、白煙が上がっていた。少しづつ煙が濃くなっていく。

 

「白煙が出てます」

 

「なら冷却水漏れね。仕方がないわ……戻るわ」

ロスマン曹長が使用しているBf109は液冷のエンジンを搭載している。エンジン冷却を冷却液という液体によって行うものでその冷却液が漏れているのだという。こうなったらもうどうする事もできない。

「わ、わかりました」

 

「BW3、冷却液漏れにより帰還する。ええ、多分ラジエーターあたりのパッキンが粗悪品だったのよ」

 

『ちょっと待て。ひかりはこっちが預かる』

反転しようとした私たちを呼び止める声がした。それはあの菅野だった。あまり仲良くはなれそうにないなと思っている人だった。

「菅野さん?何を言っているんですか」

 

「そいつの実力を確かめるんだ」

なんだか無線の向こうでも嘲笑っているような気がしたかと思えば、既に彼女はすぐ近くに来ていた。

「危険よ。まだ実戦なんて」

 

「どっちにしろこっちは実戦部隊だ。ここで使い物にならなきゃ意味がねえ」

言い方はムカつくが正論だった。それも命をやり取りするもの。

「……わかりました。ですが無茶をさせないように。怪我をさせるようなことがあればこちらの権限で貴女にそれ相応の処罰を下しますから」

ロスマン曹長がついに折れた。

「わかった」

 

「新入り、あんたがどれくらい使えるのか試してやる」

ニパさんはずっと困惑したままだった。明らかに菅野の独断専行。それでも対応するあたり本当にこの部隊はすごいところなのだ。

「ニパの後ろだ」

 

「えっと、急になんだけどよろしくね」

編隊飛行。だけれどそれはすぐに崩れ去った。

ロスマン曹長と別れて数分で、ネウロイの先陣と接触した。

その数は四つ。その後ろに中型のネウロイを含む編隊もいた。

 

「最初の四つ、そっちは後ろの二つとでかいの!」

真っ先に菅野が前衛の小型ネウロイ達に飛び込む。

 

「またそんな適当な指示……じゃあ私についてきて」

 

 

私達は後ろにいた中型のネウロイを含む編隊に真上から飛び込んだ。

だけれどわたしにはどこに何がいるのかよくわからなかった。ニパさんについて行くので精一杯なところがあったから。それでも一応攻撃はした。中型のネウロイはでかいからよく見えた。

 

だけれどなかなか落とすことは出来なかった。

 

少しして前衛のネウロイ達を片付けてきた菅野が合流してきた。

3対1数の劣勢を感じ取ったネウロイが回避行動をやめて基地に進路を変えた。無理やり飛び込むつもりだ。

 

 

「畜生とまらねえ‼︎」

中型ネウロイが加速した。それでも速度差はまだあった。だから一旦前に出て正面に回り込む。

菅野も同じことを考えていた。

だけど私は魔力量が少なくてあまり力を入れられなかった。だから偶然にも私達と菅野の攻撃は同時になった。

クロスファイア。だけれどそれが当たることはなかった。

爆撃ネウロイは動きが遅いなんて嘘だった。そいつは中型でかなりの大きさだったのに、エルロンロールで私達の正面攻撃を回避した。

旋回するネウロイの真下を通り一旦後方に抜け出る。後ろを追いかけてくるビーム、気を抜いたら死神が首に添えた鎌を振り下ろしてきそうな寒気がした。

 

「あいつ……」

「あ……あれ?」

ニパさんのユニットが急に調子を悪くした。速度が落ちて私の横を降下しながら旋回していった。私との接触を避けるためだ。同時に彼女は射撃位置につくことができなくなってしまった。

つまり射撃を行うのも射撃位置につくのも私と言うことになった。

 

「ッチ……おいお前!空戦の教本くらいは覚えてるよな?」

 

「え⁈覚えてるけど」

 

「ならついてこい!んで死なないで基地に戻れ!」

なんか無茶苦茶なこと言い出した。

 

今の位置はネウロイの後やや上方。ここから軽く降下してネウロイを上から左右に分かれて攻撃するつもりだった。

 

 

 

私と菅野の攻撃は確かにネウロイにあたった。だけれどそれはコアを破壊するには至らず右の翼を根本から破壊するだけだった。でも普通の飛行機ならそれだけでも素手のコントロールを失う。しかし相手はネウロイだ。バランスを崩して錐揉み状態になることもなく高度を下げながらも基地にまっすぐ向かっていた。

 

中型のネウロイはまだ進撃を続けていた。いや翼の部分がやられてバランスを崩したからそのまま飛び込むつもりなんだ。

爆撃ネウロイは基本地上に対して平行に飛ぶ。だけれどあいつはそれができないからそのまままっすぐ自分自身を質量兵器とするつもりだった。

ビーム攻撃ではなく質量攻撃。それもあの巨体ではかなりの破壊力があるはずだった。

 

こうなったらぶつけてでも止めないと…

 

 

 

『蛮勇を見せようとするのも良いが、その前に右に避けろ』

扶桑語だった。

「はい?」

 

無線に割り込んできた言葉。体を少し動かすと空気を切り裂く音が聞こえた。嫌というほど耳にした弾丸の飛ぶ音だ。

その直後、滑走路に向かっていたネウロイの背中の部分にコアが露出した。

チャンスだった。

咄嗟に銃口を向けて引き金を引いていた。

20ミリの曳航弾がいくつもネウロイに吸い込まれ、コアが破壊されその姿は爆発四散した。

結構いろんな方向に弾が飛んでいってしまっていたけれどそれでもなんとかなった。

 

「やった!」

 

『初撃墜おめでとう』

 

すぐ側を今度は巨大な質量が通り過ぎた。

また敵が来た!そう思った。だけれどそこにいたのは敵ではなくて巨大な飛行艇だった。

カールスラントの国籍識別表の上に箒に乗った魔女が荷物をぶら下げているシルエットが描かれた二式大艇のような飛行艇だった。

大きく違うのは車輪を下ろして着陸をしようとしているところだった。

二式大艇は陸送用の車輪こそあるけれど着陸はできない。

「あれ何?」

 

「カールスラントのBV222D型だ。倉庫に眠ってたやつ」

ああ、布をかぶっていたあれか。菅野の馬鹿にしたような言葉でもすんなりと頭に入ってくる。

 

滑走路に正対し、ゆっくりと滑走路に降りていった。

「やるねえ。空戦中なのに着陸しちゃったよ」

エンジン不調が直ったニパさんが戻ってきた。

「あ‼︎ネウロイが!」

見れば今までどこに隠れていたのか小型ネウロイが飛行艇に向かってまっすぐ急降下していた。数秒後には飛行艇を射程に収めそうな勢いだった。

「ヤッベ!止めねえと!」

菅野が飛び出した。

「ちくしょう間に合わねえ!」

 

『大丈夫だよ落ち着いて』

 

再び扶桑語。あの機体には扶桑のパイロットが乗っているのかな。

 

そう思考したのも一瞬。小型ネウロイがビームを放ったタイミングで飛行艇が急旋回をかけた。

地上での急旋回。片方の車輪が浮き上がり主翼端が地面と接触しそうになった。だけれど機体は傷つくことなく大きく動き、射線を大きく外されたビームは滑走路の土を巻き上げるだけだった。

攻撃が失敗したことを悟ったネウロイが急上昇で離脱をしようとする。そこに狙いをつける菅野と私。

 

だけれど狙いをつけた場所にネウロイが来る前に、ネウロイは飛行艇上部の旋回機銃によって撃破されてしまった。

 

 

上空のネウロイは全滅していた。

すぐに基地に戻るよう指示が出る。私が最初で次がニパさん、そして最後が菅野。

ニパさんは降りる時にユニットがオイル漏れを引き起こした。本当に運が悪いんだ。そういえばさっきも空で出力が落ちていた。もしかしてこの部隊ってユニット整備とかあまりしないのかな。なんだか菅野もニパさんもユニットがエースの使う専用ストライカーじゃ無いみたいだし。

 

 

 

地上に降りた時には飛行艇もエンジンを止めて駐機場に押し込まれていた。

フラップが戻され乗降口が開かれていた。

「こんにちは」

飛行艇から降りてきたのはたった一人だった。

私と同じか一つ上くらいの年齢のように見える少女。茶髪の先端が銀色になった少し変わった髪。どこかで見たことがあるような気がしたけれど思い出すことはできなかった。

 

「やれやれカッコつけたがりだな」

ラルさんは呆れていた。だけれど少し笑っているように見えた。

「そんなことないですよ」

 

ラルさんと話す時だけ流暢なカールスラント語。それ以外ではブリタニア語、そして私達との交信は扶桑語で。

不思議な少女がサングラスをしたままこちらに向き直った。

「紹介がまだだったな。今日から航空輸送を担当するジークフリンデ中尉だ」

 

「ラル少佐より紹介されました。好きに呼んでいいよ。後何か必要なものがあったら遠慮なくリストに入れてね。追加料金さえ払えばクレムリンだって持ってくるから」

クレムリンは流石に冗談だと思うけれど……

「ところでさっきの攻撃って……」

 

「私一人で全部やったよ。特に人員がいるわけじゃないからね」

 

「上部銃座まで移動したんですか⁈」

機体を急旋回させた後すぐにコクピットから銃座までつくなんて無茶苦茶だ。

「動線は確保していたし既に撃てるように準備はしておいたからね。そうじゃなかったら回避だけにとどめておいたよ」

そう言って彼女は飛行艇側面のハッチを開けた。中にはいくつもの箱が積み込まれていた。

 

背後でフラッシュが焚かれた気がした。

この時彼女を、基地に取材に来ていた記者が何枚か撮っていた。だけれどそのカメラはラルさんが没収して、しかもその記者も部隊随伴の戦場記録者として身柄を拘束してしまった。

そんなに見られたら困る人なのかななんて疑問だった。

 

「それと積み下ろしの手伝いしてくれる人はいるかな?一応持ってきたのは扶桑の食糧なんだけど」

疲労で体が重かったけれどみんなで1時間かけて積み下ろしをした。結構な量が機内に入っていた。あんな重たくなった飛行艇で空襲の中に飛び込むなんて度胸があるんだなあ。

 

 

 

 

 

「……ユニットの不調って多いのかな?」

 

「ああ、この前来たBf109とFw190D型の冷却液周りのパッキンが不良品でな。すぐに液漏れを起こす」

 

「そっか。一応後の機体は大丈夫?」

 

「サーシャが趣味兼任で整備しているが数も多いし何より部品の供給が最近滞りがちだ」

 

「地上の補給大隊はこの前大規模攻撃を受けて半壊したままだからな」

 

「物資に余裕ができたと思ったんだがなあ」

ラル少佐と中尉が何かを話していた。だけどカールスラント語だったからストライカーがどうとかという程度しかわからなかった。多分隊全体では関係のない話なのだろう。

 




紫電改

運用国
扶桑皇国

開発会社
山西飛行機



エンジン
ハ-45-12エンジン(誉21型)
離昇出力2200ps

ストライカーユニット紫電11型以降のユニット。紫電改という呼ばれ方をしているが書類上では紫電21型と呼ばれる。
これは兵器名称付与標準に基づき兵器採用前の試製機として「試製紫電改」とされたものの名残りであり呼び名自体は紫電改、紫電21型と決まっているわけではない。
紫電11型で問題となっていた速度と旋回性能を引き上げるため主翼の位置と構造を変更し全体の防御力や強度を変えず50kgほど軽量化することに成功している。また自動空戦フラップの改良により紫電よりも応答性が良くなっている。

ハルちゃんが次に走るルート

  • ブレイブ
  • ストライク2
  • アフリカ(1943)
  • RtB

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