ナツキ・スバルとエトワールとの邂逅   作:闇の翼

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日課

エミリアが日課をこなしている間スバルは腕立てをしていた。

 

僕は素振りを。

 

 

『……結構続くのね』

 

スバル「ああ、ヒッキーだったから、体でも鍛えようとしてて、腕立て100回、腹筋100回、スクワット100回を毎日していたよ」

 

素振り100回をこなし、それが終われば魔力を高める精神統一を地面に座り込んで始める。

 

 

約20分後。

 

スバルの方を見ていみると、木刀…いや木剣を構えていた。

 

『剣道部に所属していた?構えが様になっているんだけど』

 

 

スバル「よく分かるなぁ、中学の時に入ってた。一応、段位も持ってる」

 

『すっげぇ』

 

 

 

 

途切れた集中力を再度集中しようとするが、声が気になった。

 

 

会話の主はエミリアとパックだと思っていたのだが、違っていた。

 

 

エミリアの方を見てみると見間違いでは無く、光っていた。

その光は多分微精霊と呼ばれるものだろう。

ぼんやりと淡く光っており、その中にふわふわと蛍のように儚げな光だ。

 

 

『なに、話してるんだろう』

 

 

それは神秘的で、どこか幻想的な光景であった。

人の手が触れることを思わず躊躇うような情景。超自然的な存在に、許されたものだけが在ることのできる聖域、そんな風景に素振りを中断していた彼は、

 

 

 

スバル「すげーな、これ。ひょっとして、このふわふわしてんのみんな精霊?」

 

 

 

エミリア「――ひゃっ」

 

 

 

わりとずけずけと、構うことなく侵入してエミリアに話しかけていた。

 

驚きの声は彼女の唇から紡がれ、スバルを見上げる瞳は驚きで反射的に浮かんだ涙の滴で潤んでいる。

 

――そんな顔も可愛い

 

 

そして、彼女を取り巻いていた儚げな輝きたちにも動揺は伝染し、

 

 

[わわ] [なに、あの人] [めつきのわるいひと]

[こわい] [こわいよ]

 

声が聞こえた。

 

『フフっ、スバル、精霊さんに怖がられてるよ』

 

「おー、パニくってるパニくってるって、マジで?」

 

 

 

数多の光がおたおたするように左右に揺れ、スバルの意識から逃れようとするようにエミリアの後ろへ回り込もうとするが、数少ない光が僕の後ろにも来た。

 

 

パック「なんかもうすごいな、スバルは。普通は精霊ってもっと触れるのに勇気がいるような存在なんだよ――でもエトワールも凄いね。初めて会ったのに近くによろうとするなんて」

 

 

 

 

スバル「それは暗に『ボクをモフれる君は幸せ者だよ』って言ってんのか、知ってるよ! お前にメロメロだっての」

 

 

 

硬直するエミリアの腕の上、パックの体を今度は背中から攻める。

スバルはいまだに言葉のない彼女に対して首を傾げて、

 

 

 

スバル「どったの? そんな油断してるとまーた徽章盗られるよ?」

 

 

 

エミリア「人の痛いところ突かないの! そうじゃなくて、ビックリするじゃない、エト声聞こえてるの?」

 

浮いた涙を指ですくって、エミリアはスバルの短慮を咎める。

 

彼女の言に精霊たちが同意するように縦に揺れる。意外とノリがいいんだな、と精霊の反応を眺めつつ、

 

『ああ、聞こえてる』

 

スバル「ほら、精霊見るのとかって俺って初めてだからちょっと舞い上がっちゃってさぁ。見た感じ、危ないようには見えなかったし」

 

 

 

エミリア「制御下にあるから大丈夫だっただけよ。未熟な精霊術師に今のやったら、精霊の暴走を招いて……ぼかん、よ。エトワール、貴女精霊術士になれるわよ」

 

 

 

声をひそめてこちらを脅そうとするエミリアだが、後半で語彙が不足したのか出てきたのが『ぼかん』だ。

マジメに聞いてて肩すかしを食らい、スバルは「大げさな」とパックを見る。

 

『ぽかんとか、爆発するのか――褒め言葉として預かっとく』

 

スバル「あんなふわっとした感じの光が危ないとか、あんの?」

 

パック「そうだね。たとえばボクは今、この瞬間にでも君を塵にできるよ」

 

 

 

スバル「舐めた真似してすんませんしたぁっ!」

 

すばやく土下座して謝罪するスバル。

 

小さな手を振るパックは笑い、エミリアは自分との待遇の違いに少しだけ不満そうに唇を尖らせ、

 

 

 

エミリア「どうしてその素直さを私の方に向けないのかしら……ねえ、パック」

 

 

 

パック「年季かなぁ」

 

 

 

ヒゲをいじりながら長閑な返答。

パックの穏当な態度に毒気を抜かれたのか、エミリアはそれ以上の言及を諦めたように吐息したのだった。

 

 

 

 

 

 

エミリア「そう言えば精霊を見たことないのよね?スバルは。マナの扱い不安定なの?エトは見た事あるもんね」

 

スバル「マナ…ねぇ」

 

立ち上がろうとしたスバルは軽く足が痺れたようでひょこひょこしながらも立ち上がった。

 

『見た事はあるけど、こんなに形が安定してないのは初めてだわ』

 

僕の言っているのは聖霊の方。

精霊の方でも人の形を取っていたのが当たり前だと思っていたからな。

 

エミリア「え、精霊っていつもこんな感じだよ?」

 

『ああ、そうなのかい。だったらさっきの話無しで』

 

パック「よく見てる感じ、スバルのゲートってうまく開いてないんだよね。精霊術とか魔法と無関係にしても、閉じすぎじゃない? ってレベルだし、エトワールに至ってはゲートその物がないんだけど」

 

 

エミリア「それって変じゃない。普通に生きてればそんなことないはずでしょう?」

 

パック「うん、だから変なんだよ。普通に生きてなかったんだろね」

 

 

『2人の世界……ジェラシーだね?スバル』

 

スバル「ああ、ってさらっと俺の心の声を読むなっ!」

 

『良いじゃん、聞こえてしまったんだし…』

 

さらっと読心魔法を使っている事を暴露する。

パックが僕達の心を読み取ろうとしてくるが、僕はそれをガード。

 

何も聞かせないという訳には行かないのでスバルの心に似た考えをガードした上に置く。

 

 

『でもさぁ、エミリー、まだ対話の途中じゃないかな?』

 

そういや、と前置きをして話の主導権を握る。

 

エミリア「ええ、そうなの」

 

『だったら続きしてきなよ。僕らはパックと戯れておくし――邪魔をしたスバルが原因なんだけどな…』

 

エミリア「ありがと」

 

 

 

 


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