デザートのリンガを食べながら質問を再度する。
『ロズワール卿、1つ質問良いかな?王都でエミリアを1人にさせていたのは?なんでかなかな?『女王様候補』となれば1人にさすのって結構危なかったと思うんだけど…』
途中ひぐらしの鳴きが入った。
「複数個になぁってるけど、答えてあげるよォ。王都に付き添ってたのはラムがいてくれぇたんだけどなぁ」
ちらりと桃髪の方を見るロズワール。
「そこの双子、レムそっくりの髪型しても髪色で分かるからなぁ!」
ラムが『騙せたぞ、しめしめ』とレムそっくりの前髪の流し方をしたが、スバルが一刀両断する。
おずおずと反応したのはエミリアだ。
彼女は気まずそうな顔で小さく手を挙げて、
「ラムが悪いわけじゃないの。その、私が……ちょっと好奇心に負けちゃってっていうか。ふらふらとラムからはぐれちゃって」
「なんだその萌えキャラみたいな理由、鉄壁か。それはそれとしても、主人の命令が守れなかったのは事実だろ? そこんとこ、ドゥーよ?」
唇を突き出していい発音で問いかけ、ロズワールはそれに首をひねるアクションで応じる。
彼は「一理あるね」と前置きし、
「確かにラムの監督不行き届きは私の責任でもあるかもねぇ。でぇも、それはそれとして君達はなにを言いたいのかなぁ?」
「簡単な話だよ。エミリアたんが帰巣本能忘れてふらふらしてたのに、付き人がそれをサーチできなかったのは痛恨の極み! んでもって、つまるとこ俺はそこにつけ込んだ悪党キャラ。となれば絞れるところから絞れるだけ絞るのが正しい悪徳ってもんじゃねぇの」
『スバルの話に付け加えるよ、もし僕達2人があの場に居なかったらエミリア死んでた可能性があるだろ。いくらパックが強いと言っても途中からいなかったし。――ロズワール卿、俺らに恩あるだろ?』
合点がいった、というように室内の全員の表情が変わる。
エミリアが顔を強張らせ、双子が申し訳なさと敵意が同居した瞳でスバルを睨み、ベアトリスは我関せずの顔のままグラスを傾け、パックは卵料理の前で滑ったのか黄身に頭から突っ込んで大惨事。
そしてロズワールが納得、とでも言いたげな微笑のまま何度も頷く。
「なぁるほど。確かに私財としては素寒貧に等しいエミリア様より、パトロンである私の方が褒美を求めるには適した相手だろうねぇ。認めよう、事実だからねぇ。で、その上で問いかけよう」
ロズワールが席から立ち上がり、その長身でスバルを見下ろす。
負けじと下から見上げ返すスバル。
図式は初対面の不意打ちデコチューのときに近いが、二人がまとう雰囲気の重さはけた違い。
僕はスバルの横へ移動し、ロズワールを見つめ返す。
「聞くぜ、耳の穴かっぽじってな」
「君は私になぁにを望むのかな? 現状、私はそれを断れない。君がどんな金銀財宝を望んでも。あるいはもっと別の、展開を望んだとしてもだ。徽章の紛失、その事実を隠蔽するためなら何でもしよう」
「へっへっへ、さすがはお貴族様。話がわかるじゃねぇの」
悪ぶった態度のままスバルは両手を広げて、
「褒美は思いのまま! そしてお前はそれを断れない! 俺とロズっちの約束だ。破ったら針千本呑ますかんな」
「百本目までに死にそうなお話だねぇ。うん、約束しよう」
「男に二言はねぇな!?」
「スゴイ言葉だねぇ。なるほど。男は言い訳しないべきだ。二言はない」
互いの男を差し出しての交渉だ。
その上での約束事ならば信じるに値する、とスバルは偉そうに腕を組み、
「じゃ、俺を屋敷で雇ってくれ」
長い長い前振りに反して、すっぱりあっさりと言い切ったスバル。
「欲無さすぎない?私の名前の時もだし、パックとの時も…」
「はっ、俺は自分に素直なだけだよ?あの時は本気と書いてマジと読むくらいに名前知りたかったし」
「――で、エトワールは?」
『ん?僕?僕は……スバルと同じで屋敷で雇ってくれ。お金だけ貰っても土地勘無いから迷いそうだし、それなら衣食住揃ってるココが良い』
「了解だぁよ」
『それにさ、ロズ卿本人にとっても僕達手元にいる方が安心するだろ?』
「まぁ、そうだぁねぇ。2人増えたらこちらとしては大助かりぃだぁよ」
少し苦笑しながらもロズワールは頷く。
「交渉は成立。これから片付け出来次第、働いたらいいのか?」
「そうだねぇ、ラム、使用人の服に着替えさせた後、屋敷を案内してあげて。今日から働くんだ。部屋の場所等は覚えさせないとねぇ。レムは普段通りに。エミリア様は本日のスケジュール通りにお願いします」
「承知致しました」
******
ラムとレムが食器を素早く纏めた後、各自各々の作業に取り掛かろうとする。
そんな彼女らをロズワールは呼び止め、
「折角ココに全住居者いるんだ、自己紹介しようじゃなぁいか」
『自己紹介いるかぁ?7人と1匹しかいないけど…』
「にーちゃを1匹扱いとは無礼なのよ」
『あー、悪かった』
「訂正して、6人とドリルといちモフでいいか?」
「何度か聞いてるけど、ドリルってなんなのかしら」
「ドリルは男の魂、ロマンだよ」
「聞いたベティーが馬鹿だったのよ。ロズワール、ベティーは戻っていいかしら? にーちゃとゆっくりしたいのよ」
疲れた態度で目頭を揉み、少女らしくない仕草でベアトリスはロズワールに向き直る。
彼女の前ではいまだに食卓の上に居座るパックが「いちモフ!」と腰に手を当てて胸を張っていて、なんか微笑ましい。
「相性があんまぁりよくないのはわぁかるんだけどね。これから仲良く一緒にやってこうって関係なんだから、もう少し歩み寄ってよ、お願い」
「ベティーにできる譲歩はし尽くしたつもりなのよ。それ以上を求めるなら、メイザース家の当主といえど覚悟することかしら」
部屋の空気が悪くなるのがわかる。
「とにかく、ペティーは部屋に戻るのよ。にーちゃ、おいで」
にーちゃ、パックを抱き抱えながら、扉に手をかけるベアトリス。
「えっ」
スバルが声を上げるのも道理だろう。
それもそのはず、本来なら廊下だった扉が昨日入った本が沢山ある部屋なのだから。
『凄いな、その魔法。扉を介して移動…』
「これが『扉渡り』なのよ。その高尚さを目に焼き付けておくのよ」
お久しぶりです。
レムラム生誕日に更新です…。
語彙力がなくて、なかなか筆が進まない…。