炭酸inIS   作:ジャギィ

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第6話

「すごいなパトリック!まさかセシリアに勝つなんて!」

「ムゥ…ただ自惚れているだけだと思っていたが、これほどまでの実力があったとは…」

 

試合終了後、勝者であるパトリックに近寄るのは一夏と箒の2人だ

 

一夏は純粋にパトリックの強さを褒め、箒は想像以上にISを使いこなす2人目の男に見通しが甘かったと反省する

 

「あったり前よ!なんたって俺はEUのエース様だからな!アッハッハッハッハ!!」

「…これがなければ素直に称賛することができるのだがな…」

「ハハハハ…」

 

ただし、この自信過剰な性格は箒もため息を隠せず、そんな幼馴染の様子に一夏は苦笑いをする。箒は少しだけラウラの苦労を理解したような気がした

 

「あんな…いいように翻弄されて…完全に完敗…ですわね…ウフフフフフ…」

 

一方、敗北したセシリアはこれでもかというほど落ち込んでいた。代表候補生になるほど研鑽と努力を積んできた彼女が、ISに触れて2ヶ月近くの素人に完敗したのだ。当然の反応と言える

 

「あーもうっ、そんなに落ち込んでんじゃないわよっ!!観戦してたから分かるけど、あんなの素人の動きじゃないわよ。アタシでもどんな結果になるか分かんないんだから」

 

負けたら煽ってやろうと考えてた鈴だったが、こうも落ち込まれてはさすがに追い討ちのかけるのは気が引けたのか、逆に慰めていた

 

それにパトリックに対する評価にも嘘はない。ISの素人とは思えない縦横無尽な動きに速さ。特に回避能力に関してはこの場にいる誰よりも高いのではないかと思わせるほどだ。事実、ビットの初撃以外でパトリックはSEを削られていないのだ

 

「そう自分を卑下することはないセシリア。確かに少尉はISの戦闘経験自体は私たちに及ばないが、軍人としての戦闘経験はとてつもなく多く、そして濃密だ。IS軍人である私以上に修羅場をくぐり抜けてきたのは間違いない」

「それって、アイツが不死身のどうこう言ってた話?」

「そうだ。戦闘機や戦車でテロリストのIS相手に囮や陽動をいつもしていた。必ず撃墜されていたが、同じように必ず無傷で生還していたな」

「…人間じゃないわよ、それ」

 

実は人工的に作られた人間か人体実験を受けた戦闘マシーンってオチじゃないわよね?凰鈴音はそう思わずにはいられなかった

 

「さて、次の相手はチビの嬢ちゃんか?」

「だからチビって言うんじゃないわよ!アタシの名前は凰鈴音って言ったでしょうが!」

 

憤る鈴に対し、パトリックは「おっとそうだったな」と笑いながら謝る

 

「ワリィワリィ、チビの嬢ちゃん」

「…あったまきた!絶対ボッコボコにしてやる!」

 

ただし、反省をまったく活かせてないため結局鈴をさらに怒らせるハメになるのだが

 

2度目の模擬戦、開始

 

 

「くっ…距離が詰めれない…!」

 

ズガガガガ!

 

「あう!」

 

鈴との戦いは、セシリアの時より一方的なものであった

 

というのも鈴の専用機である“甲龍(シェンロン)”は、()()()()()()()()()()も中距離までしか攻撃できない近接攻撃が主軸の、安定性と燃費を重視したIS。あらゆる距離で戦うことが可能な“ラファール・リヴァイヴ”と相性が良くないのは必然と言えた

 

「どっち見てんだオラー!」

「ああもう!チョロチョロ鬱陶しい…わねッ!」

 

サーカスのアクロバットのような空中機動を見せるパトリックに苛立ちを見せた鈴は、猛スピードで追いかけながら両肩の上部に浮いてある部位から攻撃を行う

 

「なんだ?諦めたのか?」

 

ドカン!

 

パトリックがそう思ったその時、ラファールの背後に衝撃が走る

 

「のわぁ!な、なんだ!?どっからの攻撃だ!?」

 

SEの減りから攻撃を喰らったと受け取ったパトリックは周囲を見渡すが、背後の甲龍を除けば、先ほどセシリアが戦った時のビットのようなものすら見当たらない

 

当然追いかけてきた甲龍も警戒していた。にも関わらず攻撃を受けたのだからより疑問が残る

 

「へへん!どうよ、アタシの甲龍の“龍咆(りゅうほう)”の威力は!」

 

そう、これこそ甲龍を第3世代機たらしめる武器“龍咆”である

 

その正体は空気。ISの肩部から圧縮した空気の砲台を作り、衝撃波の砲撃を喰らわせる特殊兵装

 

最大の特徴は、砲弾、砲身ともに空気でできているため不可視の攻撃であること。砲身もその場で作り出すゆえ射角限界もない、敵に回すと厄介極まりない武器と言えるだろう

 

「やべぇ!」

 

見えない攻撃に危機感を覚えたパトリックは大型シールド“ティエレン”を呼び出して両手に持ち、とっさに甲龍の方を向いて衝撃波をガードする

 

「これを防ぐなんてさすがね!…まっ、分かってたけど!」

 

龍咆は見えないゆえの奇襲性が強みだ。初見であればなお対処は難しいはずだが、パトリックは見事に防いでみせた。しかし鈴に驚きはない。鈴はセシリアとの試合内容から、パトリックなら初見の龍咆も対応する可能性があるという想定をしていたのだ

 

そもそも龍咆は事前に知っていれば対処が難しい攻撃ではない。今まで鈴が戦ってきた相手の中には、目の前の男のように用意していた盾で龍咆を防御する者も何人かいた

 

「でもねえ!」

 

大型の青龍刀“双天牙月”を両手に1本ずつ持ち、メインブースターを大きく吹かせて、パトリックの近くまで肉薄する

 

そういうの(シールド)装備してる奴って、だいたい動きが遅くなるのよねっ!!」

「うお!」

 

ガギン!ガギン!

 

2枚の盾で必死に攻撃を防ぐラファールを甲龍が徐々に追い詰めていく

 

ポイッ

 

その直後だった。密着しそうなほど距離が短いラファールと甲龍の間に、パイナップル型のソレが放り込まれる

 

「グ、グレネー…!?」

 

ドカァァァン!

 

「キャアアア!」

 

超至近距離で手榴弾の爆発を受けた鈴。持ち前の勘とセンスで直撃自体は避けられたものの、無視できないダメージを負った上、右手の“双天牙月”を落としてしまう

 

ブワァ!

 

そしてグレネードの爆煙から、爆発をガードした盾を近接ブレード“イナクト”に切り替えて飛び出してくるラファールの姿が

 

「ウラアァァァァ!!」

「くっ…!」

 

左手の“双天牙月”で対応する鈴。だが、それを見たパトリックは“イナクト”を持つ右手を捻り、甲龍の武器ではなくISの左手部分を攻撃し、“双天牙月”をはたき落とす

 

「ヤバッ」

 

龍咆を撃とうとするがもう遅い

 

「もういっちょおッ!!」

 

‘’高速切替(ラピッド・スイッチ)”の応用で右手の‘’イナクト”を量子化し、ほぼ同時のタイミングで左手で握るように呼び出す。再び突き立てられた近接ブレードの切っ先が生身の部位に当たったことで絶対防御が発動し、甲龍のSEを0にしたのだった

 

 

「悔しいぃぃぃ!!あんなタイミングでグレネードとか性格悪過ぎでしょ!!」

 

ISを解除した鈴は生の感情を吐き散らす。心なしかツインテールが逆立って威嚇している猫のようにも見える

 

そんな鈴の頭をポンポンと叩きながらパトリックは満面の笑みで言う

 

「ま、EUのトップエースである俺が相手だったんだ!戦えただけ誇っていいんだぜ、おチビ」

「フン!」

 

ズドム!

 

「ぐお!?ぼ、暴力反対ィ…!」

 

本人にそんな気はカケラほどもなくとも、結果的に煽ることになってしまったことで鈴の拳が鳩尾に炸裂。バタンとぶっ倒れながらパトリックは絞り出すようにそう呟いた

 

「だ、大丈夫か?パトリック」

「おう…心配すんな!EUのエース様は不死身だからな!」

(もう復活するのか…)

(どんなタフネスをしていますの…)

(やっぱ人間じゃないわねコイツ)

 

その時の箒とセシリアと鈴は、妖怪でも見たかのような目をしていたのだった

 

「…なあ、パトリック」

「んお?なんだ?」

「…頼みがあるんだ」

 

一夏は、パトリックにある提案をする

 

 

 

「悪いなパトリック…急に俺も試合がしたいなんて言い出して…」

「なーに、気にすんな!俺様の胸を借りるつもりでドーンとかかってきやがれってんだ!」

 

アリーナの中心で、それぞれ白式とラファールを装着した一夏とパトリックが対面する

 

そう、一夏の提案とは模擬戦の申し込みである。連続で試合をして疲労も溜まっているはずのパトリックに頼むのは少し気を引いたのだが、パトリックは心置きなくこれを快諾した

 

(そうさ!少佐が一目置いてる一夏を倒せば、少佐の気持ちだって…!)

 

なお、試合を引き受けた理由の大部分に私情が混ざっていることをここに明記しておこうかな

 

そして、試合が始まる

 

「うおおおおお!」

「なんだぁ?剣1本で俺を相手しようってのか?」

 

“雪片弍型”を手にまっすぐ突っ込んでくる一夏

 

本来ならば、距離を取りながら銃火器で引き打ちする。これだけで一夏相手に勝てるのだが、不純な(ある意味純粋な)動機で試合を望んだパトリックはその戦法をあえて捨てる

 

「お前、俺が誰だか分かってんのか?EUのパトリック・コーラサワーだ!!模擬戦でも負け知らずの、スペシャル様なんだよ!」

 

右手に小型ナイフ“ヘリオン”を持ち、一夏の土俵際で戦おうとするパトリック

 

「知らねえとは言わせねえぞ!」

「…あのバカ…」

 

それを見ていたラウラは気づいた。パトリックが慢心していると

 

そしてそんな状態になったパトリックがこれから出す結果をラウラは…いや、ドイツ軍の誰もが()()()()()

 

「うおおおー!」

 

零落白夜を発動して斬りかかるも、パトリックは宙返りで()()()()()()()()()()()回避する

 

「ええ?オイ!」

 

その勢いを利用して白式に斬りかかろうとした時…

 

突如ラファールのメインスラスターが止まった

 

「へ?」

 

当然急に動きが取れなくなったパトリックは墜落

 

「ぐわぁ!イッテテテ…な、何が起きたぁ!?」

 

ISの状態を確かめるパトリック

 

「おわぁ!なんだこの威力!?」

 

そう、パトリックはギリギリで回避したつもりだったが、白式の零落白夜は掠っただけでもSEを大きく削る能力。それゆえにスラスターに掠ったことでSEがゴッソリ削れて、スラスターが機能不全となったのである

 

飛行することができなくなったラファールの前に、雪片弍型を構える白式が降り立つ

 

「テ、テメェ…!分かってねえだろ!」

 

即座にリニアライフル“フラッグ”を実体化させて右手で撃つパトリック。それを防御もせず全身で受けながらも突き進み、零落白夜を纏わせた“雪片弍型”で斬る

 

「俺はぁっ!」

 

左手の“ティエレン”でガードするも腕部分ごと斬り落とされ

 

「スペシャルでっ!」

 

次の攻撃を“フラッグ”で受け流そうとするも右手部分ごと斬り捨てられ

 

「2000回でっ!!」

 

最後の攻撃も上体を逸らして直撃を回避するも“雪片弍型”が掠ったことでSEを全部減らされ

 

「模擬戦なんだよぉぉぉぉっ!!」

 

仰向けに倒れ込みながら、パトリックは一夏に完敗したのだった

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