ラインハルト「それにしてもエトワール、よく無事だったね」
一通り、エミリアとのやり取りを終えたタイミングを待っていたのだろう。
『ああ、ラインハルトが言ってくれなかったらスバル死んでたかもしれないから、助かったよ』
ラインハルトが何気なく落ちていた棍棒を拾う。
ラインハルト「あれ」
その手の中で、棍棒は滑らかな切断面をさらして鈍い音を立てて落ちた。
ど真ん中で二つに切り落とされ、その役目を完全に終えている。
ゆっくりと、ラインハルトがスバルとエトワールの方を切なげな目で見た。
僕もその視線に従って、嫌な予感を感じつつもカッターシャツの裾をまくる。胴体は肌色だったが、そこに変化が生まれた。
――ふいに、横一線に赤い筋が引かれたのだ。
スバル「あ、やばい、これ、俺にも先が読めた」
鋭い痛みが先鋒として訪れる。
そして次の瞬間――スバルと僕のの腹部が横一文字に裂け、大量に鮮血が噴出。
――ここに来て死なせない。
ふらっと足が力を抜けるように体が倒れてしまった。
エミリア「――ちょ、スバル!?」
すぐ近くで、エミリアの切羽詰まった声が聞こえる。
直ぐに僕の傷を魔法で小さくし、スバルに治癒魔法をかけ始める。
ああ、ここで仮に死んでしまっても、スバルはまたここに来るだろうな。
――スバルに着いて行くよ。僕は。
ラインハルトが焦りを浮かべ、すぐ近くで顔を覗き込んでくるエミリアがその整った面に悲痛な表情を象っている。
――気を失うふりをしていたら、エミリアが治癒魔法を掛けてくれた。
エミリア「あれ、傷が小さい…?真横にあったはずなのに」
ラインハルト「…珍しいですね、傷が小さくなる加護なんて」
エミリアとラインハルトが話しているのを聞いていたらどうやら、僕らはロズワール辺境伯の所に泊めて貰えるようだ。
そして、フェルトが盗っていた徽章を隠していたのを手に持ち、エミリアに渡す。
その時、ラインハルトに琴線が触れたようだ。
薄目で見ていたが、ラインハルトはフェルトの腕をつかみ、生まれとか出身を問う。
拒否権を出さない内にフェルトを手刀で気絶させる。
ラインハルト「エミリア様、また近いうちに呼び出しがあるかと思われます。ご理解を」
ラインハルトは徽章をエミリアに返す。
持ち主に戻ってきた事を喜ぶかのように薄く発光している。
ラインハルト「スバルとエトワールの事をよろしくお願いいたします」
徽章を受け取り、無言で自分を見つめてくるエミリアにラインハルトは一礼。
そしてしばらくしたら、双子のメイドが来て僕らを屋敷へと運んでくれるようだ。
…スバルと離れないようにしっかり手を握りながら。
意識を失う僕である。