最近『面白くするためにキャラを殺すのはどうか?』『キャラを生存させる為に動いたらその反動で他誰かが死ぬ』と言う意見を目にしたのでこの作品における生死の基準について……
この作品は、当初原作キャラは全て同じ末路を辿る予定でした。しかし内容を考えている時、まるで『キャラ自身がその運命を選んだ』ように自然と生死に関する内容が頭に浮かびました。
なので、この作品では出来るだけその意志を尊重しています。
夜の町
そこを一人の人影が逃げるように疾走していた。少し前、町外れのお堂で人食いをしていたこの鬼の所に一人の少女がやってきた。空色の髪をしていた少女は、鬼になんの躊躇いもなく攻撃してして来た。その時の視線に少し来る物はあったが命の危険を感じ逃走、今に至っている。
「ここまでくれば大丈夫だ……」
かなりの速さでここまで来た。これならあの少女も追ってこれまい。そう思い安堵の息をついた時だった。
ーカラッ
そんな音が後ろから聞こえる。
「速いねキミ」
振り返ると屋根の上にその少女がいた。もう一度逃げようと背中を向けた瞬間近くの物陰から出てきた何かに体を取り押さえられる。女性だ。女性が鬼の力に負けることなく取り押さえている。
「アナタ鬼殺隊でしょ?今のうちに!!」
「う、うん」
『水の呼吸壱の型・水面斬り』
女性に言われるまま頸を落とす少女。鬼の体が消えていく途中、その女性を観察していた。見た限り左手が無い。着物もどこか鬼殺隊の隊服に似ている。
「ありがとうございます。この鬼は逃げ足が早くて……」
「アナタ名前は?」
「え?空野菫です」
「私は、蓮池恋花。アナタにお願いしたいことがあるの」
「さっきの戦い方?」
夜が明ける頃、菫は蓮池の家で先程の戦い方について聞かれていた。
「ええ、片手で刀を握り呼吸を使わずに戦っていた。あの戦い方なら私でももう一度戦えそうだからね」
(え?その戦いってたしか…)
お堂で鬼と少し戦ったとき、確かに呼吸を使わず片手で刀を振るった。それを見ていたという事は、そこから追いかけてきていたと言うことになる。
「あの……あなたは一体……」
「鬼殺隊の元柱よ。何年か前、鬼と戦った時に左手を無くして、肺もやられちゃった。時也さんに助けてもらって命は助かったけど何もかも惨めになってね。名前も地位も家族も捨てここに来たの……」
辛そうに話す蓮池。鬼殺隊で使用する呼吸と言う戦い方は、その名の通り呼吸する事によって身体能力を上げる戦い方だ。肺がやられたと言う事は、その呼吸が使えないという事だ。それに忘れているかと思うが空ノ流が特殊なだけで刀の戦い方は、両手が基本。片手ではちゃんとした力は出ない。
左手と肺。その二つは鬼殺隊にとって致命傷だ。
だが空ノ流は、片手で刀を振り呼吸を必要としない。だからこそ蓮池の様な手負いの者でも不自由なく戦うことが出来る。
「もし教えてくれるなら柱に必要な技能を教えるわ」
「この辺りでいいかな?」
二人が鍛錬に丁度良さそうな場所を見つけたのは、既に太陽が高く登った頃だった。
「さてと……まずは構え方だけど特に決まって無いんだ。好きな構え方で取り敢えず立ってみて」
菫に言われ構える蓮池。それを見た菫も合わせるように構える。
「基本はそれ。攻撃や防御のとき以外はその構えを保つようにしてね……さてその状態でちょっと打ち合ってみる?」
そう言うと蓮池の答えを聞かず攻撃してくる。すぐに迎撃し反撃しようとするも全くすきがない。元とはいえ、柱である自分が防戦一方だ。
「空ノ流の基本は相手の隙きを感じること、隙が分かれば次が分かる」
「感じる……見つけるのでは無くて……」
「うん。空ノ流は、五感より六感。直感とかに身を任せるんだ。そうすればほら!!」
ーー動きが変わった。的確に急所を狙ってくる。木刀とはいえ当たればただでは済まない。
「菫ちゃん!!少し止めて!!体が……」
やはり、しばらく戦っていない為体が衰えている。たったこれだけで息が上がり始める。だが菫は、動きを止めない。よく見ると目を閉じている。
「菫ちゃん!!菫ちゃん!!」
反応はない。どれだけ声を上げてもひたすら打ち込んでくる。
(そうだ……一撃当てれば)
痛みで動きが止まる筈。そう考え少し距離を取る。それを追いかけるように打ち込んでくるが、それよりも早く肩に一撃当て地面にしずめる。
「アレ?ボク……」
我に返り先程の事を思い返す菫。
「声も聞こえないくらい集中してたけど大丈夫?」
「あ、うん。あれはね、『地異』ていう秘技なんだ。六感に神経を集中させるために視覚や聴覚を切る技だよ」
一通りの鍛錬を終えた夕方、交代し蓮池からの指導を受けていた。
ーー全集の呼吸。
水の呼吸や風の呼吸とは違いそれは、呼吸によって身体能力を上げる呼吸だ。それを常に行うのが全集中・常中、菫が今から教えて貰う技だ。
「会得するのには、色々な方法があるけど……私が教えるのはこれ。これを吹いて割ってね」
そう言って笑顔で出してきたのは、身の丈もある瓢箪、それもかなり硬そうだ。
「あの……もしかして……」
「それじゃ頑張ってね」
「やっぱりさっきの根に持ってますよね?!」
それから数日間昼は蓮池の空ノ流、夜は菫の全集中・常中の鍛錬の日々が続いた。
元柱とはいえ、今までと違う戦い方に苦戦する蓮池。
そもそも不慣れな全集中の呼吸を鍛える菫。
互いに悪戦苦闘する日々が何日も続いた。
次の任務が入ったのは、二人の出会いから一ヶ月が経った頃だった
「那田蜘蛛山!!次ノ任務ハ、那田蜘蛛山!!他ノ隊士ト共ニ那田蜘蛛山ノ鬼ヲ滅セヨ!!」
「行くのね菫ちゃん」
「はい。鍛錬を途中で投げ出すことになりますが……」
「それはお互い様でしょ?私ね、もう一度最終選別を受けてみようと思うの。家族と胸を張って会えるように」
そう言って微笑む蓮池。それを見ていると自然と菫も笑顔になる。
「任務頑張ってね」
「蓮池さんも無理しすぎないように!!」
準備を終えて街を離れる菫。死地に向かうというのに、その背中は何処か希望に満ち溢れているように見えた。
その後ろ姿を見送り家に戻るとそこには、大柄な男がいた。青い着流しの服を身に纏い、腰にはかなり大きな刀が差されている。
「あら、いらしてたんですか?来るなら連絡くらい入れてくれれば良かったのに」
「どうだい?あの嬢ちゃん、見所あったろ?」
「はい、完全習得までとは行きませんでしたが、今の状態でも十二鬼月と十分張り合えるかと」
「やっぱり、胡蝶の嬢ちゃんに預けて正解だったな」
「時也さん……その名前で呼ばないでください……ところであの子かなり気にしてましたけど、一体何者なんですか?」
「ああ、俺が昔世話になった人の娘さんだ」
大正こそこそ話
地異は、空ノ流の師範だけが使える秘技です。中でも菫は先代達と比べるとかなり精度は、落ちています。五感のうち2つを斬る我を失い、相手を倒すか自分が倒れるまで止まらなくなります。