「さて、とりあえず味方も増えたことだが、正面からぶつかるには、まだまだ戦力が足りていないよな。そこのところ、北上はどう思う?」
まぁ、こんなことは聞くまでもないことかもしれないが。周りの好戦的な奴らの現状を知らせるためにも敢えて問いかける。
「ん-、まぁ提督の言う通り正面衝突しちゃったら、勝てる見込みはないだろうねぇ」
「えぇ、北上さんの言う通りね。それほどまでにこっちの戦力は心もとないわ」
北上、それと大井の回答は、俺のそれとは相違ないものだった。
けど、改めて言われると今の状況が絶望的だと実感できて嫌になるな。まぁ、最初に比べれば多少は好転してはいるが。
「だな、それじゃあ、このくそったれな状況を打破できるアイデアを持っているやつはいるか?」
とはいえ、上司の俺が士気を下げるような行動がとれるわけもなく、いつも通りの軽いノリで問いかける。
・・・
しばらくの沈黙の後、吹雪ががおずおずと手を上げる。
「あの、司令官。今更ですけど他の鎮守府に助けを求めるのはどうでしょうか?」
吹雪の提案は最もなものであったが、いまいち気が進まない。
「あー・・・、まぁしょうがないか。あんまり気は進まないんだけどな」
例えそれで解決したとしても、俺の評価は地に落ちるだろうしな。まぁ背に腹は代えられないが。
「んー、提督さん。多分それは無駄だと思うな。多分、他の鎮守府もここみたいに反乱が起きちゃっているだろうし」
が、その意見は瑞鶴によって否定される。というか、さらっと重要なことを言ったなこいつ。
「というか、お前らに聞きたかったんだが結局この騒動の目的は何なんだ? そこまで嫌われている覚えもないんだが」
「あ、提督さんは知らないんだ。別に提督さんが嫌われているわけじゃあないよ。少なくとも私は嫌っていないし。簡単に言うと、艦娘にも人権を与えろっていう主張を通すためのものみたいだよ」
いまいち、納得いかない理由だな。勿論、そういった運動が行われていたのは知っているが、こんな暴動に発展するレベルではなかったはずだ。
「艦娘に人権って、ちゃんちゃら可笑しい話ですね。人権っていうのは人間に与えられるものなんですけどねぇ」
「相変わらず、お前はそこら辺、割り切っているよな」
吹雪が心底呆れたように、相変わらずドライな発言をする。まぁ、今更ではあるが。
「吹雪は相変わらずだね。いや、出逢った頃の方がむしろ人間らしさがあったね」
吹雪と並ぶ古参の響が発言する。ちなみに、ここにいる連中ではこの二人と北上が、この鎮守府の立ち上げ当初からいる面子になる。まぁ、他の連中とも付き合いは長いが。
「響ちゃん、私のことはお姉ちゃんって呼んでって何回も言っているのに。同じ特型駆逐艦なんだから」
「残念だけど、私の姉は暁一人だけだからね。でも個人的には吹雪のことは慕っているつもりだ」
「そう? なら、今はその言葉で満足しておくね」
昔から続いている定番のやり取りだが、俺は響が吹雪を姉と読んでいる場面に出くわしたことはない。というか、未来永劫来ないと思う・・・。それほどまでに響は暁に対しての思い入れが強い。そんな響が暁を置いて、一人でここに来ていることに多少の驚きを感じているのも事実だ。まぁ、口にすることではないだろうが。
「話を戻すぞ、ってことは長門たちは艦娘の地位向上のために反乱をして、他の鎮守府でも同様のことが起きてるってわけだな。このことは鎮守府の連中は全員知っているのか?」
「んー、どうなんだろ? 私は今日になって加賀さんたちから話を聞いたから。瑞鳳はどうだった?」
「私は瑞鶴の話を聞いて合点がいったところよ。そっかぁ、この騒動って、そんな目的が有ったのね」
「え、そうなの? 飛龍さんはどうだったんですか?」
「ん、私? 私は前から知っていたよ。近々、騒動を起こすってことと、その目的も」
おい、今の発言は見逃せないぞ。
「ちょ、お前。だったら、俺に教えろよ」
「ごめん、ごめん。でも、私も最初は向こうの言い分も分かるなぁって思ってたからさ。提督の身の安全についても考慮していたし。まぁ、最終的にこっちに付いたんだから許してよ、ね」
今さら、グチグチ言っても仕方ないのは確かだし、ここは引き下がるか。というか、全員が反応の目的を知っているわけではないんだな。そうなると、目的を知らない連中のうち、大多数は俺よりも長門の方に従うことにしたわけかぁ。中々につらい事実だな。
「ん-、そういうわけじゃなくて大多数の子は長い物に巻かれたっていうか、戦力差を考えて向こうに付いただけじゃないかな?」
「心を読むんじゃない、北上」
「何? 北上さんに文句でもあるの?」
「ないから、お前はそこのフレンチクルーラーでもいじってろ」
「ヒドッ!!!」
面倒くさいやつは放っておいて、最初の議題に戻るか。
「まぁいい。それじゃあ話を最初に戻すぞ。俺たちの方針決めだ」
「んー、幸いにもA棟は入り口が二箇所だけ。近くでの弾薬の使用も禁止したから、入り口に向かい打つっていうのが正道じゃないかな?」
「瑞鶴の考えは間違ってないと思うけど、それだとジリ貧になる。私は、逆にどちらかの入口に全戦力を注いで突破するべきだと思う」
「でも飛龍さん、それだと提督さんの安全を確保できるかが不安じゃないですか?せめて、もう片方に何人か残って、ある程度相手を引き付けておいた方がいいと思います」
二人のそれぞれの言い分はよく分かる。そもそも、戦力差が大きい上に俺の存在が良くも悪くも行動に制限をかけているのだから、選択肢自体が少ないのだが。
すると、ここまでほとんど発言のなかった雪風が口を開く。どうやら彼女は、持参した双眼鏡で相手方をじっと観察していたようだ。
「しれぇ、ちょっと外に出てもいいですか? 確かめたいことがあります」
「ん? なにか気になるものでのあるのか? でも、危ないからやめとけよ」
「大丈夫です。明日までは休戦なんですから。それじゃあ、行ってきますね」
そう言うと、トコトコと雪風は部屋を出ていく。不思議とそんな彼女を誰も止めることができなかった。
ていうか、あいつ俺に聞いた意味なかっただろ。
なんやかんやで、方針が定まらないな。ビスマルクなんて、俺の上げた饅頭を食って、隅で茶を飲んでるし・・・。