呼吸の時に出る水とか炎って確かイメージじゃ無かったけ?←無限列車の4DX見て困惑した人
鬼殺隊に入るための試験である最終選別。それが行われるのは藤襲山という場所だ。そこには、麓から中腹にかけて鬼の嫌う藤の花が一年中狂い咲いている。
先日最終選別への参加許可を受けた菫と炭次郎もここに向かっていたのだが……
「目眩が〜吐き気が〜」
「大丈夫?集合場所はまだ上だよ」
麓で顔色を悪くしている菫を介抱していた。
「何で藤の花がこの時期に咲いてるのさ……」
菫曰く、藤の花に対してアレルギーを持っているとのこと。今回の事もその影響らしい。
「菫……悪いけど開始の時間まであんまり無いし……」
「大丈夫……行こう最終選別に」
中腹辺りにある少しだけ開けた広場。ここが最終選別の集合場所となっている。二人がたどり着いた時には既に二十人弱の人が集まっている。
(結構集まってる……この人達みんな最終選別に参加するのか……)
「皆様、今宵はお集まり頂きありがとうございます」
「この先には鬼殺隊の隊士達が捕えた鬼がいます」
二人が来たのとほぼ同時に広場の中心にいた二人の少女が最終選別の説明を始める。だが体調の悪い菫には一切頭には、入って来ない。
「あれ?」
気が付くと皆奥へと進んでいく。どうやら説明は終わり最終選別が始まったようだ。
「行こう……説明聞いていなかったから頼むね」
「あの……ごめん俺も聞いてなかった…」
最終選別の説明を二人共聞いていない。それはつまり最終選別の突破条件が分からないという事だ。
「大丈夫?」
その二人に金髪の青年が手を差し出してくる。その手をとりゆっくりと進み始める。
その青年ーー我妻善逸によると最終選別の合格条件は、『鬼のいる山の中で7日間生き残る』事らしい。
「ねぇ最終選別って合格率が低いし、行くのやめにしない?」
一通り説明を終えた善逸がそう告げる。確かに最終選別の合格者は数人、最悪の場合は0なんてこともあり得る。だからと言って帰るつもりは二人にはない。
「二人共ありがとう。藤の花からも離れれたしボクは行くね」
「ああ、あんまり藤の花に近づきすぎるなよ」
「え?ちょ⁉…二人共?!」
藤の花から離れ、本調子に戻った菫。その様子を見てもう大丈夫だと判断した炭次郎。二人共最終選別の為森の奥へとそれぞれ進み始める。
「待ってよ!!おいてかないでよ!!!」
泣き叫ぶ善逸を一人置き去りにして。
炭次郎達と別れた菫は一人森の中を走っていた。山の中には恐らく、陽光が差す広場がある。そこならば太陽を苦手とする鬼から身を守ることができ、安全に昼を過ごす事が出来る。
「獲物だ……久しぶりの獲物だぁ!!」
ふと、後から声が聞こえ声が聞こえ振り返ると人影が襲いかかってくる。
ーー間違いない鬼だ。
既のところで攻撃をかわし呼吸を整え構える。鱗滝の下で会得した鬼を倒す為の技、水の呼吸。その壱の型を使おうとして別の気配に気付く。木の上にもう一人いる。恐らく漁夫の利を狙うつもりだろう。ならばと構えを変える菫。
『水の呼吸参の型・流流舞い』
目の前の鬼の頸を斬り、そのまま木の上にいた鬼の頸も斬り木の上に着地する。
(何だろう……このモヤモヤ……)
ーー鬼と戦えば興奮する。
菫は炭次郎にそう語った。しかし今の戦いでは、全く興奮するどころか嫌悪感を感じていた。本能が、細胞が目の前の鬼を殺せと訴えている。
(深く考えても仕方ないか)
とりあえず考えるのをやめ先に進もうとした時、突然木が揺れ、バランスを崩し地面に落下する。
「いったぁーもう突然何!!」
ゆっくりと立ちながら辺りを見回すと、木の根本に人影が見える。恐らくこの人が木を揺らしたのだろう。水色の着物を着て菫と同じ様な狐のお面を付けた少年ーー炭次郎だ。
怪我は酷いが生きている。ただ気を失っているだけのようだ。
「まだいたのか。俺の可愛い狐が」
そんな声が聞こえ見ると大量の手が生えた鬼がいた。対峙しただけでわかる威圧感。かなりの強敵だ。
「お前で14人目だ」
「何の話?それに狐って……」
「俺の食った鱗滝の弟子の数だ。その狐の面が目印なんだよ」
この鬼曰く、江戸時代に鱗滝に捕まって以来ずっとここにいるらしい。そして復讐の為、鱗滝の弟子をここで殺しているらしい。
「特に印象に残ってるのは、二人。花柄の着物を着た女と獅子色の小僧だ。二人共邪魔が入って喰えなかったが大怪我をさせたからなぁ。あの怪我じゃとっくに死んでるだろうなぁ」
その言葉を聞いた瞬間ハッとする菫。
鱗滝の弟子で花柄の着物を着た女。その特徴の人物と最近話したではないか。
「………真菰」
真菰はこの鬼に殺されていた。じゃああの時の真菰はーー
「菫!!」
炭次郎にびかけられ我に変える菫。どうやら意識を取り戻したようだ。
「炭次郎…」
「分かってる。ここで倒そう……」
鬼が二人に無数の手を伸ばして攻撃してくる。それをかわし接近を試みるも鬼も負けじと攻撃してくる。二手に別れ鬼の注意を逸らそうとしても全くそらせらせない。この鬼はどうやら集団戦にかなり慣れているようだ。この状態がこのまま続けば体力切れでこちらが負ける。
ーー何か打開策を見つけないと
攻撃をさばきつつ隙きを見つけようと集中する。目線、腕の動かし方。全てに注目しているその時だった。
(え?今……)
炭次郎が大きく飛びその地面から大量の手が襲いかかる光景。それがハッキリと頭に浮かんだ。しかし炭次郎は以前として攻撃をさばいており、とても飛ぶような気配はない。
ーーはずだった。
菫が先程の光景を忘れようとした時、炭次郎が飛びその下からいくつもの手が襲いかかってきた。先程の光景と全く同じ状態だ。
(さっきの事も気になるけど今は!!)
何時までも考えていられないとすぐに集中し直す菫。一方の炭次郎は、鬼の手を足場にして頸に近づいている。
(炭次郎なら頸を切れる。なら…)
ーー少しでも攻撃して炭次郎の援護をする。
その考えの元、刀を構える。
『空ノ流壱の型・春風・突』
菫の家に伝わる空ノ流と呼ばれる剣術。奥義を含め六つある型の一つ目、春風。本来は数メートルの距離を跳躍して相手との距離をつめながら切りつけるのだが、それを菫が改良したのがこの型だ。切るのではなく突きながら跳躍する菫。その勢いで鬼の手を吹き飛ばし、一気に接近する。
「炭次郎!!そのまま進んで!」
そのまま炭次郎の前に着地し一気に進んでいく。
(何なんだこいつは?!)
先程まで余裕を出していたはずの鬼から余裕が消える。だがもう遅い。炭次郎が菫を足場にして一気に跳躍して接近する。それを追うように手が伸びるもそれを全て菫が切り飛ばす。
『全集中。水の呼吸壱の型・水面斬り』
接近した炭次郎が頸を切る。それと同時に鬼の体が黒い灰となり消え始める。
その様子を見ながら菫は一人考えていた。先程の光景。目に浮かんだ事がそのまま目の前で実際に起きた。
ーーならば先程の光景は未来の様子なのか、だとしたらなぜ?
(偶然だよね多分)
考えた末、結局偶然という答えにたどり着いた菫。それ以上考えるのをやめると再び炭次郎と分かれ森の奥へと消えていった。
大正こそこそ話
菫の家に伝わる空ノ流は、片手で刀を扱い全ての型において呼吸を必要としない剣術だ。
会得難度はかなり高く、人を選ぶ剣術と呼ばれているぞ。
因みに菫が現在会得しているのは、弐の型である夏空までだ。