ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

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私が空を飛ぶ理由?元々はお姉ちゃんに憧れてたからだったんだ。

昔からいろんなことをそつなくこなして、海軍ウィッチ航空隊にも次席で予科練を通過して順風満帆。そんな姉が誇りで、それに憧れて、どこか対極的な心境も持っていました。

でも対極的な感情はやる気に変えて今ままで飛んできたつもりです。魔力量が人より少ないと言われても……

 

でも流石にあれを見せられたら憧れで、姉を越えようとして飛んでいる自分がなんだか恥ずかしくなった。

空を飛ぶことの意味ってなんだったんだろうなって……でもやっぱり考えても人それぞれのものでしかないっていう結論しか出なかったんです。

 

 

 

 

彼女はあの作戦で3度の死に接した。

そう言ったのは502JFWの長であるラル中佐だった。

 

1度目の死はペテルブルク基地東方120km地点の上空。長距離砲撃ネウロイを捜索するための偵察機の中でのことだった。

 

 

扶桑国の機体でありながら国籍はカールスラントという歪な存在となった百式司偵のコックピットでジークフリンデは操縦桿を握っていた。

小柄な体格ゆえに余裕のある広さに見える機内で手持ち無沙汰だった彼女は機内電話で後席に乗っている偵察員と会話をしていた。

 

 

「揺れの方は大丈夫かな?」

 

「ええ、快適ですよ。流石の操縦技術です」

 

「そっか……そういえば君の出身はこの街だったね」

 

「ええ、生まれも育ちもこの街です」

まだ20にも満たない少年兵である彼は、司令部の気まぐれな倫理観故になるべく後方職種に回されていた。しかしペテルブルク基地が最前線となってしまった現状では、彼もまた戦線での戦いを余儀なくされていた。

 

そんな彼と話をしながらも周囲の様子を観察していた彼女はこの時小さな光を見つけた。

それと同時に空を黒い物体が高速で飛翔していく。間違いなくそれは放物線を描いて飛翔する砲弾であった。

「通信急げ。位置を送ったら写真撮影に入る。カメラ準備!」

 

 

「了解!砲撃ネウロイを見つけた。位置情報グリットA-3、……森の中に対空ネウロイ!攻撃を受けている」

機体が旋回している最中だった。突然森の中から赤く高熱を放つ光が機体に殺到した。

旋回を止めて上昇に入る。それでもネウロイの射程からは逃れることができない。

「く!撮影を行いますから水平飛行を……」

 

「了解した。ちょっと荒っぽくなるけど頑張って撮って」

それに真っ先に気がついたのは、南西に20kmの地点を訓練飛行していたラル中佐だった。

魔道無線は特性上特定の周波帯がなく、通信機を入れておくと魔道通信が届く範囲内の会話が全て丸聞こえになる。

 

ジークフリンデが使っていたのは魔道通信機だった。

『これ以上の偵察活動は不可能と判断し離脱する』

 

ビームが幾つも空に向かって立ち上り、その中で銀色の無塗装の双発機が木の葉のように舞っていた。

幾つも立ち上ってくるビームのうちの一つが機体に直撃をするコースをとっていた。

その光線はパイロット席を中心に出現した障壁によって弾かれる。それでも弾かれたビームの一部が機体に穴を開けていた。

 

すぐに援護に駆けつけたラルによって撃墜こそ免れたものの、帰ってきた彼女の機体はボロボロで、風防も一部が吹き飛び翼には大きな穴ができていた。

エンジンから漏れた煙が空に一筋の線を描いていた。

同時にオイルとガソリンも漏れていて、着陸した機体は未舗装の滑走路面にオイルの跡とガソリンを垂れ流しにしていた。引火しなかったのは奇跡かもしれない。

滑走路から離れた機体はすぐに消防車によって消火剤が撒かれていた。

「よく帰ってきたものだ……これはもう修理不能で廃棄処分するしかないな」

格納庫に引き込まれていく機体は素人の私でさえ廃棄処分にするしかないほど壊れているように見えた。

電球の光の下でズタズタになった機体を前にジークフリンデはどこか寂しげな表情をしていた。

ストライカーを外したラル中佐は落ち込むなとジークフリンデの肩を叩いたが、その表情が戻ることはなかった。

「仕方がありません……撮影機材が無事だっただけよしとしましょう。ところで後ろの彼はどうなったの?」

「腕を怪我していたようだが、意識もしっかりしているし問題はなさそうだ」

後で知った話だが後ろの席に座っていた中尉も割れた風防の破片で腕に切り傷を負ったが深い傷ではなく軽傷だったそうだ。

ただし内臓に負担がかかっているらしくしばらくは安静にしている必要があったらしい。

同じように廃棄された機体も被弾とは別にさまざまな箇所に歪みと外板の皺が出来ていたらしく相当な無理をしていたようだ。

まさしく彼女だからこそのものだろう。

 

502JFW従軍記者の手記より抜粋。

 

 

 

 

その日の空は快晴に尽きる。そんな天候だった。昨日大破した機体はいまだに手付かずのまま僕たちのストライカーユニットの隣に放置されていた。

ボロボロになった機体を眺めていると、外からエンジンの始動する音が聞こえた。音のした方に行ってみるとやけに旧式な見た目の単発機とハルがそこにいた。

「まさか……またでるのかい?」

 

「なんだいクルピンスキー?これのことかな?」

 

「そうだけど……でも昨日の今日で疲労が溜まっているはずじゃ…」

 

「少しでも戦力は多い方がいいと基地司令の判断だ。今回は爆装して出るつもりだ」

無茶苦茶な答えだった。

下を覗き込むと黒く怪しく輝く円柱状の爆弾が確かに吊り下げられていた。そういえばこの機体も偵察機にしてはなんだか不自然すぎる。カメラ機材を搭載するスペースはほとんどないようだし固定脚でどう見ても遅そうな見た目、その上やたらと分厚くて頑丈そうな主翼ときた。

しかしネウロイのビーム相手では装甲なんてあって無きに等しい。コンマ数百秒ほど蒸発するのが遅くなるくらいだ。

「九九式襲撃機。百式のスペアとして用意しておいた機体を使うことになるなんてね」

正直何があるか分からないや。ハルは笑いながら最後の調整を行なっていた。

 

僕としてはもう飛んでほしくないしこんな機体でネウロイの攻撃の中に突っ込むなんて正気の沙汰ではない。

それでも彼女はそんなこと知らないと言わんばかりの顔で機体の調整を続けていた。命令だから、彼女が拒否をしないから……言い訳なら幾らでも出来るけれど結局僕は彼女を止めることを諦めてしまった。

「後ろの座席は?」

二人乗りの機体だ。後ろの席にも誰かが座るはずだったけれど、今その場所は空席のままだった。

「居ない。だけど問題はない。それに一人の方が楽だ」

彼女にとっては結局どんな機体であろうと1人の方が良いみたいだった。誰も近づけたくない。そんな拒絶の反応だった。

こうなってくると流石の僕でもお手上げだった。

 

「まあ、飛ぶときは多分近くにいるから援護はよろしくね」

 

「観測機が援護されてたらダメだよ。ちゃんと離れたところから観測しないとね」

 

「威力偵察だからそれは難しいかな」

 

難しい顔をされても困るのだけれど……いっそのことぐるぐる巻きにして放置しておこうかな?

 

砲撃を行うネウロイは案外簡単に位置を特定することができた。

今までの観測データと、上空の九九式襲撃機をから送られてくるリアルタイムのデータを元に攻撃発揮位置を特定した。

これがウィッチだけだったら確かに場所の特定に時間がかかっていたはずだ。

 

「くッ…弾幕が濃すぎる!」

問題はそれが自衛のための戦闘力を有していて、しかも大型ネウロイに匹敵する攻撃力だった。

「陽動に乗らないなんて悪知恵が働きますわね!」

最初に陽動として弾幕を張ったジョゼの動きに動じることなく、背後から襲撃しようとしたラル中佐をビームで牽制する。

 

陽動に乗らず正確にこちらの意図を読んで攻撃してくる。確実にネウロイも知恵を身につけている証拠だ。マーカーネウロイの撃破に向かった3人も追跡に手間取っている。このままだと砲撃の方がおこなわれてしまう。

 

ジークフリンデが体験した2度目の死はその直後に起こった。

「これよりネウロイに対し爆撃を敢行する!」

すぐ隣を白色の物体が通り過ぎていった。それが上空でネウロイを捜索していたはずの九九襲撃機だと気づいた時にはすでに手遅れだった。

「ちょっと何考えて……」

 

「偵察機は黙って情報を集めていればいいんだってば!」

だけれどこちらが何を言おうとも、既に降下を始めてしまっている機体は止まることなく僕達の合間をすり抜けた。

ジークフリンデの機体がビームの合間をすり抜けて投弾した。

まるでビームが避けていっているみたいに思えて、危なっかしいけれど不思議とどこか落ちる心配は起こらなかった。

爆弾はネウロイの片脚を破壊して地面に穴を開けた。体を支えられないネウロイが大きくバランスを失い地面に崩れビームの精度が大きく乱れた。その隙を狙ってみんなで一斉にコアを破壊。だけれど直前でネウロイは砲撃を行った。

きっとマーカーネウロイがいるところ……通信施設だ。

 

真っ先にそれを伝えたのもまたジークフリンデだった。

無線施設は複数あるからその場所が破壊されても被害は最小限に抑えられる。マーカーネウロイを撃破した3人も離脱を行ったはずだった。だけれど無線機からはニパが無線設備を庇って墜落したとの知らせが流れた。あの子何しているんだろう。

 

それでも作戦は終わった。彼女はピンピンしている。なんとなくホッとして、戦場にはあってはいけないはずの空気が流れていた。遠目に帰投する九九襲撃機をみる。

主翼の一部が融解しているものの飛行そのものに影響はなさそうだった。

 

それでも固定脚だったところもいくつか被弾したのか融解して溶け落ちていた。

それを見て顔から血の気がひいた。

彼女の最後の死はまさしくそれによって引き起こされた。

着陸できないのだ。胴体着陸も考えられたけれど、片方の脚が残っているためバランスが悪く最悪の場合機体が大破しかねない危険があった。

 

「胴体着陸を敢行する。ウィッチは先に着陸して」

 

「そんなの!」

 

「損傷機は最後に降りるのが規則でしょ。ほら早くいって」

本当はコックピットから引き摺り出したかったけれど飛行中の機体は帯電していて感電の危険があって不用意には触れない。どうすることもできなかった。

 

 

それでも燃料の少ない機体は降りるしかなかった。

着陸の際壊れかけていたフラップがついに機体から脱落し、大きくバランスを崩した機体は破損した方の脚を滑走路に叩きつけ、土埃と火災を起こしながら滑走路中程で止まった。

「まずい!火災だ!」

 

ああなんてことだ。まだ脱出もしていないのに機体は半分炎に包まれていた。

すぐに機体に駆け寄った。

だけれどこちらの心配を他所に、彼女は元気にコクピットを粉砕して脱出してきた。キャノピーを破壊する際に片腕を傷だらけにしながら。

義手となっていた方の腕は着陸の時にどこか壊れたのか機械の部品を内部から垂らしながら力なく垂れ下がっていた。

……いくらシールドを手に展開して割ったとしても破片は普通に当たる。

「血だらけじゃないか!」

 

「ガラスの破片だよ。やっぱり怪我はするもんだね……」

当たり前なんだけどなあ……彼女はどこかそういうところに無頓着だった。

 

 

結局その日、マーカーネウロイと狙撃ネウロイは両方とも駆逐されて、基地には束の間の平穏が戻った。

それでもネウロイによって破壊されたものの代償は大きく、基地の戦闘力に大きな足枷がつくことになった。

後、彼女の腕にも消えない傷が幾つも残った。

 




SC.100 航空爆弾

最大直径250mm
全長1560mm
重量104kg
炸薬量40kg

カールスラント空軍が運用している通常爆弾。
第二次ネウロイ大戦初期、カールスラント空軍の地上攻撃用爆弾は概ね5種類が存在したが、そのいずれもが重量50kg、250kg、500kgのサイズであった。
このうち地上の移動目標へは50kg、250kgが多様されていたがネウロイの攻撃性の激化で通常の攻撃機や爆撃機では地上攻撃がしにくくなっていた。
そのため攻撃ウィッチとして地上爆撃をウィッチに担当させる運びとなったがウィッチ自身が持ち運ぶことができる重量は自衛火器の重量を含め爆弾重量100kg、それも1発というのが限界だった。
そのため既存爆弾では火力が最も小さい50kg爆弾しか運用できないという制約が発生した。
そのため当初ウィッチ用に開発されたのがSCW.100、100kgウィッチ用航空爆弾であった。これをベースに航空機搭載型用としてアタッチメントを追加し、姿勢安定用の尾翼部分の形状を変更したのが本爆弾である。

ハルちゃんの三走目

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