スバル「しっかし、俺の恋路は前途多難だなぁ。我ながらビックリだべ」
好きになった人が女王様候補というのを知り、スバルは唖然としていた。
黙り込むスバルにエミリアは心配そうにスバルの顔を見る。
だが、そんなエミリアを抱きしめていたスバルだった。
――よし、売れる材料来た。
そんな2人を写真に収めるべくスマホを取り出し何枚か撮る。
ロズワール「エトワール、そぉれはなーにだねぇ?」
『僕にしか扱えない魔法器だよ』
ロズワール「なぁるほどねぇ」
スバルの顔とエミリアの顔片方ずつしっかり映る位置から撮ったりしていた。
だが、それはエミリアの必死な抵抗で2人の抱擁は終わりを告げた。
エミリア「スバル!急に女の子を抱きしめないのっ! 相手が私だったからそんなでもないけど、普通の女の子だったら本気にしちゃうんだから」
スバル「俺だって別に狙ってやってねぇよ? そう、まさに誰かに命令されたかのように。まさか、エミリアたんが魅了の魔法で俺を……? 悪女だな!」
エミリア「やってないわよっ、濡れ衣だわ。あと、その親指立てるのやめてよ!」
力強いサムズアップが否定されて、すごすご右手を下げるスバルだった。
ロズワール「なぁんともまぁ、恐いもの知らずだよねぇ、君」
今の二人のやり取りを傍観していたロズワールが笑いを堪えた顔で言う。
ロズワール「相手は未来の女王様候補なんだよぉ? ひょぉっとしたら、今の不敬を長々と執念深く覚えていて、いざ王座に就いた際に君を処断するやも……」
スバル「なにが起きるかわからん明日のために、今の幸せを後悔しろってのか? 刹那の快楽主義であるゆとり教育の被害者を舐めんなよ」
中指を立てて行儀悪く言ってのけ、スバルは空いた手でエミリアを示し、
スバル「たとえ未来の女王様だろうと、今この瞬間のエミリアたんはひとりの女の子。そして俺はひとりの男だ。ひとりの男と女が、どんな行きずりで爛れた関係になろうと文句を言われる筋合いはねぇ! だから――!」
椅子に足を乗せて拳を握りしめ、高々とスバルは宣言する。
スバル「たとえ明日処刑されるとしても、俺はエミリアたんを抱きしめて、髪の毛くんかくんかして、その余韻を糧に生きていくぜ――!」
血を吐くようなスバルの断言に、食堂の中を静寂が埋め尽くした。
誰もがスバルの剣幕に言葉を失い、荒々しくも誇り高く言い放たれた言葉を飲み込んで、ごくりと喉を鳴らす。そして、
ピコンという機械音が鳴る。
『あ、悪ぃ。なんか動画撮れた』
スバル「えっ!?エトワールさん何を勝手に撮って…」
『ごめん、スバル。どうやらエミリアとの抱擁が離れたあとからのようだ』
ロズワール「どうやらその魔法器、思ったより便利そうだねぇ。私らにも扱えれないのが残念だぁよ…」
先程偶然撮れた動画を再生してみる。
スバルの意気揚々と宣言していた言葉が繰り返される。
スバル「………!?!?それ、恥ずかしすぎるんだが」
『ふふふ、そうだろうね。ま、これは面白いから残しとくけど。これ以外にも先のエミリアとの抱擁あるからね?』
スバル「……死ねるっ!!」
四つん這いで床に這うスバル。
『だったらテンション任せで行動しない事だな。恐喝のネタが増えるだけよ?この世界、ネットが無いのが残念だけど時間かければ『電気』っぽいの出来るだろうし』
『だいぶ話がズレたかもしれん、朝食の続きだ』
朝食の続きを促した。
と言っても残りデザートを食べ終わるだけだけど…。