紫煙燻らせ迷宮へ 作:クセル
【タケミカヅチ・ファミリア】の謝罪をクロードが受け入れた──完全に、とは言えないが──その後、クロードは出発前の武具整備を行う皆から離れ、一人で野営地の外れの木陰に腰掛けていた。
数人の【ロキ・ファミリア】の団員達が野営地のテントの解体を進めているのをぼんやりと眺めつつ、紫煙を立ち昇らせていた。
「────はァ」
深い溜息一つ。
少女は紫煙で肺を満たし、荒れ狂う心を落ち着ける。
【タケミカヅチ・ファミリア】の謝罪を受けた件については既にどうでもいい事ではある。しかし、それとは比較にならないほどの焦燥感、そして妬みを燻ぶらせているのがステイタスについてだ。
「……どうすりゃァ……良いんだよ」
ステイタスを更新した際の女神の反応。そこから読み取れるベル・クラネルのステイタスについて。
既に一部ステイタスは追いつかれている。そして、ここから自分が彼に追いつくのが非常に難しい事は、頭では理解できている。しかし、心が納得していない。
荒れ狂う程の内心を押し留め、紫煙をより多く肺に満たし、意識をそらす。
そうでもしなければ、今すぐにでもベル・クラネルに悪意をぶつけてしまいかねない。
────兄を殺した、あの候補の様に。
瞼を閉じ、脳裏に刻まれた光景を瞼の裏に焼き付ける。
血塗れの更衣室。倒れた兄と、嫉妬に濁った瞳をした候補──元、候補──その手に握られた刃物。
自身が候補から外れ、本宅から追い出されたはずの元候補。
才能を見出され、分家から連れてこられた勝気な少年だった彼。
才の無い自身と比較してしまえば、彼の才能は天上の物だったと記憶している。──なんなら、兄よりも優れた剣才を持っていたはずだ。
しかし、彼は候補から外された。定期的に行われる屋敷内での格付け──候補同士を対戦させ、より才を発揮した者のみを残す蟲毒。その格付けの際に彼は負けた。
兄だけでなく、クロードにすら、負けた。
その時、クロードが勝利し、候補外に落ちるのをギリギリで回避した。その理由は、クロードや兄が努力したからだ。
彼は自らの天上の剣才を誇り、努力を怠り、結果としてその頂から引きずり降ろされ、屋敷を追い出される事となったのだ。
──そんな、元候補の起こした事件。
屋敷に進入し、鍛錬を終えた兄が更衣室で着替えているさ中に奇襲。背中を数十回にわたり刺し、失血死させた。
(…………馬鹿な奴だったなァ)
兄を殺したその嫉妬に狂った馬鹿野郎は、その現場に入り込んできた者にも襲い掛かった。
その時、更衣室から聞こえた異音に気付き、竹刀片手に何事かと覗き込んだ、前世のクロードに襲い掛かった。
倒れた兄、血塗れの更衣室、喚き散らしながら刃物を向けてくる元候補。何が起きたのか脳が理解するより先に、向けられた切っ先が迫ってくる。
(……あァ、やっぱり、糞だな)
眼前に迫る血に濡れた切っ先。咄嗟に後ろに下がりつつ、相手の足を竹刀で打ち据える。
幾度も繰り返しに行われた格付け試合のさ中に気付いた、見え透いた弱点。攻撃の際に上がる重心。足を小突けば簡単に姿勢を崩せるその欠点。
────候補から外されてなお、努力もせずに弱点を直しもしない高慢なそいつ。
派手に転倒し、喚き散らし、立ち上がってなお襲い掛かってこようとする候補。
その段に至って、ようやく状況を頭が理解する。
背中に無数の刺し傷のある血塗れの兄。血塗れの刃物を握り締める元候補──兄を殺した犯人。
(……あの時が初めて、だったか)
敬愛していた兄が──ついさっきまで一緒に稽古をしていた兄が──太刀筋が良くなったと褒めてくれた兄が──たかが嫉妬如きに狂いやがったゴミ屑に、命を奪われた。
脳裏に描かれていた鮮明なその時の光景が、急激に回りだす。
喉を一突き、咽るゴミの手首を叩く。
落ちた刃物を蹴り飛ばす。
掴みかかろうとしてきたゴミの足を突く。
転倒したゴミの後頭部に一撃。
必死に反撃を試みる肩に一撃。
頭を庇おうとした腕に一撃。
逃げようとするその背に一撃。
やめてくれと懇願するその顔に一撃。
泣き叫ぶその顎に一撃。
一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃、一撃。
顔、頭、肩、腕、足、腹、腕、頭、顔、腕、顔、頭、肩、腕、足、腹、腕、頭、顔、腕、顔、頭、肩、腕、足、腹、腕、頭、顔、腕、腕、頭、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔、顔────。
────判別不能どころか、頭部が挽肉になるまで滅多打ちにされたゴミが恨めし気にこちらを見ている。
「お前も、オレと同じだろ」
(────五月蠅ェな)
脳髄に染み付く様な怨嗟の声を切り捨て、クロードは目を開けた。
解体の終わったテントの部材をバックパックに収め、数の確認をしている【ロキ・ファミリア】の団員をよそに、仲間の何人かが慌てた様に小走りに駆け回っている様子が見えた。
「あァ? ……なんだ?」
まさか、何かしらの問題でも発生したのだろうか、と腰を上げる。
クロードに気付いた同族のリリルカが駆け寄ってくるのを見つつ、大きく溜息をついた。
「クロード様! ベル様とヘスティア様を見てませんか?」
「見てねェぞ……
「はい、もうすぐ出発なのですが、ベル様とヘスティア様がどこにも居なくて。今、他のメンバーで探しているのですが……」
「ンー?」
【ファミリア】の主神と眷属の二人が出発時間ギリギリになって何処かへ姿を晦ます。
「あァ……盛ってンじゃネ?」
そこらの木陰で腰振ってんだろ。と半ば投げ槍気味に返したクロードに対し、リリルカは眉尻を上げて声を上げる。
「クロード様! いくらヘスティア様といえどダンジョン内ですよ! そんな……こと……ううん……」
禁止されているダンジョンへの進入といった愚行をしでかす様な神が、眷属を誑かす為に行為を起こした。ダンジョン内というスリル満点な場所での行為。可能性はあるのかも、とリリルカが歯軋りし始めた。
「まァ、どっちにしろ探すしかねェか」
【ロキ・ファミリア】の出発までもう残り時間もない。
こんな
「おい、リリ助、クロード、ちょっと来てくれ」
リリルカと共にキャンプ周囲を探していたクロードは、ヴェルフに声をかけられてすぐにそちらに合流した。
「どしたよ、何か見つけたか」
もう既に【ロキ・ファミリア】の部隊は出発寸前。
探し出してすぐはふざけていたクロードも、流石にこれだけ探して見つからないのは不自然だと思いだしていた。そんな時にヴェルフが何かを見つけたらしい。
ヴェルフ以外にも【タケミカヅチ・ファミリア】の皆が一か所に集まっている。
「これ見てくれ」
野営地外れの北東側、大木の元に散らばった
「…………」
無言のクロードが落ちていた小瓶を拾い上げ、眉をひそめつつ周囲を見回す。
「千草が言うには、ベル・クラネルは慌てた様に森の方へと走っていったらしい」
「……もう事件に巻き込まれたと考えた方が良さそうですね」
「モンスターじゃァ、ねェな。この様子じゃ人だ。成人男性……小柄じゃねェ、そこそこガタイの良い奴だ。ヘスティアを抑え込んで、そのまま運んで行ったな。ベルの足跡じゃねェ」
地面に残された痕跡。小柄な女神とはいえ、神一人を持ち上げて歩いた草地には僅かに靴跡の痕跡が残されている。それを確認したクロードは、それらの愚行──他派閥の主神の誘拐──をやらかした冒険者の姿をうっすらと脳裏に描いた。
「【ロキ・ファミリア】の警備も有ったろ、どうやって出し抜いたんだ?」
「相当な手練れでしょうか……」
【ロキ・ファミリア】を出し抜く様な実力を持つ人物による犯行の可能性が高いと、ヴェルフとリリルカが冷や汗を流す中、クロードは煙管に煙草を詰めて火を付けた。
「ベルが呼び出されてる訳か。何処かで恨みでも買ったか?」
【ロキ・ファミリア】が警備するキャンプから女神を誘拐する。言葉にすれば非常に簡単でも、実際に行うのはほぼ不可能に近い。
モンスター以外にも敵対派閥や非友好派閥なども多い二大派閥のキャンプだ。見つからずに近づくのは不可能だろう。そんなさ中に女神を誘拐し、ベルに何らか
────少年の動きから推測するに、呼び出された。
「神を餌にベルを呼び出したんだろうなァ……何処の馬鹿野郎だ?」
苛立ちを紫煙と共に吐き捨てる。
「とにかく、ヴェルフ、リリルカ、てめェらは女神を救助しろ」
「クロードは?」
「オレァ……決まってンだろ。馬鹿共をぶっ殺してくる」
女神に用があるのであれば痕跡を残す必要はない。痕跡を残し、ベルを呼び出す時点で用があるのはベル・クラネルでほぼほぼ間違いはないだろう。
恨みなんぞ買いそうにない純朴な少年を標的にする理由を推測しようとしたクロードは、吐き捨てる様に呟いた。
「────逆恨みか」
「やれぇ、生意気な『兎』の鼻っ面をへし折ってやれ!」
「良いぞ良いぞ! やっちまえぇ」
周囲より一段高く隆起した直径七M程の舞台を思わせる場所。
大小複数の水晶が生えた高座の上。
汚い罵声を浴びせかけられるその場所にて、一人の少年が血が混じった唾液を飛ばし、右へ左へと仰け反っていた。
肉を打つ音が響く度に少年の体に衝撃が走り抜ける。
不自然にふらつく少年。まるで一人で誰かに殴られているかのような演技をしているかのような──見えない何かに暴行を加えられているような──有様である。
「良いぞ、モルド!」
「すげぇ、俺たちにも見えねぇぞ!」
少年の体に衝撃が走る度、肉を打つ音が響く度に上がる下品な歓声が響き渡る。
不可視な敵からの痛打に少年は抵抗もできずに翻弄され、痛めつけられる。
初めて人から向けられた悪意、害意、敵意──同じ神から恩恵を受けた先輩冒険者の向けてくるそれらとはまた別種のそれ──少年の意識がぐらりと揺れる。
四方八方から向けられる悪辣に歪んだ視線、耳朶を打つ野次、罵倒、そして愉悦に染まった哄笑。
一方的に向けられる暴力、悪意、それらに翻弄されていたさ中、モルドの一撃は少年の眼中を捉える。
「あぁ?」
良い一撃が入ったのだろう。少年は仰向けに倒れ、ピクリとも動かない。いや、目がしきりに周囲を見回している所をみるに、意識だけはあるのだろう。荒い息を吐いて動けなくなっている。それは、周囲から向けられる悪意によるものか、それとも一撃によって脳が揺さぶられたが故か──そんな少年にモルドが近づこうとした瞬間。
「なんだ?」
「おい、あれ────」
「うげぇっ!?」
外野の冒険者が騒めきだし、ベルに向けられていた害意が途切れる。高座を囲う冒険者達の外側。少年を甚振っていたモルドも何事かと動きを止め、騒めく外野に声をかけた。
「おい、何騒いでんだテメェら────」
「よォ、楽しそうな事してんなァ……オレも交ぜろよ」
何気なしな様子で、小柄な体躯の少女がモルド一派に歩み寄ってくる。
左手には傷だらけで紫煙燻らせる煙管、右手には引きずる様に持った喧嘩煙管。裾がボロボロのロングコート、燻んだ銀の長髪を揺らし、歪んだ口角を上げ、額から顎にかけて残る傷跡が目立つ、
かの【ロキ・ファミリア】に襲撃を仕掛け、
冒険者になってからの
そして、それらに付随して人々の間で語られる気性の激しさ──かの【ロキ・ファミリア】に襲撃を仕掛ける程の──それらは、この場に集まった荒くれ者にもよく知れ渡っていた。なんなら、新米冒険者が1ヶ月でミノタウロスを撃破したという情報ぐらいしか出回っていない【リトル・ルーキー】よりもより広く知れ渡っている。
────そんな彼女が何故この場に?
殆どの荒くれ者達が僅かに眉を顰める。
【リトル・ルーキー】に話題を搔っ攫われてしまってはいるが、一瞬とはいえ
そんなクロードだが、周囲の認識は未だに【ロキ・ファミリア】にすら喧嘩を売り、他の冒険者と一切かかわる木の無い一匹狼。そんな彼女が現れた理由を察する様な頭のある冒険者はこの場に居なかった──一人を除いて。
「あ、あぁっ!? 話が違ぇぇぇぞ、モルドォォオッ!?」
一人の冒険者が目をかっぴらいて、舞台で少年を甚振るのを止めている男に声を張り上げた。
「あぁ? なんだよ、なんの話が違ぇってんだよ」
鬱陶し気に返す姿無きモルドの返事に、男が慌てた様子で叫び散らす。
「クロード・クローズは居ねぇんじゃなかったのかよ!? 調子づいてる
「あァ? ……あァ、テメェ、あん時の……」
声を荒げ叫びだした冒険者を見たクロードの表情が消える。
無表情──先ほどまでの敵意に満ちていた感情の波すら凪、僅かに目を細めた彼女は、ゆっくりと喧嘩煙管をその男に向けた。
「お前さァ……もう二度とオレと関わらねェって言ったよなァ?」
「あ、あぁ、待ってくれッ!! 俺はモルドに誘われただけでなんもしてねェ!」
慌てたように両手を上げ、自らは誘われただけ、少年には指一本触れていない、だから無関係だと声を荒げて必死の弁明を始める男を、周囲の冒険者は訝し気に見ていた。
「何言ってんだよ、お前」
「どうしたよ、まさか【煙槍】となんかあったのか?」
「……お前、もしかして【煙槍】に喧嘩売った第三級冒険者……?」
【煙槍】クロード・クローズ。
襲撃を仕掛けてきた《第三級冒険者》の詳細についてはギルドは公開していない。それはクロード自身が何処の派閥か把握していなかった事──興味もなかった──そして、派閥同士の
結果、周囲の荒くれ者もそれを知らなかった訳だが──薄々察し始める。
「なぁ、おい……」
「……………………」
無表情なまま紫煙を燻らせるクロードと、冒険者集団から飛び出して必死に弁明する男。
二人の様子を見ていた冒険者が声を荒げる
「おい、そいつも調子乗ってんだろ」
「ヤッちまえよ! 一回やられたからってチキッてんじゃねェ!」
「何なら手伝ってやろうか?」
口笛や嘲笑、これだけの人数なら一方的にヤれる、と
「ば、馬鹿野郎共! やめろ! 死にてぇのか!?」
一度はクロードに挑みかかり、返り討ちにあった情けない男の言葉に、荒くれ者共が耳を貸す筈もない。そんな様子を見ていたモルドも──鼻で笑った。
「おいおい、お前も乗り気だった癖に────チビの
【煙槍】に呆気なく返り討ちにされた腹いせに、同時期に
だが、それは前提条件として【煙槍】クロード・クローズが関係していない事が必須だった。
一度クロードに返り討ちにあった際、彼は彼女から約束をしている──もう二度と、クロード・クローズと関わらない。もし万が一にでも、関わってしまった場合、所属派閥の団員、神、親族含め、全員皆殺しにする、と。
「クローズ、頼む、知らなかったんだ」
必死に謝り倒す男に、クロードは僅かに眉を上げ、疑問を口にした。
「なぁ、今何してたんだ?」
平坦な、感情の感じられない、問いかけ。
「モルドの野郎が調子に乗ってる【リトル・ルーキー】に冒険者の掟を教えるって──」
「冒険者の掟ねェ……オレ、聞いた事もねェけど、何それ? ギルドでは聞かなかったぞ」
無表情のまま、しかし不穏な雰囲気を漂わせた小人族から放たれる圧に、冒険者達も口を閉ざす。
「そ、それは……あれだ、冒険者の中でしか知られてないやつでだな……」
「ンで、内容は?」
「冒険者同士で一騎打ちを行って、負けた方は勝った方の言う事を何でも聞くって……」
「へぇ、ちなみにオマエらが勝ったら、そのガキに何するつもりだったんだ?」
「えっと……【リトル・ルーキー】の高そうな
「ほォ……ンで、なんでそんな遊びにベルが参加してんの?」
冒険者同士、荒くれ者同士の過激な賭け事としてならまだ納得できる。とクロードは紫煙を吐き捨てる。
しかし、少年──【リトル・ルーキー】がそんな野蛮な事に積極的に関わるとは到底理解できない。
「なンでだろォなァ~?」
「そりゃ、女神を人質に……」
「ほォ……女神を人質に、ねェ……奇遇だな、今、オレの女神様も誰かに攫われて行方不明なんだワ」
「は?」
必死に頭を下げて説明していた男が顔を上げる。
クロードが出てきた理由がわからなかった彼らは、僅かに眉を顰めた。
そのさ中、男は気付いた。気付いてしまった。
【煙槍】クロード・クローズは
冒険者とは、神から
本来、神から
派閥に所属せずに
ギルドへの納税義務、ギルドの各種施設の利用料金、万が一冒険中に負傷した際の補償。他にもさまざまな負担を自分一人で背負わなくてはならず、ましてやギルドの規則内において冒険者は派閥に所属するのが前提となっている事もあり、不便性が目立つ。
そのため、無所属の冒険者はあまり立場的に強くない。後ろ盾がない事も相まって──男の所属する派閥が行おうとしたみたいに──力づくで所属させようとする事も珍しくない。
それ以前に、自身の派閥に入らない者にわざわざ
「あ、あぁ……嘘だろ……」
「なァ、オレの女神様ァ、知らねェか?」
無表情から一変、口角を上げ──本人は優し気に微笑んでいるつもりだが──獰猛に殺意を巻き散らした少女から、男が一歩後ずさる。
──【煙槍】クロード・クローズが有名になった
とある商店街でじゃが丸くんを売る貧乏で小さな派閥の主神が、かの格上殺しを成した冒険者に恩恵を与えている事。
そして、その話題を掻き消し、掻っ攫っていったとある冒険者の主神が貧乏で小さな派閥の女神である事は有名だ──だからこそ、貧乏派閥に見合わぬ武装をした少年は目を付けられた訳だが。
そう、彼らが攫った女神が、目の前で敵意漲らせ、紫煙燻らす小さな怪物を呼び寄せた理由だ。
主神に手を出す。
どの派閥であろうが、決して許される事のない──ある程度の規模であれば、冗談でなく戦争を引き起こす引き金。
なぜ、軽々しくも主神に手を出したのか──決まってる、【リトル・ルーキー】が所属する派閥が、構成員たった一人の極小派閥だったからだ──たとえ後で何を言われようとも、掻き消せる。その程度の派閥だからだ。
だが、ここで話が大きく変わってくる。
──オラリオにおいて名を知らぬ者など居るはずもない、第一級冒険者を複数有する、オラリオ二大派閥の一つ【ロキ・ファミリア】にすら楯突いて、平然と冒険者を続けてる
その冒険者の主神に手を出す意味が分からない程、彼らも馬鹿ではない。
「んだと、っつーことはだ」
姿無きモルドはにやついた顔で
「おい、クロード・クローズ、てめぇも教育してやる──上がってこい」
「モルド、冗談じゃねぇ、やめと────げぶぇっ!?」
忠告を口にしようとしていた男の脳天に、無造作に喧嘩煙管が振り降ろされた。
鈍い音を立てて男の顔面が地面と熱い接吻をかますさ中、クロードは無造作にもう一度振り上げ──振り降ろした。
ズゴンッ、という鈍い音と共に男の頭が地面に埋まっていく。二度、三度とたたきつけた彼女は、煙管を吹かしてモルド一派に視線を向けた。
「このゴミは殺すとしてだ……オレの女神様は何処ダ?」
不意を打たれてやられた男を、残る荒くれ者達が笑い飛ばした。
「だっせぇ、不意打ち喰らってやんの」
「おいおい、こっちには女神様っつぅ人質──神質が居んの? わかる?」
「調子こくなっての、この数相手にヤる気かよ」
クロードの事を過小評価し、最悪数で押してでも潰す、と威勢の良い
「あァ、マジで加減しねェからなァ……」
もくもくと、不自然に揺蕩う紫煙が、クロードの周囲に漂い始める。
「なァ、覚悟、してんダよなァ……?」
背筋に氷柱が差し込まれたかのような悪寒を周囲の冒険者に与えながら、クロード・クローズは紫煙を吐き出す。
吐き出された紫煙がまるで粘土を捏ねる様に不自然に虚空に留まり────槍の形状へと変化した。
そこに至って、モルド一派の数人が表情を引き攣らせ、後退った。
クロード・クローズが有名になった一番最初。
「ちゃァンと、避けろヨ」
茶化す様な言い草と共に、周囲に漂っていた紫煙が、次々と煙の槍へと変化を遂げていく。
一本や二本ではきかない、見える範囲に大量の【煙槍】を作り出す──
「────避けないと、
最終更新から早4年、5年? いつまでも更新されない不思議。続き読みたいなぁ、と思っていても投稿されない不思議。なんででしょうね。
ふと、自作を読み耽っていたら、自然と手が動き、一話分完成したので投稿します。
以下、どうでもいい裏設定。
本作の主人公は、実は私が他に書いていた作品の主人公と前世にて関わりがありました。
『魔銃使いは迷宮を駆ける』の主人公、ミリア・ノースリスの前世の白野君とですね。
ちなみに、クロードくんちゃんの兄たちを殺したのはミリアちゃんです。
他殺に見せかけて、クロードの兄を殺すように差し向けたり、事故死に見せかけて殺したり、策謀巡らせてクロードくんちゃんのメンタルをぶち壊したのがミリアちゃんだったりします。
理由については、ミリアの母がクロードの母を恨んでいたから。
クロード母とミリア母、実はこの二人は血の繋がった双子の姉妹だったんですね。
クロードくんちゃんとミリアちゃんは従弟だった訳、ではありません。なんなら異母兄弟です。
そして、ミリアちゃんが『魔銃使い』本編にて死ぬほど気にしていた父親との血の繋がりに関して。実は叔父と甥の関係です。割と近い繋がりがあったんですね。
ざっくり時系列的に話すと以下の感じ。
クロードくんちゃんの本家、家名と血筋、天才の血筋をすごく大事にしてる家系だったんですが、双子で生まれた姉妹の内、一人が犯罪の天才だった訳です。当然、そんな危ない才能の持ち主が家名を継ぐなんてもっての他、ミリアの母は居なかった事にされ、あさつまえ事故死として処分されそうになりました。
それを知った本人は、人を騙し、唆し、自らが死んだふりをして家を脱出。
その後は犯罪組織を形成して自らを殺そうとした本家をぶち壊そうと色々と画策しまくりました。
その過程の中で、クロード母が結婚って話があがったので、ミリア母はとりあえずNTRしました。んで子供をこさえました。この子がミリアちゃんです。
ここでクロード父の話をしましょう。
彼は天才でした。んで弟が居ましたが、弟は割と凡人でした。ただ、弟が好きな事に夢中になって努力する姿は好んでいました。自身が天才であるがゆえに、何事にも興味を持てない事を比較し、弟の在り方を羨んでいました。
そんな彼は分家の人間です。本家から種馬としてその天才性を求められたので、彼は弟が好きに努力できる環境を整える為に本家に種馬として婿入りしました。
本家以外の分家から天才が排出されると、本家の名声が落ちると考えた本家筋から、世間から隔離され、名前も公表されない事が確定したクロード父は、代わりに分家の弟に莫大な資産、そして定期的な資金提供を約束しました。
本家から資金を提供され、好きな事を好きなだけできるようになった弟は、ゲーム開発をして過ごしました。
そして、こんなクロード父の弟に目をつけたのが、ミリア母です。そう、一夜を共にして子供を押し付け、莫大な慰謝料を分捕って、なんなら定期的に金をせびったりして本家から流れる資金を吸ったりしてました。
ちなみに『魔銃使いは迷宮を駆ける』の中にて、ミリアちゃんが大好きな父親というのが、クロード父の弟です。好きな事を好きな様に、と自由を謳歌する彼にミリアちゃんは惹かれた訳ですね。
んで、本家に対し嫌がらせとかしまくっていたミリア母ですが、ふと気が付くと本家の方で動きがありました。
嫌がらせ兼自己満足のNTRでできた子供を分家に投げつけた訳ですが、そんな彼が成長していく中で本家から目を付けられた訳です。
そう、ミリアちゃんの中の天才性を本家が見つけちゃった訳です。というか本人が隠す気もなく父親のゲーム開発手伝ってとんでもない才能を発揮。『ミリカン』の根幹システムから作り変えて、世界で絶賛されるゲームにまで押し上げたのが、ミリアちゃんだった訳ですね。(なお、弟一人だった場合、凡庸なゲームが資金だけはあるのでサ終せずになぜか続いてる不思議な状況になってしまう模様)
ここで、自身がお腹痛めて産んだ子が本家で活躍とか絶許と、ミリア母はミリアちゃんを父親から引っぺがし、その天才性を悪道へと走らせます。そう、父親を人質にされ、ミリアちゃんは逆らえなくなったわけです。
クロードくんちゃんが他の兄弟や候補者と比較されて徐々に病んでいくさ中、ミリア母は自身の子とクロード母の子、どっちが優れてるか試す事にしました。
はい、ミリアちゃんに例の三人兄弟(なお四人目は世間非公開の為認識せず)をぶち殺す様に命令します。
手段は問いません。ただ本家に察せられない様にぶっ殺せとのお達しです。ミリアちゃんは当然嫌がりましたが、父親の命には代えられません。
見事にミリアちゃんは三人をぶち転がしました。四人目についてはなんか知らんけどいつも三人と一緒に居るやん。最後の一人を鉄骨の下敷きにするとき巻き込みかけたけど生きててよかったー。殺す人数最低限で済んだやったー。なミリアちゃんでした。
なお、その過程においてクロードくんちゃんがメンタルブレイクされている事なんぞ、ミリアちゃんは知りません。というかそんな余裕はない。父親の命を守るの最優先でそれ以外を切り捨てまくってましたからね。
まぁ、ちゃんと仕返しは喰らってますが。
その後、ミリアちゃんは悪の道をひた走り、クロードくんちゃんは体がぶっ壊れるまで努力を続けます。
その後、ミリアちゃん側において、手違いにてミリア母が死にます。
なお、この頃になるとクロードくんちゃんは現実世界で寝たきりになってしまっているので、VRゲーム内に活動拠点を移します。
ミリアちゃんは『ミリカン』開発者の祖である父親と再開する為に、ミリカンを始める訳ですが、この時、大会優勝して大手を振って会いに行こうと、悪に染まった自分ではなく父親考案のキャラである
それを妨害したのが最強の狙撃手、そう、努力にて『ミリカン最強』の座を手にした
最後の最後までミリアちゃんと父親の再開を妨害したクロードくんちゃんですが、最終的にかなりエグい負け方をして、ミリアちゃんに心をズタズタにされます。
ちなみにクロードくんちゃんはすぐぶっ殺す、と息巻いて立ち直って努力を重ねました。
なお、ミリアちゃんはこの後、崖から転落して死亡してます。来世で女神に拾われて幸せ(?)になってるので、めでたしめでたし。
再戦機会を失った上に、二度と最強を名乗れなくなったクロードくんちゃんは逃げる様に別のVRゲームを始め、そこで『紫煙の魔女』として、サービス終了までPKをしまくりました。
めでたし、めでたし。
ちなみに余談ですが、本家の方にミリアちゃんが拾われていた場合、ミリアちゃんは本家に父親を人質に取られた状態で活躍を強制され、どのみちメンタルを病みます。ただ、悪事を働く訳ではないので、『魔銃使い』本編よりだいぶマイルドな病み方をします。
なお、クロードくんちゃんはミリアちゃんが候補に入った瞬間に存在抹消の憂き目に遭う模様。無慈悲。
ちなみに、最後の候補のクロードくんちゃんが使えなくなった後の本家についてですが、父親が今までの悪事(人権ガン無視な非道な行い・生まれた娘を事故死に見せかけて殺した等)を暴露して名声に大きな傷ができて世間からバッシングを受け、世界から姿を消しました。
要するに没落ですね。
寝たきりのクロードくんちゃんがVRゲーム内ではしゃいでPKしてる間の入院費については父親が全額出してます。本人はもう現実逃避し続けていてそれを認識はしていませんが。