ストライクウィッチーズRTA「駆け抜けた空」   作:ヒジキの木

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 ロスマンが去って、一人また格納庫に残された。

明日はオレが指揮官。彼女に言われた事を頭の中で反芻するが同時に浮かんでくるのは納得なんかじゃなくて困惑。

オレのせいでこうなったのにどうしてオレが指揮官なんてのうのうと……

 

 

また足音が聞こえてきた。誰か来た?なんて思っていたらそれはニーマントのやつだった。

確かこいつ大尉だったよな?しかもエースとしての技量だってある。なんでこいつじゃないんだ?

「ロスマンに言われたよ。明日の指揮官はオレだって」

いやわかってるさ。彼女には関係がない。彼女は502のメンバーじゃないんだ。だけど言葉が溢れ出た。

 

「今日の失態はオレのミスだ。あいつが怪我したのも全部……そんな奴がどうして指揮官なんか……」

オレの言葉にあいつは頷きもしない。ずっと聞いているだけだった。

「なんでなんだ!」

 

気がつけば私はニーマントの胸ぐらを掴んでいた。

代わってくれ。その言葉だけは飲み込んだ。それを言ってしまったらオレはここにいる資格がなくなってしまいそうだから。

 

「……どうしてなんだ!」

まっすぐな瞳がオレを見つめていた。

「戦争だからだ」

 

「戦争……」

戦争、ネウロイとの生存権を賭けた戦争。

「そしてここは軍だ。上官が死んだら次の階級の者が指揮を取る。たとえそれが自らの過ちで引き起こされたことでもだ」

 

「そんなの!」

わかってる。その言葉は言えなかった。知っていても納得できていない。そのことにようやく気がついた。

「戦争は一分一秒を争う。そこに私情は関係ない。それができなければ……軍を辞めるんだ菅野」

 

「……わかった」

 

「それが……軍人としての彼女への罪滅ぼしでもあるんだ」

オレはまだ戦争を根本的に理解していなかったらしい。

「私は……」

昔のオレが出ていた。能力が開花する前の文学少女の時の性格だ。

「深く悩むな。私も明日は出撃する」

カールスラント空軍の制帽を被り直したニーマントは毅然とした態度でそう言った。でもなんだかそれがカッコつけているような感じだった。

「また爆撃機か」

 

「502の足手纏いにはならないよ。文学少女」

何が足手纏いだ。あんたが乗った機体はなんだろうと並のウィッチ以上の活躍をするよ。

「文学少女じゃねえ。それは……ウィッチになった時に居なくなった」

ああ、厳格な両親がウィッチになるのを猛反対したあの時にな。

 

 

 

 

 

 

 緯度が高い地域だから、早朝に出撃となるとまだ外は暗い。戦闘が始まる頃には明るくなっているが、それでも暗い中での出撃は緊張が高まる。

ナイトウィッチの先導が本当は必要なんじゃないかって思うがそういうわけにもいかなかった。

 

実際空にあがってからしばらくして日が昇った。同時に先行している電子偵察機からネウロイの位置が送られてきた。昨日壊滅させたはずの地上のネウロイもどこかで補充したのか数が回復しているとのことだった。

 

 

オレ達の後ろには爆撃機が一機続いていた。

昨日とほぼ同じ。だけどウィッチの数は少ない。攻め切れるだろうか?

 

早速ビームのお出迎えだ。昨日の戦闘を学習したのか昨日と違って遠くから空を飛んでいるオレ達を一方的に攻撃してくる。

だが遠いって事はそれだけ着弾までの時間がかかるから回避しやすくなる。案の定全員回避していた。

作戦はネウロイを上下から同時に挟み込んで叩く。昨日の戦法は学習されている可能性があったからオレが基本的に気に入っている戦法にした。

 

「オレとニパで真正面からいく、それ以外は後ろから狙え!」

あのネウロイの弱点は背後のコア。そうだろうサーシャ。

 

大型ネウロイの姿が大きくなってきた。

同時にストライカーユニットとは違う重厚な音が下から響いてきた。

真下に爆撃機がいた。飛行帽を被ったアイツが見つめていた。

「上空は任せておけ」

『信じているよ菅野』

 

そう言って爆撃機は離れて行った。目の前にはビームを放って牽制しようと必死のネウロイがいた。囮だから守に徹するがそれでも一発一発のビームは重たい。さすが大型だ。ふと地上に視線を落とした。地上を進撃するネウロイ達はまるで掃討をしているかのように横に並んで進んでいた。

 

 

その隊列で爆発が起こり始めた。あっちも始まったみたいだ。ならこっちも……

別働隊が背後から攻撃を加えたらしい。不意にビームが止まった。

「これなら……」

ニパがそう言いかけた途端、それは体を分離し始めた。十字架のような体が五つにばらけていく。奥の手を持っていたんだ。

「分裂した⁈くそ!そんなの聞いてねえぞ!」

 

咄嗟に近くに迫ってきていたネウロイに20mmをぶち当てるが効いているのかいないのか、動きは鈍らない。こいつにコアは入っていないようだ。

 

『これじゃあコアがどこにあるかわからない!』

各個で分裂した本体を叩いてもコアがあればすぐに修復されてしまう。コアの位置さえ分かれば……

だがいくら攻撃してもコアの位置が分からない。弾薬も無駄に消費しちまってる。一度撤退して態勢を立て直すか?

迷ってる暇はない。一秒でも判断が遅れたら誰かがまた危険な目にあう。

「全員……」

 

「私に…私に接触魔眼を使わせてください!」

オレの言葉を遮ったのはアイツの妹だった。

 

接触魔眼、ネウロイに触れるとそのネウロイの内部構造が分かるとか言うあいつの固有魔法だ。姉妹揃って魔眼なのはいいとしてこいつのはあまりにも使い勝手が悪すぎる。

そもそも危険すぎるだろうが。

「危険すぎるだろうが!死にてえのか!」

『……いいだろう。菅野、雁淵を援護してネウロイまで連れていけ』

割り込んできたのはラル中佐だった。

「ハァ? やらせるのか!?」

頭がおかしいんじゃねえのか⁈なんて事は言えない。オレ自身が良くやってきた事じゃないか。今更こいつにはやらせないなんて事は言えない。

 

『命令だ。菅野中尉』

 

「了解した。ひかり、ついてこい」

 

ネウロイの野郎は胴体を一度集結させたかと思えば、一部を小さく分離させて襲ってきやがった。一つ一つは小型ネウロイのようなものだが、攻撃力は大型ネウロイ並だ。そいつらが襲いかかってきた。

 突破できるか分からない。不確定すぎる。

ビームが雨のように降り注ぐ。このままだと本当にやられかねなかった。

 

目の前に現れたネウロイの本体が唐突に飛行コースを変えて突っ込んできた。咄嗟に手元の機関砲の引き金を引いたが、数発も出ないうちにガツンと衝撃が走った。手元に目を向けると機銃の排莢口に薬莢が挟まっていた。装填不良。既に目の前にネウロイが迫っていて、拳に魔力を回して突き破るのも間に合わなかった。ネウロイの真ん中にある赤いダイヤのような部分が赤く発光していた。

 

 

 

『菅野だけじゃない。全員で援護するんだ』

ビームをゼロ距離で放とうとしていたネウロイが爆散した。あの爆撃機の機銃掃射だった。目の前を大柄な単発機がすり抜けていった。

「ニーマント⁈」

 

『臆病風に吹かれているようだが、あんたは一人で戦っているわけじゃない』

 

「だけどこんな作戦危険すぎるだろ!」

既に囮部隊は弾薬が欠乏している。ニパの方も防御に手一杯。とてもじゃないがこいつを連れて接近なんて……

「今更、何ビビッてんですか!」

 

「ひかり、おまえ……」

 

「今度こそ倒すんじゃないんですか!あれを放置し続ければ補給路はどうなるんですか!そんなんでお姉ちゃんの相棒になるなんて1000年早いです!」

アイツがオレで、オレが昔の私に重なっていた。あの大人しくて、お淑やかであれと教育されて育った頃の私だ。

今のオレは気がつけば昔の私に戻ってしまっていたんだ。

 

「ああ、やるよ!やってやる!その代わり、しっかり後ろをついてこいよ!」

何ビビってんだよ、菅野直枝。お前はこんなとこで立ち止まってちゃいけねえだろ!

 

 

ビームが一段と激しくなった。

「ネウロイを二人から引き剥がすわよ!」

 

ロスマン軍曹がニパとニーマントを連れて前に出た。

ネウロイの目標がオレ達から三人に移った。

フリーガーハマーのロケット砲とニパの機銃より極太な30mmの曳光弾が回廊を作り出しているかのようだった。

 

「二人とも今よ、行きなさい!」

 

 

 

「任せてください!」

 

「おっしゃ!突っ込むぞ!」

 

ネウロイの攻撃に迷いが生じていた。おそらく攻撃してくるやつと突っ込んでくるやつどっちを叩けばいいのか分からなかったんだろう。ビームが遅れた。当然そんなビーム弾き返すのは簡単だった。

「爪が甘いぜ、ネウロイ!いけ!ひかり!」

 

オレの陰から飛び出した雁淵がネウロイの胴体に触れた。

 

魔眼が発動したのか、一瞬魔力の共鳴波が生まれた。

「コアの位置……特定!」

ひかりが旋回しながら降下しネウロイのコアのあたりに向かって銃撃を浴びせた。

頑丈なネウロイの胴体が剥がされ、コアが露出した。本当にコアを見つけるなんてな。

だが同時にやつは体を再び分離させた。

でも修復が間に合っていないのかコアが露出したままだ。これならもう迷わない。

排莢不良を起こした銃を再度装填し直す。狙いを定めて引き金を引いたが、今度はブローバックがうまくいかない。ガス頭不良かよ。

結局いつもの手に限りってわけだ。右腕に魔力を回しネウロイに突っ込む。

「雁淵!退いてろ!」

 

分離していた胴体の一部がコアを庇おうとしてきたが、オレの拳がそんなので止められるはずもない。舐めんなよ!

『援護するわ』

 オレを追い越すように極太の機銃とロケット弾が庇おうとしていたネウロイの胴体を吹き飛ばした。

これでコアまでの道を邪魔するものは無くなった。

 

拳が接触、ガリガリと削れるような音がしてネウロイのコアに拳が食い込んだ。コアにヒビが広がっていく。かと思えばネウロイのコアは思いっきり砕け散った。

 

 

任務は達成された。

ハルちゃんの三走目

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