ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

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お久しぶりですので初投稿です。

ちょっと報告のような取り止めのないものです。時間があったらお立ち寄りください。
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最初は何を言っているのか理解できなかった。

血といろんなものが焼ける焦げ臭い匂いの中で頭がおかしくなってしまったのだろうかとさえ思った。艦首が切り裂いた波が窓ガラスのなくなった正面から流れ込んできて血混じりに床を洗い流していく。

真上を見ればビームが空を裂いて近くの海面をたたきに向かって行った。

「ストライカーって……壊れたんじゃ」

そうだよとあっけらかんとした返事が返ってきた。

「まあ水上機ごと壊れてたけどそこまで酷い破損じゃないからすぐに直した。応急修理だから20分保つかどうかだけどね」

だからこの場は任せてさっさと空に行けと、扶桑語で彼女は言った。操舵輪の一部を既に手にしていた。代われという合図なのだろう。

「あ、ありがとう」

 

 

艦長、操舵代わりました。

背後で聞こえる声を振り切って来た道を引き返した。あの空間に居たくないと言う心理もどこかにあったかもしれない。

左右に小刻みに舵を切る酒匂。機敏に船体を傾けさせては甲板に海水をぶち撒ける。体が何度も手摺や壁にぶつかり、まともにまっすぐ走るのも難しい。

機関砲の弾が収められていた木箱が、使用した薬莢が、弾倉が至る所に散らばって波や揺れで移動したり海に落下していく。脚で幾つか蹴飛ばして、ようやく航空機作業甲板に到着した。

飛行甲板もマストも相変わらずメチャクチャになっていたが、水上機の残骸の側にストライカーユニットが確かに係留ロープで残骸に括り付けられ留め置かれていた。

だけれどそれは欧州で勝手を知っている紫電改でも、訓練で使用していた零式練習飛行脚でも無い。ある意味では骨董品に近い存在だった。

「零式……21型⁈またとんでもなく古い機体だ」

 

九六式ほどでは無いにしても初期型である21型は既に一線から淘汰されていた。今では空母艦載ですら52型が主流だ。

それでもこれで戦うしかなかった。

武装は20mmの1号型。訓練では専ら2号だったから触ったのは初めてだ。

2号よりも短い銃身。確か教官の話ではかなり弾道が山なりになるからやや上方を狙って撃つ、それもかなり近づいてだ。と言っていた。

兎も角やってみるしかねえ。

「管野、発進!」

離陸に必要な滑走をする場所が見当たらずかなり無理をした全力発進だった。それでも応急修理だとは感じさせない力がそれにはあった。残骸を避けつつ、艦を飛び立つ。速度を上げつつ急上昇に移る。

「出力は全然ないけど、相手は低空なら零式だって!」

 

まずは後続の駆逐艦に攻撃をしようとしている小型ネウロイの横を強襲。銃弾はやや上方を流れていったが狙われている事を悟ったネウロイは反転上昇に移った。

だがこっちの方が速い。地表に近い潮混じりの濃い空気を吸い込んだ発動機が一瞬ストールしそうになる。それでも次の瞬間には有り余る出力で体が蹴り出された。

見越しは大体掴めた。照準もいい。後は引き金を引くだけだった。

20mm弾がネウロイの側面を抉り取ってコアごと吹き飛ばした。

まず一体目。

 

旋回しつつ上昇して新たな敵を探す。

次、他の駆逐艦を襲っているやつ。こいつは動きが甘い。簡単に背後を取れた。破片が空に飛び散った。周りのネウロイがようやく脅威に気づいたらしい。もう遅い。

「撃墜!」

次、中型ネウロイを護衛しているやつ。

横っ腹を叩けばあっさりと破壊された。

艦を攻撃していたネウロイが背後に回って来た。チェック6の声が無線から聞こえた。出力を絞って強引にターン。相手よりも狭い旋回半径を描いて背後に回り込む。

射撃。弾倉の中は半分。

 

半数を撃破した段階で残弾は後マガジン一個分。中型ネウロイは依然として艦隊全体を攻撃していた。

だが小型は数が減って来たことで艦隊の防空火器の密度が上がって撃墜される個体が多くなった。

「丸裸には出来たが…あいつ対空防御もかなりやりやがる」

いつものように拳でといきたいが、零式だとこっちがアレを撃破するまで保ちそうにない。コアを叩く前にストライカーが死んだら意味がねえ。

「こうなりゃ……一か八かだ‼︎」

 

相手のコアの位置を20mmで探る。

あの大きさの相手じゃこの1号機関砲の貫通力じゃコアまで届かない。それでも多少周りの装甲を抉ることはできる。

黒い装甲が剥がれ落ち、赤い光が銃弾の開けた穴から見えた。光が濃い位置。そこがコアに1番近いところ。

 

「見えた‼︎あそこがコアか‼︎」

 

周囲の組織を修復される前にコアを直接叩く‼︎

 

 

「はあああああッ‼︎」

 

ビームが放たれる前に、オレの拳が装甲ごとコアを貫いた。

 

 

 

 

 

 

いくら事前に準備を行なっていたところで軍隊にとって戦争というのは組織経営において悪夢でしかないものだった。

その戦争に備えるのが軍隊ではあったけれど、同時に軍隊なんてものは人間が作り上げているものでしかないのだった。

だから予測し得ない人員、装備の損耗を無視してしまえるものではなかった。

「水上機と予備ストライカーの完全損失。紫電改の予備部品の回収でどうしてこんなに損失が出るのよ……」

原因は分かりきっていた。だけれど口に出さずにはいられなかった。

水上機は基地では数少ない機体であり滑走路が使用出来ない状態でも運用可能な後方戦力だった。

それに積まれていた予備の零式もエンジンは完全に焼けてしまいもう鉄屑にするしかない状態だった。

「まあ良いわ……なんとか正面戦力だけでも最低限維持できるようだし。もう戻って良いわ」

言いたいことは他にもあったものの、私は……サーシャは、最終的には損耗と補充の天秤に従った。

 

身長差があまりない管野とニーマントが部屋を後にする。けれど廊下の声は意外とよく聞こえるものだった。

 

「……すまなかった」

管野が謝っていた。

「何のことかな?」

 

「零式ストライカー壊しちまって」

 

「構わないよ。どうせ耐用年数が近かったしあのまま置いてても時代に取り残されるしか無かっただろうからね」

「まあ、命があって五体満足なら最低限。機体も無事で一流って考えくらいでいいと思うよ」

本当にその通りだと思う。命があっただけ良かったのだろう。それでも覚悟しなければならない。502の飛行隊、それを整備する後方支援隊。誰かは死ぬことになるという現実を……

 

 

港に緊急入港した輸送船団と残存の護衛艦隊は旗艦以下2隻が大破判定を受けて緊急修理のため埠頭に横付けされていた。

補給品と食料などの物資関係の調整で港に行くことになった私は、少しだけ出来た時間にその艦を見ることにした。

乗ってすぐに感じるのは血の匂いと焼けこげた匂い。

艦橋の上を損失し煙突からマストから屑鉄の山のようになっている軽巡洋艦の艦橋。

血と海水が混ざったものが床に広がり、いまだに片付けられていない人だったものが無数の破片となって散らばっている。

割れた窓ガラスの破片を踏んだのか足元から砕ける音がして、下を向けばそこにはガラスだけでなく肉片のようなものがいまだに残っていた。

気分が悪くなり足早に艦橋を降りた。こんなところで管野もニーマントも、艦長さんも戦い続けたのか。

「なぜ生きているのか不思議でならないな…」

艦橋要員であの時唯一生き残った空知艦長は、至る所に包帯を巻きながら艦橋を見ていた。

「本当によく乗り切って……」

 

「君たちの所のウィッチがいてくれたからだよ。艦を代表して礼を言う」

彼女はしっかりと務めを果たしていた。ならもう少しだけ優しくしても良かったかもしれない。

 

ペトロザボーツクに向かっているネウロイを排除しろと言う命令が来たのは僅か二日後の事だった。

 

 

 

 

 

 

陸路からの補給を脅かしかねない位置を絶妙な速度で移動するネウロイはかなりの大型で尚且つ奇怪な姿をしているそうだった。偵察機の撮った写真には縦に太い柱のような胴体からいくつかの横棒が伸び出たような姿のものだった。今までも異質な見た目のネウロイはいたけれど空を飛ぶネウロイでこれほど現実離れした見た目は初めてだった。

さらに厄介なのはこれに続くように地上にもネウロイの群勢が存在すると言うことだった。

地上のネウロイはこちらの軍隊を真似ているのか戦車型と装甲型が大体12体で一塊りのように集まって進撃していた。いずれも進撃速度は比較的ゆっくりだった。だけれど補給路に並行するようにして移動するそれはゆっくりであればあるほど強い圧力となって輸送隊にかかっていた。

特に空と地上の両方から挟撃される危険性がある。そのため輸送隊では一部を夜間に少数の部隊で高速で送り込む鼠輸送に切り替えられていた。

 

グレゴーリ攻略のために兵力の温存が必要とされる現状では、ネウロイに最も効果的である502の単独での撃破が求められている。

 

おそらく飛べる人は全員飛ぶことになるだろう。怪我をしているクルピンスキーや隊長、機体の整備ローテーションが被っているジョセを省くと……未だ疲労が抜けていないであろう管野を連れて行くのは避けたかったけれど中途半端な戦力では太刀打ちが難しい。

特に管野は突っ走る性格だから気をつけないと。

 

でも輸送を担当する彼女にまで戦線に……いや今更よね。ストライカーの腕も落ちていないし爆撃機で出撃だってしている。それに地上の相手をさせておくのならまだ大丈夫。ええきっと……無茶をさせたくはないけれどそれでも彼女は空に戻ってしまう。空に心を囚われているから。

「ならそれなりの武器と機体は用意しないといけないわ。彼女のためにもね……」

「本当に頭を悩ませるわ」

 

それでも止まるわけにはいかないのだった。

 

 

 

 

 

お見舞いついでに大型ネウロイの写真を持ってラル中佐がやって来たのは、日も暮れた午後5時だった。電球の灯の下で白黒のピンぼけした写真は見づらいところがあったけれどしっかりとその特異な形状を収めていた。

「ふぅん、これはまた変わった形だね」

今までも特異な形状のネウロイはいくつも目にして来た。その中でもこれはずば抜けていた。翼のような存在がない上に進行方向がどちらかわからない。雲がなければ真上から撮ったと言われても違和感がない。残念ながらこれは真正面から撮ったものだそうだ。

「コアの位置も特定できていないから余計に手がかかる相手だ。無論その方が食いごたえがあるのは確かだがな」

まあ確かに常識的な空飛ぶ形からはかけ離れているけれどこれはこれで攻撃力が高そうだった。立体型の城。空中要塞のような存在だろうか。

「隊長もまだ怪我が治り切ったわけじゃないんですからこれはお預けですよ」

かく言う僕自身も怪我はまだ治らない。回復魔法を使えばもう少し早く治せるかもしれないけれどジョセに無理をさせるわけにもいかない。

「わかっている。しかしいざとなれば出るしかない」

その時が来ないことを祈りたいものだね。病人まで前線で戦うようになったらそれはただの地獄でしかない。ただそれはいいとしても……

「だけどあれは……出していいのかな?」

滑走路に面した病室だからエプロンに止められている飛行機たちや飛び立つみんなの姿が普段から見える。そんな中に一機だけ今まで基地では見たことがない機体が止まっていた。この作戦のために用意された機体。それを操るのはもちろん彼女。そしてあれを用意したのは意外なことにサーシャだった。

「地上のネウロイを撃破するためらしい。火力も防御力も十分だ」

 

「確かにそうだけど、でもそれは戦場に出すって事だよね?」

 

「確かに戦場に出す事になる。私としても望んでないしやめてほしいとは思っている。だが文句は山ほどもあるだろうが今は人手が足りない。彼女も導入しなければウィッチが持てる火力だけじゃ地上と空の両方を抑えるのは難しいのだよ」

 

「難儀だね」

 

「難儀だ。それでも、やるしかないのだ」

代償は払う。今更私の手が汚れようともうとっくに汚れているから変わらない。戦争が終わったら私は責任を取る。そのつもりだ。

 




Do301H
製造国
帝政カールスラント

開発会社
ドルニエ社

全長15.23m、全幅16.55m
空虚重量3605kg
最大離陸重量6580kg
発動機
DB605EA
最大出力2510hp MW50使用時2630hp
最高速度401km/h
固定武装
MG213 30mm砲3基3門

ドルニエ社が開発した攻撃機であるDo301の中でも進化し続けるネウロイに対抗するべく強化を行ったのがH型である。
従来のG型までとは異なりコックピット下部と側面に装甲が入っている。
また各部に改良が施され、大きく変更された点としては胴体後部に収められたエンジンがDB605へ変更されたこととそれに伴うエアインテークの形状変更。胴体右側に大きく飛び出た過給タービンなど。またエンジン変更に伴いカウル形状も変わり全長が若干伸びている。
武装は固定武装として機種に新開発の30mm機関砲を3本束ねて装備している。
ハードポイントも強化と増設が行われている。
主翼片側に4箇所の8箇所(右翼から1番〜8番)に加え胴体に4箇所(右前から9番〜12番)で12箇所とし対戦車用大型空対地ロケット砲をレールランチャーを介して2番と7番に4発づつ。120kg爆弾を9番から12番、60kg爆弾を4発まとめて3番から6番まで、空対地小型ロケット砲の発射レールを1番と8番に搭載する事を前提としている。

ハルちゃんの三走目

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