ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」 作:ヒジキの木
上空を移動するネウロイはその姿を隠そうともせず、悠々とその姿を威嚇に使っていた。意外にも高度が高い。だけれどこちらのユニットの性能なら問題はない。私達の遥か下を銀色の光が通り越した。
地上のネウロイを襲撃するために前進する攻撃機だった。たった一機。だけれどそれを駆るのはカールスラント屈指のウィッチだ。
『地上ネウロイの姿が見えた』
私達の攻撃開始と同時に、地上でいくつもの爆発が上がった。
早速の攻撃だった。たった一機で派手にやっている。
あれでは確認された地上ネウロイは残らず吹き飛んでしまったのではないか。そう思えた。
意識を部隊に戻せば、ネウロイに対して突出している影が見えた。
しきりにビームが放たれては部隊全体を覆うようにして広がっていった。
無論そのような散漫とした攻撃で落ちるような人は502にはいない。突出している影。管野中尉もまたネウロイからの攻撃は私たちと同じ程度だった。
近づいても攻撃を強めたりしない?牽制射撃にしては何かが変だ。
いや、それだったとしてもひかりさんの方に攻撃が集中気味のような気がする。
もしかして位置?
「まさかこの動き……」
試してみる価値はあった。ひかりさんに援護を頼みつつ、持ってきていた重ロケットを全弾斉射。6本の白煙が上がって、ビームの隙間を縫うようにして飛んでいった。
ロケット弾は銃弾と違って大きい上に速度が遅い。だから2発はビームによって迎撃されたって
だけれど残り4発はきっちりと狙った場所に命中し、その弾頭を炸裂させた。
一際大きな爆発と共にネウロイの下半分が抉れるようにして吹き飛んだ。
破壊された後から覗く赤い光。間違いない。コアだ。
「やっぱりコアだわ!」
「なるほど、コアを守るようにして反撃していたわけか」
「それなら‼︎」
「待って管野中尉‼︎」
サーシャの悲鳴じみた声が聞こえた。突出気味だった管野さんが加速してコアに飛び込もうとしていた。まだ外装は回復していない。好機のようにも見えた。だけれど不自然なほどに周囲の攻撃が止んでいた。
「管野さん!回避‼︎」
いくつものビームが集中して管野さんに降り注いだのは私の警告が届くのと同時だった。
咄嗟の判断だろうシールドを展開して急降下に入っていた。だけれどシールドを張られるのは想定済みだったようで、ネウロイは狡猾にもシールドを叩き割るように、一点集中の攻撃をしていた。
負荷に耐えきれないシールドに綻びが生まれて、ガラスが砕ける音がした。
閃光が空に瞬いて、一瞬管野さんに飛び込むような影がその光に溶けたのが見えた。
爆発と共に爆煙をまとった影が二つ出てきた。1人は管野さんで、もう1人は飛行隊長。
意識がなくただ自由落下するだけのサーシャを間一髪で管野さんが捕まえた。
明らかに指揮ができる状態ではない。指揮権は自動的に次席のもの、(階級ではなく軍歴や戦闘資質)私に引き継がれた。
真っ先に下した命令は、とても簡素かつ有無を言わせないもの。
「作戦中止‼︎作戦中止!」
管野さん1人ではサーシャを引き上げるのは困難だった。2人がかり。実質戦力は大きく低下して私とひかりさんだけ。それだけの戦力であれを倒そうなんてのは無理があった。
だけれど戦場に深入りしてしまっている現状では負傷者を連れたままの撤退も非常に困難というしかない。
ジリ貧。そういうにふさわしいものだった。それでも指揮官であるからには虚勢を張り、不安を部下に悟られないようにしなければならなかった。演じることで動揺を最小限とする。私も、そして部下にも。それが上に立つ者の定め。
引き攣った頬が釣り上がる感覚が不快感として伝わる。
「時間を稼ぐ。撤退の支援は必要だろう?」
銀色の翼が翻って、ネウロイを下方から銃撃していった。
地上攻撃を行っていた彼女が舞い上がってきた。類を見ないプッシャー型の機体がビームの中で舞い踊っていた。
離陸前にはみることができなかったその機体は、通常の茶色や緑の迷彩の上から翼の端が黄色く塗られた変わった塗装をしていた。まるで迷彩効果なんて無視したような奇抜な、昔のストライカーのような騎士のような風格があった。
ネウロイに対して残った武器、機関砲を振り回す機体は、不思議なほどにビームに当たらない。
相変わらずの動きだった。むしろストライカーを履いていた時よりもキレが良くなっているような気がした。
「ちょ!そんなのまともじゃないですよ!」
大型ネウロイ相手に飛行機が一機。それも純粋な戦闘機ではなく地上攻撃機だ。ひかりさんが叫ぶのも無理はなかった。
『ひかり、[まともでいる]という贅沢は後で楽しめ』
だけれど帰ってきたのは冷たい返答で、それでいて戦場の中では的を得ているなんとも言えない矛盾に満ちた答えだった。
「そんな……」
絶句しているひかりさんを下がらせる。時間を無駄にしてはいけない。こうしている合間にもサーシャが助からなくなるかもしれない。
「貴女1人だけを行かせるわけには行かないわ」
あの子を盾にするという選択肢も私は取ることはできない。飛行隊長のサーシャがやられた今、現場指揮は私の責だ。責任者は最後まで殿として残る。そう教わった。
『声が震えているよ』
「貴女こそ声が震えているわよ」
『ははは、なら私も貴女も同じ病気というわけです。臆病。帝国空軍の精鋭2人が困ったものですね』
臆病者。そうなのかもしれない。教導、それを主体として今まで飛んできた私には指揮を取る勇気は実はあまりないのかもしれない。
作戦遂行より生かすこと。生き残ることを主体とする。戦争の目的を裏切る行為だ。
『まあ、生きていればまた再攻撃できます。ともかく今は時間を稼ぐべきです』
「ええ、誰に頼まれた訳でもない。ましてやこの状況で最もこの場から逃がしたい人が地獄で暴れるというのだもの。生きて地獄から帰るようにするのが指揮官の務めよ」
別に深くまで踏み込んで攻撃する必要は無かった。
ただ、撤退していく味方があれの射程圏外に逃れるまでの合間どうにかして攻撃を引き付け続けられればよかった。
だけれど相手も莫迦ではない。すぐに私達の意図に気がついて、撤退する管野さん達を狙い撃ちにし始めた。
そうなってしまったら相手に狙い撃ちさせる余裕を与える事はできない。必然的に距離が詰まる。
私の武器は6連式のロケットランチャーで、全弾をコアへの攻撃の時に使い切ってしまってただの伽藍堂になっていた。予備の武器は拳銃のみ。
大火力が当たり前になった空には細やかな音と光しか生み出さない。それでもやるしかなかった。
5分に満たない遅滞戦。されど、永遠に続くかのような恐怖が体にまとわりついていて、私達が攻撃圏内から逃れた頃には嫌な汗が身体中に沸いていた。
大型ネウロイは地上の仲間がやられた事を知っているのか、こちらへの進撃をやめてその場に停滞していた。
追撃の心配はなさそうだった。
ビームでシールドが突破される寸前までいったのは何度あっただろう。発動機の調子が悪い。みれば、オイルが漏れていた。
白くなって吹き出すオイルは、次の瞬間にはストライカーの外装をその液体内部に含んだ煤によってたっぷりと黒く汚していた。
どうやら高機動の繰り返しで負荷がかかりすぎたらしい。被弾ではなく自壊。それでも基地までは飛行できる余裕は残っていた。最悪隣を飛ぶ攻撃機の翼にしがみつけばいい。
それよりも心配だったのはサーシャの容体だった。
即死した訳ではないのは明らかだったし、その後もまだ息はあったようだから基地まで保ってくれているとは思いたい。
しかし何事にも運が悪いということもある。もしかしたら502としては初めての戦死になるかもしれない。そんな考えが頭を横切った。
だけれど基地に戻るまでは分からなかった。祈るしかなかった。自分自身のストライカーが保たない事よりも重要なこととして頭は考えていたようだった。
幸いにも彼女は無事だった。
着陸して直ぐに容体を見に行ったら、すでに山場は超えていた様子で血の滲んでいる包帯を取り替えられている最中だった。
意識は戻っていないものの呼吸は平常のように見えた。
重症だったけれどジョゼの回復魔法と、的確な応急処置でなんとかなったのだった。だけれどすぐに戦線に復帰することは出来ない。怪我の具合からもう2度と飛べないという事にはならなかったけれどそれでも数週間は空に上がるのは無理だろうということだった。
それでも目標だったネウロイの撃破という命令は待ってはくれない。作戦に失敗したからといって目標自体がなくなる訳でも、ましてや他の部隊が代わりに戦うという訳でもない。
欠けた戦力は無事なメンバーで穴を埋めて再び空に出る事になる。
それに時間も無い。地上のネウロイの増援が戦略偵察部隊によって確認された。
まだ大型ネウロイとは合流していないものの、時間は24時間あるか無いかだ。もし合流されてしまったら再び進撃が再開されてしまう。
休んでいる暇も、責任を感じている暇も無かった。
管野さんには悪いけれど、自らを責めるのは後にしてもらうしか無い。
その事を伝えに病室を後にするも、肝心の管野さんはなかなか見つからなかった。普段居そうな場所を探してみたものの、私はあまりにも管野さんの事を知らなかった。一体どこに行っているのだろうか。
ダメ元でストライカーの整備区画に行ってみると、いつもの茶色いフライトジャケットを身に纏った姿で管野さんはストライカーを覗き込んでいた。
手には工具が握られている。
「ここに居たのね」
「ロスマン曹長?」
私が近くにいたことにようやく気づいたのか慌てた表情で彼女は振り返った。
整備をしようとしていたらしい。床にはいくつかストライカーから取り外された部品が置いてあった。
「明日の早朝、あのネウロイを撃破しに出るわ」
「……」
「階級上は貴女が指揮官よ」
「ジョゼはどうした?」
本来であれば少尉であるジョゼが行うべきだったけれど現状彼女は出撃できそうに無かった。
「ジョゼはサーシャの看病もあるし医療処置で魔力を消耗しているから明日の出撃は無理よ」
その上彼女は少尉であっても同時にパラメディックとしての技能と役割を持つ。部隊指揮を取るには兼任することが多すぎるのだった。
「あんたはやらないのか?」
「私には部隊指揮の才能はないわ」
その上に階級上の問題もある。臨時で指揮をするならともかく通常軍曹が指揮を取るなんてことはない。分隊であれば別だけれど。
「……わかった。なんとしてもあのネウロイを潰す。後…今日はすまなかった」
少し迷いがあった様子だったけれど、管野さんは迷いを振り払った。
「気にしないで、まだ取り返しはつくから。ちゃんとあれを倒せたならね」
もう少し言いたいことはあったけれど、言葉は続かなかった。いや、続ける必要はなかった。
おそらく彼女は迷うだろう。納得しきれていない部分のことが多いだろう。それでも今の管野さんならその迷いは断ち切れる。
あの戦闘スタイルは諸刃の剣でもあるけれど上手く使いこなせたら、戦略級の戦闘力を発揮する。
なら後は空に上がってからだ。
紫電改 管野専用機ver
開発国
扶桑皇国
開発会社
山西飛行機
発動機
ハ-45-21(誉21型)
離昇出力1980hp
紫電を基本とし翼の位置や形状、胴体部分の強度設計の見直しなどを行なった機体であり、零式の後継機である試製17式艦戦の開発遅延に伴い暫定的に零式後継機として運用された機体。
局地戦闘機であるため航続距離の問題があったものの欧州のストライカーと比べた場合平均的なものであり主な戦線が欧州であったことからさしたる問題とはならなかった。
管野直枝が運用するのは機体番号4357号機。この機体は主だった改装やチューニングは行われていないものの、本人の運用方法の問題から修理機会が非常に多く、オリジナル紫電改の部品の他にBf109の燃料ポンプ、紫電のエンジンカウル、ピットファイアのプロペラスピナーなど使える部品を片っ端から集めて修理している。そのため細部は純正と比べ異差がある。
また主桁の一部が本人の飛行特性によりやや左に歪んでいるため全体的に左に行きたがる癖がある。
一時期排気タービンを搭載していたがターボラグを嫌ったため短期間のうちに取り外されている。そのためエンジンカウル一部が不自然に出っ張っている。
ハルちゃんの三走目
-
ストパン2期
-
RtB
-
アフリカ