炭酸inIS   作:ジャギィ

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第5話

IS学園食堂…

 

多くの生徒たちがあるテーブル席に注目していた。そこには明らかに怒りの表情を浮かべているラウラ・ボーデヴィッヒと、その側に気をつけの姿勢で待機するパトリック・コーラサワーの姿が

 

ドン!

 

「お前はどこまでバカなのだ!!」

 

握り拳をテーブルに叩きつけてパトリックを叱責するラウラ

 

入学してから1度も見たことがないラウラの激昂する姿に誰もが気圧されるが、一夏を始めとした1組のメンバーや鈴は事情を知っていたことから、いかにラウラがパトリックを心配して怒っているのかがよく理解できた

 

男性IS操縦者というのは大変稀有な存在である。なにせ世界でたった2人しかいないのだ

 

そして1人目である一夏の背後に世界最強(織斑千冬)天災(篠ノ之束)がいることを考えれば、一国家(ドイツ)だけしか後ろ盾がないパトリックは格好の獲物なのだ。ハッキリ言って国一つの後ろ盾など、世界を敵に回すことを考えればあまりに心許ない

 

だからこそ、敬愛する千冬に懇願してでもパトリックを軍に留まらせ、少しでもバカな真似をする輩の数を減らそうとしたのに、この男の勝手な行動ですべてが台無しである

 

堪忍袋の緒が切れるのも無理はない

 

「IS学園には来るなとあれほどッ」

「学園の編入には、自分から志願しました」

 

だが、そんなラウラの怒りを正面から受け止めて、パトリックは真剣な顔つきで答える

 

「少佐を守りたいからであります」

 

短い沈黙が流れる

 

『キャ─────!!!』

 

少しして、黄色い声が食堂に響いた

 

「ねえねえ!今の聞いた!?」

「聞いたわ!ボーデヴィッヒさんを守るために、ドイツから追いかけてきたんでしょ!」

「軽そうに見えて意外と一途!」

「ボーデヴィッヒさん羨ましい〜!」

 

姦しい会話が周囲を飛び交う

 

一夏の周りにいた少女たちも、パトリックを一夏、ラウラを自分に置き換えて、甘い妄想にふける

 

そして、そんなパトリックの思いを聞いたラウラは好ましく思う反面、こびりついた不安が剥がせないでいた

 

「ッ…ここ(IS学園)にいれば、軍以上に多くの勢力に狙われることになる…死ぬ事になるぞ」

 

いや、死ねればまだいい方かもしれない。最悪、モルモット以下の生涯を送るハメになるかもしれないのだ

 

だからラウラは念を押して忠告するが、それをパトリックはある事実で反論する

 

「お言葉ですが、自分は七度のIS戦を行い、生き抜いてきました。味方からついたあだ名は「不死身のコーラサワー」です」

 

「不死身のコーラサワー」。ある時期から軍内でパトリックはそう呼ばれるようになった

 

なるほど。圧倒的火力と絶対防御があるISが使えるならともかく、そんなものはない戦闘機や戦車でそのIS相手に囮や陽動を行い、何度も撃墜されながらも必ず五体満足で生き延びてきたのだ。不死身とは確かに言い得て妙だ

 

「…それは当て擦りだ!」

 

ただし、それは全ての対IS戦において撃墜されて敗北しているパトリックに対して揶揄と皮肉、そして嘲笑を込めて呼ばれている通り名だ。シュバルツェ・ハーゼの隊員や一部の善良な軍人は言葉通り褒めているのかもしれないが、少なくとも自分から胸を張れることではない

 

「いやぁ〜そうですか〜!アッハハー!」

 

が、それに気づくはずもないパトリックはそのあだ名を言葉通りの褒め言葉として受け取る始末だ

 

「ホント人気者ってツラいですね〜!アッハハハハハ!アハ、アハハハハハハ!」

「…まったく…本当に、まったくだ…」

 

本当に能天気で、楽観的で、危機感がなくて、放って置けない奴だとラウラは小さく笑みを浮かべた

 

 

 

その後、一夏たちの自己紹介と交流を終えた放課後…6人はアリーナに集まり、そこでISの模擬戦をする事になった

 

「いや、なんでだよ」

 

白式を装着している一夏がぼやくと、6人の中で唯一ISを身につけてない箒が答える

 

「仕方あるまい。セシリアと鈴が頑なにコーラサワーの実力が見たいと言ったのだからな」

 

そう、この状況は勝ち気で強気、プライドと自信を持つ2人の少女によって生み出されたものだった

 

パトリックも専用機としてカスタムされたラファール・リヴァイヴを所持しているが、それでも第二世代の量産機。特殊兵装が装備された第三世代機を持つセシリアと鈴には、当人たちの実力も加味すればまず勝てない

 

…勝てないはずだった

 

「しかし…凄まじいな。コーラサワーの奴」

「ああ…スゲェな…」

 

感嘆のため息を吐く2人の視線の先には…青い涙を翻弄する不死身の男がいた

 

 

『速過ぎる…!それにこの緩急…狙いが定まりませんわ…!』

 

ズガガガガ!

 

『きゃあ!』

 

高所で陣取るは、遠距離戦闘を得意とするセシリアの“ブルー・ティアーズ”。手に持つ“スターライトmkⅢ”でひたすらパトリックの黒いラファールを狙い撃つ

 

彼女自身の高い狙撃能力もあって狙いは正確なのだが、レーザーのことごとくをラファールはしっかり回避あるいはシールドでガードしつつ、サブマシンガンで確実にブルー・ティアーズのSEを削る

 

『どうしたぁ?動きが(のろ)いぜISゥ!』

『! この…!』

 

パトリックの言葉を挑発と捉えたセシリアは、ブルー・ティアーズの切り札というべきものを使用する

 

スカートアーマーの一部がパージする。4つの鋭角的な形状のそれはセシリアの周囲に浮き、パトリックに向かって高速で移動。そして先端からレーザーを同時に撃ち出す

 

『お行きなさい、ビット!』

 

警戒していたパトリックも突然の集中砲火には反応できず、レーザーを何発か食らってしまう

 

『おわぁ!レーザーを撃ってきやがった!?』

『さあ、踊りなさい!わたくしと、ブルー・ティアーズの演舞曲(ワルツ)を!!』

 

これこそがセシリアが切り札とする、自らのISの名前でもある第3世代特殊兵装“ブルー・ティアーズ”である

 

パトリックは回避し切れないレーザーの雨をガードしながら動き回る

 

『あっぶねぇ!』

(くっ、ビットを使っても最初の攻撃以外全てしのがれてしまいますわ…しかし、先ほどと違って攻撃自体は当たっている。このまま決めさせてもらいますわ!)

 

セシリア自身は真正面から、ビットは死角に回り込みながらレーザー射撃を繰り返す

 

しかしパトリックはすぐにビット攻撃に慣れていき、1分も立たないうちにサブマシンガンで反撃を始める

 

ズガガガ! ボォン!

 

『ビットが!?まさかもう攻撃に慣れ──』

 

驚く間もなく、ラファールは手に持った武器と盾を量子化すると、拡張領域(バススロット)(量子化した装備の格納庫のようなもの)から大振りのランス“GN-X(ジンクス)”を実体化させる。先日IS学園に襲撃してきた敵性ISにトドメを刺したものだ

 

それ(ビット)使ってると動けねえんだろォ!?いただくぜ!』

『なッ!?』

 

パトリックの発言に絶句する

 

かつてクラス代表決定戦で一夏と戦った時ですら、20分近くは回避に徹してようやくその事実…『“ブルー・ティアーズ”の展開中セシリア自身は動くことはできない』という弱点に気づいたのだ。同じように1分足らずでその事を看過したのは同じ代表候補生であるラウラしかいない

 

ランスで体を隠しながら突貫してくるラファールの姿を捉えつつ、セシリアはパトリックを評価する

 

(なんて洞察力…!ラウラさんの部下なだけありますわ!)

『しかし!』

 

セシリアはブルー・ティアーズのスカートアーマーを動かす

 

『ビットはもう2機ありましてよ!』

 

ドカァァァン!

 

懐に隠していたミサイルビットが突撃してくるラファールに命中する。爆煙が広がる中、セシリアは追い討ちをかけるべくスターライトmkⅢを握りしめ

 

ドォン!

 

直後、車に轢かれたかの如き衝撃が襲ってきた

 

『なっ、なにが…!?』

 

セシリアは目を剥く

 

視界いっぱいに広がる2枚のシールド。そしてそのシールドの量子化、ランスの実体化を一瞬で行い、取り出したランスを構えるパトリックの姿

 

高速切替(ラピッド・スイッチ)!?まさか不意打ちのミサイルビットを同じ方法で取り出したシールドで防いだと…!?本当にISに触れて2ヶ月の素人ですの!?)

 

量子化と実体化を一瞬で行うことで瞬時に装備を変えるテクニック“高速切替(ラピッド・スイッチ)”を、素人であるはずのパトリックが行ったことに驚愕を隠せないセシリア

 

『イ、インターセプター!』

 

それでもセシリアはとっさの判断力でショートブレードを呼び出して防御を試みる

 

『動きがぁ!』

 

だがパトリックは、重量のあるランスの重さを生かした突きでインターセプターの防御を突き崩し

 

『見えんだよぉ!!』

 

ズガァァ!

 

ラファールの“GN-X”がブルー・ティアーズのSEを残さず削り切った

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