ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

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ラル中佐から専属で航空輸送隊兼訓練指導補佐要員という嫌に横に長い肩書きを与えたウィッチを配属することにしたと言われたのはそのウィッチが着任する僅か数時間前の事だった。

なんでもひかりさんの指導を行う事になる私の負担を抑えるためにため探し出してきたそうだ。

正直あの子の事を考えればここで一回心をへし折って覚悟を見極めるつもりだったけれど、ずっと定数割れを引き起こしウィッチ人数は3/4を満たす状態でしかない私達には、数少ない戦力である。だから手放すかどうか賭けるよりここで徹底的に扱いて兵士にしたい……隊長としての内心が透けて見えた。

「それで航空輸送隊はわかりますが訓練補佐とは……もしかしてアガリの方ですか?」

 

「プロフィールの書類の制作に少し手間取っていて今渡すことは出来ないのだが……まだアガリではない。少々事情があって原則的には戦闘以外の事に従事してもらうつもりだ」

 

「……承知しました」

しかしそんな人事異動をどうして本人到着の数時間前に言うのか。皺寄せというほどではないがそこそこ大変なのだ部屋割りとか食料とか給料とか配給品とか諸々。

 

 

 

しかし到着した少女を見た時、私は思わず隣にいたクルピンスキーと顔を合わせることとなった。

その少女は501部隊解散後に行方不明となってしまったあの少女にそっくりだったからだ。髪が伸びていて頬の傷など雰囲気は変えているつもりだろうけれど、彼女とは短くてもそれなりに付き合いがあった。それに行方不明になってからエーリカやバルクホルン達に色々と聞いていた。

感覚も体もボロボロになってそれでも飛び続けて……正直聞いているこっちとしては辛いものがあった。

 

「……」

 

「……」

 

その少女が目の前にいるのだ。一瞬ラル中佐に詰め寄ろうかと考え、クルピンスキーが既に中佐に詰め寄って怒っていた。いや一応上官なんだけど……

 

「君達には関係のない事だ。詮索を禁ずる」

完全に硬い言い方。それが本気であるという彼女の合図。掴みかかろうとするクルピンスキーの頭を押さえて強引に礼をさせる。あのままでは謹慎処分ものになっていた。

「承知しました……」

 

「……っ承知しました」

中佐が彼女を出迎えに行ってくるとその場を離れた。去り際にすまないという独り言が聞こえた。

「貴女らしくないわよ」

 

「いやーごめん。ちょっと頭に血が上がった」

 

「全く……それに戦いに引きずり戻したわけじゃないんだし……隊長にも隊長なりの考えがあるのよ」

 

「そう……だったね」

 

 

ひかりさんの着隊挨拶のようなものと同じで、少しして彼女も着隊挨拶が行われた。

夕食直前の時間だった。

 

自己紹介と着隊挨拶が手短に終わり、ずっとサングラスをかけたままの彼女は流石に注目の的だった。

だけれどどこか近寄り難いというか……ちょっと雰囲気も相まって怖いという印象を彼女を知らないみんなに与えていた。

そのせいかあまり彼女に話しかける人はいないように思えた。皆萎縮してしまっているのだろう。

 

「サングラスは……外さないのですか?」

ひかりさんが遠慮も躊躇もなくそれを尋ねた。

「すいません。昔から目の病気で羞明が酷いので」

 

「言葉遣いは丁寧なんですけど……なんだか組の人間みたいな……組ってマフィアの事です」

ホテルベルリンみたいなものかしら?たしかにエレオノーレ・シュミットの隣で警護してそうな感じするのだけれど……

まあ知っているのは私だけだから例え話としても通じることはないでしょうけれど。

 

 

 

 

訓練をするときの飛び方、明らかにあの飛び方はあの子のものと一緒だった。

やっぱりそうなのだろう。他人の空似という考えは元から捨てていたがやはりここまで来ると確証が欲しかった。

だから適当な理由をつけて彼女にひかりさんの訓練を行わせた。

 

彼女の飛び方には変わった癖があった。旋回中の脚の動かし方がそれだった。

独力で身につけたためなのだろう。

 

 

飛行を終えて戻ってきた彼女を私は問い詰めることにした。だけれど本人の意思は尊重したかった。なんのために偽名まで使いここに戻ってきたのか。それを聞きたかった。

案の定彼女は先にひかりさんを戻して、ストライカーユニットの飛行後点検を始めていた。

「貴女、ハルでしょ」

私が入ってきたことに気づいてはいたようだったけれど、私が何のためにここにきたのかわかっているような素振りで作業の手を止めた。

 

「……はて?なんのことです?私はニーマント・ジークフリンデ」

 

「そう、それで通すつもりなのね……みんな心配していたのよ?」

 

「……ハルはまだ行方不明です。ですがずっと行方不明というわけにはいきません。今はまだ帰ってくる時ではないだけです」

 

結局彼女は認めなかった。だけれどずっとそうしているつもりはないというのは伝わってきた。

結局、彼女は誰も信用できず孤独と戦い続けるつもりなのだろう。

それが彼女の選んだ道だったとしてもやっぱりその背中を押し出そうという気には中々なれなかった。

 

 

「そう……ならちょっと頬貸して」

軽く頬に手をぶつけた。軽い、水辺に石が落ちたようなそんな軽い音で。頬の肉が手を受け止めていた。

「……本気のお叱りはハルが帰ってきてからにしておいてあげるわ」

 

「……伝えておきます」

 

サングラスの向こうの瞳は何を見ているのだろう。

再び機体の点検に戻った彼女からは結局その答えは見つからなかった。

見つからなかったからちょっとだけ驚いた顔が見たくなって、私は彼女の点検を手伝うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

次の日の午後まで彼女とは顔を合わせることはなかった。カメラを返してもらったばかりの従軍記者の元ウィッチと午前中は取材をしていたようだった。わたしにもひかりさんの訓練教官という任務があった。

それが終われば上空警戒。

 

シフトの関係かあるいは使用するユニットの関係か私はクルピンスキーと組むことが多い。その日上がったのもやっぱりクルピンスキー。そして下原さんだった。

「輸送機が出るわ」

その言葉に下を見ると、四発の大型機が格納庫から引き出されていた。

飛行艇とは違う巨体と色。格納庫の奥で誰も使わず放置していたブリタニアの機体だった。

 

それを見ていると、基地全体に空襲警報が鳴り響いた。同時に無線機が何かを喋っていたがチューニングが悪いのか機材不良か上手く声は入らない。

 

「空襲⁈」

 

「レーダー管制室コンタクト」

少しして無線のノイズが小さくなった。

『方位2-2-0より接近するネウロイの編隊を捉えた。どれも小型のものと思われるが数が多そうだ』

第一報はそれだけだった。この野戦飛行場には固定式の大型レーダーは配備されていない。その代わりに8台のレーダーを載せたトラックがいてそれらが基地周辺で索敵を行なっていた。だけれどこれは出力が限られている。

「数と高度は?」

 

『近くのレーダー車両からの情報では数20から30。通信途絶により続報の詳細や高度情報は無し。今近くを飛行している雷鳥08にコンタクトを取り測定してもらう。今は高度4500で待機』

 

「アイコピー」

 

『雷鳥08より続報。敵ネウロイは100m以下の高度で飛行中。数は40ほど。後10分で会敵する。ウェポンフリー』

どうやら地上スレスレを飛行していたらしくレーダーが捉えるのが遅れたらしい。

電子偵察機も地上近くの物体を捜索するには地上から跳ね返ってくるレーダー波との識別が必要となる。

 

 

 

その個体が見えた。既にこちらも見つけているのだろう。一部のネウロイが上昇を始めていた。

散開。こちらの人数が圧倒的に少ない多対一での効果的な迎撃は結局のところ編隊を解いて自由に戦うということしかない。

近くの基地からの応援を期待したいが応援の情報は無かった。

 

何度かネウロイを空中で叩き落としていくけれど、段々と高度が下がっていた。このまま低空を飛行する攻撃隊を狙うことにする。

「落ちて!」

 

金属同士がぶつかる不快な音がして、ネウロイの黒い体が錐揉みで地面に叩きつけられた。

だけれど少しづつ基地との距離が近くなっていた。

他の仲間が緊急発進するまではまだ時間がかかる。整備中のユニットはともかく、冷え切ったエンジンを始動させるには暖機運転やチェックを行うため早くても20分はかかる。

空戦における20分は致命的だった。

さらに実際に稼働できる稼働率も今は一時的に低くなっていた。上空警戒を始めた時に動かせたユニットは予備含めて5機。そのうち3機は今戦っているから、すぐにあげられるのはあと2機。

 

そんなことを考えながら別のネウロイを追いかけていけば既にネウロイは滑走路の近くに迫っていた。

だけれど動きが鈍い。すぐに撃墜となった。

 

滑走路の端に出てきていた輸送機の側を通り過ぎた。

轟音を立てて四つのエンジンが巨体を動かす推力を作るためにプロペラを回していく。

その轟音が一瞬で後方に抜けていった。

ネウロイを追って低空に降りていた私のそばで、滑走路に出ていた輸送機が動き出そうとしていたのだ。

 

管制塔の無線が混線する。

『まだ間に合う。管制塔、離陸許可を』

 

『わかった。MF01離陸を許可する。そこにいると破壊された時に邪魔になるからな』

 

振り返ればブレーキが外され、機体がゆっくり動き出していった。

冗談だと思いたかった。だけれど彼女のことだ。なんとなく納得してしまう自分がいた。

上空で下原とクルピンスキーに抑えられていたネウロイが動く輸送機に釣られてウィッチへの興味を輸送機に変えた。

上昇中の私が抑えに入る。

MG151機関砲の射程に入ったネウロイからすぐに撃墜を重ねていく。

 

少しだけ体を捻って旋回。逃げようとする方向を予測して弾をばら撒く。

だけれど数が多く全てを迎撃することはできない。シールドでビームを防ぎながらネウロイ達の合間をすり抜ける。

すぐさま反転。天地がひっくり返り、ネウロイの黒い姿が再び見える。

 

距離も時間もなかった。焦りで手が震えた。

 

ネウロイが背後上空から襲いかかってきていたがまるで見えているかのように輸送機は攻撃直前の絶妙なタイミングで機首を振った。機体が左に旋回し、その機体のすぐ真横、何もいなくなった空間をビームが素通りしていった。

速度差でネウロイはそのまま上昇に転じて逃げていく。

 

 

だけれど私が狙うネウロイとは別方向から高速で接近するネウロイがあった。

その後ろにはクルピンスキーがぴったりくっついていた。

『まずい!追いつけない』

そのネウロイの進路上にはあの輸送機が

『そんなッ‼︎MF01回避!』

 

『見えているよ』

 

エルロンロール。大型機が大きくロールした。その少し前には左に軽く旋回をしているのだ。失速寸前の速度。翼が地面を擦るのではないかと不安になる。だけれど不思議と輸送機は墜落することなく姿勢を安定させ、上昇を始めた。

「うそぉ」

 

「輸送機なのに……」

 

さらに別の方向から飛んできたネウロイも、また同じように攻撃は空振りに終わった。

流石にドン引きとしか言えない感情が渦巻いた。

そんな私達をよそに再度攻撃位置に就こうとするネウロイ。だけれどそんなことはさせなかった。

もうこれ以上彼女には戦っていてほしくない。その思いがどこか心の中をよぎった。優秀な兵を育て上げる私がもう戦ってほしくないなんて考えるなんてね。

 

「やるねえ、どうやって攻撃見切ったの?」

クルピンスキーが輸送機の横についた。私も反対側につき輸送機のエスコートを始める。ネウロイは基地ではなく輸送機の方を目標に定めたようで、生き残りの6体が接近していた。

二人でそれらを片付けていく。

下原は万が一があった時に備えて基地上空に残るそうだ。第二波や低空を隠れて接近するネウロイがいるかもしれないし。

 

『簡単よ。わかるから……』

理由にならないというかかなりスピリチュアルな回答だった。

ただ、なんとなくだけれどわかるような気がした。単純に空に上がったら六分頭というように思考力が低下していただけなのかもしれないけれど。

 

『もうすぐ空戦領域を抜けるわ。エスコートありがとう』

 

 

 

「帰ってきたら一杯やろうな。だから美味しいジュース見つけてきてね」

 

「そこはジュースを用意しておくとかじゃないのかしら」

 

「いいのいいの。エスコートのサービス」

 

『わかった。見つけたら買ってくる。以上交信終わり』

 

 

空戦領域を離脱する輸送機は、あっという間にその姿を米粒のように小さくして視界から消えていった。

 




ニーマント・ジークフリンデ
プロフィール
年齢18歳
身長162cm
血液型O型
BWH 77 54 78

使い魔 雷鳥

所属
カールスラント空軍

一体何トナーなんだ。

アントナーの身長より5センチ、バストを3センチ、年齢を3歳盛っている。
厚底ブーツを履いているわけではない。
髪型も腰あたりまで伸ばして頑張ってイメチェンしたつもりらしい。

ラル「最初あいつはカボチャの被り物を被るとか言っていたんだが流石にやめさせた」

ハルちゃんの三走目

  • ストパン2期
  • RtB
  • アフリカ
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