ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

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お久しぶりですので初投稿です。

ちょっと報告のような取り止めのないものです。時間があったらお立ち寄りください。
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海には落ちなかったけれど雷が落ちた。

飛行隊長のサーシャは口煩くストライカーの破損の事を言ってくる。

確かにここの補給能力じゃ補充が利きづらいというのは承知だ。こっちだってストライカーが無かったら困る。

だけれどそれを別にしたってストライカー破損はネウロイ撃破と等価交換で良いじゃないか。どうせ機体は消耗品。ネウロイを撃破できてウィッチも生きて帰ってくれば万々歳じゃないか。

そう思ったけれどそれを口にすれば余計に彼女は怒った。そんな事、わかっているんだ。だけれどネウロイを撃破するためのコラテラルダメージってやつだ。

 

大破した機体を前にしても別に特段何かが込み上げてくるということはなかった。機体に愛着があればと思ったけれど、結局機体は機体でしかない。ただの道具だ。

 

「まあ、結局は生き残って来れれば良いけれどそれは最低限というだけ。ベテランなら機体も壊さず持って帰るものだよ」

ストライカーを見つめていると、あいつがやってきた。相変わらずサングラスをかけて無愛想な表情を変えない。だけれど整った横顔から見える瞳は、慈愛のようなものを含んでいた。

だけれど彼女の言葉に対してどこか自分がまだクルピンスキーよりも下だと思われているようでお腹の底でドロドロとした熱い不快感が込み上げてきた。それは喉を通る時に嫌味に変換されていた。

「わかったよ……だけどそういうあんたはいろんなところの機体を使っているな。節操ないんじゃないか?」

 

「用途に合わせて選んでいるんだよ。軍事機密があっても輸送機とかは多少は融通がきくからね」

そんな負の感情のようなものなど意にも介さず彼女は答えた。単純に気づかなかっただけなのかもしれない。

「ストライカーも国籍問わず揃えられるのにか」

 

「ストライカーは別物だよ。いろんな手段で揃えているだけだよ」

そんな簡単に揃えられて堪るか。そう思ったけれど、実際彼女が部品を揃えていてくれなければ今頃半数ほどの機体は飛行不能になっていただろう。

「まるで武器商人だ」

 

「そうかもしれない。結局、軍人であっても忠誠を誓うべき国家は私には見つけられなかったから……」

興味深い言葉だった。

「あん?カールスラント空軍じゃねえのか?」

着ているフライトジャケットと制服はカールスラント空軍で間違いはないはずだ。それでも軍に属していながら国に忠誠を誓わないなんていうのは恐ろしく矛盾しているものだった。

私だって多少なりとも扶桑国に対して忠誠は誓っている。

「そうだけれどね…忠誠っていうのは他者から貰うものではないから」

 

「……忠誠は栄養、誇り、欺瞞、虚栄、合理性、愚かさ。それら全てを理解した上で自ら選択しなければならない」

 

「レヴンスキーの椿の館かな」

 

「知っているのか?」

 

「昔読んでいたんだ」

 

 

「……そうだ。ストライカーを大事にして貰うために一緒に部品の調達に行かないかな?」

 

「はぁ?なんでそんなこと……」

 

「アレクサンドラ大尉からも言われているんだ。ストライカーを壊しすぎる人には教育が必要だってね」

 

ああ畜生。余計な事を……

 

 

 

新しく導入されたストライカーである紫電改。あいつが使う紫電改二型の元になっている機体だ。ただし中の構造と機構の一部が変更されていて部品の共通化は半分ほどだそうだ。そんで昨日の損傷で壊れた部品は予備パーツが無いから取りに行かないといけなかった。それもサンクトペテルブルクから遥々欧州の端っこであるブリタニアまでだった。

 

薄く張った氷を砕いて作った水上機用滑走水面から飛び立った零式水上偵察機は途中で補給を受けて大西洋に出た。

揺れる風防から外を眺めていると海面に何かが見えた。

 

「お、扶桑海軍の艦隊だ」

眼下に広がる海に、いくつかの船の姿が見えた。三列になって左右に駆逐艦と思われる小さくて細い船が4隻づつ。中央の列の先頭は軽巡洋艦のようだった。その後ろは平べったい板を載せたような艦影。航空母艦だ。

艦隊に近づくにつれて艦影がはっきりと見えてくる。

第二次ネウロイ大戦が始まってから蒼龍型を元にした戦時設計型の航空母艦として建造された雲龍型航空母艦だった。

飛行甲板には陸軍の通常戦闘機やストライカーが専用ラックごと置かれていた。

「欧州への航空機と部品の輸送をしているらしいな……あれにこっちの部品も載っているのか?」

 

「紫電改と紫電、零式ストライカーの整備部品一式だよ。荷揚げされるのを待つつもりだったけど事情が事情だから先に取りに来たんだよ」

 

 

阿賀野型軽巡洋艦が艦隊からやや離れて機体回収のため旋回を始めた。

外洋での着水をしやすくするための行動だ。

水上機は旋回する艦の内側、一時的に波が艦尾の生み出す乱流で堰き止められ穏やかになっているところに降りる手筈だ。

 

出力が下がっていき、ゆっくりとフロートが水面を叩いた。

オレにとって阿賀野型は何かと縁がある艦だった。海軍航空隊にウィッチとして入隊した後に真っ先に送られる海軍航空隊新兵教育隊に入隊する。そこで二ヶ月の基礎訓練を行ったのちに予科練航空隊に配属となる。そのどちらにも実際の軍艦に教育名目で乗り込むことになる。

しかしウィッチは軍人といえど女子であり、それも年齢が非常に幼い。そのため軍艦に乗り込んで行う教育の為には男しかない軍艦の中でも専用の設備を持たせなければならない。オレの一つ前の代では練習艦になった旧型巡洋艦である龍田を使用していた。しかし龍田はオレの代では機関故障で動かすことが出来ず、当時元ウィッチの女性士官の運用を前提に建造された最新鋭巡洋艦であった阿賀野型の一番艦阿賀野が当てられた。

阿賀野型は旧式化した天竜型や5000t級軽巡洋艦の置き換えのために建造された量産型軽巡洋艦だった。

軽巡洋艦と言っても排水量は7000tと一昔前の重巡洋艦に迫るものだった。

だけれど海上におけるネウロイの脅威が航空攻撃となって行った開戦直後から阿賀野型は水上、水雷戦闘を重視した時代遅れな設計の烙印を押されていた。

 

しかし今眼下にいる阿賀野型はオレの記憶にある姿とはだいぶ違っていた。

 

主砲は単装砲の高角砲になり、魚雷発射管も撤去されているのか左右は高角砲と機銃が犇いていた。

軍艦として洗練された姿は、無骨なハリネズミになっていた。

 

航空機を吊り上げるデリックが並走する機体にフックを引っ掛けた。

発動機が止められて機体が航空機用作業甲板に載せられた。

 

「ニーマント大尉です。連絡にあった通り物資の受領に参りました」

 

翼を伝って甲板に降り立ったオレ達のところに2人の士官がやってきた。

 

「TB12船団司令の新堀だ。ようこそ我が艦隊へ」

扶桑人にしては彫りが深い、整った顔つきの士官は新堀と名乗った。階級は大佐。見た目の年齢からしてかなりのエリートなのだろう。

その隣にいるのは中佐だった。おそらく巡洋艦でその階級であればそれは艦長クラスである事は違いなかった。

「軽巡洋艦酒匂艦長の空知です。艦隊合流後に内火艇を下ろして輸送船まで案内します。準備ができるまでお待ちください」

どこか艦長というよりも参謀というのが似合っていそうな空知少佐は、言葉の柔らかさとは裏腹に一切表情を変える事がなかった。

 

 

 

しかし、内火艇の準備が終わる前に、艦全体にラッパが響き渡った。

海軍で嫌というほど聞いた音色。戦闘用意のものだった。途端に艦内が慌ただしくなった。艦長も船団司令も気がつけばどこかに駆けていってしまい。取り残されてしまった。

「おい!この艦にストライカーは⁈」

航空整備員と思われる整備員を取っ捕まえて聞いてみたものの、返ってきたのはそんなもの積んでいないという答えだけだった。

畜生!ウィッチはいるのにストライカーがないなんて。

 

 

 

 

 

「通信参謀、状況知らせ!」

船団司令部とは違い艦長である空知は第一艦橋にいた。副長は既に対空指揮を行うために防空指揮所に上がっていた。

そのため彼は第一艦橋にいた通信参謀に問いかけた。

「北東よりネウロイ接近中!大型と中型の混成部隊と思われます!右舷見張り員からの報告ですと中型1、小型4が真っ直ぐ船団に向かっているとのことです」

 

「近くの航空隊に救援を!第14駆逐隊は進路0-5-0!」

 

「それが、ブリタニア空軍中央指揮所から入電がありまして現在ブリタニア北東方面が大規模な空襲を受けています!」

その言葉に空知は珍しく表情を変えた。その場にいた誰もが余り見ない艦長の表情の変化に内心驚いていた。

「なんだと⁈それでは……」

 

「救援を出すことは出来ないとの事です」

 

「……我々だけで対処する事になるとは。第20駆逐隊は輸送船団の護衛を継続せよ。旗艦酒匂と第14駆逐隊は敵を足止めする!進路そのまま!」

 

本来であれば対空戦闘に最も適した陣形である輪形陣への組み替えを行いたかったものの、今から陣形を変えていては輪形陣を構築中の混沌としたところにネウロイの攻撃を受ける事となる。空知は歯噛みをしたが現状ではこのまま単縦陣で戦うしかなかった。

ネウロイは最も脅威度が高い軽巡洋艦を含んだ戦闘艦5隻の集団に一直線に向かっていた。

 

やはり奴らは輸送船には目もくれないか。

「ネウロイからの攻撃です!」

赤い閃光がゴマ粒のように見えるネウロイを覆い隠した。次の瞬間艦の周囲にマストよりも高い水柱が上がった。最も近いものでも酒匂から200m離れている。衝撃こそあったがそれほど距離があれば船体そのものには被害はない。

「距離は?」

 

「7600m!」

各艦の指向可能な砲兵装がお返しと言わんばかりに空に向かって放たれた。

駆逐艦に搭載された12.7cm高角砲が毎分10発の速射性で連続して火を噴き、酒匂の1番、2番砲がさらに図太い砲火をあげる。

空にいくつもの黒い花火が上がり、ネウロイの姿が翻弄されていく。しかし怯んだ様子を見せないそれらはお返しと言わんばかりにビームが返され、海面に水柱を上げる。

「取舵一杯」

 

操舵員が舵輪を大きく右に切った。20度の角度左舷側に旋回するべく艦首の向きを変え始めた。

ネウロイに対して最大限の火砲を叩き込めるように横を向けるつもりだった。

 

その瞬間、ネウロイのビームが後部クレーンマスト基部に命中し炸裂した。

爆発と共に空知は前方に放り出され、窓枠に顔面をぶつけた。

意識が遠のきそうになるのを根性で堪える。背中に粘り気のある温かいものが質量を持ってぶつかった。艦首が切った海水が降りかかり倒れ込んだ彼の鼻や口に流れ込んできた。

なんとか起きあがろうとして背中を起こすと背中のそれはあっさりと転げ落ちた。

ようやくのことで立ち上がると周囲の情景は一変していた。

天井がなかった。艦橋の上部構造の一部が被弾時の爆発の衝撃で吹き飛ばされてしまっていた。

 

背後にあったはずの方位盤、高射指揮装置、電探が一体化された構造物とその前方に設けられた防空指揮所は跡形もなく消失していた。爆発の衝撃で吹き飛んだのだろう。

「状況……」

 

船体が傾斜したままだった。取舵をとったままになっている事に気がついた彼はすぐに操舵輪に飛びつき、運動エネルギーを相殺した。

切りすぎていた舵を面舵をとって修正する。

それにしても他の士官はどこに行ったのだと激痛を訴え出した体に鞭を打ちながら彼は考えた。

 

 

 

非戦闘員となってしまったオレとジークフリンデは第三甲板にある兵員待機室に押し込められていた。

だけれどジークフリンデが零式に旧型ながらストライカーが置いてあるのを思い出し事態は一変した。それを使えと言ってくれた彼女の為に甲板に上がろうとして、激しい振動でラッタルから落ちた。

 

被弾したのだ。直ぐに甲板に上がったものの、周囲は一変していた。

ネウロイのビームが直撃したクレーンマストの根本は融解し、周囲にあったものを根こそぎ吹き飛ばしていた。

煙突もファンネルキャップが吹き飛び、後部側は裂け目が出来ていた。

艦橋トップも被害を受けたのか火災が起こっていた。

 

「艦長!無事か!」

気がつけば艦橋に駆け上がっていた。肉が焼ける匂いと硝煙と海水の匂いが混ざった刺激臭が立ち込める。

「君は…管野君だったか。私以外は全滅のようだ。他の区画の状況は分かるか?」

 

「後部クレーンマストが左舷側に倒壊しているけど以上の事は……」

ついでに零式は吹き飛ばされて残骸になっていた。ストライカーが無事とは思えない。

「分かった。すまないが操艦を頼めるかな?」

白い軍服のところどころが赤く染まっている。満身創痍と言っても差し支えなかった。

「いや、やった事は無いんだけど」

 

「大丈夫だ。こちらで指示をする。今は人手が欲しい」

 

『電探室より艦橋‼︎新たなネウロイの反応あり‼︎』

 

艦橋要員は艦長以外の全員が死んでいた。

人としての最後にしては惨たらしいものばかりだ。

足を踏み出した時何か柔らかいものを踏んだ。下を見ると、ピンク色のミミズを巨大化させたようなものがあった。

腸の一部だった。

 

「ああくそう!」

 

それから十分の合間、地獄のような艦橋でオレは舵を取り続ける羽目になった。こんな光景を見たいが為に軍に…ウィッチになったわけじゃ無い。オレは……護るために強くなりたかったんだ。

ああそうか。ストライカーが壊れていたら肝心な時に出る事が出来なくなるんだったな……確かにそうだった。

 

 

 

「管野、ストライカーの準備は出来たよ。操舵を代わるから行っておいで」




軽巡洋艦酒匂

阿賀野型軽巡洋艦4番艦

建造国
扶桑国

運用
扶桑国海軍


全長174.5m全幅15.22m
基準排水量6651t/満載排水量8402t

機関
主缶 艦本式ボイラー6基
主機 艦本式タービン4基
推進器 4軸
出力 102,000hp
速力 35.0kn/h
乗員 730名
兵装

62口径2式15.2cm単装砲 4基4門
60口径九八式10cm連装高角砲4基8門
九六式25mm三連装機銃8基


球磨型から始まる5500トン型軽巡洋艦を水雷戦隊の旗艦としていた扶桑国海軍は兵装の強大化と軽巡洋艦の汎用性、火力強化のため大型化を模索し始めた。

昭和十四年度の第四次海軍軍備充実計画で新型軽巡洋艦6隻の建造が承認された。このうち4隻は水雷戦隊旗艦用とし大蔵省に請議された。軍令部からの要求性能は基準排水量6,000トンで15cm連装砲4基、61cm四連装魚雷発射管2基、水上機2機とカタパルト1基、最大速力35ノットとされた。
しかし実際に建造が始まった頃に発生した第二次ネウロイ大戦により、航空脅威が異常なほどの明瞭さを持つようになった結果として2番艦能代が就役した段階で新型軽巡洋艦は大規模な改装を余儀なくされた。
その結果として3番艦,4番艦は大きく姿を変え収益することとなった。

後に1番艦,2番艦も同様の改装を行うこととなり1944年1月にはこれら4隻は戦力化され数雷戦隊の新旗艦として誕生していた。


船体
船体の大型化に伴い基本設計は従来の5500t級巡洋艦から古鷹型重巡洋艦を参考とする事になった。
第一第二砲塔を前部に、第三第四砲塔を後部に背負い式としたオーソドックスな武装配置とし、艦隊指揮所として機能する司令塔を艦橋基部に設けている。
艦橋後部には煙突と半分一体化したマストを持ちこの上に対空電探、対水上電探、電波探信儀などの電子装備をひとまとめにして設置している。
また艦橋トップには射撃指揮所、高射式装置を搭載し一部構造物はマストと一体化している。
煙突後方には航空機用作業甲板が設けられ、カタパルトと合わせて2機の水上機を運用できる。


武装
従来搭載を予定していた15.2cm砲は元を正せば金剛型戦艦に搭載していた物をベースに装填装置を一部改修した旧式な水上戦闘用の砲であり対空戦闘には全くの役に立たない代物だった。
そこでこれらを撤去し、砲塔部を流用して全く新規に誕生したのが62口径15.2cm高射砲である。周辺装置の問題や自動装填装置の大型化に伴い従来の砲塔リンクを流用する場合単装砲でしか搭載できなかったものの改装の手間と時間を考慮してそのまま搭載している。

魚雷発射管を撤去し、スペースと重量を確保して副砲の10cm高射砲を搭載している他対空機銃の増設を行っている。

ハルちゃんの三走目

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