炭酸inIS   作:ジャギィ

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またまた短編書いちゃいました。今回も数話で終わらせる予定です

ちなみに今回の話を書こうとしたきっかけは、マキオンでジンクス使って楽しかったからです


第1話

“インフィニット・ストラトス”…通称“IS”

 

篠ノ之束によって開発されたマルチフォーム・スーツ。『白騎士事件』をきっかけに世界に台頭したISは、シールドエネルギーによる絶対的な防御力や武器の量子化など、現代の兵器をはるかに上回る性能をよって、瞬く間に世界最強の機動兵器と化した

 

一方、ISには兵器とした致命的な欠陥があった。ISは()()()()にしか起動できないのである

 

それにより世界は女尊男卑という風潮が生まれ、ISによる恩恵を得た者にいれば痛みを負う者もいる。新たな問題も次々と発生し、これを変革と捉えるか歪みと断ずるか…それは誰にも分からない…

 

 

さて、ここまでの前置きを語った上で、彼の話をさせてもらおうかな

 

彼は幼い頃から他の者を寄せ付けないスピードで士官学校を入学、卒業して軍に入隊。軍内で減りつつある「男」という立場でありながら、台頭し始めた女の権力者をも黙らせるほどの実績と戦果をあげ、17歳という若さで『少尉』の階級を得た。軍内に置いてエースと呼ばれる人物となった

 

しかし、彼にも悪いところがあってね…

 

彼は少し…いや、かなりの問題児だったのさ

 

 

 

ドイツ軍航空基地。その滑走路に置いてある戦闘機の中で、軍服を着た赤髪の少年が年上の金髪の女性を連れ込んでいた。互いにキスを楽しむが、少年が女性の顔に手を当ててゆっくりと離すと、物足りなさそうな女性に対して言う

 

(わり)いけど、そろそろ時間だ」

 

作戦のミーティングを行う時間が迫っていたためだ

 

少年は驚異的な身体能力でコックピットからひとっ飛びで戦闘機から降りると、顔を女性の方へ振り向かせる

 

「この埋め合わせは今度な!」

 

そう言ってさわやかにウィンクする姿は様になっており、手を振りながら彼は目的のミーティングルームに向かう

 

この少年の名は「パトリック・コーラサワー」。自らを「EUのエース」と自称する、ドイツ軍の若きエースパイロットである

 

ちなみにだが、彼はすでに10分の遅刻である

 

 

 

パトリックはミーティングルームの扉が開くと、入室すると同時に敬礼しながら宣言する

 

「EUのエース、パトリック・コーラサワーただいま──」

 

バキャ!

 

「ぐおッ!?」

 

──が、入室と同時にキレのいい右ストレートがパトリックの左頬を殴り抜いたことでその宣言は中断された

 

ミーティングルーム内には、比率はかなり女性(それも女性のほとんどが少女といえる年頃)に偏っているが、それでも男女問わず多くの軍人がいる

 

「遅刻だぞ、少尉」

 

そして、先頭にはパトリックを殴った人物がいた

 

長く艶やかな銀髪をなびかせ、赤い目と身長が150㎝よりも低そうな、まるでウサギを想像させる美少女である。しかし左目には黒い眼帯をつけており、その険しい表情や雰囲気もウサギとは程遠かった

 

パトリックは赤く腫れた左頬を押さえながら、殴ってきた少女に向かって叫ぶ

 

「う…なんだチビ!よくも男の顔」

 

バキィ!

 

「ぉお!?」

 

が、今度は右頬を殴られたことで床に倒れ伏す。ほっぺをさすりながらパトリックは呟く

 

「に、二度もぶった…!」

 

一方、パトリックを殴った方の少女は意に介さず、冷たい目でパトリックを見下ろして言う

 

「本作戦の指揮を任されている、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ。フン、こんな男が我がドイツ軍のエースなどと…」

 

少女…ラウラの完全にパトリックを見下した発言だが、パトリックには聞こえてなかった

 

(…いい女じゃないか……)

 

自分と仲良くなったりする女や、訳の分からない揚げ足をとって戦果を奪い取ったり自分をこき使おうとする女はいたが、それでも殴って叱責してきた女はいなかった

 

目にも見えぬ速さでパトリックは立ち上がるとすぐさま敬礼し、ラウラと名乗った少女に謝罪する

 

「遅刻して申し訳ありません少佐殿!」

「…?」

 

反抗的な態度から一転、あまりに早すぎる切り替わりに思わずラウラは疑問符を浮かべるが、そんな姿すらもパトリックには輝いて見えた

 

(惚れたぜ…!)

 

今まで出会ったことがない、上っ面だけではない堂々とした女に、パトリックは心奪われた

 

 

 

それからというもの、パトリックは幾度となくラウラにアプローチを続けた

 

当初は鬱陶しがってたラウラであったが、ラウラの命令自体は非常によく聞き、線引きも弁えている。実力もISという存在を除けば確かにEUのエースを自称するだけのものはあり、目を見張るのはその生存能力だ

 

何度もシュバルツェ・ハーゼ(ラウラの所属するIS特殊部隊。通称「黒ウサギ隊」)と共同任務を行い、ISとの戦闘も行ったことがあるのだが、すべての任務において五体満足で生還しているのだ。これで戦果も良いとなれば、さすがのラウラもパトリックをそこらの有象無象と一緒にはできない

 

何より、ラウラと付き添うようになってから問題行動ばかり起こしていたパトリックが非常に大人しくなったのだ。この変化を見た上層部は異例中の異例ではあるが、特例でパトリックをIS部隊であるシュバルツェ・ハーゼに異動させるのであった…

 

数ヶ月経ったある日、パトリックはラウラの部屋に食事を乗せたトレーを持って入室する

 

「少佐、お食事をお待ちしました──」

「ノックもせずに入るな!」

「いぃっ!?」

 

しかし、入室直後にラウラに怒鳴られる。思わずのけぞったにも関わらずトレーの中身をこぼさないのはさすがと言える

 

(クソッ、この能天気な男を見ているとイライラしてくる)

 

ラウラはパトリックの実力を認めている…認めてはいるが、それとこれとは別にパトリックの存在が気に食わなかった

 

理由は分からないがとにかく苛つきが収まらないのだ。だからなのか、ラウラは口を開いて言った

 

「お前もヒマな奴だな。毎日毎日私につきまとって」

「…ほぇ?」

「私のような小娘の指示に従うなど、実力のあるお前からすれば屈辱でしかないだろうに。所詮キサマなど、ISの前ではただ運で生き延びてるだけの男に過ぎん。「ISなどなければ」と思わずにはいられんだろう…なあ?」

 

口元を三日月に歪めながら嘲笑するラウラ。こう言えばさすがのコイツと言えど怒りを抑えずにはいられないだろう。これで勝手に離れていくだろうし、殴ってこようものならISで対処すればいい

 

「いえ、自分はそんなことは思っていません。むしろISがあって良かったと思っています」

「………は?」

 

しかし、パトリックは怒るどころかISの存在を肯定してきた

 

軍隊に所属する男にとって、ISというのは目の上にたんこぶのような存在だ。いきなり横から現れた女に立場を奪われた上、今までの兵器や男たちの努力を全否定されるのだ。これに憤るなと言う方が無理な話だ

 

だがパトリックは言うに事欠いて「ISがあって良かった」などと言うのだ。ラウラが混乱するのも無理はない

 

「確かにISがなければ、自分はEUのエースとしてさらに名を馳せていたでしょう」

 

自信満々にそう言うと、パトリックは告げる

 

「しかし、ISのおかげで自分は少佐と出会うことができました。だから、自分はISがあって良かったと心から思います!」

「!!」

 

そしてその言葉は、ラウラを心の底から大きく揺さぶるものとなった

 

「…出て行け…」

「? 今なんと…」

「早く部屋から出て行けェ!!」

「は、はいいいぃ!!」

 

凄まじい剣幕でパトリックにそう叫ぶラウラ。パトリックは持ってきたトレーごと退室するが、ラウラはそんなことも気にならないほど心が荒れていた

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは弱者が嫌いだ。それには彼女の出自と生い立ちに原因がある

 

ラウラは遺伝子強化試験体(簡単に言えば生体兵器に近い試験官ベビー)として生み出された存在であり、戦うための道具としてありとあらゆる兵器の操縦方法や戦略などを体得し、好成績を収めてきた

 

しかしISの登場後、ISとの適合性向上のために行われた実験に失敗。結果、能力を制御し切れなくなり、訓練の成績を基準から大きく下回ったことにより周囲から「できそこない」と見なされ、自身の存在意義を見失った

 

それを救ったのが、世界最強と謳われる女傑…『ブリュンヒルデ』“織斑 千冬”であった。千冬との特訓により部隊最強にまで復活したことから「教官」と呼ぶほどラウラは彼女を慕っていた

 

それゆえに、ラウラはその輝かしい経歴に汚点を作った千冬の“弱い”弟の存在が許せなかった

 

(ここまで能天気な男とは…!なぜ強者としての自覚がない!IS学園などで働いている教官もそう…)

 

“ISのおかげで自分は少佐と出会うことができました”

 

「あ…」

 

その時だった。パトリックの言葉をきっかけに、ラウラはある事実に気づいてしまった

 

()()()()()()()()()に気づいてしまった

 

「そ、んな…そんなわけあるか!そ、そんな…」

 

必死に自分に言い聞かせるも、思い至ってしまったものはどうしようもない。それほどまでに、その事実はラウラの根底を揺るがすものだった

 

「あの男が…織斑一夏が弱かったから…今の私があるなどッ!!」

 

認めたくない現実が、小さな黒ウサギに襲いかかる

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