炭酸inIS   作:ジャギィ

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感想で指摘されたので伝えておきますが、本作の炭酸は一夏がIS学園入学時点で18歳です


第3話

織斑一夏は思う。どうしてこうなったと…

 

経緯は自分でも分かる。本来の受験先である相越学園の試験場を、よりにもよってIS学園と間違え、あまつさえ男の身でありながらISを動かしてしまったことが最大の原因だ

 

しかしよく考えて欲しい。確かに試験場を間違えたのは自分の最大の過ちだ、そこは認める。でもだからって、男の自分が都合よくISを動かせるなんて思うはずないじゃないか…一夏はそこまで言い訳して、周囲を見渡す

 

右を見れば女子、左を見れば女子、後ろにも女子、そして目の前には自分たちとかなり歳が近い女性が満面の笑みで語りかけてくる

 

「はい、おはようございます皆さん!私はこの1組で副担任を担当する山田真耶と言います。これからよろしくお願いしますね!」

 

シーン…

 

返事は一つとして返ってこなかった。ひどい。これはひどい。あまりにご無体な反応に山田先生は若干涙目になり

 

「よろしくお願いします、先生」

 

そこに、1人の声が響いた。思わず俺は…いや、クラスのほとんどの女子がその声の主を見る

 

人の目を引く、腰まで伸びた鮮やかな銀髪。なぜか左目に黒い眼帯をしているが、小さそうな背丈といい、真っ赤な瞳といい、なんだか子兎を想像させるような女の子だった…

 

キュピーン!

 

直後、背中に氷柱が突き刺さるような感覚

 

(プレッシャー!?)

 

その恐ろしい感覚の発信源を探す俺

 

そして見つけた先にいたのは、幼少の頃から実家の剣道場共々世話になり、小学校の後半から転校した幼馴染の少女、篠ノ之箒だった

 

彼女は何故か俺の方をジッと睨み続けていた。俺が何をしたって言うんだ…

 

「は…はい!よろしくお願いしますね!」

 

返事をもらったのがよほど嬉しかったのだろう。山田先生は豊かな胸元が揺れるほど頷いて喜びを表していた。…正直、目のやり場に困

 

キュイーン!

 

(殺気!?)

 

箒のいる方向を見る。すると、視線だけで人を殺せそうな目でこちらを睨んでいる幼馴染の姿が。心なしか目が爛々と赤く輝いているように見える

 

今日が俺の命日かもしれないことに戦々恐々としながらも、このいたたまれない状況を分かち合う()()()()()、もう1人の「男」を思い出す

 

(俺と同じ、ISを動かせた2人目の男性操縦者…名前は確か……コーラサワー、だったっけ?外国ってすごい名前があるんだなぁ)

 

そう、俺と同じ境遇である男、コーラサワー。その姿がこの教室のどこにもいないのだ

 

(別のクラスなのか?でもそれにしては、廊下に集まってたみんなは1組にばっか来てたような…)

「───斑くん………織斑くん!」

「うえッ!?」

 

急に名前を呼ばれて驚く。すると、俺の机の前に山田先生がいて、慌てた表情で口を開く

 

「ご、ごめんね驚かせて!あの、クラスのみんなの自己紹介をしていたんだけど、織斑くんの名前が「お」で始まってすぐ自己紹介の番が来ちゃって、それで、あの」

「い、いえ、分かりました。だから落ち着いてください」

 

他の慌ててる人を見ると自分は冷静になれるって本当なんだな、なんて頭の片隅に考えながら、椅子から立ってみんなの前に立つ。き、緊張する…!

 

「お、織斑一夏です!」

『…………』

 

ウッ、ものすごい数の視線が…!ええっと、早く続きを言わないと…

 

「以上です!」

 

ズザァァ!

 

すると、一部を除いたクラスメイト全員がずっこけたように姿勢を崩した。座りながらずっこけるとか器用だなぁ

 

バシン!

 

「アダっ!?」

 

直後、凄まじい痛みが頭に走る

 

「まったく、ロクに自己紹介もできんのかお前は」

「ゲッ、関羽!!」

 

バッシィン!

 

「誰が三国志の英雄だ」

 

再び訪れる激痛。その痛みを与えてきたのは、世界最強のIS乗りにして俺の自慢の姉、織斑千冬だった。手に持つ出席簿から煙のようなものが上がる

 

「な、なんで千冬(ねえ)がここに」

 

バシィン!

 

3度目の出席簿アタックが脳を揺らす。そろそろ俺の頭がバラバラになりそうだ

 

どうやら、ある事情でドイツに1年間いた千冬姉は、帰国してからIS学園の教師として教鞭を振るっていたらしい。仕事が忙しくて中々家に帰ってこないとは思ってたけど、まさか教師をしていたとは

 

頭を押さえて悶絶している俺をよそ目に話はどんどん進んでいく。時折みんなの黄色い悲鳴が頭に響いて痛い

 

「早く席に戻れ。それとももう1発欲しいか?」

「い、今戻りますッ!」

 

思わず敬語になりながら、急いで席に座った

 

そして自己紹介が再開して、終わりが見えてきた時、あの銀髪の子が教壇の前に立った

 

「私の名前はラウラ・ボーデヴィッヒだ。ドイツの代表候補生で軍人だ。ゆえに(みな)の話についていけるかは分からんが…最大限努力するつもりだ。これからよろしく頼む」

 

パチパチパチパチ

 

まばらな拍手が響く中、俺は彼女…ボーデヴィッヒさんのいう「軍」という言葉に少し納得した。なるほど、道理でどこかみんなと違う雰囲気なわけだ

 

「そして、興味のある者や期待している者に悪いのだが、私から奴について伝えておくことがある」

 

奴?奴って誰だ?

 

「2人目の男性IS操縦者であるパトリック・コーラサワーは我がドイツ軍、ひいてはドイツで保護することになった。よって、奴がIS学園に来ることはないと言っておこう」

 

…………………え?

 

『えええええええええええええ!!?』

 

この後、1番大きい声を出した俺は1番強い出席簿の衝撃を食らうハメになるのだった

 

 

 

休み時間…

 

人気のない廊下で、ラウラは織斑千冬と対面していた

 

「こうやって顔を合わせるのも久しぶりだな」

「ハイ!お久しぶりです教官!」

「教官はやめろ。今の私はIS学園の教師だ」

「分かりましたきょ……織斑先生」

「よろしい」

 

元気そうな教え子を見てフッ…と口元を緩める千冬

 

「この間、急に連絡をよこしてきた時は驚いたぞ。まさか私に2人目の操縦者の処遇に関して、口利きしてもらおうとするとは」

「申し訳ありません。一軍人の私では、IS委員会の決定に逆らうことなどできないものですから…」

「だから私に連絡してきたと…まったく、私はIS委員会を好きに動かせるわけではないのだぞ?周りの連中は私を“ブリュンヒルデ”だの“世界最強”だのと好き勝手に呼ぶが…迷惑千万だ」

 

そう、パトリックがIS学園に来ていない理由はラウラの根回しにあった

 

当初はパトリックをIS学園に強制入学させるだの将来のために研究所にモルモットとして送ろうだの、数少ない男性操縦者をドイツに独占させまいと他国が様々な計略を謀った。中には現在の女尊男卑の風潮を傾けかねない存在に危機感を抱いた女の権力者たちがこぞってパトリックを危険因子として排除しようとするなど、やりたい放題な状態だった

 

そこで千冬の出番である。千冬自身、パトリックとは何の接点もなかったが、かわいい教え子の真剣な頼みを無碍にはできない

 

そして、千冬の交渉(脅迫)の結果、本人の意思を尊重して所属国を決めることになった。そうなればパトリックがドイツ(ラウラ)を選ばないわけがなく、そのままドイツで保護する流れになったのだ

 

「しかし…変わったな、ラウラ」

 

千冬はかつて、ラウラに力を教えた。だが、その結果ラウラは千冬を異常なまでに崇拝し、力は攻撃力とイコールなのだと考えるようになった。千冬は、ラウラに心の在り方についてもっと教えておくべきだったと何度も後悔した

 

しかし、教え子は自力でその答えに辿り着いた…いや、それ以上に成熟した考えに至り、自分を確立した。立派な教え子の姿に誇らしさを感じる

 

「いえ…私1人ではきっと何も変われず、無意味な逆恨みを持ち続けていたと思います…変わることができたとするなら、それは間違いなく部下のおかげです」

 

ハッキリとラウラはそう告げる。が、それを聞いた千冬は優しげな笑みを意地の悪そうな笑みを変える

 

「ほう?お前がそこまで言うとは…噂の少尉殿とは相思相愛で何よりじゃないか、ラウラ」

「え!?いえ、別にパトリックとはそんな関係では!単に放っておけん奴なだけで…そ、それよりどこでその話を!?」

「なんだ、違うのか?つまらんな」

 

混乱しながらも否定するラウラを見て、残念そうな表情を浮かべる世界最強

 

「だいぶ前にも1度電話がかかってきてな。「隊長の元気がないのですがどうすればよろしいでしょうか?」とな」

 

今の千冬のセリフ、隊長という言葉から直接の部下であり、千冬に直接連絡できそうな人物…心当たりは1つしかなかった

 

「クラリッサめ…!余計なことを!」

 

シュバルツェ・ハーゼ最年長である副隊長の姿がラウラの脳裏に浮かんだ

 

恋愛経験がないラウラも、パトリックの強い好意に気づいてないわけではない。そしてそれを悪いようにも思っていないのだが…ラウラ自身どう思っているかがうまく言語化できない

 

「で、実際どうなんだ?」

「そ、それは……ハッ!そ、そろそろ休憩の時間が終わりますので、失礼します!」

「あ、おいラウラ……チッ、逃げられたか」

 

文字通り脱兎のごとく逃げ出したラウラの後ろ姿を見ながら、後で廊下を走った罰を与えようと考える千冬であった

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