眷属を想う神が鍛治の神と共に完成させた短刀。
仏に供えれば世界を渡ることができるだろう。
強くなりたいと願った子のために親が用意したものだ。
しかし、忍びとなった兎が握れど何も反応しない。
店先にあるのは【葦名】と書かれたのぼり旗。
暖簾が立てられたその建物は周りの風景に溶け込んでいるものであった。
周りは石畳と石造りの街が見える中でも都市の特性によって違和感そのものは消えている。
木造や瓦など見るからに異国建築とわかるその建物はとある少年の目的地である。
見る人が見れば【極東】の文化であることは分かるだろう。
【タケミカヅチ・ファミリア】が経営する日本茶屋だ。
お蝶に連れられて入った店内は実に良い雰囲気であった。
静かで、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる。
テーブル席が少しと個室っぽい畳の席が少し。
そんな店内をお蝶はズカズカと厨房のある方向に進んでいく。
「お蝶殿!」
「久しぶりだね、九郎様」
丁度厨房から出てきた黒髪の少年。
九郎様と呼ばれた少年はお蝶を見ると声をあげた。
「‥‥‥九郎様?」
ベルはお蝶の言葉が聞こえて、首を傾げる。
探し人が目の前にいるのではないかという自問自答だ。
聞いてみようと足を動かしかけるがすぐに足を止める。
「コホン、今日は何用で参られた?」
「アレを案内してきた。狼の弟子だよ」
「狼の!?それは真なのですか!?」
九郎は大きな声をあげ、お蝶が静かに首を縦に振る。
叫びに近く、驚愕に表情を染めた九郎は遠目にベルを見た。
腰の楔丸、左腕の忍義手と忍び装束。
その全ては師の影響を受けてのこと、師に似るのは致し方ないことだ。
「‥‥‥九郎様」
九郎が目の前にやってきた。
そうなれば、ベルは自然と跪く。
「狼はどうしておる?」
「荒れ寺にて仏を彫っています」
九郎は少し瞼を閉じ、ベルに聞いた。
それに対してベルは最低限の情報のみを語る。
「‥‥‥そうか」
九郎は少し、穏やかな表情になる。
それを見て、少し安堵した。
忍びなどなるものではない。
そう聞いたのはもう幾度あったことか。
忍び、侍、そんな言葉に憧れこそあれ忌避感などは一切なかった。
物語で見る彼らの姿、仏師やエマ殿の語った血濡れの彼らの姿。
そのどれもがカッコイイと映ったからなのだろう。
仏師の語る九郎様の姿。
それは彼によって誇張されていたものはあれど、概ねその通りであった。
好い方だとさらに実感を持って感じている。
「名は、なんと申す?」
「ベル・クラネルと」
「では、べる殿」
九郎は少し間を空ける。
ありのままを受け入れるためにその言葉を静かに待った。
「様、などとは呼ばないでほしい。見たところあなたは同年代だ」
────友になってくれないか。
そんな言葉が耳に届いた。
どんな気持ちが頭を支配したかは、形容ができないものであった。
恐れ多い、嬉しい、是非なりたい、しかし。
気持ちの大半は肯定的な言葉で埋まっていただろう。
「───是非とも!!」
少しの間があき、目の前に九郎様の顔が見えるくらいに顔を近づけてしまう。
葛藤するまでもなかったのだ。
九郎様と友達になりたいという思いが頭を支配するのに時間はかからなかった。
「近い」
「あ、すみません」
九郎の微妙な笑みと言葉がかかるとすぐにベルは後退りする。
気持ちが舞い上がってしまったと少しシュン、と縮こまった。
「べる、仲良くしてくれ」
少し落ち込んでいると、九郎様が忍び義手の方の手を握ってそう言った。
ニコッとした爽やかな笑顔には、つい気持ち悪い笑いが出そうになってしまう。
昂った感情が支配できないようになっていく。
「はい!」
つい、九郎様のか細い手を両手で握ってしまう。
幸い、痛くはなかったようで九郎様も両手で握り返した。
「はい、ではまだ硬いと思うぞ?」
「──うん!」
友達、いい響きである。
パチパチ、拍手が周りで起こるのが聞こえてきた。
なんだか、気分が良くなってくる。
これも全てはヘスティア様に保護してもらい、梟殿に誘拐されたからだと思うとなかなか奇妙である。
「ははは!で、ふぁみりあには入っているのか?」
「いや、まだ。今のところ考えてるのは、ヘスティア様のところなんだけど」
オラリオに来て、ファミリアを調べて、迷子になって、適当に野宿してたらヘスティア様に拾われて。
その結果としてまだファミリアには入っていない。
義手である時点で入れてはくれないと思うが。
【
義手だからそもそもファミリアに入れずに【
なので現在は候補がヘスティア様のファミリアしか存在しない。
「‥‥‥腕か?」
「うん。門前払いされつづけてね」
九郎様の言葉に正直に答える。
かの有名な【ロキ・ファミリア】からも門前払いされたくらいだ。
それほどまでに義手の冒険者というものは存在しないのだろう。
「厄介になるならヘスティア様かなって」
「あの方なら、たしかに安心だな」
ヘスティア様のことを知っているのかと少し驚く。
バイトに出かけていたから、知られていてもおかしくはないかと自己完結した。
「それでなんですけど、一心様はダンジョンに?」
「弦一郎殿と一緒に行っておるぞ。あの方に用でもあったのか?」
「えぇ、まあ。【葦名流】を教えて欲しくて」
あとは【葦名無心流】も教えて欲しいのだ。
未完である伝書は手元にあるが、いまの無心流も貪欲に求める。
でなければ倒せないと分かっている。
「いい心がけだな」
「うん、目標があるから」
エマ殿から一本を取れたことなんてなかった。
仏師殿から一殺を取れたこともなかった。
何もかもを飲み込まなければ鬼を狩るなぞできようはずもない。
「うん、良いことじゃ。席は、空いておるな、座って待っておれ!」
「‥‥‥?分かったよ」
促されるままに椅子に座る。
頭の上に疑問符が浮かんでいることだろう。
そんな表現が英雄譚であった気がする。
「若いってのはいいねぇ」
「そうじゃの」
「いたんですか!?」
向かいの席でお茶を飲んでほっこりしている忍び二人。
一人はともかくとしてもう一人がいることに驚いた。
「あんたが心配だったんだとさ」
「一心様がおらんかったのでな」
「いい人たちですねぇ」
目の前の湯のみに注がれたお茶を少し飲む。
誰が用意したかは分からないが、ありがたいことだ。
「べる!」
九郎様が来て、机の上にお皿が出される。
その上に乗っているのは黒い、光沢のある球体。
「‥‥‥おはぎ」
「そうじゃ!食べたことはあるのか?」
九郎様は楽しそうに聞いてくる。
その質問にははい、と答えた。
仏師殿に貰ったのが記憶にある。
甘いものは苦手なはずだったのだが、美味しかったのを覚えている。
「‥‥‥ええ。仏師殿に貰いました」
「ほう、狼に」
「はい。エマ殿から聞いたんですけどね、荒れ寺から出てエマ殿に教えて貰いながらこさえたらしいんです」
懐かしいなぁ、と遠い記憶を掘り返した。
美味かったのだ、あの仏師殿が重い腰を上げて作ってくれたアレは。
九郎様のことを語ったのはあの時が最初で最後だったのもまた、覚えている。
ならば、このおはぎもきっと、美味い。
「‥‥‥美味しい」
「で、あろう!」
「本当に美味しい」
一つ、直ぐに食べ終わってしまう。
非常に名残惜しかった。
好い、思った以上に美味かった。
「ご馳走様でした」
「お粗末様じゃ!」
おはぎの余韻を楽しみながら、手を合わせる。
おはぎは美味しく、九郎様は可愛い。
それを噛み締めながら食べるのは充実したものであった。
「‥‥‥あれ、梟殿は」
「もう帰っていかれたぞ」
「え、お蝶殿もいない」
「うむ、べるの食べる姿を見ていたら颯爽とな」
なんだか複雑である。
会計を求めないところを見ると会計まで済ませていったようだ。
「一心様方ってファミリアは‥‥」
「建御雷様のところに厄介になっているな」
「へぇ‥‥‥」
ヘスティア様のファミリアに厄介になることはもう既に決めている。
あの方には助けてもらったのだ、【
「では、たまにお邪魔しても」
「うむ、大歓迎じゃぞ!」
「ありがとう。じゃあ、今日はこれくらいで失礼するね」
「また来てくれ!」
「うん。すぐに来るよ」
茶屋を出ると、もう夕日が見えた。
廃教会に帰ろうと忍義手を駆動させる。
九郎様のキャラと喋り方ができてるかどうか分からない。
SEKIROのテキスト模倣しようとしてるけど上手くできてるかどうかわかんない。
今のベル君はレベル1にしては強い方、恩恵を貰えばもっと強くはなります。
梟とお蝶は、強すぎるからね?
一心様は規格外です。
【剣聖】と呼ばれて、オラリオ最強の名を欲しいままにしています。
恩恵もらってもないのに光すら置き去りにする居合できる、刃を飛ばせる、修羅に呑まれた狼と余命半日もない状態で互角にやり合う。
勝てる奴なんてダンまち世界で思い浮かびませんよ。