ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

67 / 111
????4

その日私はいつものようにストライカーユニットの整備をしていた。

 

戦闘指揮官に任命されている身ではあったが、ストライカーの整備状況がそれはそれは酷いものだった。それで思わず整備を手伝ってしまったのがこの部隊での私の立ち位置のようなものになってしまっているわけだった。

 

結局、こうしていることで思い出したくもない事を忘れていられる。それが一番大きかったかもしれない。

整備しているストライカー、そのメンテナンスハッチに人影が映った。

「……」

 

「あら、人がいたのね」

 

振り返れば、先日着隊した不思議な少女がいた。

ラル中佐やロスマンさん達と同じカールスラント空軍の軍服を綺麗に着こなした謎の多い少女。つけたままのサングラス、それが妙に似合っていなくて、なんだか入りたてのカールスラントマフィアを思わせるというのも頷ける。

 

「頼まれた部品を持ってきましたわ」

カールスラントの軍服で流暢にオラーシャ語を話されると違和感が恐ろしいまでに相手の印象を歪める。

そのせいか目の前の少女は一瞬にしてよくわからない少女へと変貌した。

さらにその背後には予備部品が入った箱がいくつも台車に乗せられていた。

「あら、オラーシャ語を話せたの」

 

「ええ、それなりに話せますわ」

どうしてお嬢様語なのかはわからないけれど、というかそれがさらにイメージを掴みづらくしているのは間違いなさそうだった。

 

 

 

 

「チドリを除くユニットの予備部品ですわ」

チドリ、扶桑から来た試験ストライカーユニットは専用の部品が必要ならしくバラしてみないとまだどの部品が必要になるのかがわからなかった。だから彼女にはそれ以外のユニットの部品を頼んだのだ。

「一応向こうにいた扶桑の山西の開発者に聞いてみましたが試験機なので予備部品と専用整備員は向こうで用意して送るそうですわ」

 

「ああ……えっと、ありがとう」

抜かりはないということらしい。

元々あのユニットは戦闘試験が終わったらすぐに代わりのユニットと交代するはずだった。それがどういうわけか……十中八九ラル中佐なのだろうけれど、ひかりさんのストライカーとしてここに置かれることになったわけだった。

戦力アップと簡単に言うけれどウィッチが未熟な上に事実上のオンリーワンな機体なんて整備性の悪化にしかならないということを分かっているのだろうか。

 

「手伝いましょうか?」

 

「手伝えるの?」

 

「まあオーバーホールまで」

意外であった。こういう整備は結局のところ男が好きとしていることが多く人々の意識としても女性が行うような事じゃないという風潮がどうしても強い。女性らしくとはよく言ったものだ。

「ならそっちの脚のエンジンを下ろしてくれるかしら?作業着と工具はそこの控室にあるわ」

 

すぐに着替えに行く彼女。一応同じ階級なのだけれど私の方がこの場では上にいた方がいいと判断したのだろう。

戻ってきたジークフリンデ大尉はどこか着なれた感じが既に出ていた。

しばらくユニットをいじる音だけが格納庫に響く。

 

「……やっぱり一個つかない」

 

「配電線ですか?」

 

「そうね、プラグ単体で火は出しているから配線かしら?」

 

 

「こっちセルモーター焼けてますね」

 

「部品取りから取ってきた中古だからそろそろとは思っていたけれど……やっぱりダメね。リビルド品にするから廃棄しないでおいてね」

 

「シリンダー欠けてますわ」

 

 

 

 

「よくそこまで整備できるわね」

改めて少女を見れば慣れた手つきで既にエンジンをばらしていた。

ここまで手早く出来るのはそういう経験が多いということ。半分趣味な私と違いそんなに機械に興味があるようには見えない。つまりは……

「撤退戦の殿ばかり務めていたので……」

 

「なんとなく察したわごめんなさい」

やっぱりそう言うことだった。

「いえ、隠すようなことでもありませんし事実ですので。そちらも相当苦労なさったのでは?」

 

「よく分かったわね……私も似たようなものよ」

 

「整備班もいない撤退する地上軍の直掩。燃料が切れたら畦道に強引に降りて燃料補給。ストライカーは共食い整備は当たり前。途中から片方は出力ゼロだったわ」

それでも生き残れただけマシだった。当初40人いた仲間は結局10人しか残らなかった。

そのうち一人は両腕を失い、もう一人は気付け薬でおかしくなって共に後方送り。その後の消息はわからない。

「どこも似たようなものですね。こちらも防衛線死守で連続出撃。基地要員まるごとすり潰されても戦うしかない。まああの時は概ねどこの状況もそんなものでしたわ」

 

「変わらないわね」

 

準備不足。言ってしまえばそれまでだったけれど、人類はあまりにも敵を知らなすぎた。

空からの攻撃は第一次ネウロイ大戦で効果的だと証明できていたが、ネウロイがそこに物量戦という概念を持ち込んだことでどこの国も防衛戦術の見直しを迫られることとなった。

 

元々航空機は数が限られることとあくまでも地上戦力の補佐でしかなく航空優勢は地上戦闘を行いやすくするだけという認識だった。

「結局ネウロイを見て航空主兵論が盛んになっていますけど、それが人員の消耗を早めている一端ですわ」

 

「……続けて」

 

「航空機主兵論は結局のところ物量戦を行い数の力で押しつぶすというだけです。相手がこちらを上回るほどの物量を持っていれば消耗戦にしかならない。去年あたりから航空機主兵論に翳りが見えてきたのもそれが原因ですわ」

 

なるほど聞いてみれば確かにそうであった。

結局大量導入でしか戦線を打破する事は難しい。航空戦力では地上戦よりもその傾向が顕著だった。

基本地上では防衛と攻勢で戦力差は変化するが戦力劣勢でも防衛戦で耐えるならなんとか戦力差二倍まではどうにかできる。

 

だけれど航空戦では戦力差二倍では防衛戦でも基地まで破壊されてしまい話にならない。特に開戦初期にはそのような光景がオラーシャでは多発していた。

 

オラーシャは国土防衛に縦深防御戦術を取り入れていたという問題もあったのだけれど。そもそもあれはネウロイ相手に効果があるかどうか眉唾であった。実際効果があったといえばあったのだろうが補給という概念が理解し難い方法で理不尽にも行われていたせいであまり進撃速度は低下しなかった。

それもあったのかもしれない。

 

特に個人の戦力が戦略に寄与しづらくなってきた今次大戦で個人が大活躍し英雄として祭り上げられるような戦争は終わるかもしれない。

 

そうしているうちにオーバーホールが終わったのか大尉はエンジンの部品を仕分けしていた。

かなり目立つ部品からネジまで使えないと思われるものが積まれていく。

「……早いのね」

 

「手先ばかりが器用になってしまったものでして」

「そう……これからも手伝ってくれる?」

 

「わたくしの手が空いている時でしたらいつでも」

 

「ありがとう。後その言葉遣いどうにかならない?妙に違和感があるのだけれど」

やはりここは言うべきだろう。

「そう言われましても……一応これでも貴族の分家ですので」

 

「本物だったわけね。まあいいわ」

 

結局貴族のようには最後まで見えなかった。むしろあれは完全に軍人であり戦いのプロにしか見えない。私達と同じ、その割にどこか甘い蜜のように人を惹きつける魔性が見え隠れしている。おそらくそれは魔法の一種。無意識に放っているそれは、普通の人には気づけない。

「……」

まあそれが悪いとは言えない。結局のところ本人次第であるから。

 

 

 

 

戦いで命を落とす少女、目の前でビームに焼き尽くされ分断された体が落下していく。

シールドごと弾き飛ばされ地面に叩きつけられて首が曲がらない方向に曲がって死んだ少女。

 

全て私の同期であり、部下であり、上官だった人達。

地上を逃げる一般人とそれを守ろうとするオラーシャ陸軍の自走高射砲。それらがビームで薙ぎ払われ、爆発の連鎖が人々を飲み込んでいく。

 

久しぶりに悪夢を見た。

再びみるようになった悪夢。呪いのようにそれが私の心を地面に引き摺り下ろそうとする。

空を飛ぶのがどこか怖いと思ってしまったらもう飛べなくなってしまう気がして必死に目を逸らしていた。その代償なのだろう。

 

生き残るのに必死で目を逸らしていた。結局どこまで行っても死は付き纏う。そしてそれは練度の低い者からと大抵決まっていた。

そして負担が大きくなり段々とベテランも落ちていく。

いくつもの目線が地上から私を見上げていた。光がなく虚に、目を開けたまま死んでいたいくつもの顔が私を睨みつけていた。

恐怖でしかない。そして彼女、彼らを殺戮し続けたネウロイを殺せと生き残ったなら殺せと私を追い立てる。

そうだ。これは贖罪だ。生き残ってしまったことへの……そして死んでいった者達の弔い。

 

そこでようやく目が覚めた。いやに鮮明に覚えている。未だ瞳を閉じれば瞼の裏に死んでいった仲間の顔が焼き付いている。

 

 

 

 

 

「それで……これは?」

朝食を食べ終わって気持ちもだいぶ落ち着いてきた頃、格納庫の方に大型の荷物がいくつも搬入されていた。輸送機から下ろされたもので誰が持ってきたものなのかは明白であった。

 

「物資輸送ついでに持ってきた。安くしておくわ」

ジークフリンデ大尉が箱の中身を取り出しながらそういった。

入っていたのは武器だった。それも20ミリ機関砲。そして弾丸は開発されたばかりの徹甲榴弾と硬芯徹甲弾だった。

どうしてそれをと思ったけれどそれよりも先に安くしておくと言う彼女の言葉に反応してしまった。

「待ってくださいタダじゃないんですか?」

 

「反抗作戦の集積物資から合法的に買いつけたのですわ」

さらっととんでもないことを言い出した。それは横領……あるいは横流しというべき事態ではないのだろうか。まあこの辺りはラル中佐もよく行っているからあまり強くはいえないのだけれど。

「書類上は我が部隊の備品とされているが……流石にここまでやるとはな」

荷物搬入を見届けていたラル中佐も少し呆れているようだった。

当たり前だ。正式配備が始まったばかりの最新の武器弾薬を買い付けで取ってきてしまうのだから。バレたらとんでもないことになってしまう。

「書類を少しくらい書き換えれば用意できますけれどもタダで使うというなら返却してきますわ」

 

結局払った。だけれど法外な値段をつけられたわけでもなく、ちょっとしたお小遣い程度でありその実かなりささやかなものだった。

実際酒保で酒を購入するのと大して変わらない程度であったのだ。

その結果、ブレイクウィッチーズ達が余計に増長してしまったのが玉に瑕なのだけれど……




MG-155G

20ミリ機関砲

世界初のガスト式機関砲。
駆動原理
2丁の機関砲がシーソー状のリンクで平行連結され、交互に装填と発射を繰り返す事で高速発射を実現している。そのため砲身が2本あり連装砲に見えるが2砲身で1門である。

ガトリング砲より軽量で信頼性があり連射速度を稼ぎながらもガトリング砲のように発射までのラグが無いため世界最強の機関砲とも言われている。
使用弾薬は徹甲榴弾、硬芯徹甲弾などを使用しネウロイの硬い装甲を食い破る事を目的としている。

ハルちゃんの三走目

  • ストパン2期
  • RtB
  • アフリカ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。